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the Green Block Talks 持続可能な社会に向けた取り組み紹介

以前、本ブログのweb3と気候変動対策に関する記事でご紹介したthe Green Blockが、12月初めに新たな報告書を発表し、それにあわせて初めてのトークイベントを開催しました。本イベント、”the Green Block Talks & Launch of the Green Block Report”は、COP28開催期間中(11/30-12/12)にドバイで実施されたこともあり、国内外の気候変動対策に取り組む企業や国際機関、大学などから多くの人が参加しました。 気候変動対策へのデジタルテクノロジーの活用に注目が集まる中、本記事ではこのイベントの概要をご紹介します。 The Green Blockとは? 概要 The Green Blockは、ドバイを拠点とするCrypto Oasis Ventures と、国際的なコンサルティングファームのRoland Bergerが、2023年6月20日に新たなイニチアチブとして立ち上げたもので、Web3の領域内で、環境、社会、ガバナンス(ESG)分野のプロジェクトを育成し、ESGに関するブロックチェーン・エコシステムの形成を目指しています。 下記の図に示されるように、様々な関係者(政府、企業、スタートアップ、研究機関、メディア、サービスプロバイダー、投資家、業界団体など)を有機的に結びつけ、ESG分野のweb3プロジェクトの知見を集積していくことで、持続可能な社会の形成に向けた新たなソリューションを生み出していくイニシアチブとなっています。 発起人のCrypto Oasisは、スイスのツークを拠点とするCrypto Valley Associationと協力関係にあり、the Green Blockの活動を欧州地域にも拡大させていく動きを見せています。2023年9月にスイスで開催された「SWISS WEB3 FEST 2023」では、the Green Blockイニシアチブの欧州地域でのローンチングが実施され、ヨーロッパを拠点とする企業もこのイニシアチブへの賛同と協力を示しています。 12月4日に開催されたイベントでは、the Green Blockのスポンサーとして新たにSIEMENSとBMWが加わったことが発表されました。既存のスポンサーであるBEEAH社とSEAGRASS社(両社ともUAE拠点)に加えて、ドイツの大企業が複数参画した形になります。 The Green Block Reportの発表 12月4日には、the Green Blockによる新たな報告書 Green Block Report 2023が公開されました。(報告書はオンラインで公開されていて、https://thegreenblock.com/report2023/ からダウンロード可能です。)報告書の主なポイントは以下の通りです。 ビジネスにおけるESGに対する意識の高まり: すべての規模のビジネスにおいて、ESGの重要性に対する認識が高まっています。多くの企業が、気候変動、多様性、インクルージョン、教育などの課題に積極的に貢献するための方策を検討しています。 ブロックチェーン技術の役割: 仮想通貨を支える技術である分散型台帳技術(DLT)は、環境問題への対応にも活用されてます。例えば、二酸化炭素等に代表される温室効果ガスの削減を加速させ、地球温暖化を抑制するためのカーボンオフセット制度についても、ブロックチェーン上でカーボンクレジットをトークン化することにより、透明性が高まり、環境プロジェクトの実際の貢献度が保証されます。さらに、ESG関連情報の構築、管理、報告のためのフレームワークを提供し、関連情報の提供ニーズに対応することが可能となっています。 大企業のコミットメント: GoogleやMicrosoftなどの世界的にも有名な大企業は、温室効果ガスの削減や再生可能エネルギーの利用に向けた目標を設定しています。同様に、ブロックチェーン業界もエネルギー効率の高い方法への移行を進めており、例えば、イーサリアムのPoSへの移行は、エネルギー消費が大幅に削減されたとされています。 集団的コミットメントの必要性: レポートでは、持続可能な変革を達成するためには、単なる革新以上のもの、つまり行動への集団的なコミットメントが必要であることが強調されています。the Green Blockは単なるプラットフォームではなく、持続可能性を追求する様々な関係者を結びつけるエコシステムとして機能するとレポートにも示されています​​。 2024年の活動方針の発表 The Green Blockの2024年の重点分野として、監査証明に対応したESG成果の測定(Audit-Proof Measureable ESG Results)、ESGスタートアップ支援(the Green Block Accelerator)、web3とAIによる金融包摂(Financial Inclusion through web3 and AI)、 持続可能なビットコインマイニング(Sustainable Bitcoin Mining)の4点が挙げられました。トピック毎にワーキンググループを設置して議論を行っていき、このワーキンググループには誰でも参加できる形にするとのことです。ご関心がある方は、ぜひ公式サイトやSNSをフォローしてみてください。 ESG分野のプロジェクト紹介 自発的リサイクルクレジット(Voluntary Recycling Credits:VRC) 報告書の発表とthe Green Blockの活動方針についての報告があった後、多様な登壇者によるトークイベントが開催されました。中でも非常に興味深いプロジェクトとして、自発的リサイクルクレジット(VRC)イニシアチブを紹介します。VRCは、the Green BlockのコアメンバーであるRoland BergerとBEEAHグループが、DFINITY Foundationおよび国際固形廃棄物協会(ISWA)と協力して立ち上げたプラットフォームで、固形廃棄物のリサイクル実績をクレジットとして取引するための世界初のグローバルシステムとなっています。 プロジェクト概要 世界的なゴミ問題への取り組み: 廃棄物の量は世界的にも増加しており、多くの廃棄物は埋立、投棄、焼却などにより土壌、水資源、大気に深刻な負の影響を与えています​​。 目標とアプローチ: VRCイニシアティブは、公的部門と民間部門双方からの多様な関係者間の協力関係を強化して廃棄物問題を克服しようとするものです。このイニシアティブは、固形廃棄物の排出量をオフセットするために利用できる標準化されたルールとプロセスを確立するものです。これには、ブロックチェーンベースのマーケットプレイスで固形廃棄物の「リサイクルクレジット」を取引するメカニズムが含まれ、廃棄物オフセット企業とリサイクル会社間の監査可能で安全な取引を保証するものです。このイニシアティブにより、固形材料の収集とリサイクルが奨励され、あらゆる種類の廃棄物管理が向上することが期待されています​​。 イベントでは、会場で実際にVRCプラットフォームを動かすデモが行われ、リサイクル業者がクレジットを得る過程と、廃棄物を算出する事業者がクレジットを購入する過程が説明されました。 