Blockchain 2018

2017年末、世界は仮想通貨バブルに沸き、ブロックチェーンも盛り上がりを見せました。そこから一転、仮想通貨の低迷は続いていますが、ブロックチェーンについては着実な進展が見られました。本記事では2016年2017年に続いて、2018年のブロックチェーンの動向をニュースとともに振り返ります。

 

国内大企業のトークンエコノミー創出の動き

低迷する仮想通貨の価格をよそに、国内大企業は仮想通貨やブロックチェーンに関する取り組みを進めていました。

中でも注目すべきはLINEの動きでしょう。2018年1月、LINEは金融事業を強化するべくLINE Financialを設立しました。4月にはブロックチェーンに関する研究開発を行うLINE Blockchain Labを設立。夏にはLINE Token Economyの構想を示し、LINE独自のブロックチェーンLINK Chainを用いた仮想通貨の発行、分散型アプリケーションの開発を進めています。10月からは日米を除く海外では自社の取引所BITBOXを通じて仮想通貨LINKを取り扱い、日本国内ではLINEポイントと交換可能なLINK Pointを発行しています。LINK Pointが付与されるサービスとしては、Q&AプラットフォームWizball、未来予測プラットフォーム4CASTのいずれもベータ版がリリースされています。今後、商品レビュー、グルメレビュー、ロケーションベースのSNSを展開していくようです。

画像: LINEトークンエコノミー(LINEプレスリリースより)

楽天やヤフーといったLINEの前の世代のIT大手にも動きがありました。楽天の代表取締役会長兼社長の三木谷氏が楽天コインの構想を示し、企業としては子会社の楽天カードがみんなのビットコインの全株式を取得しています。また、ヤフーは子会社のZコーポレーションを通じてビットアルゴ取引所東京に資本参加することを発表しました。

IT業界以外では、11月に不動産情報を扱うLIFULLを中心にブロックチェーンを利用した不動産情報コンソーシアムADRE(Aggregate Data Ledger for Real Estate)が設立されました。コアメンバーとしては地図情報を扱うゼンリン、NTTデータ子会社2社など大手も参加しています。ブロックチェーンを使ったプロトタイプを開発し、現在2020年までの商用化を目指して開発が進められています。

そのほか、広告代理店大手の博報堂はブロックチェーンやトークンコミュニティーを推進するHAKUHODO Blockchain Initiativeを発足しました。サービス開発はもとより、ビジネス開発までが支援の対象です。博報堂の提唱するトークンコミュニティーについては、博報堂DYホールディングスの伊藤氏に寄稿いただきました。

すでに多くのユーザーをかかえるIT大手の参入により、仮想通貨の裾野が広がり、一般ユーザーが実際に仮想通貨やブロックチェーンを利用するようになることが期待されます。また、ADREのように、ITや金融分野以外でもブロックチェーンが活用され、関連する業界団体が設立されていくことが予想されます。

 

国内開発エコシステムとコミュニティー

日本でブロックチェーンというと、これまで仮想通貨や取引所などトレードに関するものが多くで、コミュニティーのようなものはあるものの、関係者が集まれる物理的な場所はそんなにありませんでした。2018年はここに大きな変化があり、ビジネスの構築から開発、ビジネスパーソンやエンジニアの育成を行い、企業がブロックチェーンを使ったプロジェクトを動かすのに必要な要素を一気通貫で提供する企業やコミュニティーが形成されていきました。代表格であるNeutrino、HashHub、LayerXについて見てみましょう。

Neutrino

東南アジアでEthereumベースの決済サービスを提供するOmiseGoとベンチャーキャピタルのGlobal Brainが渋谷にブロックチェーンに特化したコワーキングスペースNeutrinoをオープンしました。東京に続きシンガポールにもコワーキングスペースを開設し、今後北京や上海、OmiseGoが拠点とするバンコクへの展開も予定されています。

画像: Neutrinoウェブサイトより

HashHub

日本のビットコイナーとして知られている東晃慈氏、平野淳也氏、ビール依子氏は、ブロックチェーンに関するプロダクトの開発やコワーキングスペースを運営するHashHubを創業しました。イベント開催の場にもなっていて、ミートアップのほかに、国内の仮想通貨やブロックチェーンに関わる専門家が集まる会議HashHub Conference 2018が開催されました。

