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ニースでふりかえる
  • 更新日: 2021年12月26日

2021年も年末となり、1年を振り返る時期になりました。2021年は暗号資産の保有や活用が進み、手数料を抑えて処理を実現する新しいブロックチェーンが台頭し、NFTやゲーム、メタバースといった一般ユーザーも理解し、試してみやすいサービスにも注目が集まりました。本記事では2021年のブロックチェーンと暗号資産に関する大きな流れを振り返ります。

 

暗号資産の浸透

Bitcoin、Ethereumの最高値更新

代表的な暗号資産であるBitcoinは、2020年年末に2017年につけた史上最高値を更新したあと、何度かの騰落を経て、2021年11月に68000ドルの史上最高値を記録しました。本記事執筆時点では48000ドルほどに落ち着いていますが、年初の29000ドルからは大きく価格がのびました。Ethereumはより大きなのびを見せ、年初の740ドルから本記事執筆時点では3860ドルで価格は5倍以上にのびました。

 

画像: Bitcoin(左)とEthereum(右)の2021年の価格推移(CoinMarketCapより)

エネルギー問題、チャイナショックからの分散化

Bitcoinの価格は一直線に史上最高値を目指したわけではありませんでした。Bitcoinを支持していたと見られていたTesla社のCEOイーロン・マスク氏が、環境問題への懸念から同社の自動車の購入時のBitcoin決済を停止すると発表すると、Bitcoinは大きく値を下げました。Bitcoinに引きずられる形で多くの暗号資産の価格も下落しました。

このあとさらに追い討ちをかける形で、中国でマイニングと取引が禁止されました。これまでにも中国では暗号資産に対する規制を強化する動きがありましたが、マイニングや取引は行われてきました。今回の厳しい規制強化の背景には、中国共産党創立100周年にあたっての権力誇示、エネルギー問題、デジタル人民元の流通を前に暗号資産を取り締まりたいといった思惑などが見え隠れしました。

ビットコインが急落、3カ月ぶりの安値 中国の規制発表などで | BBC News Japan

エネルギー問題やチャイナショックは短期的には暗号資産の大きな価格下落を招きましたが、結果的には中国に集中していたマイナーが世界中に分散したことでBitcoinの分散性が高まり、クリーンエネルギーでのマイニングが模索されることになりました。Bitcoinとエネルギーについては、Bitcoinマキシマリストとして知られるジャック・ドーシー氏が率いるBlock(旧Square)がBitcoinとクリーンエネルギーに関するレポートを発表しました。また、ビットコインや暗号通貨に関する老舗メディアのビットコイナーでは、2021年に邦訳が出版され注目を集めた『ビットコイン・スタンダード』を翻訳した練木照子さんがエネルギー問題について解説しています。

イメージが先行する形で「Bitcoinは環境に悪い」と批判されることがありますが、このようなレポートにも目を通してデータから現状を把握するのも重要です。

企業や自治体による暗号資産の保有と活用

暗号資産価格高騰の背景には、投機的な側面もありますが、暗号資産が徐々に社会に浸透している様子もうかがえます。

2020年に始まった一部企業や組織によるインフレヘッジのBitcoin買いは2021年にも続きました。

中米のエルサルバドルは6月にBitcoinを法定通貨とする法案を可決、9月に世界で初めてBitcoinを法定通貨としました。エルサルバドルの国の規模を考えると、経済的な影響は限定的で、IMFとの摩擦や市民からの反発など課題も少なくありませんが、Bitcoinが一国の通貨となったのは注目すべき出来事といえるでしょう。2021年9月時点でのエルサルバドルのBitcoinの保有量は550BTC。国家としてはブルガリアが213,519BTC、ウクライナが46,351BTCを保有しているといいます。

アメリカではBitcoinや暗号資産を取り入れることを発表する州も出てきました。マイアミのフランシス・スアレス市長は給与をBitcoinで受け取る計画を発表し、市職員への給与支払いや公共料金の支払い、税金もBitcoinで支払い可能にしようとしています。また、CityCoinが発行するマイアミコインのステーキングから得られる収益を、市民にBitcoinで配布することも発表されました。