VRCは本イベント開催日(12月4日)にCOP28の会場で正式にPoCがローンチされました。2024年から25年にかけてVRC導入国を拡大し、26年以降はサービス内容と対象範囲の更なる拡充を目指すとしています。 関連報道:COP28のUAEパビリオンでVRCイニシアチブのPoCがローンチされた旨の現地報道(Gulf Business)https://gulfbusiness.com/cop28-voluntary-recycling-credits-initiative/#:~:text=%E2%80%9CThe%20VRC%20Initiative%20is%20a,waste%20produced%20in%20their%20operations.%E2%80%9D SEAGRASS carbon map その他、本トークイベントで紹介された興味深いプロジェクトとして、Seagrass社のCarbon mapプロジェクトが挙げられます。 Seagrass社は、ドイツの大手エネルギー会社のE.ONグループの子会社で、UAEのアブダビ(Abu Dhabi Global Market:ADGM)に拠点を置いています。同社は、脱炭素の促進やカーボンクレジット市場の拡大を促進するための技術的なソリューションを提供していて、ブロックチェーンの活用にも力を入れています。 The Green Blockのトークイベントでは、COP28にて新たに発表されたSeagrass社のCarbon mapについて説明が行われました。このCarbon mapは、環境保全に寄与するプロジェクトに関する詳細な情報(デジタルIDとの連携が可能で、プロジェクト情報、環境面の情報、経済的な情報、歴史的な情報などを網羅したもの)を掲載するデジタルマップで、カーボンクレジットの売り手(プロジェクト側)と買い手がいつでも最新の情報にアクセスすることを可能にするアプリケーションとなっています。 Seagrass社は、スイスに拠点を置くHashgraph Associatioと共同でカーボンクレジットのWeb3アイデンティティウォレットの開発を進めており(下記関連記事参照)、Carbon Mapはこのウォレットと連携して、カーボンクレジット取引の加速を今後後押ししていくことが期待されています。Seagrass Walletは、2024年中の実用化が予定されているとのことです。  関連記事: Seagrass社設立のアナウンスメント(ADGM) https://www.adgm.com/media/announcements/seagrass-company-launches-in-the-united-arab-emirates Seagrass社とHashgraph AssociationによるWeb3アイデンティティウォレットの立ち上げ https://www.zawya.com/en/press-release/companies-news/uae-based-seagrass-and-the-hashgraph-association-announce-launch-of-co-funded-carbon-credit-web3-identity-wallet-r9bpsrtf おわりに 気候変動対策を含め、持続可能な社会を実現するためには、個々の企業や団体の取り組みのみならず、集団的なコミットメントと行動が必要となっています。ESG分野のweb3関係者を有機的に結びつけるthe Green Blockの取り組みはまだ始まったばかりですが、今後中東地域や欧州を含めて広く拡大してくことが期待されます。2024年1月にはダボス会議の開催と合わせて欧州でイベントも予定されており、今後の動きを引き続き追っていきたいと思います。

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イーサリアムでスマートコントラクト開発してみた ~vol.1~

はじめに こんにちは! 初めて記事を書かせていただきます、曽我と言います。よろしくお願いします! 「ブロックチェーンによってこれまで価値が認められてこなかったものに価値をつけることができる」というお話に触れて以降、どうしてそんなことが可能になるのかを理解したいという思いがずっとあります。 ブロックチェーンの仕組みについては、勉強すればするほど分からないことが増えるばかりです。 今回、理論的な話だけではなくブロックチェーンの開発を実際に手を動かしてやってみることで、より具体的な議論に参加できるようにして理解を深めることを目標とします。   本記事ではまず、現状の疑問の整理と、それらに対して再度調べ直して構築した仮説とその根拠を記しました。 疑問点の整理 イーサリアム イーサリアムについては、ブロックチェーンの上でプログラムを動かせるものというぼんやりとした理解だったので、その定義から詳しく調べ直してみました。 https://ethereum.org/ja/developers/docs/intro-to-ethereum/#what-is-ethereum イーサリアムとは、ブロックチェーンにコンピュータが組み込まれたもので、 分散型、自由参加型かつ、検閲耐性を備えたアプリや組織を構築するための基盤となっています。 ① 分散していて ② 自由に参加できて ③ 検閲耐性のある そんなアプリを作れるものらしいです。   どういうことでしょうか。 一つ一つ見ていきましょう!   分散 分散とは、特定の組織が管理するサーバーにアプリが存在するのではなく、イーサリアム上のいろんなコンピュータにデプロイされているということだと思われます。 これのメリットとして思い浮かぶのは、特定のサーバーがダウンしたらサービスが止まる、といったことがなくなるということです。 しかしこの類の話は通常のアプリケーションでも出てくるものです。 他にもブロックチェーン特有のメリットが何かあるのでしょうか? 分散しているからその正しさを保証できるという意味であれば、それはあくまでブロックチェーンの特徴であり、イーサリアムでアプリを作るメリットではないと思います。   自由に参加できる 「自由に参加できる」とはどういうことなのでしょうか? 普通のWebアプリケーションでも、大体自由に参加できると思いますが、 ユーザー登録とかが不要になるという意味ですかね? 調べてみると、少しヒントとなるような記述がありました。 https://doneru.jp/life/what-is-the-application-dapps/ dapps では個人情報を載せないプライベートアドレスで容易にアクセスできます。 さらにユーザーが開発に参加し、利便性の高いサービスを構築してユーザー全員で作っていくことも可能です。 このエコシステムでは基盤となるチェーンは誰かが所有している訳ではないので、実際にはチェーン上のアプリケーションはユーザーの手に委ねられます。 そういった意味ではユーザーがホストなので、より多くのエージェントがアプリを利用しても永続的に公平さは保たれます。 「個人情報を載せる必要がない」という意味で「参加のハードルが低い」ということでしょうか。 