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Ethereumの外にNFTが広がる背景

NFTの先駆けといえば、2017年にリリースされたCrypto KittiesやCrypto Punksが有名です。2018年にはNFTのための標準ERC721、ERC1155が提案、策定されましたが、2018年から2020年前半にかけては仮想通貨の低迷期で、NFTは大きな盛り上がりを見せることはありませんでした。

2020年の後半に仮想通貨が活況になると、NFT市場にも余剰資金が流れ込みました。2021年に入ると億単位で取引されるNFTが話題となり、NFTバブルではないかとささやかれるようになりました。2021年5月半ばに仮想通貨価格が暴落すると、NFTの熱狂も冷めたかに見えましたが、8月に入り再びNFTは今までにない盛り上がりを見せ、老舗NFTマーケットプレイスOpenSeaでは8月1ヶ月で過去最大の20億ドル近い(約2200億円)売り上げを記録しました。

NFT sales surge as speculators pile in, sceptics see bubble | Reuters

古くはNFTといえばEthereumでしたが、NFTの発行や取引のためのスマートコントラクトの実行にかかるガス代(手数料)は数千円ときに数万円にのぼり、Ethereum上のNFTは気軽に手を出せるものではなくなってしまいました。

このような中、Ethereumよりも手数料を抑えて高速に処理ができるブロックチェーンでのNFTの発行や取引が盛んになったり、Lootのような新しいタイプのコミュニティ色の強いNFTが登場したりするなど、新しい展開もありました。また、おぼろげながらどのようなNFTが盛り上がるのかといった知見も出てきています。

本記事執筆中の2021年9月時点ではNFTに対する熱狂はややおさまっていますが、多額の手数料を払わないで済むのなら自分でNFTを作ってみたい、NFTを取引してみたいと考えている人もいるのではないでしょうか。本記事では、手数料の安さで知られるBinance Smart Chain、Polygon、Solana、その他のブロックチェーンでのNFTの動向を紹介します。

 

Binance Smart Chain (BSC)

Ethereumのガス代が高騰する中、広く多くの人にDeFiの門戸を開いたのがBinance Smart Chain(以下BSC)とBSC上のアプリケーションです。BSCはEthereumをフォークして作られたブロックチェーンで、  現行のEthereumのPoWの代わりに、21のバリデータが交代ブロックを生成するPoSAという仕組みで合意形成を行い、トランザクションを高速かつ安価に処理しています。

バイナンススマートチェーン VS Ethereum:これらの違いとは? | Binance Academy

BSCではEthereum上のDeFiプロジェクトを模倣したプロジェクトがリリースされたことから物議を醸すこともありましたが、実際、BSCを使ってみると、手数料の安さと大手仮想通貨取引のBinanceとつながった使い勝手のよさを快適と感じる人は少なくないはずです。

DeFiでは一定の成功を収めたBSCですが、後述するPolygonとSolanaと比べ、NFTでは盛り上がりを見せていないようです。Binance Academyの「独自のNFTを作成する方法」という記事で紹介されているFEATUREDやBakerySwapのNFTマーケットプレイスにリストされているNFTを見てみると、クリエイターと所有者のアドレスが同じものが少なくありません。

画像: BinanceによるNFTマーケットプレイスFEATURED

また、BSCでNFTが高額落札されたといったニュースもこれまでのところ見かけません。ただし、NFTでBSCを活用しようというプロジェクトの発表もあるため、今後BSCがNFT分野で他のブロックチェーンに対して挽回する可能性もあります。

BSCでNFTを発行してみたいという人は、前出のBinance Academyの「独自のNFTを作成する方法」に解説があります。2021年9月本記事執筆時点でNFTを発行しようとすると手数料は最大0.001695BNB(0.61ドル相当)と表示されたので気負わずに挑戦できそうです。

 

Polygon

BSCに続いて主にDeFiで2021年春に利用が広がったのがEthereumの互換チェーンのPolygonです。ブリッジやPolygonに対応した取引所などを経由して、Polygon上に資金を移すには手間と手数料がかかりますし、慣れるまで操作に緊張しますが、一度資金を移してしまえばPolygon上では数銭、数十銭の手数料で比較的高速にトランザクションが通って快適です。
※ Polygonについて詳しくは本ブログの記事「Polygon(旧Matic)-Ethereum互換の高速で手軽なブロックチェーン」を参考にしてください。