エルサルバドルやマイアミのラディカルな急進的な動きに続くかのように、アメリカでは暗号資産での給与受け取りを表明する市長が出てきています。

アメリカ:新たに3人の市長が「ビットコインによる給与受け取り」を表明 | 仮想通貨ニュースメディア ビットタイムズ

Bitcoin先物ETF承認

2021年10月、ProShares(プロシェアーズ)のBitcoinの先物上場投資信託(ETF)が米国証券取引委員会(SEC)に承認されました。これまでにアメリカで上場申請がされては却下が続いてきた待望のETF承認とあり、上場後はBitcoinの価格は2021年春以来の最高値を更新しました。ProSharesのBitcoin先物ETFに続き、VanEck(ヴァンエック)、Valkyrie Investments(ヴァルキリー・インベストメンツ)のBitcoin先物ETFも承認され、取引が開始されました。

ProSharesのビットコイン先物ETF、19日にNYSEで取引開始 | CoinDesk

一方で、現物ETFについては、2021年にカナダ、バミューダ、ブラジル、ドバイでは承認されたものの、アメリカでは依然として却下が続いています。このような中、2020年にBitcoinの大口の買い手として注目を集めたアメリカの暗号資産投資企業Grayscaleがビットコイン投資信託GBTCを現物ETFに転換するための申請を行なったことが報道されました。

 

ブロックチェーンの動向

BitcoinとEthereumでのアップデート

2021年、Bitcoinでは4年ぶりのアップデートTaprootが、EthereumではBerlinハードフォークとLondonハードフォーク、Ethereum 2.0に向けたアップグレードAltairが実施されました。

EthereumのLondonハードフォークでは、EIP-1559が実装され、ユーザーが送金やスマートコントラクトの実行時に支払うガス代(手数料)の仕組みが見直されました。ガス代はブロックごとのBase FeeとマイナーへのチップであるPriority Feeに分けられ、マイナーに渡らないBase Feeはバーンされます。EIP-1559ではブロックサイズが可変となったこともあり、ネットワークの混雑が緩和し、高騰する手数料が抑えられる効果が期待されましたが、2021年8月のLondonハードフォーク後にガス代が大きく減少することはなく、高止まりしたままです。

画像: Ethereumの平均ガス価格の推移(Etherscanより)

ガス代の削減にはつながりませんでしたが、LondonハードフォークでBase Feeがバーンされるようになったことで、発行上限がないEthereumの希少性が守られ、価値の向上が期待されるという声もあります。

高速・安価なネットワークの台頭

2021年のブロックチェーンのトレンドとして、Ethereumキラーと呼ばれることもあるEthereum代替チェーンやレイヤー2の台頭はおさえておきたいところです。

Ethereum代替チェーン

2021年のEthereumの代替チェーンのトレンドを時系列に振り返ってみると、大手暗号資産取引所BinanceによるBinance Smart Chain(BSC)、春にはPolygonが、夏に入るとSolanaがこれに続き、秋にはAvalancheが注目を集めました。

これらのネットワークにも分散化の課題や、手数料の安いためにボットがネットワークに負荷をかけてしまうなど課題は存在しますが、独自のサービスやEthereum上で人気のサービスをエコシステムに取り込み、インセンティブプログラムを展開するなどしながらメジャーチェーンとしての地位を確立しつつあります。

このほか、ゲーム分野では、手数料を抑えてスムーズにゲームをプレイしたいというニーズを満たすためにAXIE InfinityがRoninチェーンを本稼働させたのも興味深い動きです。

Axie Infinity escapes Ethereum gas fees as Ronin sidechain goes live | Cointelegraph

レイヤー2ネットワーク

Ethereumの代替チェーンとともに注目を集めたのがEthereumのレイヤー2ネットワークです。レイヤー2と呼ばれるように、Ethereumのレイヤー2ネットワークは、Ethereumネットワークのオーバーレイとして作られ、レイヤー2ネットワークのトランザクションがまとめられ、Ethereumネットワークに書き込まれます。これにより、手数料を抑えて高速に処理をできるようになるというわけです。Optimistic Rollup、ZK Rollupロールアップと呼ばれる手法が主流で、さまざまな実装が存在します。どのようなEthereumのレイヤー2ネットワークがあるのか俯瞰するにはL2BEATを参照するとよいでしょう。

L2BEAT – The state of the layer two ecosystem

前出のPolygonは、レイヤー2にも手を広げつつあります。また、Plasmaを採用したレイヤー2ネットワークOMG Network(旧OmiseGo)は、事実上旧実装を捨てる形で、ZK Rollupを採用したBoba Networkに転向しようとしています。

