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本ブログでは、これまでにNFTマーケットプレイスとしてOpenSeaRaribleを紹介しました。OpenSeaやRaribleでは誰でもNFTを発行できるのに対して、Nifty GatewayではトップクリエイターやセレブリティーとパートナーシップのもとNFTが発行され、Nifty GatewayはNFTプロデューサーとしての役割も担っています。また、クレジットカードを使って法定通貨でNFTを購入できるようにするなど、より多くのユーザーの取り込みにも積極的です。本記事ではNFTアートのファン層を広げる可能性のあるNifty Gatewayの取り組みを紹介します。

 

Nifty Gatewayとは

Nifty Gatewayは、2017年末から2018年年初の仮想通貨ブームが去ったあとの、いわば仮想通貨の冬の時代の2018年にDuncan Cock Foster氏とGriffin Cock Foster氏によって創業されました。Nifty Gatewayの拠点はサンフランシスコにあります。

Nifty Gatewayは創業の翌年の2019年11月、Winklevoss兄弟ひきいるデジタル通貨交換業者でカストディアンでもあるGeminiに買収され、Geminiの子会社になりました。

Gemini Expands into Non-Fungible Tokens (NFTs) with Nifty Gateway™ Acquisition | Gemini

Winklevoss兄弟とは、双子のCameron Winklevoss氏とTyler Winklevoss氏のことで、 Facebookのアイディアをめぐって訴訟を起こし、その賠償金で初期にBitcoinを購入、仮想通貨業界に参入し、Geminiを共同創業しました。仮想通貨の低迷期にNFTに注目してNifty Gatewayの買収を実行したGeminiには先見の明があったといえるでしょう。

Nifty Gatewayはトップクリエイターやセレブリティーとのパートナーシップの発行する作品を取り扱ってい、NFTのマーケットプレイスとしてだけでなく、プロデューサーとしての役割も果たしています。また、Nifty Gatewayは「10億人がNFTを集める世界を目指す」としているように、ウォレット不要のクレジットカード決済など一般のユーザーにも使いやすいサービスを提供しようとしています。

2021年4月には、Nifty Gatewayでは有名人によるNFTの発表が続き、Paris Hilton、Eminem、Mick JagerによるNFTはいずれも完売し、数十万円から数百万円、Paris HiltonのICONIC CRYPTO QUEENは1億円の値段をつけて落札されました。


画像: Nifty Gatewayで販売されたParis HiltonのNFT

 

Nifty Gatewayでできること

Nifty GatewayでクリエイターとしてNFTを発行するには申請が必要です。一般のユーザーとしてできるのは、EthereumブロックチェーンのERC標準に基づくNFTの閲覧と売買です。

Nifty GatewayでNFTを取引するにはNifty Gatewayのアカウントが必要です。Open SeaやRaribleといったNFTマーケットプレイスでは、MetaMaskなどの仮想通貨ウォレットを使って、Ethereumアドレスに紐づくアカウントを作りますが、Nifty Gatewayではウォレットは必要なく、通常のウェブアプリケーションのようにIDとパスワードを決めてアカウントを作ります。

画像: Nifty Gatewayのサインアップ画面。仮想通貨ウォレットは不要。

Nifty Gatewayでは、定期的にクリエイターから限定版のNFTが発表され、希望者は期間限定で購入できます。この仕組みは「ドロップ」と呼ばれ、どのアーティストの作品がいつ売り出されるのかNifty Gatewayのウェブサイトでスケジュールが公開されています。


画像: ドロップのスケジュール(Nifty Gatewayウェブサイトより)

NFTというと「高価で手が出ない」というイメージを持っている人もいるかもしれませんが、2021年4月30日から5月2日に開催された、Beepleの春夏コレクションのドロップでは1ドルで参加できる抽選企画もありました。Beepleは「Everydays – The First 5000 Days」というタイトルのNFTが70億円を超える金額で落札された有名なクリエイターです。

画像: 1ドルで参加できる抽選企画
(Nifty Gateway上のBeeple春夏コレクションより)

