ビットコインが4回目の半減期を迎えた2024年は、同じく半減期のあった2016年や2020年のように半減期前後では比較的静かでありながら、アメリカでのビットコイン現物ETFの承認や大統領選といった追い風もあり、年末には過去最高値を記録し、ゆっくりと盛り上がりを見せつつあります。ブロックチェーン技術や分散型組織のあり方についても、より広く知られるようになり、ブロックチェーンと暗号資産にとっては成熟の一年になったのではないでしょうか。
本記事では2024年のブロックチェーンと暗号資産に関するニュースを時系列で追いながら、ブロックチェーンの暗号資産の2024年を総括します。
目次
1月 – アメリカSECがビットコインの現物ETFを承認
ビットコインが半減期を迎える3ヶ月ほど前に、アメリカ証券取引委員会(以下SEC)がビットコインの現物ETFを承認しました。待望のビットコインの現物ETFの承認とあり、日本でも暗号通貨メディアだけでなく、主要メディアでも報道されました。
米SEC、ビットコインETFを初承認 投資層の拡大に期待 – 日本経済新
ビットコインの先物ETFはアメリカでもすでに取引が行われていましたが、ファンドがビットコインを裏付資産として保有する現物ETFの取引が開始されたことで、ビットコインに関連する金融取引をしやすくなります。投資家はリスクを減らしながら市場に参加し、場合によっては税制面のメリットを享受できる可能性があるほか、ETFであれば、ウォレットや暗号資産取引所を利用することなく、証券口座での売買が可能になりました。これらの変化によって、ビットコインが比較的安定した投資資産として認識され、より多くの機関投資家や一般投資家がビットコインに関連する取引に参入しやすくなりました。
ビットコイン現物ETFの承認は、暗号資産がアメリカの金融市場という世界の中心的な金融市場で受け入れられた象徴的な出来事で、今後より多くの投資家がビットコインにアクセスし、市場の安定した成長が期待されます。
ただし、ビットコインETFは現物のビットコインではありません。第三者の管理下に置かれている点、自由にプライバシーを守りながら移動したり利用したりできない点は知っておかなければなりません。
3月 – Tap to Earm、ハムスターコンバットのリリース
2020年から始まった暗号資産のサイクルを経験した人の中には、Play 2 Earn、Gami Fiといった言葉を耳にしたことがあるという人もいることでしょう。ブロックチェーンや暗号資産を使ったクリプトゲーム自体はその以前にも存在しましたが、前回のサイクルでは、NTFが注目を集めたこと、より広い層が界隈に参入したことでゲームの利用が広がりました。
2024年3月には、Telegram内で遊べるハムスターコンバットというゲームがリリースされ、急激にユーザーを増やしたことから注目を集めました。Telegramとは、プライバシー保護やセキュリティに重点を置いた、無料で利用できる高速なメッセージングアプリです。
画像: ハムスターコンバットのウェブサイトより
アカウントの重複も考慮する必要がありますが、ハムスターコンバットのユーザー数は最盛期で数億人を記録したとも言われています。一般的なブロックチェーンゲームのユーザー数と比べると格段に多く、タップするだけで暗号資産を獲得できる気軽さと合わせて、Telegramが抱える数億人のユーザーベースにアプローチしたのが成功の鍵といえるかもしれません。
ハムスターコンバットは、Telegramが開発をはじめ、現在ではTON財団に引き継がれているTONネットワークというブロックチェーンを利用しています。2024年9月からは、TON上で発行された独自トークンのHMSTRの取引が始まりました。
本記事執筆中の2024年12月22日にXのハムスターコンバットのアカウントから、シーズン2についてのアナウンスがあり、HamsterVerseという世界観のもと、ハムスターコンバットのキャラクターやストーリーを中心にし、HMSTRを使ったエンターテインメントエコシステムが展開されるようです。今後クローズドβテストが行われるとのこと。
4月 – 合同会社DAOが設立可能に、ビットコイン4回目の半減期
合同会社型DAO
2024年4月には、金融商品取引法に基づく内閣府令の一部が改正され、日本の合同会社の法的枠組みを活用して、DAO(分散型自律組織)を設立できるようになりました。これまで、DAOは法的な位置づけが不明確で、法的責任や税務上の課題が指摘されてきました。
一方、合同会社型DAOは、法人格を持つことで法律に基づいた信頼性を確保しやすくなります。その上で、DAOの特徴である分散型の意思決定や自律的な運営を実現することを目指しています。この新しい形態のDAOは、ブロックチェーン技術を活用した新たな組織運営のモデルとして今後注目されると考えられます。
本メディアを運営する株式会社ガイアックスと株式会社巻組による日本初のDAO型シェアハウス「Roopt DAO」(ループト・ダオ)も、法改正を受けて、Roopt DAOを合同会社化することを決定しました。
合同会社DAOについて詳しくはガイアックスのブログ記事を参照してください。
合同会社型DAOとは?従来のDAOとの違いや注意点をDAO運営者が解説 › 株式会社ガイアックス
ビットコインの半減期
ビットコインの半減期は、約4年ごと(21万ブロックごと)に発生する予め計画されたイベントで、マイナーが新しく採掘するビットコインの報酬が半分になります。新規発行されるビットコインの供給が減少して希少性が高まることから、また、マイナーが事業継続のために獲得した新規発行ビットコインを法定通貨化する売り圧力が減ることから、半減期を経てビットコインの価格上昇が期待されます。