レイヤー2ネットワークはEthereumに限定したものではなく、BitcoinにもLightning Networkがあります。Lightening Networkについては、国内の動きにも注目したいところです。ビットコイナー反省会の東晃慈さんがリードするDiamond Handsプロジェクトが立ち上がり、Lightning Networkの国内コミュニティーが形成されつつあります。

乱立するネットワークの課題

ブロックチェーンが増えることで、孤立したエコシステムが乱立し、さらには孤立したエコシステムでの資産価値に対する懸念も生じます。一方で、2021年にはエコシステム間を移動しやすくなるブリッジが登場し、CosmosやPolkadotなどブロックチェーンの相互運用性向上に取り組むプロジェクトの進展も見られ、2022年にどのようにブロックチェーン同士がつながっていくのか注目したいところです。

From Ethereum to Solana and Back: Wormhole Lets You Send Your NFTs Across Blockchains – Decrypt

 

ブロックチェーンの利用動向

NFT、ブロックチェーンゲーム、メタバース

2021年にはNFTが大きな盛り上がりを見せました。春にはすでにNFTバブルだという声も聞かれましたが、第三四半期には107億ドルの取引高を記録しました。

NFT Trading Volume Surges 700% to $10.7B in Q3 | CoinDesk

これまでNFTというとEthereumネットワーク上で発行されるNFTが主流でしたが、2021年にはPolygonやSolana上で発行されたNFTが取引されるようになったのも新しい動きです。

Degenerate Ape NFT Sells for More Than $1M on Solana | CoinDesk

NFTは直観的に理解しやすく、発行者の裾野も広がりました。子どものドット絵が高額で取引されたニュースを耳にしたことがあるという人もいるかもしれません。

【NFT狂想曲】なぜ、小学3年生の夏休みの自由研究に380万円の価値がついたのか | Business Insider Japan

OpenSeaといったマーケットプレイスの中には、NFTを取引できるだけでなく、手軽にNFTを発行できる仕組みを提供しているものもあります。NFTは一般的に流動性が低いことからトレードよりも保有目的で参加する、または、クリエイター側で参加するのが得策といえそうです。PolygonやSolanaはNFTの発行にかかる手数料が手頃なので、気になる方は挑戦してみるとよいでしょう。各プラットフォームでのNFTの動向や発行方法については本ブログでも一つの記事にまとめました。

NFTの各プラットフォーム(Binance, Polygon, Solana) での盛り上がり- Ethereumの外での事例 | Gaiax Blockchain Biz

NFTの流行をきっかけに、キャラクターやアイテムがNFTで表されるブロックチェーンゲームや、NFTを使える場としてメタバースにも注目が集まっています。

2021年に注目を集めたブロックチェーンゲームNo. 1は間違いなくAxie Infinityでしょう。コロナ禍で経済が失速する中、フィリピンをはじめとする国や地域ではゲームで生計を立てる人が出てきて、「Play to Earn」(ゲームをプレイしてお金を手に入れる)は一つの現象になったといっても過言ではありません。また、ゲームをプレイするために必要なNFTの貸し借りはゲームと金融が融合した新たな分野を生み出しました。

Play-To-Earn Gaming Is Driving NFT And Crypto Growth | Forbes

さらに、これまでブロックチェーンゲームはプレイのしにくさなどから敬遠されてきましたが、Axie Infinityの企業価値がゲーム会社のトップ5に入り、ブロックチェーンゲームの存在感をアピールしました。

画像: ビデオゲーム企業の時価総額ランキング
(Messariによる調査、Ryan Watkins氏のTweetより)

プロジェクトのDAO化

2020年にCompoundがガバナンストークンCOMPを配布したのをきっかけに、さまざまなプロジェクトがガバナンストークンを配布した流れが2021年も継続し、さらにDAOを目指す動きが加速しました。

スマートコントラクトで米ドルにペグされたステーブルコインDAIを発行するMakerDAOは、Maker Foundationによって運営されてきましたが、2021年7月に今後数ヶ月以内にMaker Foundationを解散し、ガバナンストークンMKRの保有者によって完全にDAOとして運営することが発表されました。

MakerDAO Moves to Full Decentralization; Maker Foundation to Close in ‘Months’ | CoinDesk

運営のDAO化については、ガバナンストークンの配布を狙った短期的な利用やトークン配布後の投機的な売買といった課題、「DAO」がバズワードと化していること、株式と比較しての批判など、今後議論が深められる必要があります。

