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Polygonとは

Ethereumネットワークの処理能力や、高騰するガス代は、サービス提供者にとってもユーザーにとっても大きな問題です。Polygonによると、さまざまなプロジェクトでEthereumと互換性のある高性能のブロックチェーンの利用が検討されているといいます。Polygonは、このようなEthereumと互換性のあるブロックチェーンや、そのようなブロックチェーンを簡単に構築し、Ethereumやその他のブロックチェーンネットワークと相互運用するためのプロトコルとフレームワークを提供しようというプロジェクトです。

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Polygonの前身のMaticは、2017年10月にJaynti Kanani氏、Sandeep Nailwal氏、Anurag Arjun氏が共同創業したプロジェクトで、EthereumのサイドチェーンPlasmaネットワークを使って、Ethereumの性能上の問題の解決を目指しました。Maticは2019年にCoinbase Venturesを含む投資家から45万ドルの投資を受け、2020年6月にメインネットをローンチしました。
※ サイドチェーンについて詳しくは本ブログの記事「ブロックチェーンの側鎖となる概念 “サイドチェーン”」を参考にしてください。

Matic Network – Scalable and instant blockchain transactions

画像: Polygonの前身のMatic

2021年2月、Maticは「Ethereum互換ブロックチェーンのインターネット」を目指すとし、プロジェクト名をPolygonに改名しました。余談になりますが、興味深い点として、Maticの時代からPolygonはインドの中西部に位置する都市ムンバイに拠点を置いています。

Polygonは、Matic ネットワークをサポートするほか、Ethereumと互換性のあるレイヤー2のブロックチェーンネットワークを構築・接続するためのプロトコルとフレームワークを提供し、まさに「Ethereumのブロックチェーンのインターネット」を目指しています。

仮想通貨に関する情報を提供するCoinmarketCapのPolygonのページによると、Polygonのブロック承認時間は2秒未満、各サイドチェーンでは1ブロックあたり最大65,536トランザクションを含めることができます。

Ethereumのガス代(手数料)が高騰する中、2021年に入りMaticはEthereumの抱える問題を解決するソリューションの一つとして注目を集め、独自トークンMATICの価格は大きく上昇しました。

画像: PolygonのトークンMATICの価格推移(CoinMarketCapより)

MATICの総量は100億MATICで、チームとアドバイザーに20%、ネットワークの運用に12%、財団に21.86%、エコシステムに23.33%が割り当てられ、一般への初期配分は多くはありません。高騰するMATICですが、その用途はというと、EthereumネットワークのETHのように、Polygon上のサービスを使う際に手数料として使われることが想定されています。

Polygonの仕組み

現在Polygonでは下の図のようにEthereumとMaticネットワークがつながっている状態で、今後、さまざまなレイヤー2ネットワークがサポートされる計画です。

画像: Polygonの概要(Polygonウェブサイトより。日本語部分と青枠・線は筆写追記。)

Polygon上(現状ではMaticネットワーク上)には、スマートコントラクト群としてサービスを構築できます。Maticネットワークへは、Ethereumネットワークから資産を移動でき、逆向きの資産の移動も可能です。資産の移動には、ブリッジと呼ばれるスマートコントラクト群が使われます。ブリッジには、PlasmaブリッジとPoSブリッジの二種類があります。二つのブリッジについては、Maticの開発者向けのドキュメントに比較表があり、PoSブリッジが推奨されています。Plasmaブリッジは高いセキュリティが保証されているとありますが、サポートされているトークンの種類が限定的な点と、MaticネットワークからEthereumネットワークへの出金に7日かかる点に注意が必要です。

画像: PoSブリッジとPlasmaブリッジの比較(Maticの開発者向けのドキュメントより)

Ethereumネットワークから資産を移動し、Maticネットワーク上のサービスで利用することができます。たとえばMaticネットワーク上のレンディングサービスAaveで資産を貸し出せるといった具合です。Ethereumにはないスケーラビリティとガス代の安さを実現するMaticネットワーク上では、Aaveを含めEthereumネットワーク上のサービスとして有名なサービスをはじめ、さまざまな分散型アプリケーションがローンチされています。

今後、Polygonではさまざまなレイヤー2ネットワークをサポートする計画で、Polygonの仕組みの概要を説明したLightpaperによると、プロジェクトに最適化された専用のEthereumインスタンスを作ることもできるようになります。

Polygon Lightpaper (PDF)

