本連載では、ブロックチェーンを活用したシェアリングエコノミーのサービスを紹介しています。Slock.it、La’Zoozに続き、今回はソーシャルコラボレーションプラットフォーム「Colony」(コロニー)について説明します。
Colonyとは
ColonyはJack du Rose氏らによって2014年に創業されたイギリスのスタートアップで、社名と同名のソーシャルコラボレーションプラットフォームColonyを開発しています。Colonyは世界中の人々がともにオンラインで会社やプロジェクトを立ち上げ、作業するためのプラットフォームで、現在はβ版として開発が進められ、Colonyのウェブサイトからはメーリングリストに参加することができます(2016年10月現在)。
Colonyのユーザーは、自身のスキルを記載したプロフィールを作り、「コロニー」と呼ばれるプロジェクトや企業体を作るか、既存のコロニーに参加することができます(以降、本記事ではサービス名を「Colony」、Colony上でのプロジェクトや企業体を「コロニー」と表記します)。コロニーでの意思決定は専門知識のレベルに応じて民主的に行われます。また、各コロニーにはコロニー内の通貨として独自のトークンが存在します。トークンは、デザインやプログラミングといった作業の対価として支払われ、企業の株式のようにコロニーの所有権も表します。また、Colonyはオープンなマーケットでトークンを現金と取引できるとしています。
画像: Colonyウェブサイトより
実際に一般のユーザーがColonyを利用することはまだできませんが、2015年12月に行われたイーサリアムの開発者会議DEVCON1でJack du Rose氏がデモを交えて、Colonyがどのように機能するか詳しく説明しています。
シェアリングエコノミーとColony
シェアリングエコノミーという観点からは、Colonyはより柔軟に個人がスキルを共有するためのプラットフォームととらえることができます。仕事を依頼したり探したりするプラットフォームでは、発注者がオンラインで作業者を募るクラウドソーシングが普及しつつあります。一般的なクラウドソーシングの場合、発注者と作業者を仲介する企業が存在しますが、Colonyでは特定のクラウドソーシング企業に依存することなく、プラットフォームとしてのColonyは存在するものの、各コロニーの参加者がより直接的につながり、提案と投票により意思決定がなされ、貢献度に応じて評価されるフラットな組織でプロジェクトを進めることになります。
画像: Colonyウェブサイトより
また、前掲のDEVCON1の動画のデモにあるように、コロニーへの貢献度に応じてスキルが評価され、スキルレベルに応じて順当な対価が支払われるのであれば、Colonyはより透明性のあるシェアリングエコノミーの理想的なプラットフォームになる可能性があるといえます。
Colonyはブロックチェーンを何に使っているのか
本連載でこれまでに紹介したSlock.itやLa’Zooz同様、Colonyもイーサリアムブロックチェーンを利用しています。Colonyのブログ記事”Why Colony is 100% behind ETH”では、自身もイーサリアムコミュニティーの一員であるとして、なぜイーサリアムを支持するのかさまざまな側面からその理由を述べています。
Colonyでは、イーサリアムのブロックチェーンを、ブロックチェーンの特徴を活かしてコロニー内での二重投票や不正のない投票や、トークンの管理に使っています。Information Ageの記事でも、コロニーごとにトークンを利用するシステムはイーサリアムブロックチェーン上で動作し、ユーザーのプロフィールや評価を扱うシステム、投票システムがこれを補完し、Colonyというプラットフォームとなっていると取り上げられています。この投票システムについてはColonyのブログにて連載”Token-weighted voting implementation“として仕組みが解説されており、今後、ブロックチェーンの利用やプラットフォームの全体像についても詳細が明らかになることが期待されます。
Colonyのこれから
2016年10月にブログに公開されたColonyのアップデートに関する記事では、Q4は引き続き開発を続け、Version1として想定している機能を実装し終えるまでに4か月ほどかかるとしています。また、記事の公開時点では、コアチームはありつつも外部からの参加者にオープンなデジタルエージェンシーと共同でColonyのテストを行っており、該当する組織の参加も募っています。本記事を執筆している2016年10月現在、Colonyはまだβ版の状態で、一般のユーザーが実際にColonyを使えるようになるには少し時間がかかるようです。
そのほか、Colonyは非営利のColony Foundationを立ち上げ、Colony Foundationではイーサリアム上のColonyスマートコントラクトネットワークをオープンソースで開発し、Colony上のアプリケーションの開発の支援も行うとしています。
画像: Colony Foundationウェブサイトより
2016年9月に行われたイーサリアムの開発者会議DEVCON2では、「A Deep Dive into the Colony Foundation Protocol」というタイトルでColonyのメンバーが登壇しました。実際の発表は投票の仕組みに重点が置かれていました。投票の仕組みについてはDEVCON2で登壇したElena Dimitrova氏の連載としてColonyのブログでも読むことができます。
- DEVCON2でのスライド
- Token-weighted voting implementation Part 1 – Colony Blog
- Token-weighted voting implementation Part 2 – Colony Blog
おわりに
シェアリングエコノミーのサービスのひとつとして、今回はソーシャルコラボレーションプラットフォームColonyを紹介しました。
1990年代の終わりに組織によらないフリーエージェントという働き方が注目されはじめ、2000年代にはデザイナーや開発者などフリーエージェントが少なくないクリエイティブクラスという社会経済学上の階級が注目されるようになりました。この数年でフリーランス、クラウドソーシングを利用した働き方が一般に浸透しつつあり、働き方が変化しつつあることを体感しているという人もいるのではないでしょうか。
Colonyは”True DAO”という真の分散型の企業や非営利組織の概念を提唱しており、依然組織が中心に存在することの多い現状において、ブロックチェーンとトークンを利用した投票と評価によるシステムでよりフラットな組織を実現し、働き方、プロジェクトや企業のあり方に変革をもたらす可能性を秘めています。Colonyの正式なローンチを待ちつつ、今後の動向に注目したいところです。