そのような中でも、2021年には長期的なサポーターに対してトークンを配布しようと配布方法を工夫する動きも見られました。また、住んでいる地域や性別、人種に限らず原則的には誰もが参加でき、意思決定が透明かつ機械的に、場合によっては迅速に行われる可能性があるのもDAOの魅力です。プロジェクトのDAO化の流れには2022年にも注目したいところです。

 

ガイアックスとブロックチェーンの2021年

JBA Blockchain Bootup day / Bootcamp共催

2020年8月のBlockchain Bootcampに続き、JBAの主催でガイアックスが共催する形で、2021年には春夏2回JBA Blockchain Bootup day / Bootcamp 2021 springとJBA Blockchain Bootup day / Bootcamp 2021 summerを開催しました。

春には2日間の日程で、夏には1週間をかけて若手を対象にブロックチェーンを利用したビジネスアイディアがブラッシュアップされました。

イベントレポート:Bloclchain Bootup day 2021 Spring
イベントレポート:JBA Blockchain Bootcamp 2021 Spring

LiDAR発表

LiDARは複数のイメージセンサから取得したデータを、人の目ではなくAIの目という観点から軽量化し、広範囲にわたるデータをブロックチェーンでリアルタイムに共有する基盤です。スマートシティーでの自動車やドローンの自動運転、犯罪や事故の防止といった応用が期待されています。京都大学らとの共同プロジェクトで、Gaiaxはブロックチェーン技術とデータ基盤を担当しています。来年も研究開発を続け、2023年3月までの実用化を目指します。

日本初、ブロックチェーン活用のLiDARネットワーク基盤を 京都大学らと産学連携にて開発&社会実験開始 〜自動運転&スマートシティ実現の要となる基盤技術を確立へ〜 › Gaiax

Ethereum開発本、ブロックチェーン事例集の出版

Gaiaxではイベント、Blockchain Bizコミュニティ、本ブログなどで技術的な知識や事例の共有を行ってきましたが、2021年には2冊の本を出版しました。

1冊目はBlockchain Biz Communityの創設者で、2021年には日本ブロックチェーン協会(JBA)に就任した峯の『Nuxt.js Firebase PWAではじめるブロックチェーンアプリ開発』です。Blockchain Biz Communityでは本書を参考書としてブロックチェーン開発基礎講座も開催されました。

PWAとしてスマホで動くブロックチェーンアプリを開発! 『Nuxt.js Firebase PWAではじめる ブロックチェーンアプリ開発』発行! 技術の泉シリーズ、2月の新刊|株式会社インプレスホールディングスのプレスリリース

もう一冊は本ブログでも記事を執筆しているGaiax技術開発部・ブロックチェーン研究開発エンジニアの荒巻の『ブロックチェーンの活用方法を知りたい人のためのブロックチェーン事例集』です。ブロックチェーンを活用する世界中のさまざまなプロジェクトが網羅的に取り上げられているので、「ブロックチェーンをビジネスに利用したい」「ブロックチェーンでどんなことができるのか知りたい」という人はぜひ本書を手にとってみてください。

ブロックチェーンへの想い|ガイアックス新卒2年目で、本を出版した理由 › Gaiax

 

おわりに

本記事では2021年のブロックチェーンに関する出来事を駆け足で振り返りました。未だブロックチェーンや暗号資産というと、インターネットのように多くの人が利用しているものではありませんが、企業や自治体が暗号資産を保有し活用するようになり、NFTやブロックチェーンゲームの流行にともなって一般にもブロックチェーンや暗号資産が認知されるようになるなど、2021年はブロックチェーンを利活用する人や組織が増えた一年になったのではないでしょうか。

2022年にはEthereum 2.0に向けたアップデートが計画されています。また、筆者個人としては、金融で分散化が起こっているように、分散型のWeb 3.0がソーシャルサービスなどの分野で頭角を現し、巨大IT企業のサービスからの脱却が起こることを期待しています。

本ブログでは2022年もブロックチェーンと暗号資産のエキサイティングな変化を伝えていきます。どうぞお楽しみに!

 

エンジニアの経験と情報学分野での経験を活かして、現在はドイツにてフリーランスで翻訳・技術解説に取り組む。2009年下期IPA未踏プログラム参加。2016年、本メディアでの調査の仕事をきっかけにブロックチェーンや仮想通貨、その先のトークンエコノミーに興味を持つ。

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ブロックチェーンを学び、新しいことをサービスを作りたい人が集まるコミュニティーを運営しています。
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