しかし、アプリケーションの性質として個人情報の利用が必要なら提供せざるを得ないのではないのでしょうか? メールアドレスの提供なしには本人確認が出来ないと思うのですが。 もしやブロックチェーンなら「本人確認」が必要なくなるということでしょうか??   検閲耐性 「検閲耐性」とは何か? 「検閲耐性 ブロックチェーン」で調べても一発でバシッと上位に出てくれませんでした。 しかしこのような記述を見つけました。 https://academy.binance.com/ja/articles/what-s-the-relationship-between-blockchain-and-web3 検閲耐性: ブロックチェーンは検閲に強いように設計されているため、どの当事者も一方的に取引記録を変更することはできません。記録がブロックチェーンに追加されると、それを削除することはほとんど不可能です。この機能は、政府や企業の検閲からあらゆる種類の言論を保護するのに役立ちます。 アプリに記録されているデータを第三者が見て、データを書き換えることができない。 そのことを「検閲耐性がある」と言っているということでしょうか? どちらにせよ、誰にも変更できないというのはすごいですね。 一度記録した後に変更させたくないようなデータとしては 何かのログ というのが真っ先に思い付きます。 よく言われるのは、誰になんの権利があるのか。過去に誰が権利を有していたのか。そういったものをトレースしたいケース。 「誰にも変更できない」ことが保証されていたら確かに安心です。   ブロックチェーンとは何か(仮説) 上記を踏まえて、いろんな動画や記事を読みながら友人や Blockchain Biz の方々とやりとりする中で、「ブロックチェーンというのはこういうことなんじゃないか??」という仮説が立ちましたので披露させていただきます!! 結論 ブロックチェーンでは、特別な信頼関係構築なしに複数の組織のデータを「連携できる状態」にできる。 すなわち、自由に参加できる!!! (どう連携させるかはプログラムする = スマートコントラクト) それを可能にしているのは、ブロックチェーンが可能にした以下の要素。 特定の中央管理者がいない 改竄できない これらによって、結果的に「分散」していて「検閲耐性」がある状態になっている。   根拠 この仮説に至った根拠を記します。 複数の組織間を簡単に連携させる 薬局の例 https://youtu.be/H2jP94Fpoi0?t=940 上の動画では、中田敦彦さんが「調剤薬局のデータ連携」についてお話されています。 関連記事: https://www.indetail.co.jp/projects/?uc=detail-01 各地にいくつもある調剤薬局は、何か特定の組織によって管理されているわけではないそうです。 一部の大企業の傘下にある薬局同士は、共通のシステムですでに系列店舗同士での在庫移動が行われており、在庫の最適化が実現されています。 しかし薬局市場においてそのような薬局は全体の15%に過ぎず、その他の多くが個人経営だそうです。 そういった薬局同士が在庫データの連携を相互にしたいとなると、一からの信頼関係構築が必要となり大きなコストがかかると思われます。 具体的には「データを改竄しないでね。そのほかにも、お互い相手に不利益になるような恣意的な操作をしたら法的に訴えますよ」的なことを文書として残しておくなどのやり取りが予想されます。   これが2つの薬局間であればまだ頑張って実現できると思いますが、目的である在庫管理の最適化のために他の多数の薬局とも連携する必要が出てきたりすると、もう非常に面倒になってしまうのがイメージできます。 関係者としては連携システムを構築するベンダーもいるわけで、ステークホルダーの増加にともなって信頼関係の構築に金銭的、時間的、労力的コストが増加していくと思われます。 データを保有するのはどの組織の何のアカウントにするか決める必要があるし、その組織がそのデータを改竄しないことを法的に保証するために、同様に取り決めを構築する必要があるでしょう。   データ連携のための信頼関係構築のコストがバカにならないです。 これではイノベーションを生み出すコラボレーションが加速しない。 なんとかできないものか? そこでブロックチェーンに白羽の矢が立ったのです。 「信頼関係?俺にデータ預けてくれればそんなの丸ごと気にしなくて済むぜ!!!」 「そのデータの連携ルールはスマートコントラクトというプラットフォームを使えば作れるぜ!!」   ポイントの例 T ポイントを国家が「国の貨幣だ」として定めるのになんのハードルがあるんだろうか? と考えながらネットサーフィンしていると、以下の記事を見つけました。 ブロックチェーンが崩す共通ポイントの垣根:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO14061860U7A310C1X13000/ 「支払い方法はどうしますか」「TポイントをPonta(ポンタ)に換えますので、それでお願いします」。近い将来、コンビニエンスストアのローソンのレジでこんな会話が交わされるかもしれない。 すでに共通ポイント同士をネットを通じて交換できるようにはなっている。だが、面倒な手続きが必要なうえ、実際にポイントを交換できるまで数週間かかっていた。消費者の「今すぐ換えたい」というニーズに応えられなかった。 なぜそんなにかかるのだろうか?と思い調べてみましたが、そんなに時間がかかるような例は今のところ見つかっていません。 https://www.smartwaon.com/ext/001/exchange/tpoint/#notes 例えばこちらのように T ポイントと WAON ポイントは即時交換が可能だそうです。 日経新聞のこの記事の公開日が6年前と非常に古いのを考慮すると、「ポイント同士の交換」というデータ変換を手動で行なっているようなケースを想定して書かれた文章なのではないかと思っています。   一度組織間で信頼関係を(文書など法的な手続きを経て)築いてシステムを構築したあとは、この T ポイントと WAON ポイントの例のように即時に交換することは可能になると思われますが、 問題なのは、「他のポイントとも交換できるようにしたい!」と思った時、その都度信頼関係を築くコストは莫大だということです。   (寄り道) 共通ポイント同士の交換が容易になれば、ポイントがどこでも使えるようになる。それは「ポイントが貨幣により近づくことを意味する」(野村総合研究所の冨田勝己上級コンサルタント)。 これは、長らくビットコインの意義について理解ができずにいた僕にとって、ヒントとなる記述でした。 「ブロックチェーン上で動くアプリを開発する」という本記事の趣旨からはズレるので、「ブロックチェーン上で貨幣が構築できる」という話については、機会があれば別記事でぜひ書きたいなと思っています! まとめ ブロックチェーンという技術は、以下を可能にするものだと考えます。 特別な信頼関係の構築なしにいろんな組織のデータを共通のデータベースに保存できる イーサリアムというプラットフォームは、以下を可能にするものだと考えます。 ブロックチェーンに保存されているデータを任意のロジックで連携させることができる これらをまとめると、イーサリアムによって以下の革命が起きていると考えます。 複数の組織に存在するデータを超低コストで連携させ、そのコラボレーションによって爆速で新たな価値を生み出すことができる   次回予告 今回の整理の後に疑問として残ったのが、 ブロックチェーンはもしかしたら「ログデータ」のような時系列データにしか適用できないのではないか? というものです。 例えば MySQL で管理するような一般的なリレーショナルデータの場合は、一度登録した後も(例えばユーザープロフィールの編集などの形で)変更しうるのが普通かなと思います。 普段からそういうアプリケーションを開発しているからか、「変更できないデータ」というのが、「時系列データ」以外にはどうにも直感的にイメージしにくいです。 そこで、どういった分野のアプリケーションで実際にイーサリアムが用いられているのか、具体的な事例を Vol.2 の記事で掘り下げていきたいと思います。    

