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blockchain-2020

2016年から続いている「ニュースで振り返るブロックチェーン」シリーズは、今年ではやくも5年目となりました。2020年はブロックチェーンにとってどのような1年になったのでしょうか。2020年の年初から大きな影響をおよぼしている新型コロナウィルス、物流・金融業界の動向、半減期を迎えたビットコイン、ガイアックスのブロックチェーンに関するプロジェクトの進展の4項目で振り返ります。

 

新型コロナウィルス(COVID-19)

新型コロナウィルスの影響が深刻化した2020年3月、WHO、新型コロナウィルスに関する検証済のデータを提供するHyperledger FabricベースのプラットフォームMiPasaの開発が報じられました。さまざまな情報が錯綜する中、信頼性が高く改竄不可能なデータを提供することは喫緊の課題で、IBMの呼びかけのもと迅速にコンソーシアムが形成されました。

IBM、オラクル、WHOなどが新型コロナ対策で連携──ブロックチェーンベースのデータハブ構築 | CoinDesk Japan

画像: MiPasaウェブサイトより

新型コロナウィルスの封じ込めにいち早く成功した中国では、多方面で積極的にブロックチェーンが活用されました。感染拡大防止のための情報収集・提供のほか、支援物資・義援金のトレーサビリティーの確保、新型コロナウィルスの発生源が食品の卸売市場とされたことから、食の安全確保という観点でもブロックチェーン導入の議論が進みました。また、コロナ禍のオンラインで教育をせざるをえない、教育を受けざるをえないという状況は、教育分野でのブロックチェーンの検討も後押ししました。

日本ではコロナ禍で、スポーツ業界に特化したブロックチェーンベースのギフティングサービスEngateが伸びをみせました。Engateは2018年にスタートしたサービスで、ユーザーはエンゲートのポイントを購入して、プロ野球やJリーグのチームを含む60以上のチームやアスリートに声援としてポイントを贈れます。取引履歴はNEMブロックチェーンに記録されます。スタジアムにファンが集い、チームや選手を応援できない中、チームや選手、ファンとの間に新しいコミュニケーションの形が生まれつつあるといえそうです。

画像: Engateウェブサイトより

ブロックチェーンの利用で解決の糸口が見え始めた課題がある一方で、コロナ禍で浮き彫りになった課題の中には、これから解決が期待されるものもあります。その一つが新型コロナウィルスの影響を受けた個人への現金給付です。成人の銀行口座保有率が100%に近い日本でも給付までの手続きには混乱が伴いました。銀行口座を持たない人が一定数いる国では給付はより困難を極めます。これは先進国アメリカでも浮き彫りになった問題です。スマートフォンとウォレットさえあれば送受金できる仮想通貨にならって、今後各国や地域野中央銀行のデジタル通貨CBDCが実現に向かう中で、誰もが確実に支援を受けられるようになることが期待されます。

ブロックチェーンで「ポストコロナ」の社会問題をどう解決するか──国際オンライン会議BG2C開催 | CoinDesk Japan

 

物流・金融業界の動向

物流とブロックチェーン

物流業界でブロックチェーンが活用されつつあることは、2019年10月に本ブログの記事「ブロックチェーンと物流」で説明しました。運輸業だけでなく、小売業などでもサプライチェーンを効率化するためにブロックチェーンを導入する企業が出てきています。この流れは2020年も続き、国内ではインテリア大手のニトリが、ブロックチェーン企業LayerXと共同で自社の物流業務を刷新することを発表しました。業務の効率化では、コスト削減だけでなく、最適化によってドライバーや配送業者のストレス軽減にも取り組む計画です。

ニトリ、自社物流システムにブロックチェーン活用 〜未来の物流をどう実現させるか=Legacy Tech Conference 2020 – 仮想通貨 Watch

また、サプライチェーンにおいて、ブロックチェーンは透明性の確保にも利用されます。特に食品業界では以前から、ウォルマートやスターバックスをはじめ、食の安全やフェアトレードといった観点からトレーサビリティーの透明性を担保するためにブロックチェーンを導入する動きがありました。ファッション業界でも、ブランド品の証明や偽造防止、ファストファッションでの製品追跡にブロックチェーンの利用が検討されてきました。

2020年には環境先進国ドイツならではのプロジェクトが発表されました。IBMとドイツの繊維メーカーKAYA&KATO、ドイツ連邦経済協力開発省が共同で、原材料から最終製品まで、労働も含めて透明性を確保するためにブロックチェーンを利用するというものです。

持続可能なファッションをブロックチェーンで実現、IBMがドイツの繊維メーカーと提携 | Cointelegraph | コインテレグラフ ジャパン

世界の若い世代は、私たちが考えている以上に環境への負荷、他国での労働状況を気にかけているのかもしれません。これから大きな購買層となる若い世代の情報ニーズを満たし、企業として効率的かつ持続可能なビジネスを続けていくためにも、ブロックチェーンの導入が進み、透明性が商品やサービスの付加価値となっていくことでしょう。

