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  • 更新日: 2020年12月21日

Blockchain Bizでは以前、ブロックチェーン技術を利用した分散アプリケーションプラットフォーム Ethereum(イーサリアム)を紹介しました。そのEthereumをもとに、より企業のビジネスニーズに合った「Enterprise Ethereum」(エンタープライズ イーサリアム)を開発しようというプロジェクトが起ち上がました。今回はEnterprise Ethereum誕生の背景、BitcoinやEthereumと比べて優れている点、今後の動向について先日発表されたEnterprise Ethereum Allianceにも触れつつ解説します。

Ethereum、その最大の特徴のひとつであるスマートコントラクトの一般的な解説については以下の記事を参照してください。

 

Enterprise Ethereum誕生の背景

2008年にBitcoinが誕生し、2014年にEthereumが正式に発表され、BitcoinやEthereumなどブロックチェーンを利用したプラットフォームは黎明期を経て普及期に入りつつあり、その用途も開発者主導の実験的な用途だけでなく、非公開性や安定性などが求められる企業での用途にも広がりをみせています。

Enterprise Ethereumの発起人で、ブロックチェーンに関する技術開発スタジオConsenSysのチーフオブスタッフでもあるジェレミー・ミラー氏が2017年年初に投稿した記事をもとにEnterprise Ethereumの誕生の経緯をたどってみましょう。

The Birth of Enterprise Ethereum in 2017 – ConsenSys Media

記事中でミラー氏は、将来標準となり得る企業向けのブロックチェーン技術が出そろいつつある中で、Ethereumは世界中に2万人の開発者がいて、ネットワークに約10億ドルの資金を保持し、企業向けの開発で最も利用されているブロックチェーン技術であろうとし、Microsoft AzureなどのクラウドサービスでもEthereumブロックチェーンが提供されていることもその論拠として挙げています。用途はトラッキング、支払い、データのプライバシー、コンプライアンス、アセットのトークン化をはじめ多岐に渡るといいます。

ただ、公開型のネットワークとして開発がすすめられているEthereumを企業が採用するとなると問題がないわけではありません。記事中でミラー氏は、合意形成の方法、プライバシーやパーミッションの問題、またEthereumの改善プロセスでは公開型チェーンの問題が多くを占める中で企業の情報技術として何が重要であるか明らかにするのが難しいといった問題に言及し、結果、企業はEthereumをフォークして独自の非公開型のネットワークを実装したり、ベンダーが提供するエクステンションに頼ったりして要求を満たしてきたとし、その弊害として、アプリケーションのポータビリティーの欠如、コードの断片化、特定のベンダーに依存せざるを得なくなってしまうことを指摘しています。

このような状況は、企業向けの技術を提供するベンダー、企業ユーザー、Ethereumスタートアップの間で話し合われ、議論はEthereumを考案したVitalik Buterin氏をまきこむまでに広がり、Enterprise Ethereumのロードマップ、法的枠組み、ガバナンス、初期の技術開発を定義するところとなりました。Enterprise Ethereumの誕生です。

続いてEnterprise EthereumがBitcoinやEthereumと比べて優れている点をみてみましょう。

 

BitcoinやEthereumと比べて優れている点

まずEnterprise EthereumがBitcoinよりも優れている点はどこにあるのでしょうか。これはBitcoinとEthereumの比較でもありますが、Ethereumの利点はSolidityというプログラミング言語で自由度の高いスマートコントラクトを記述できる点にあるのではないでしょうか。前述のミラー氏のブログ記事では、フルスタックエンジニアやウェブ開発者は数時間でSolidityを習得でき、最初のアプリケーションをたった数日で開発することができるとし、豊富な資料やコードサンプルが存在することともあいまって、多くの企業がブロックチェーンの選択肢としてEthereumを選ぶのに疑いの余地はないとしています。実際、連載「ブロックチェーンとシェアリングエコノミー」で紹介した鍵のアクセスコントロールを扱うSlock.it、ライドシェアサービスのLa’ZoozArcade City、ソーシャルコラボレーションプラットフォームColony、電力シェアプラットフォームTransActive GridでもEthereumが使われています。

Ethereumとの比較では、名前の「Enterprise」の部分にもあらわれているように、Enterprise Ethereumは非公開のブロックチェーンといった企業用途に最適化されている点がその特徴として挙げられます。また、関係者が限られることから意思決定がはやいといった優位性もあるかもしれません。Enterprise Ethereumは、これまで個々の企業やベンダーがEthereumをもとに用途に応じて独自に開発した互換性の低いブロックチェーンではなく、ミラー氏の記事によれば、Enterprise Ethereumは公開型のEthereumのロードマップに忠実に互換性を保ちながら構築され、Enterprise EthereumがEthereumの開発にも貢献することを期待しているといいます。また、Enterprise Ethereumを採用する企業やサポーターをとりまとめてガバナンスやツールも含めた標準を作り出すとし、技術にとどまらない包括的な取り組み、グループとしてのEnterprise Ethereumについても触れています。このような動向からEnterprise Ethereumは企業向の用途に特化して従来のEthereumとJavaとJ2EEのような共存関係を目指していると捉えることができます。

 

今後の動向

Enterprise Ethereumについては、これまでまだ明らかになっていないことの多いプロジェクトとして語られてきました。実際、発起人であるミラー氏のブログ記事でも誕生の背景については語られたものの、技術的な詳細は明らかにされていません。ただ、徐々に明らかになりつつある部分もあり、先日Enterprise Ethereum Alliance(エンタープライズ イーサリアム アライアンス)として、Enterprise Ethereumの仕様策定を行うグループのウェブサイトが公開されました。

Enterprise Ethereum Alliance

Enterprise Ethereum Allianceのウェブサイトでは初期参加企業として、ConsenSysやBlockAppsといったブロックチェーンに関する技術開発に特化した企業に加え、IT業界からはMicrosoftやIntel、金融業界からはJPモルガンやUBSといった国際的な大企業の名前が挙げられています。

(画像: Enterprise Ethereum Allianceのウェブサイトより)

ミラー氏のブログ記事に “not ‘death by committee’ and without ‘pay to play’ ”(Enterprise Ethereumのグループは委員会が厳しく統治し何も実現されない類いのものではなく、Enterprise Ethereumの利用に課金するようなものでもない)とあるように、Enterprise Ethereumがオープンで多くの利用者を獲得するプロジェクトとなることを期待しつつEnterprise Ethereum Allianceと合わせて今後の動向に注目したいところです。

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

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