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ブロックチェーンの未来を探る Future Blockchain Summit 2023まとめ

中東アフリカ地域最大のブロックチェーン関連イベントであるFuture Blockchain Summit(FBS)が、今年もドバイで開催されました。4日間にわたり開催されたFBSには、50カ国以上から150以上の団体が出展し、web3関連企業、規制当局・政府関係者など多くの人が参加しました。本記事では、今年のFBSの様子と主なポイントをご紹介します。 Future Blockchain Summitとは? イベント概要 Future Blockchain Summit (FBS)は、2018年以降毎年ドバイで開催されているブロックチェーン関連イベントで、ドバイ世界貿易センター(DWTC)が主催しています。6回目となる今回は、2023年10月15日から18日まで4日間開催されました FBSは、中東・アフリカ地域最大のテクノロジー展示会であるGITEX Globalの一部となっています。今年はGITEX Globalの開催に合わせて10のイベントが同時開催となり、会場を2箇所に分けて実施されました。第2会場であるドバイハーバーでは、本イベント(FBS)に加えて、スタートアップイベントであるExpanding North Star、フィンテックを扱うFintech Surge、マーケティングに特化したMarketing Maniaの各イベントが開催されました。 画像:第2会場の様子(左)、会場MAP(右) FBSには、仮想通貨やweb3分野で国際的に活躍する企業や、ベンチャーキャピタル、政府関係機関、研究機関、メディアなど多くの団体が参加しました。 今年のプログラム 今年のFBSのテーマは「Feeling the web3 Revolution(web3革命を体感しよう)」で、web3がもたらす社会変革に焦点が当てられました。プログラムは、会議、ワークショップ、有識者によるトレーニングなどで構成され、一部の会議やトレーニングへのアクセスは有料となっていました。4日間のプログラムで、取り上げられたトピックは、エンターテイメント(ゲーム、音楽など)、ファッション、社会インパクト(気候変動対策、ReFiなど)、暗号資産規制、投資環境、仮想通貨取引など多岐に渡りました。詳細なイベントのプログラムは、FBS公式ウェブサイトをご参照ください。 また、同じ会場で開催されたスタートアップイベント「Expanding North Star」のピッチコンテスト「Supernova Challenge Pitch」では「blockchain & web3 disruptor」という部門が設けられ、UAEに拠点をおくverofaxが部門最高賞を受賞しました。同社はブロックチェーンを活用してブランディングや小売サービスを提供する企業で、消費者が商品の購入前に製品の品質や持続可能性に関する情報にアクセスしたり、消費者の個々の志向に応じたサービスが受けられたりするソリューションが高く評価されました。 関連記事: Verofax wins GITEX Supernova Web3 & Blockchain Award 2023 登壇者 今年のFBSには合計で150人以上の有識者が世界各地から登壇者として参加しました。登壇者の多くは各企業のCレベルの経営幹部で、このイベントに対する注目度の高さを示していました。 登壇者には、DEX(分散型取引所)のアグリゲーターサービスを提供するワンインチ・ネットワーク(1inch Network)の共同設立者であるSergej Kunz氏、大手仮想通貨取引所バイナンス(Binance)のRichard Teng氏(11月22日にバイナンスの新CEOへの就任が発表)、暗号資産カストディ企業のビットゴー(BitGo)のAPAC最高責任者のHobeng Lim氏、シンガポールの暗号資産デリバティブ取引所のビットゲット(Bitget)のマネージングディレクターであるGracy Chen氏、ステーブルコイン発行企業のサークルの欧州中東アフリカ部門(Circle EMEA)の政策・戦略担当バイスプレジデントのTeana Baker氏、レイヤー1ブロックチェーン「Sui(スイ)」の開発を主導するスイ財団(Sui Foundation)のマネージングディレクターであるGreg Siourunis氏、米大手暗号資産カストディ企業のファイヤーブロックス(Fireblocks)のCEO兼共同設立者であるMichael Shaulov氏などが参加しました。また、web3企業のみならず、政府機関、規制当局、コンサルタント、大学関係者など多様な登壇者し、レディ・ガガの「ボーン・ディス・ウェイ」や「ザ・モンスター」の音楽プロデューサーを務めたFernando Garibay氏の登壇も参加者の注目を集めました。(2023年の登壇者一覧はこちら。) 画像:Future Blockchain Summmit公式サイト 今年の主な注目ポイント AI 生成AIの利用が2022年以降急速に広がった背景もあり、今年のFBSでは生成AIとブロックチェーンに関する関心の高まりがみられました。 Mind Bank AIの創業者兼CEOのEmil Jimenezのトークセッションでは、AIに自分の思考パターンや回答パターンを学習させることによって、自分のデジタルツインを作るという試みが紹介されました。Jimenez氏は、自分の分身を活用することによって仕事のみならず家庭など私生活でも新たな可能性が広がることを紹介しました。 画像:Future Blockchain Summmit公式YouTubeサイト   また、House of Novaの創業者であるNova Lorraine氏の講演では、ファッション業界におけるブロックチェーンと生成AIの活用状況について紹介されました。Lorraine氏は、ファッション業界でのAI関連市場は年平均42%成長し、2027年には37.2億ドルの規模に達するという予測を紹介し、AIが顧客の志向に応じたパーソナライゼーション、在庫最適化、デザイン生成に活用されていることを説明しました。