Polygonを使って作られたブロックチェーン(以下Polygonチェーン)はMetamaskなどの既存のEthereumのツールと互換性があり、Ethereumを含む互換性のあるブロックチェーン間でメッセージを交換できます。Polygonチェーンにはバリデーションを自身で行うスタンドアロンチェーン(下図①)とセキュリティレイヤーを外部に依存するセキュアードチェーン(下図②)の二種類があります。

画像: Polygonで作られたネットワークの概要
Polygon Lightpaperより。日本語部分は筆写追記。)

個々のブロックチェーンは、下からEthereumレイヤー、セキュリティレイヤー(外部バリデーターを使う場合)、Polygonネットワークレイヤー、スマートコントラクトやeWASMを実行するExecutionレイヤーから成り立っています。Ethereumや他のPolygonチェーンとのやりとりは最も下のEthereumレイヤーで扱われます。

画像: Polygonチェーンの構造(Polygon Lightpaperより)

今後Polygonを使って、さまざまなEthereum互換ブロックチェーンが構築され、つながっていくことが期待されます。

 

Polygonを利用しているサービスとエコシステム

Polygonのウェブサイトには、Polygonを利用しているサービスの一覧へのリンクがあります。

Polygon Matic Network

Polygonを利用している分散型アプリケーション一覧
(画像: DApps » Polygon Matic Networkより)

サービス一覧を見てみると、DeFiサービスではAave、Curve Finance、SushiSwap、NFT関連ではOpenSeaやDecentralandなど、すでにEthereum上のサービスとして有名なサービスもあります。Polygon上のDeFiサービスでお金を借りて、他のサービスで運用できることから、Polygonにはお金が循環するエコシステムができあがりつつあるといってよいでしょう。

分散型アプリケーションの統計情報を扱うウェブサイトDappRadarでは、Polygonカテゴリが新しく設けられ、Polygonアプリケーションのランキングを見られます。まだ情報がそろっていないサービスもありますが、レンディングプラットフォームのAaveについては、2021年5月17日時点の24時間取引高は、Polygon上のアプリケーションがEthereum上のアプリケーションを上回り、2021年5月に入ってからのユーザー数はPolygon上で1日あたり2000人前後、Ethereum上での最高1日200人と比べて圧倒的に多くなっています。Polygon上でのAaveのトランザクションは1日あたり5000から8000トランザクションで推移しています。

ユーザーがPolygon上(Maticネットワーク上)のサービスを選ぶ理由は、サービスを利用する際の手数料の安さにあると考えられます。

Polygonのサービスを使うには、EthereumネットワークからMaticネットワークに資金を移します。Ethereumネットワークから資金を移動するには少なからずガス代がかかりますが、Matic上の各サービスは、トランザクションごとに極少額のMATICを手数料として支払うだけで利用できます。ただし、一通りMatic上のサービスを使ってEthereumネットワークに資金を戻したい場合は再度ガス代を支払って資金を移動させる必要があり、ブリッジやEthereumネットワークの混雑具合によっては少なくないガス代がかかる可能性があります。さらにPlasmaブリッジを使うとトークンの引き出しに最大7日間かかります。

 

画像: 2021年5月17日時点の資金移動にかかるガス代
(左)Ethereum→Polygon、(右)Polygon→Ethereum(Plasmaブリッジ)

 

画像: 2021年6月4日時点の同ガス代。状況やブリッジで大きくガス代は変わる。
(左)Ethereum→Polygon、(右)Polygon→Ethereum(PoSブリッジ)

Matic上のサービスを利用する際には、往復両方のガス代を考慮して利用を検討する必要があります。

 

おわりに

本記事では、Ethereum互換ブロックチェーンのインターネットを目指すPolygonについて解説しました。有名サービスがPolygonを利用するようになり、今後より多くのサービスを連携して使えるようになれば、ユーザーはより多くの収益機会や遊べる機会にめぐまれることでしょう。

Polygonが今後さまざまなレイヤー2ネットワークに対応し、エコシステムを盛り上げ、PolkadotやCosmosといったブロックチェーン相互運用プロジェクトとどのように競い合っていくのか注目したいところです。

 

Edited by Yosuke Aramaki

Akiko T.

エンジニアの経験と情報学分野での経験を活かして、現在はドイツにてフリーランスで翻訳・技術解説に取り組む。2009年下期IPA未踏プログラム参加。2016年、本メディアでの調査の仕事をきっかけにブロックチェーンや仮想通貨、その先のトークンエコノミーに興味を持つ。

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