OpenSeaがPolygonのNFTを扱っているので、どのようなPolygonのNFTがあるのか覗いてみるとよいでしょう。OpenSeaでPolygonチェーンを指定すると、ウェブサイトをカードにするMarbleCards、EthereumとPolygonで競馬ゲームを提供するZED RUNの競走馬、サメをモチーフにしたCrypto SharksなどのNFTが表示されます。ソート条件として「Recently Sold」を指定してみると、PolygonのNFTは数円から高くても数千円で取引されていることがわかります。BSC同様、PolygonのNFTが高額落札されたといったニュースはこれまでのところ見かけません。

画像: OpenSeaで最近取引が成立したPolygonのNFT

OpenSeaではPolygonのNFTの取引だけでなく、発行もできます。OpenSeaにログインして画面右上の「Create」ボタンをクリックすると、署名を求められ、NFTの発行フォームが表示されます。フォームにはNFTの画像、名前、外部リンク、説明など必要な情報を入力します。また、プロパティやレベル、ステータスといったゲームなどで遊べるラベルと値の組みも組み込めます。NFTを発行するブロックチェーンとして「Polygon」を選んで「Create」ボタンをクリックすればNFTが発行されます。

画像: OpenSeaのNFT発行フォーム

発行したNFTを売りに出したい場合は、NFTのページで画面右上の「売る」ボタンをクリックすると、価格を入力するフォームが表示されます。ETH建の価格を入力して、初回のみ「Unlock Currency」という処理で署名し、「Complete listing」ボタンをクリックすると署名を求められ、NFTが発行されます。ここまで取引手数料はかかりません。

OpenSeaを使ったPolygonでのNFT発行のプロセスは老舗ビットコインメディア「ビットコイナー反省会」の動画で詳しく見ることができます。

OpenSeaでのNFT発行や売買までの流れとは?実際に試しながら解説【お金の育てかたスピンオフ企画】

OpenSeaでPolygonのNFTを発行するだけでは実質上手数料がかかりませんが、たとえ手数料がかかったとしても、Polygonの通常のトランザクション手数料を考えると、格安でNFTを発行できると考えられます。このような性質を利用すると、大量のNFTを発行して配布するといった用途も可能になり、実際にBurger Kingのキャンペーンでは、NFTマーケットプレイスSweetの協力のもとPolygonを使ってNFTが発行されるようです。

画像: Sweetの発表を受けたPolygon Studiosのツイート

 

Solana

2021年春のPolygonに続いて、夏に高速かつ手数料の安いブロックチェーンとして注目を集めたのがSolanaです。PolygonがEthereumの互換チェーンだったのに対して、Solanaは独自のブロックチェーンです。トランザクション手数料はSolanaのウェブサイトによると2021年9月本記事執筆時点で0.00025ドル、秒間1000トランザクションを処理しているとのこと。
※ Solanaについて詳しくは本ブログの「Solana(ソラナ) – 高速かつ安価にトランザクションを処理するブロックチェーン」を参考にしてください。

Solanaは、仮想通貨デリバティブ取引所FTXと、FTXと創業者を同じくするトレーディングファームAlameda Researchが早期から分散型取引所Serumを構築し、Saber、Raydiumといったサービスが人気を集めるなどDeFiでの利用が盛んでしたが、2021年9月に入ってDegenerate Ape AcademyのNFTの一つが1億円を超える価格(5980SOL)で落札され、NFTの文脈でもSolanaが注目されるようになりました。

Degenerate Ape NFT Sells for More Than $1M on Solana — CoinDesk

画像: Degenerate Ape AcademyのNFTを1億円を超える金額で
落札したMoonrock Capitalのツイート

このほか、SolanaとNFTに関する大きなニュースとして、TikTokとのパートナーシップで注目を集めるブロックチェーンベースの音楽ストリーミングプラットフォームAudiusがEthereumに加えてSolanaのNFTに対応することを発表しました。

Blockchain streaming platform Audius announces Solana NFT integration – Cointelegraph