また、ブロックチェーンの活用により、真正性の証明(ブランド品の偽造・模倣品の対策)、透明性の向上(サプライチェーンの追跡、持続可能性の対策)、生産効率性の向上(グッチでは水やエネルギー効率を改善)が取り組まれていることが説明されました。 画像:Future Blockchain Summmit公式YouTubeサイト 上記以外のトークセッションや講演でもAI利用についての話題が多く上りましたが、AIはあくまでもツールであり、人々を完全に代替するものではないこと、利用する側の人間の倫理性やデータ保護などが重要であることなどが多く指摘されていました。 web3ゲーム AIに加えて大きな注目を集めていたのが、web3ゲームです。デジタルエンターテインメントの新しいフロンティアとして近年ドバイでも大きな成長を遂げている分野です。 画像:Future Blockchain Summmit公式サイト ドバイの自由貿易特区(フリーゾーン)の一つであるドバイ・マルチ・コモディティ・センター(DMCC)では、2022年12月にゲーミングセンター(DMCC Gaming Centre)を新たに設置し、各国からのゲーム関連事業者(eスポーツ含む)の誘致に力を入れています。 FBSでは、DMCCの会長を務めるAhmed Bin Sulayem氏が基調講演を行い、L1ブロックチェーンのソラナ(Solana)がDMCCのエコシステム・パートナーに新たに加わったことを発表した他、ベンチャーアクセラレーターのブリンク(Brinc)による1.5億ドルのweb3/ゲーミングファンドの運用開始や、仮想通貨取引所のバイビット(Bybit)とDMCCが共催したハッカソン(対象分野:web3ゲームなど)を開催したことを報告しました。同氏は、DMCCが最近発表した新たな報告書『Future of Trade(ゲーム業界編)』にも言及し、web3ゲームの成長可能性が極めて大きいことを強調しました(なお、この報告書では、2027年までに中東アフリカ地域のデジタルゲームの市場規模が2021年と比較して倍増すると予測しています)。 また、FBS開催後の11月2日、ドバイ政府は、ドバイを世界のゲーム産業のトップ10都市に成長させ、ゲーム関連で新たに30,000人分の雇用を創出することを目標に「Dubai Program for Gaming 2033」を発表しています。 関連記事: Web3 Gaming Takes Center Stage in the UAE(FBS 2023 Event Insights) ドバイ政府、世界のゲーム産業集積地を目指す新プログラムを発表(JETROビジネス短信) 持続可能性 前回の記事でもご紹介した通り、FBS開催地のドバイでは11月30日からCOP28(第28回気候変動枠組条約締約国会議)が開催されることもあり、今回のFBSでは気候変動対策や持続可能性についても焦点が当てられました。 FBSの最終日には「Enterprise Blockchain & Climate Action(企業のブロックチェーン技術を活用した気候変動対策)」というテーマで複数のパネルディスカッションが開催され、ドイツ、米国、オーストラリア、オーストリア、オランダ、UAE、パキスタン、シンガポール、インド、イタリア、フランス、カナダ、英国など多様な国からの登壇者が、サプライチェーンマネジメントの効率化、カーボンクレジット取引や監査、データセキュリティ、エネルギー移行への分散型台帳技術(DLT)の活用について議論を行いました。 特に存在感を示していたのがスロベニアからの参加者です。スロベニア政府(経済観光スポーツ省)は、今年の6月にFBSとパートナーシップ協定を結んでおり、COP28のスロベニアのパビリオンで気候変動対策に関する展示プログラムを合同で実施する予定です。FBSの会場でも、スロベニア政府がブースの出展を行い、スロベニアのweb3企業(仮想通貨決済のカードの発行など金融包摂に取り組むNAKA、デジタル資産の取引プラットフォームを提供するPalmatrix、分散型ナレッジグラフのソリューションを提供するorigin tail)による取り組みを紹介していました。 FBSに登壇したスロベニア経済観光スポーツ省Nena Dokuzov氏(画像:FBS公式サイト) 関連記事: Future Blockchain Summit Sets The Stage For A Greener Future(FBS 2023 Event Insights) Future Blockchain Summit partners with Slovenian Ministry of Economy, Tourism & Sport(スロベニア政府とFBSの協力) web3業界とドバイ 最後に、web3業界で高まるドバイの存在感も特筆すべき点と言えるでしょう。ドバイは国外から積極的に投資や人材を誘致する戦略をとっていて、FBSの機会を捉えてドバイの暗号資産を取り巻く環境が整っていることを積極的に対外発信していました。DMCC会長のAhmed Bin Sulayem氏も、ドバイのリーダーシップ、規制機関(VARA)、公的機関によるサポート体制が、ドバイをweb3業界の新たな中心地としている重要な要素として挙げていました。特に、ドバイが取り組んでいる暗号資産に関わる規制枠組みの整備については、チェーンアナリシスのCaroline Malcolm氏やUAE拠点のM2のCEOを務めるStefan Kimmel氏も、今後暗号資産の利用が拡大していく上で極めて重要であると指摘していました。 FBSには世界各地の暗号資産の規制にかかわる関係者が参加し、フィンテック分野での国境を越えた連携を模索する動きも見えています。例えば、今年の9月には、ドバイの経済観光省(Department of Economy and Tourism: DET)と香港の金融サービス財務局(Financial Services and the Treasury Bureau)が、ドバイと香港間の金融分野の協力に関する覚書(MoU)を締結しています。 このMoUにより、2都市は金融政策に関する対話やフィンテック産業(暗号資産分野含む)の発展に向けた協力、能力開発、知見の共有、共同研究などを進めるとしています。 関連記事: Central Bank of the United Arab Emirates and Hong Kong Monetary Authority Strengthen Financial Cooperation(2023年5月 UAE連邦中央銀行と香港金融局が、金融分野の協力を強化について協議) How Dubai and Hong Kong are shifting crypto’s power dynamics: Opinion まとめ ドバイでは年間を通して様々な会議やイベントが開催されていますが、参加者はこのような機会をうまく捉えて世界各地の業界関係者とのネットワーキングを積極的に進めている様子を垣間見ることができました。FBSは、各参加企業の最新の取り組みを知るだけでなく、ダイナミックな議論から新たなアイディアやイノベーションを生み出す場としても機能していると言えます。2024年のFBSの受付は公式ウェブサイト(問い合わせフォーム)から可能ですので、関心をお持ちの方は是非確認してみてください。