金融とブロックチェーン

2020年の金融分野でのブロックチェーンに関するニュースとして、DeFi(分散型金融、ディ・ファイ)の台頭は外せません。

ステーブルコインDAIを発行できるMakerDAOをはじめとするDeFiの基盤は2018年、2019年といった仮想通貨市場が静かだった時期に開発が進められてきました。2020年6月、レンディングプロトコルのCompoundのガバナンストークンCOMPが貸し手と借り手に配布されることとなり、DeFiが大きく注目され、これに続く形でさまざまなサービスが使われるようになっていきました。

既存の銀行を破壊する? 最近話題のDeFiとは – ITmedia ビジネスオンライン

2020年夏に注目を集めたのは主にEthereum上のDeFiサービスで、高額のガス代を支払って、本番のネットワークで一般のユーザーがサービスを試してみるのは容易ではありませんでしたが、Ethereum以外のブロックチェーンを使ったDeFiサービスが登場し、手数料やウォレットを使った煩雑な操作が改善されつつあります。一例としてBinance版Uniswapともいえる分散型取引所BSwapがあります。

DeFi取引に本腰、バイナンスが自動マーケットメーカー「BSwap」をローンチ – CoinPost

分散型ではありませんが、レンディングサービスには国内外の取引所も取り組んでいて、新たにレンディングサービスを始める取引所も出てきました。

DeFiは玉石混交で、規制が追いついていないリスクが高い分野ではありますが、DeFiやDeFiが生み出すコンセプトは今後広がりを見せ、既存の金融サービスのあり方を変えるきっかけになるでしょう。

DeFiが注目を集める一方、中央集権的な主体のあるCeFi(Centralized Finance)では、各国や地域野中央銀行が発行するデジタル通貨CBDCで進展がありました。特に電子決済が広く使われている中国では、デジタル人民元について大規模な実験が行われる段階に入りました。カンボジアでは、日本のソラミツのブロックチェーンHyperledger Irohaを使ったデジタル通貨バコンが本番稼働しました。

CBDCに加えて、2021年に大きな話題となると予想されるのがFacebookのステーブルコイン Diem(ディエム)です。Facebookが主導するステーブルコインの構想は当初Libraと呼ばれ、単一のステーブルコインの発行を目指していましたが、その後、各国通貨にペグされたステーブルコインを発行する方式に方針転換し、2021年に発行が始まるといわれています。Facebookの世界の月間アクティブユーザーは20億人を超え、アメリカの人口はもちろん、世界最大の中国の人口も超える規模で、Diemが限定的にでもリリースされればその影響力は大きいものになるでしょう。

Facebook主導の仮想通貨「Libra」、「Diem」に改称 – CNET Japan

ステーブルコインについては、FacebookのDiemが発行間近となり、すでにさまざまなステーブルコインが仮想通貨の取引やDeFiサービスで多用される中、アメリカでステーブルコインを規制する法案STABLE Actが提出されました。分散型で運営されているステーブルコインDAIを発行するMakerDAOのようなDAO(自立分散型組織)も規制の対象となる可能性があり、今後この法案が可決されるか注目されます。STABLE Actについてはビットコイナー反省会の動画で詳しくかつわかりやすく解説されています。

 

半減期を迎えたビットコイン – 企業のインフレヘッジ買、最高値達成

2020年のはじめには上昇基調にあったビットコインですが、新型コロナウィルスの影響が深刻化する中、ビットコインは3月半ばにそれまでの8000ドルから9000ドルの水準から5000ドルを切るまで暴落し、3回目の半減期を迎えた2020年5月までには暴落前の水準まで値を戻しました。新型コロナウィルスの影響が広がり、世界が非常事態にある中で迎えた半減期でしたが、混乱なくビットコインのネットワークは稼働し続けています。

ビットコイン、3度目の半減期を迎える | CoinDesk Japan
3回目の半減期を迎える仮想通貨ビットコイン | Blockchain Biz

ニュースで振り返るブロックチェーンの2019年」では「機関投資家が市場に参入する準備が整えられていきました」とお伝えしました。このような環境と、コロナ禍での財政出動でインフレ懸念が高まったこともあり、2020年は企業におけるビットコイン購入元年となりました。アメリカのソフトウェア企業MicroStrategyは、マイケル・セイラーCEO自身多額のビットコインを保有し、企業としては450億円相当のビットコインを購入したことが報道され、注目を集めました。MicroStrategyは転換社債を発行し、新たにビットコインの購入に備えています。企業の資産を目減りさせないための施策として注目を集める一方、シティバンクはMicroStrategyがビットコインに入れ込み過ぎているとして、同社の株式を格下げしました。

