Raribleとは
Rarible Inc.はアメリカのデラウェア州に拠点を置く2020年創業のスタートアップで、NFTマーケットプレイスRaribleを運営しています。企業情報のデータベースCrunchBaseによると、RaribleはこれまでにCoinbase Venturesを含む投資家から180万ドル(2億円弱)の資金を調達しました。
Rarible – Create, sell or collect digital items secured with #blockchain
本記事に先立って取り上げたOpenSea同様、RaribleでもEthereumのNFTのための標準であるERC721とERC1155に準拠したNFTを出品、購入、作成できます。RaribleはOpenSeaと比べて、新しいサービスですが、本記事執筆時点の過去30日の取引額はOpenSeaにおよばないものの、ユーザー数はOpenSeaを上回っています。
※ OpenSeaについては「NFTマーケットプレイスの老舗OpenSea」、EthereumのNFTのための標準については「ERC721とは?代替不可能で唯一無二なトークンを作る標準」「ERC1155 – 1つのコントラクトで複数のトークンを扱える標準」を参考にしてください。
画像: Ethereum上の分散型アプリケーションの過去30日のユーザー数ランキング
RaribleとOpenSeaの大きな違いの一つとして、Raribleは “community-owned”(サービスがコミュニティーのものであること)を強調していて、すべての意思決定がユーザーによって行われるDAO(分散型自律組織)を目指しています。
RaribleのDAOへの移行に向けた取り組みはすでに始まっていて、2020年7月にはRaribleでNFT買い手と売り手へのRaribleの独自トークンRARIの配布が始まり、ユーザーはRARIの保有量に応じてRaribleのガバナンスに参加できるようになるといいます。
Introducing $RARI — the first governance token in the NFT space | by Rarible | Medium
続いてRaribleを使ってどのようなことができるのか見てみましょう。
Raribleでできること
ウォレットを持っていない人でも、RaribleでどのようなNFTが取引されているのか見て楽しめます。Raribleのトップページにはユーザーごとの販売額ランキングや入札が入っている作品のリストがあるので、これらを起点に作品を見始めると、どのようなアーティストや作品が注目を集めているか知る手がかりになりそうです。
画像: Raribleトップページの販売額ランキングと入札ランキング
Raribleが対応しているMetamaskやFormatic、WalletConnect、Coinbase Wallet、MyEtherWallet、Torusといったウォレットを接続すると、RaribleでNFTを取引したり作成したりできるようになります。
NFTの購入にあたっては、ETHをERC20化したWETH(Wrapped ETH)やDAI、RARIなどさまざまなトークンで支払いができます。ただし、実際にETHをウォレットに入れて購入を試みると、 ETHからWETHへの交換でガス代が0.004594ETH($9.89、1000円強)かかってしまいます。Ethereumネットワークのガス代が高騰する昨今、少額の入札や安価なNFTの購入では、ガス代が支払総額を上回ってしまうこともありえます(※ ガス代は2021年4月本記事執筆時点のものです)。
画像: NFT入札の様子。ガス代が入札額を上回っている。
NFTの作成・出品にはさらにガス代がかかります。2021年2月には、入札の受け付けに数千ドルのガス代がかかったとツイートしているNFTアーティストも。その後ガス代は落ち着いて200ドルになったといいますが、それでも容易に支払える金額ではありません。売れるかわからないNFTの作成に多額のお金をかけられるクリエイターは多くないでしょう。
画像: NFTアーティストOlive Allenさんのツイート
NFTアートが高額で購入され話題になり、日本はゲームやアニメ、同人誌といった分野のコンテンツに強みがあることからNFTに参入しようと検討している人もいるかもしれません。ただし、ガス代が高騰すると、単純に「NFTを作って販売する」といっても一筋縄ではいかないのが実情です。
Raribleの独自トークンRARI
Raribleでは独自トークンのRARIをユーザーに配布しています。他のNFTマーケットプレイスでは見られない取り組みで、将来的にRaribleがDAOに移行するにあたって、RARIはガバナンストークンとして機能します。
RARI導入時のRaribleのブログ記事「Introducing $RARI — the first governance token in the NFT space」によると、RARIの保有者はシステムのアップグレードの提案と投票、クリエイターのモデレート、注目の作品のキュレーションなどに関われるといいます。
RARIの配布は、Raribleがサービスを開始した半年後の2020年7月に始まりました。2500万RARIが発行され、そのうち30%が開発チームと投資家に、10%が初期のエアドロップで一般のユーザーに配布されました。残りの60%は、200週かけてRaribleでNFTを売ったまたは買ったユーザーに毎週配布されます。RARIをRarible上で買うことはできず、分散型取引所や一部の海外取引所で取引されています。仮想通貨の情報を扱うCoinMarketCapのRARIのページを見ると、NFTが注目を集めるのと時を同じくしてRARIの価格も高騰しました。
画像: RARIの価格推移(CoinMarketCapより)
Raribleのビジネスモデル
RaribleはユーザーがNFTを販売、入札、購入する際に2.5%の手数料を課しています。これがRaribleの収益源になります。DappRadarによると、Raribleの過去30日の取引高は40.64Mドル(約44億円)で、その2.5%は約1.1億円です。
また、独自トークンの発行は、RaribleのDAO化に向けたものではありますが、Raribleを経済的に支えていると考えられます。開発チームと投資家に割り当てられたRARIは750万RARIで、発行当初1ドル未満だったRARIは最高値で40ドル近くまで上昇しました。本記事執筆時点ではRARIは22ドルほどです。750万RARIのうち開発チームにどの程度、どのように割り当てられたのかはわかりませんが、単純に半分の325万RARIが割り当てられたとして、その価値は7150万ドル(約78億円)です。
Raribleの今後
Raribleは2020年に登場し、今や老舗のOpenSeaに肩を並べようとしています。競合は少なくなく、Foundation、SuperRare、Mintable、Nifty GatewayなどさまざまなNFTマーケットプレイスが存在しています。合わせてガス代の高騰を懸念してEthereum以外のブロックチェーンでNFTが発行・取引される動きもあります。
Raribleが今後競争を生き抜いていくには、盛んにNFTが取引・生成されるようにマーケットプレイスとコミュニティーを盛り上げていけるかが鍵になります。これによって手数料を継続的に得られるだけでなく、運営が保有しているRARIの価値も上がることでしょう。
Raribleは明確なロードマップを提示していませんが、クリエイターや購入者といったRaribleのユーザー自身がサービスの改善に貢献できる可能性のあるDAOへの移行に注目したいところです。ただし、ガス代の高騰が続けば、多くのNFTクリエイターや購入者の参入を阻むことになり、一部のユーザーだけがRARIを保有することになりかねません。この課題が今後どのように解消されるのか、Raribleの対応と、ガス代についてはEthereum本体の改善も期待されます。
今後コミュニティーがRaribleを盛り上げ、DAOになっていくのか、また、NFTマーケットプレイスとしては取引額でもOpenSeaを追い越す日が来るのか目が離せません。