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web3authとは?使い方やethers.js/web3.jsとの連携まで紹介

Web3authとは? 一言でいうと.. Metamaskが不要になる! ユーザーは、Metamaskのかわりにweb2.0のようにgoogleやemailを用いてログインすることも可能に。DappsのUI/UXの観点で大きな効果がある。 概要 Web3Authは、Web3ウォレットおよびアプリケーション用の認証ツール。すべてのソーシャルログイン、Webおよびモバイルネイティブプラットフォーム、ウォレットなどたくさんのキー管理方法に対応している。 ソーシャルログイン: GoogleやFacebookなど通常のログイン手法を使うことができる。また、メールを用いて場合はメールにリンクが送られてくる認証形式。 非保管公開鍵インフラ:ユーザーは、暗号鍵ペアの所有権とアクセスを制御。プロバイダーが独自にユーザーの秘密キーを取得することは不可能。 UIカスタマイズ: Web3AuthのデフォルトのUIをシンプルな方法でカスタマイズ可能。また、Webとモバイルどちらも対応 (参考: https://web3auth.io/docs/how-web3auth-works) Web SDK 1. パッケージをインストール npm install --save @web3auth/modal or yarn add @web3auth/modal ※ node 18以上が必要 2. web3auth ダッシュボードでプロジェクトを作成 1. Googleアカウントなどでアカウントを作成&ログイン 2. Create Projectを選択 3. プロジェクトの作成画面 選択するのは3つ project name 名前 英語で5文字以上 select environment テストネットの場合は、sapphire testnetを選択 select chain イーサリアムベースの場合は、EVM based Chainを選択 (作成したあとのプロジェクトダッシュボード画面) ※Client IDをコード上で使用 Web3authの使い方(基礎) Import index.tsxなどでimport import { Web3Auth } from "@web3auth/modal"; web3authのインスタンス化 // web3authをインスタンス化 const web3auth = new Web3Auth({ clientId: "先程コピーしたId", // Get your Client ID from Web3Auth Dashboard chainConfig: { chainNamespace: "eip155", chainId: "0x5", // Please use 0x5 for Goerli Testnet }, }); clientIdは、先程作成したダッシュボード上でコピーアンドペースト UIのconfigを更に設定 const web3auth = new Web3Auth({ // type uiConfig uiConfig: { appName: "W3A", // <-- Your dApp Name appLogo: "<https://web3auth.io/images/w3a-L-Favicon-1.svg>", // Your dApp Logo URL theme: "light", // "light" | "dark" | "auto" loginMethodsOrder: ["apple", "google", "twitter"], defaultLanguage: "en", // en, de, ja, ko, zh, es, fr, pt, nl loginGridCol: 3, // 2 | 3 primaryButton: "externalLogin", // "externalLogin" | "socialLogin" | "emailLogin" }, chainConfig: { chainNamespace: CHAIN_NAMESPACES.EIP155 }, clientId: "YOUR_WEB3AUTH_CLIENT_ID", web3AuthNetwork: "cyan", }); default languageをjaにすると、日本語になる 非同期処理でインスタンスを初期化 useEffectとasync awaitを使用 const checkIfWalletIsConnected = async () => { try { if (!web3auth) { console.log("web3auth not initialized yet"); return; } await web3auth.initModal(); } catch (error) {…

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web3は気候変動対策を加速できるか? ドバイで開催されるCOP28を前に高まる期待

今年の夏は観測史上最も暑い夏となりました。世界の平均気温は上昇を続けていて、地球温暖化の影響は世界各地で熱波、山火事、豪雨、洪水などの災害となって顕在化しています。気候変動対策は、待ったなしの状況です。そんな中、今年の気候変動枠組条約締約国会議(COP)がアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで11月30日から開催されます。会議を目前に控え、現地では気候変動対策へのブロックチェーン活用に向けた議論が進んでいます。本記事では、気候変動対策におけるブロックチェーン活用の可能性や、COP28に向けた取り組み状況を紹介します。   気候変動とCOP 深刻化する気候変動 今年の夏(6月〜8月)は日本の観測史上最も暑い夏となりましたが、これは日本に限ったことではありません。アメリカ航空宇宙局 (NASA)によると、今年の夏は地球全体でも史上最も暑い夏であり、1951年から1980年の6月〜8月の間の平均気温と比較して1.17度高い気温を記録しました。 画像:NASA Earth Observatoryウェブサイトより さらに、Yale Climate Connectionsの記事によると2023年9月は同月の平均気温としてこれまでで最も高く、月間気温が産業革命前のレベルよりも1.5度以上上回ったのは初めてとされています。気候変動は世界各地で熱波、旱魃、山火事、豪雨、洪水などの自然災害を引き起こし、甚大な被害をもたらしています。今年9月にNature Communicationに掲載された研究では、過去20年間の気候変動に起因する異常気象の世界的な被害額は、年間1,430億ドルと推定されています。 COPの概要と目的 COPは国連が主催する気候変動対策の会議で、正式には「国連気候変動枠組条約(UN Framework Convention on Climate Change: UNFCCC)締約国会議(Conference of the Parties: COP)」といいます。