2024年4月20日に4回目の半減期を迎え、新規ビットコインを採掘したマイナーへの報酬は3.125BTCとなりました。2024年1月のアメリカSECの現物ビットコインETF承認もあり、価格上昇を期待する声もありましたが、半減期後、半年ほどはビットコイン価格は大きな値動きのないまま推移しましたが、次項で説明するアメリカ大統領選を経て、2024年12月には10万ドルの大台に突入しました。
画像: 2024年のビットコイン価格の推移(CoinMarketCapより)
11月 – アメリカ大統領選とミームコイン、DOGEの設立
2024年11月初旬には、アメリカ大統領選が行われ、共和党のドナルド・トランプ元大統領と、民主党のカマラ・ハリス副大統領がアメリカ大統領の座を争い、ドナルド・トランプ元大統領が勝利し、2025年1月にはトランプ新政権が発足します。
大統領選の最中には、政治をテーマにした「PolitiFi」(ポリティファイ、政治と金融)と呼ばれるジャンルのミームコインに注目が集まりました。具体的には、トランプ氏をモチーフにしたMAGA、ハリス氏をモチーフにしたKAMAなど、さまざまな亜種が取引され、価格が乱高下しました。CoinGeckoにはPolitiFiトークンの一覧があります。
トップ PolitiFi 通貨の時価総額 – CoinGecko
ミーム文化的なユーモアを交えながら政治をテーマにした遊びを作り出す動きは、実は前回の2020年の選挙サイクルでも見られました。2022年に破綻した暗号資産取引所FTXが「トランプトークン」を扱っていたことを覚えているという人もいるのではないでしょうか。
再選が決まって間もなく、トランプ元大統領はDOGEという組織の設立を発表しました。DOGEと言う名前から、芝犬がモチーフのミームコインが思い浮かびますが、ドージコインを意識した可能性はあるものの、直接的な関係はありません。DOGEは政府効率化省(Department of Government Efficiency)の略称で、政府の無駄を削減して運営効率の向上を目指す組織です。興味深いのは、テスラのCEOのイーロン・マスク氏や、製薬スタートアップのロイバントサイエンシズを創業したヴィベック・ラマスワミ氏が主導するという点です。2026年7月4日という期限付きの組織で、1年半強の期間でどのような成果がでるのか、その取り組みが問われることになります。
What is Doge, Trump’s new team headed by Elon Musk? – BBC
トランプ元大統領の勝利に期待したのか、それとも他の要因によるものかは定かではありませんが、大統領選の前後でビットコインは大きく値を上げ、過去最高値を記録し、12月に入って初めて10万ドルの大台に突入しました。
過去には暗号資産に対して否定的な意見を述べたこともあるトランプ元大統領ですが、近年では自身のNFTを発行したり、Bitcoin 2024 Conferenceで登壇したり、暗号通貨に前向きな人物を政権に登用したりする動きも見られます。そのため、今後暗号資産に対して積極的な政策が取られるのではないかと期待する声もあります。
トランプ元大統領は不動産というインフレに強い資産を長年扱ってきたビジネスマンで、ビットコインや金にフレンドリーな立場をとる『金持ち父さん貧乏父さん』の著者ロバート・キヨサキ氏と共著があることなどからも、「デジタルゴールド」としてのビットコインの価値を理解している人物だと考えられます。トランプ新政権の下で、ビットコインをはじめとする暗号資産が今サイクルでどのような展開を見せるのか、今後の動向が注目されます。
12月 – DMMの暗号資産取引所サービス終了決定
2024年12月、DMMビットコインが暗号資産交換業を廃業することを発表しました。国内でもマウントゴックスの破綻といった事件はありましたが、暗号資産取引所の閉鎖は珍しいものです。
【正式発表】DMM Bitcoinが廃業へ、来春SBI VCトレードに資産移管へ | あたらしい経済
DMMビットコインの廃業は、2024年5月31日に発表された、約4500ビットコインの不正流出に端を発しています。不正流出で失われた資産については、DMMグループ内から資金を集めて保護されることとなりました。2024年9月には行政処分がくだされ、業務改善命令が出されました。
DMMに業務改善命令 ビットコイン482億円分の不正流出受け ずさんな管理体制が明らかに – ITmedia NEWS
DMMビットコインは、不正流出の調査が続く中で、サービスの利用制限が長引くことで、ユーザーの利便性が大きく損なわれるとして、サービス終了を決定したとしています。ユーザーの資産は2025年3月をめどにSBI VCトレードに移管されるとのこと。
【重要】口座及び預かり資産のSBI VCトレードへの移管に向けた基本合意について – DMMビットコイン(2024/12/02)
2024年の年末になり、暗号資産の価格が高騰する中で、今一度、ビットコインの支持者として長らく知られているアンドレアス・M・アントノプロス氏の「Not Your Keys, Not Your Coins」(秘密鍵を自分で管理していないのなら、そのコインは実質的にあなたのものではない)という警告を心にとめて今サイクルにのぞむべきなのかもしれません。
おわりに
2016年に始まった本ブログの「ニュースで振り返るブロックチェーン」シリーズは、今回で9回目となりました。ビットコインの4回目の半減期を経て、アメリカ大統領選を終えて、ビットコインが最高値を更新する中で、再びブロックチェーンと暗号資産分野が盛り上がを見せるか期待しているという人も多いのではないでしょうか。
来年の10回目の年末まとめ記事では、たくさんの明るいニュースをお伝えできたらと思いつつ、本記事をしめくくります。みなさんにとって2025年もブロックチェーン分野での実りと学びの多い一年となりますように!