NFT自体の価格は安価だとしても、高価なガス代がかかると元も子もありません。Nifty Gatewayは、サービスがユーザーの資産を預かるカストディアルサービスで、Nifty Gatewayのウォレットで全ユーザーのNFTを管理しています。このためサービス内でのNFTの権利移転(売買)はオンチェーンで行われず、ガス代がかかりません。

Nifty Gatewayで発行されたNFTの多くはドロップの期間中に完売し、たとえ完売しなかったとしても、ドロップの期間が終了するとクリエイターからNFTを購入することはできなくなります。ドロップの期間終了後は、マーケットプレイスでNFTを出品している他のユーザーからのみNFTを購入できます。

2019年3月にはOpenSeaなど他のマーケットプレイスのNFTを、クレジットカードを使って法定通貨で購入できる画期的な機能が発表されましたが、当該機能は現在提供されていません。Geminiによる買収前の発表なので、買収による方針変更があったのかもしれません。

Announcing OpenSea buying on Nifty Gateway | by Duncan Cock Foster | Nifty Gateway | Medium

Nifty Gateway上にあるNFTはERC標準に基づくNFTで、自分のウォレットに移すこともできますが、ブロックチェーンや仮想通貨に詳しくない人の多くはNifty Gateway上でNFTを管理すると考えられます。Nifty GatewayにNFTの管理を任せるカストディアルなサービスをどうとらえるかは好みの分かれるところですが、Nifty Gatewayは利便性でより多くのユーザーを取り込み、NFTの裾野を広げる可能性があります。

 

Nifty Gatewayのビジネスモデル

Nifty Gatewayのクリエイター向けにサービスを説明したページよると、マーケットプレイスでの二次流通時に手数料として売り上げの5%に加え30セントを徴収し、カード決済とプラットフォームの運営費用に当てているといいます。

Nifty Gatewayでの支払いは、クレジットカードによる法定通貨払いか、アカウントに充当したEthereumでの支払いで、オンチェーンでの支払いではないため、売り上げの規模は単純に推測できませんが、手数料モデルを採用している以上、他のNFTマーケットプレイス同様、マーケットプレイスを盛り上げ、ユーザー層を拡大し、収益を上げていくことでビジネスを継続していくことになります。

 

Nifty Gatewayの今後

Nifty Gatewayは、有名クリエイターやセレブリティーの作品を売り出し、NFTと自社のマーケットプレイスに注目を集めています。同時に一般のユーザーも少額で参加しやすい抽選企画を用意したり、ブロックチェーンや仮想通貨を意識しないインターフェイスを用意し、多くの人がNFTを手に取りやすい環境の整備にも努めています。

一方で、一般のユーザーにもわかりやすい形でNFTの裾野を広げるには、トレードオフがあることも知っておかなければなりません。Nifty Gatewayはカストディアルサービスであるため、ユーザーは、通常のウェブアプリケーションのようにIDとパスワードでログインします。このため、Nifty Gatewayがハッキングされると、NFTが盗まれたり、不正にクレジットカードが使用されたりしてしまいます。ユーザーは使い慣れたウェブアプリケーションの利便性を得る代わりに、中央集権的なNifty Gatewayを信頼しなければいけないのです。

実際、2021年3月にNifty Gateで、複数のアカウントに対してハッキング事件が起こりました。この事件について書かれたCoinDeskの記事のタイトルにある「Not Your Keys, Not Your Art」の通りで、自分で鍵管理を行わない限り、作品は本当に自分のものではないのです。被害を受けたユーザーの中には15万ドル相当のNFTが盗まれた人もいたようです。

Lessons From the Nifty Gateway NFT Heist: Not Your Keys, Not Your Art – CoinDesk

前掲のCoinDeskの記事では、中央集権化されたマーケットプレイスの課題、セキュリティ、どのようにNFTの盗難などの犯罪を防止するかといった点についても考察が述べられています。

Nifty Gatewayの使いやすさは多くの人にとって魅力的で、NFT分野、ひいては仮想通貨やブロックチェーン分野をも盛り上げる可能性も秘めています。Nifty Gatewayがサービスの使いやすさを保ったまま、どのようにセキュリティやユーザーの啓蒙といった課題に取り組んでいくのか、今後の動向に注目したいところです。

 

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

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