1994年に発効したUNFCCCに基づき、1995年から毎年COPが開催されています。 2015年にフランスで開催されたCOP21で採択されたパリ協定により、先進国、途上国の区別なく、あらゆる国が温室効果ガス(GHG)排出削減等の気候変動の取り組みに参加する枠組みが導入されました。パリ協定の下、世界の平均気温上昇幅を産業革命前のレベルと比較して2度より十分に下回る程度に抑え、1.5度に留めるように努めることが目標となっています。しかし、上記の通り世界の気温上昇は進行を続け、このままでは1.5度の目標達成は厳しいと指摘されています。更なる気温上昇は自然災害の発生確率を急速に拡大させることから、対策強化が急務となっています。 COP28の主な論点 4つの気候変動対策の議論の柱 今年の気候変動対策会議となるCOP28は、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで11月30日から12月12日まで開催されます。今回のCOPでは、下記の4分野が議論の柱として設定されています(詳しいプログラムは公式ウェブサイトをご参照ください)。 クリーンエネルギーへの急速な移行(Fast-track the energy transition) 再生可能エネルギーへの移行や化石燃料の段階的廃止、エネルギー効率の改善、手頃な価格で信頼性の高いエネルギーへのアクセスなど。 気候金融の変革(Fix climate finance) 影響緩和に必要な資金の調達、途上国の気候変動への適応、COP27で設立された気候変動の悪影響に伴う損失と損害の基金(Loss and Damage Fund)への拠出や運用など。 自然、人間、生活へのフォーカス(Focus on nature, people, lives, and livelihoods) 今回の会議では、COPとして初めて「健康」や「救済、回復、平和」がテーマとして取り上げられています。特に気候変動対策において、厳しい状況にある脆弱な立場にある人々の生命や暮らしへ焦点があてられます。 包摂性(Full inclusivity) すべての人々、特に若者、女性、先住民の発言権とニーズについても取り上げられます。 今回のCOP28が重要な理由 COP28では、パリ協定の下で、5年ごとに世界全体としての実施状況を検討する仕組みである「Global Stocktake(GST)」が初めて実施されます。これまでにGSTにかかる情報収集、技術評価が実施されていますが、9月に公開された技術評価の報告書は、現在の世界の排出量がパリ協定の目標の軌道を外れていると警告しています。GSTの最終プロセスであるハイレベルでの検討がCOP28で実施されますが、気候危機の緊急性を考えると、気候変動対策を推進するための強力なコミットメントが必要になっています。 参考:GSTについての詳細は、こちらのサイトをご参照ください。 気候変動対策におけるブロックチェーンの活用の意義 遅々として進まない気候変動対策。その動きを加速させる技術として注目されているのがブロックチェーンです。ブロックチェーンの活動自体の環境負荷を削減する動き(Ethereum、polygon、rippleなど)もありますが、この技術を気候変動対策全体の透明性、信頼性、効率性、アクセシビリティの向上に活用させることへの期待が大きくなっています。 ダボス会議の開催で有名な世界経済フォーラムは、2023年4月に気候変動対策とブロックチェーンに関する報告書を公開しています。(画像:世界経済フォーラムのウェブサイトより) 透明性と信頼性の強化 ブロックチェーンは取引の透明性を高めることができるため、炭素排出量や再生可能エネルギーの取引記録を公開し、検証可能にすることができます。「測定、報告、検証(MRV)」は、気候変動対策の分野で使用されるフレームワークの一つで、国や組織が自分たちの気候変動対策の取り組みを透明性と信頼性のある方法で評価・報告するための手段として導入されていますが、ブロックチェーンはMRVに下記のような形で活用が可能となっています。 データの透明性と不変性:GHGの排出量の測定データなどが正確に、そして改ざんされずに記録・保存されることが保証されます。これは GHGの測定量に限ったものではなく、電力や水の消費量、リサイクルやクリーンエネルギー利用など、様々なデータの追跡がより可能になります。 検証可能性:ブロックチェーンの公開的な性質とデータの不変性により、第三者が報告されたデータの正確性や信頼性を効率的に検証することが可能になります。これは、気候変動対策交渉において、利害関係者の信頼構築に貢献することも期待されています。 カーボンクレジット市場の拡大と資金調達 多くの企業が「ネットゼロ」の達成に向けた取り組みを進める中、注目されているのがカーボンクレジット市場です。カーボンクレジット市場は、コンプライアンス市場(CCM: Compliance Carbon Markets)とボランタリー市場(VCM: Voluntary Carbon Markets)の2つに大別され、CCMは、国・地域や国際機関が設定する排出削減義務や排出量報告制度などの規制・制度に基づいてGHGの排出権が取引される市場、VCMは企業や個人が温暖化対策で削減したGHGの量をカーボンクレジットとして認証し、それを自主的(ボランタリー)に取引する民間主導の市場になります。 ブロックチェーンは、カーボンクレジット市場全体の透明性を高めることに加えて、信頼性のあるVCMを構築するのに貢献することが期待されています。国際金融協会(IIF)のVCM拡大に関するタスクフォース(Taskforce on Scaling Voluntary Carbon Market:TSVCM)が発表した報告書によると、VCMのカーボンクレジッドに対する国際的な需要は2030年までに15倍、2050年までには100倍に拡大すると予想されています。ただし、VCMのクレジット供給量が増加する需要に追いつかなくなるのではないかという見方や、VCMのクレジットの質が必ずしも担保されていないといった懸念も指摘されています。 画像:McKinsey & Company ウェブサイトより 今年4月に発表された世界経済フォーラムの報告書では、ブロックチェーンがカーボンクレジットについての情報を透明性のある形で開示することで、信頼性を担保したVCMの拡大を促進できるとしています。情報の信頼性が向上することにより、クレジットの買い手側のリスクが抑えられ、気候変動対策への資金調達にもつながるのではないかとの期待も膨らんでいます。 取引コストの削減 カーボンクレジットの取引の効率化も重要な点です。カーボンクレジットの取引をブロックチェーン上で実施することにより、取引の仲介者が不要となり、取引コスト(費用や時間)を抑えることができます。スマートコントラクト(特定の条件が満たされたときに自動的に実行されるプログラム)を利用して、例えば炭素排出量が特定の基準を下回った場合に報酬を自動的に支払うといった取引を実行することも可能となります。ブロックチェーンの利用により、国際的なカーボンクレジットの取引や再生可能エネルギーの取引が、より迅速で効率的に行うことができるのではないかと注目されています。 