MicroStrategyだけでなく、すでにCash Appでビットコインを販売し売り上げを大きく伸ばしているSquareは2020年10月に50億円を超えるビットコインを資産として購入しました。余談になりますが、SquareとともにTwitterのCEOでもあるジャックドーシー氏はビットコインの熱烈な支持者で、TwitterとSquareは共同でソーシャルメディアの分散化の基準策定に関する取り組みを進めています。MicroStrategyやSquareのほかには、仮想通貨に関するファンドを主に機関投資家を対象に提供するグレイスケール・インベストメントが巨額のビットコインを購入していることも話題になりました。

現在ビットコインに対する投資を内部で検討している企業が今後ビットコインの購入を発表し、それに続く形で、ビットコインの購入を検討し始める企業も出てくることでしょう。本記事執筆中の2020年12月16日にビットコイン価格は20,000ドルの壁を破り、翌17日には円建ての史上最高値を更新しました。

企業の投資環境だけでなく、個人がビットコインをはじめとする仮想通貨に投資する新しい環境も整いつつあります。前出のSquareのCash Appでは以前からビットコインを購入できました。コロナ禍のアメリカでは、株・仮想通貨取引アプリRobinhoodの利用が広まりました。10月に入りPayPalがアメリカのユーザーを対象にビットコインをはじめとする仮想通貨を売買・保管できるようにすると発表。2021年には決済にも仮想通貨を利用できるようにする計画とのことです。

ガイアックスのブロックチェーンの2020年

ガイアックスでは2020年もブロックチェーンに関する活動に力を入れてきました。

2020年3月、ガイアックスが設立に参画した日本ブロックチェーン協会(以下JBA)は、新経済連とともに、IT担当大臣と経済産業大臣宛に「『ブロックチェーン国家戦略に向けた提言(事例分析編)』~レガシーシステムの限界とブロックチェーンによる課題解決~」を提出し、ブロックチェーンがデジタルトランスフォーメーションの鍵となることを示しました。

新経済連盟、「ブロックチェーン国家戦略」を国に提言 – ITmedia NEWS

同月にはこれからビジネスやサービス・プロダクトにブロックチェーンを使いたい、または使い始めたといった若手のためのコミュニティー「Blockchain Biz Community」を設立しました。日常的なアイディアの交換に加え、オンラインミートアップ、定期的なブロックチェーン基礎講座、ハンズオンなどを開催しています。

Blockchain Biz Community 入会案内 | ブロックチェーンの情報ならBlockchain Biz【Gaiax】

Blockchain Biz Community 入会案内

2020年6月、ガイアックスのブロックチェーン担当マネージャーである峯が一般社団法人 日本ブロックチェーン協会(JBA)のアドバイザーに就任しました。JBAの「ブロックチェーンを国家戦略に」という目標に貢献しながら、次世代を担うような人物やプロジェクトを生み出していきたいと考えています。

開発部兼スタートアップスタジオの峯 荒夢が日本ブロックチェーン協会(JBA)のアドバイザーに就任|ガイアックスのプレスリリース

次世代育成という点では、2020年8月にガイアックスはJBAと「Blockchain Bootcamp」を開催しました。Blockchain Bootcampは、知識ゼロからブロックチェーンを学び、企業に興味がある学生がアイディアを事業化するオンラインワークショップです。

【終了しました】若手向けイベント「Blockchain Bootcamp 2020 Summer」を日本ブロックチェーン協会と共催します

2020年11月には、総務省がICT技術課題への挑戦者を発掘する「異能vation」プログラムで、ガイアックスが異能vationネットワーク拠点に選ばれ、Blockchain Biz Communityからは金澤公彦氏が「電子書籍のレビューによる書店向け収益化サービス」という提案で破壊的な挑戦部門のゼロワンチャレンジの挑戦者に選ばれました。

総務省主催「異能vation」にてガイアックスが「異能vationネットワーク拠点」に選出されました!|ガイアックスのプレスリリース


画像: イベント「OPEN 異能 (inno)vation 2020」にて

 

おわりに

5年目となった「ニュースで振り返るブロックチェーン」シリーズですが、過去の記事を含めて5年間を振り返ってみると、ブロックチェーンやブロックチェーンを使ったサービスが着実に広がりをみせていることがわかります。

2020年は、新型コロナウィルスが私たちの暮らしや経済・社会に甚大な影響をおよぼした試練の一年になりましたが、新型コロナウィルス対策、ビットコインを利用したインフレヘッジなど、ブロックチェーンがその可能性をうかがわせた一年でもありました。DeFiの台頭やステーブルコインの活用は、今後金融が大きく変わる前兆といえるでしょう。

ガイアックスとしては、JBAとも協力し、またBlockchain Biz Communityで、ブロックチェーンの可能性を多くの人に伝え、活用を促す活動に取り組み、成果をあげることができました。

来年も引き続きブロックチェーンの最新情報お伝えながら、ブロックチェーン業界へ貢献できるよう活動していきますので、どうぞご期待ください。

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

ガイアックスコロナニュースビットコインブロックチェーン半減期物流異能vation

ブロックチェーンを学び、新しいことをサービスを作りたい人が集まるコミュニティーを運営しています。
・これから実現したいサービスやプロダクトにブロックチェーンを使いたい
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