画像: HashHubウェブサイトより

LayerX

ニュースアプリを提供するGunosyとオンライン決済のAnyPayが、ブロックチェーンに特化した開発やコンサルティングを行うLayerXを合弁会社として設立しました。創業間もないながらシンガポールのCryptorealtyやZillicaとのパートナーシップ締結などが報道されています。LayerXに関する最も大きいニュースとしてブロックチェーンに関するコンサルティングや技術サポートでのマイクロソフトとの協業があります。

画像: LayerXウェブサイトより

日本国内で同士を求めて集まれる場所、コンサルティングや技術的なサポートを依頼できる場所が明確になったのは大きな進展です。各社とも海外とのつながりを意識し、ブロックチェーン分野で海外と日本を橋渡しする役割も果たしていくことでしょう。

 

大きな進展があったブロックチェーン関連分野

ブロックチェーンの利用が広まる鍵となる分野でも進展がありました。ここではステーブルコイン、DAppsゲーム、モビリティの3つに焦点をあてて見てみましょう。

ステーブルコイン

仮想通貨の投機的な値動きは、利ざやを稼ぐトレードでは魅力的かもしれませんが、決済やビジネスで仮想通貨を通貨として使う際には難点となります。この問題を解消する一つの方法であるステーブルコインの新しいプロジェクトの発表が多かったことも2018年の特徴です。

大きなニュースとしては、7月にIBMがStrongholdと連携してStellarのブロックチェーン上で発行を目指す米ドルペッグのStronghold USDの構想を発表したほか、ゴールドマンサックスの出資を受けたCircleが9月に米ドルペッグのUSDCを発表しました。USDCについては、Circleが2月に買収した大手取引所Poloniexで扱われているほか世界最大規模のBinanceでも取り扱いが始まりました。

法定通貨と連動するステーブルコインというと米ドルにペッグされたTetherが有名ですが、中央集権的な組織であるTether社の存在を疑問視する声もあり、自立分散型のDai、Basis、Reserveといったステーブルコインにも注目が集まりました。

ステーブルコインについては本ブログでも安定した価格を実現する「ステーブルコイン」として分類や仕組みについて詳しく解説しました。

ブロックチェーンゲーム

2017年末、仮想通貨バブルの最中にEthereumブロックチェーン上で子猫を売り買いするゲームCryptoKittiesがリリースされ、Ethereumネットワークに大きな負荷をかけたことを覚えているという人も少なくないでしょう。

日本では6月にグッドラックスリーが日本初のEthereumブロックチェーンベースのゲーム「くりぷ豚」をリリースしました。国産のブロックチェーンベースのゲームではdouble jump.tokyoのMy Crypto HeroesやメタップスのDIGSTARがあり、いずれもEthereumブロックチェーンベースのゲームです。特にdouble jump.tokyoはブロックチェーンベースのゲームの開発に特化した会社で、My Crypto Heroesはプレーヤーから支持を集めているようです。

海外ではEthereum以外のブロックチェーンを使ったゲームも出てきています。Blockchain Cutiesはキャラクターを作り出す、売買する、バトルさせるという点ではその他のブロックチェーンベースのゲームと似ていますが、Ethereumブロックチェーンだけではなく2018年に稼働したEOSブロックチェーンも併用した世界初のマルチブロックチェーンのゲームです。また、Steemブロックチェーン上のカードバトルゲームSteem Monstersは、2016年から運用されている同ブロックチェーン上のソーシャルメディアSteemitのユーザーを呼び込み、Steemitから得たSteem上の仮想通貨を保有しているユーザーも少なくないことから、好調なすべりだしを見せました。さらにSteemエコシステムへのユーザー獲得にも貢献しているようです。

投機的な側面が強かったブロックチェーンゲームですが、2018年にはEthereumでは代替不可能なトークンの標準ERC721が正式採択されたこともあり、ブロックチェーンを使ってアイテムの所有権を移転するなど新たな体験を提供するものが増えてきたといえそうです。

日本では、DAppsゲームをリリースするに当たり法律の壁がまだありますが、その壁を乗り越えて今後どのようなゲームが出てくるか楽しみでもあります。

 