気候変動対策の民主化を促進 現在のカーボンクレジット市場は政府や大企業が主な関係者となっていて、多くの市民にとっては馴染みのあるものとは言えないでしょう。気候変動対策を加速するためには、個人や小規模の組織も参加しやすい取り組みが必要となっています。 ブロックチェーン技術の利用で、市民が気候変動対策に参加し、その取り組みを公開・共有する動きが広がることも今後有望視されています。また、ブロックチェーンによる参加型の取り組みは、若い世代による気候変動対策を促進することも期待されています。 なお、ブロックチェーンと環境については、本ブログでこれまでにも取り上げているトピックです。下記記事もご参照ください。 ブロックチェーンと環境  ReFi ブロックチェーン✕環境問題 – ReFi(再生金融)とは? また、下記サイトでもブロックチェーン技術の気候変動対策への活用を包括的に取り上げています。 Climate Chain Coalition (CCC) 気候変動対策としてのブロックチェーン技術の活用事例を調査する新たなグループ。2023年10月時点で、69ヶ国から360以上の団体が加盟。 the Climate Action and Accounting Special Interest Group (CA2SIG) Hyperledger Foundationによる、パリ協定の目標達成のために世界的に開かれたクライメイト・アカウンティング・システム(open global climate accounting system)の開発を支援するグループ。 世界経済フォーラム(WEF) Crypto Impact and Sustainability Accelerator(CISA) ブロックチェーン技術を気候変動対策などの社会課題解決へ活用するためのネットワーク。ESGプロジェクトの形成、トレーニングなどを提供。 COP28に向けた取り組み事例 COP28の開幕が近づき、開催地であるドバイでは、ブロックチェーンの気候変動対策への活用についての議論が活発に行われています。ここでは、ドバイで10月中旬に開催されたFuture Blockchain Summitでも取り上げられた取り組みを紹介します。   画像:10月にドバイで開催されたFuture Blockchain Summit(著者撮影) GloCha (Global Challenges) GloChaは、地球規模の課題解決を目指す個人や団体によるネットワークで、ブロックチェーンなど先端技術を活用した取り組みを進めています。このネットワークはUNFCCC事務局に認定された非営利組織であるIAAI (International Association for the Advancement of Innovative Approaches to Global Challenges)により運営されていて、特に若者の参加に力を入れています。(より詳しい情報はこちらのサイトをご参照ください。) DigitalArt4Climate GloChaの活動で特に注目が集まるのが、気候変動対策のためのNFTを活用したイニシアチブ「DigitalArt4Climate」です。2021年に英国で開催されたCOP26以降、気候変動をテーマとしたデジタルアートのコンペティションを実施しています。COP26の入賞作品はNFTとして販売され、販売収益はアーティスト(15%)、Youth Climate Action Fund (35%)、Action for Climate Empowerment (ACE) / GloChaのインフラストラクチャー(50%)に分配されています。 ドバイで実施されるCOP28では、「楽しみながら学ぶ(エデュテインメント)」を意識した「DigitalArt4Climate Edutainment hub」が企画され、学校やユースセンターなどで若者を対象にデジタルスキルの育成支援の活動が予定されています。 これまでのDigitalArt4Climateの作品はこちらから確認できます。https://digitalart4climate.space/#rec374020001 What is DigitalArt4Climate United Citizens Organization (UCO) GloChaは、気候変動対策に向けたエンパワメントのための市民連合(United Citizens Organization: UCO)というDAOの組成にも取り組んでいます。UCOは、2021年に英国グラスゴーで開催されたCOP26にてその構想が発表されたもので、公共部門と民間部門の連携の下で、世界中の特に若い環境活動家がより公平で効率的な形で資金調達をすることにより、彼らの気候変動対策のアイディアを実現することを目指しています。 このDAOには環境活動家や彼らを応援する人々が参加し、上述のDigitalArt4ClimateのNFTを購入した人や、他の活動を通じて気候変動対策に資金提供をした人が、このDAOへの参加資格を得ることができます。 報道記事(コインテレグラフ) https://cointelegraph.com/news/united-citizens-organization-launches-as-a-blockchain-initiative-at-cop26 Hack for Earth Hack for Earthは、SDGの達成のためのハッカソンです。Hack for Swedenを前身としていて、Hack for Earthに拡大後は、ドバイEXPOとエジプトのCOP27でグローバルハッカソンを開催しています。前回COP27のハッカソンでは、125ケ国から1,000人を超える若者が参加し、選抜された7チームがHack for Earthのアクセラレーションプログラムに参加しています。 Hack for Earthで扱う技術は必ずしもブロックチェーンに限ったものではありませんが、ブロックチェーンを活用した新たな気候変動対策のアイディアが出てくることも期待されています。COP28は3回目のグローバル・ハッカソンとなり、以下の8つのテーマで参加者を募集しています。 画像:Hack for Earthウェブサイトより The Green Block 最後に、COP28の開催地であるドバイでの取り組みを紹介します。ドバイを拠点とするCrypto Oasis Ventures と、国際的なコンサルティングファームのローランド・ベルガーが、2023年6月20日に新たなイニチアチブとして「the…

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L2構築キットのOP StackとOP Stackベースのチェーンを包括したSuperchain構想の解説

Optimismは、Optimisticロールアップを手軽に開発できるOP-Stackを開発しており、CoinbaseやWorldCoinの参入により注目を集めています。同時に、OP Stackを使って開発されたOPチェーンをつなぐSuperchain構想も掲げています。本記事ではOp-StackとSuperchain構想について解説します。
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