Solana上で最初に作られた本格的なNFTマーケットプレイスをうたうSolanartを見てみると、前出のDegenerate Ape Academyのほか、Crypto Punksに着想を得たと考えられるSol PunksなどさまざまなコレクションのNFTを見ることができます(Sol PunksはNFTの先駆けの一つのCrypto Punksや開発元のLarva Labsとは無関係です)。Degenerate Ape AcademyやSol Punksといったトップコレクションの総取引額は数十億円規模にのぼります。

SolanartではNFTを発行できませんが、NFTマーケットプレイスsolseaを使うとOpenSeaのようにスマートコントラクトを書くことなく手軽にNFTを発行できます。Solana対応のウォレットでSolseaにログインし、「Create」ボタンをクリックすると、NFTの発行フォームが表示されます。画像、タイトル、外部リンク、説明など必要な情報を入力し、「Create」ボタンをクリックすればNFTが発行されます。

画像: solseaでNFTを発行してみました(筆者作)

2021年9月本記事執筆時点でNFTの発行にあたって2ドル弱の手数料がかかり、マーケットプレイスで売りに出す際には手数料はかかりませんでした。売れても売れなくても手数料が手頃な範囲だとNFTを作るのは単純に楽しいですね!

Solanartやsolseaのほか、Solana上のNFTに関するプロジェクトについては、Solana上のプロジェクトに関する情報を扱っているSolanaProjectのNFTカテゴリを見てみるとよいでしょう。

SolanaProject – All Projects building on Solana

Wormholeを使ってEthereum互換でないSolanaとEthereumの間でNFTを送信可能になったことも、今後SolanaでNFTがさらに盛り上がるきっかけになりそうです。

ワームホール、ソラナとイーサリアムチェーン間でNFT送信可能に – CoinPost

 

その他のブロックチェーンとNFT

ここまで見てきたように、個人がNFTを発行して遊べるプラットフォームとしては、知名度や手数料の安さ、盛り上がりなどを考えるとPolygonやSolanaがよい選択肢になりそうです。

このほか、金融情報配信会社FISCOの記事によると、PolygonやSolanaと同様に手数料が安く高速という観点から昨今注目を集めているAvalancheでは専用のウォレットを使って簡単にNFTが発行できるようです。

「誰でも簡単にNFTを発行できる」- 仮想通貨Avalanche(AVAX)とは?購入方法や今後の予想・将来性を徹底解説 | InvestNavi(インヴェストナビ)

古いブロックチェーンではHiveブロックチェーン(旧Steemブロックチェーン)でもNFTマーケットプレイスNFT Showroomでクリエイター申請をすると、NFTを発行できます。Hiveの強みはすでにHive.blogやSteemitで育まれたコミュニティーがあるところといえます。

Proof of Art – NFT Showroom

また、個人がNFTを発行するようなプラットフォームではありませんが、CryptoKittiesを開発したDapperLabsによるFlowではNBA Top ShotをはじめさまざまなNFTが発行されています。

Flow:オープンワールド向けブロックチェーン

 

おわりに

本記事ではEthereumの外でも盛り上がりを見せつつあるNFTについて、BSC、Polygon、SolanaのNFTの世界や、各ブロックチェーンで手軽にNFTを発行する方法を紹介しました。NFTというと、取引をするにも発行するにも手数料が高額でなかなか手が出ないと考えていた人もイメージが大きく変わったのではないでしょうか。

「所有者が真にNFTを所有する」ことを目的とすると、分散化度合いの低いチェーンはNFTに向いていないのかもしれません。ただ、厳密さを求めずカジュアルにNFTを発行したり、取引したりして楽しむのであればサイドチェーンや代替チェーンも選択肢の一つとなるでしょう。また、Wormholeのような手法で今後NFTが存在するブロックチェーンを移動できるようになれば、発行主体や所有者が目的や好みに合わせてブロックチェーンを選べるようになります。

さまざまなブロックチェーンが存在してそれぞれの上でNFTが存在して、資金やNFTをブロックチェーンをまたいで移動して・・・というと難しく感じるかもしれませんが、本記事をきっかけに、気軽に使える手数料の安価なブロックチェーンからNFTの世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。

 

 

 

エンジニアの経験と情報学分野での経験を活かして、現在はドイツにてフリーランスで翻訳・技術解説に取り組む。2009年下期IPA未踏プログラム参加。2016年、本メディアでの調査の仕事をきっかけにブロックチェーンや仮想通貨、その先のトークンエコノミーに興味を持つ。

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