モビリティ

本ブログでは2016年から2017年にかけて、ブロックチェーンベースのモビリティサービスや車載ウォレットなどを取り上げましたが、ブロックチェーン x モビリティーに関するニュースも多くありました。2018年には大手自動車メーカーの動きが目立ち、メルセデスベンツのダイムラーがエコ運転に付与するmobiCoinについては本ブログでも紹介しました。

メルセデスのほかにも、ドイツの大手自動車メーカーではBMW、フォルクスワーゲン傘下のポルシェとアウディがブロックチェーンに興味を示し実証実験を行うなどしています。アウディについては同じくドイツに拠点を置くIoTのための次世代ブロックチェーンIOTAのTangleの利用も検討しているようです。

自動車メーカー以外では、韓国のスタートアップによる分散型モビリティプラットフォームMass Vehicle Ledger(MVL)の快進撃があります。モビリティ含め多くの分野でブロックチェーンベースのサービスが実運用まで一気に進まない中、MVLは同プラットフォームを利用しシンガポールで配車サービスTadaの運用にこぎつけました。

実用的なブロックチェーンの利用はもちろんですが、エコ運転や安全運転といったユーザーのよい行動が評価され報酬が支払われることで、ブロックチェーンや仮想通貨がよりよい社会の実現に貢献する流れをモビリティサービスが牽引する点も見逃せません。

 

2018年に起きた事件

2018年は日本で大きな流出事件が起きた年でもありました。1月にはCoincheckで不正アクセスが発生し、2014年のMt.Gox事件で喪失したこれまでの最高額を上回る580億円相当のNEM(約5億2630万XEM)が流出しました。Coincheckはマネックスグループの子会社となり、新しい経営体制のもと業務を再開しています。

Coincheck事件より規模は小さいですが、9月には国内の主要取引所のひとつZaifでも流出事件が起き、70億円相当の仮想通貨が失われました。Zaifは11月にフィスコに事業を譲渡し、フィスコ仮想通貨取引所がZaifを運営することとなりました。

これら巨額の流出事件は当該の取引所に資産を保有するユーザーにとって価格の下落局面で大きな痛手となしましたが、業界の進展につながった側面もあります。Coincheckでの流出事件からは自主規制団体に関する議論が進み、10月には日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)が発足しました。また、Zaifの流出事件では、有志による犯人追跡が行われ、三菱UFJフィナンシャル・グループの子会社Japan Digital Designと専門家による追跡ハッカソンも開催されました。誰もがこのようなプロセスに参加できるのは公開された台帳であるブロックチェーンならではといえるでしょう。

 

おわりに

仮想通貨が低迷する中で静かに見えた2018年ですが、大手の参入、ゲームやモビリティーサービスにより仮想通貨の裾野が広がり利用機会が増える兆し、仮想通貨を利用しやすくするステーブルコイン開発の動き、国内でもブロックチェーンエコシステムが誕生しつつあるなど、さまざまな動きがあったことが伝わったかと思います。

有名人の名前や発言が取り上げられることも多くあった中で、仮想通貨バブルの盛り上がりの残る2018年年初、FacebookのCEOマーク・ザッカーバーグ氏が仮想通貨や分散化について興味を示したことが印象に残っています。5月にはFacebookで仮想通貨やブロックチェーンに特化したチームが編成されたことが報道されましたが、未だ憶測が飛び交うのみで計画は謎に包まれたままです。

そのFacebookでは2018年数千万人規模での個人情報の流出が起きました。GoogleのGoogle+でも大量の個人情報が流出し、Googleは同サービスの終了を予告しています。個人情報の取り扱いに関しては、5月には重い罰則を伴うEU一般データ保護規則が施行され、世界中のサービスが対応に奔走しました。12月に入ってからは、Facebookがブロックチェーンエンジニアを募集しているという怪ニュースも流れてきました。中央集権的な組織なしに個人が自身の情報を管理するブロックチェーンや分散型システムは、このような課題の解決策ともなるのでしょうか。

2019年は、各ブロックチェーン上でアプリがアプリを呼んでコミュニティーや独自の経済圏が形成される流れを追い風に、ブロックチェーンにとって明るい一年となることを願うばかりです。

Aram Mine

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

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