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個人や組織がものやサービスをやりとりするマーケットプレイスを、ブロックチェーンを使って分散型・P2Pで実現し、手数料を抑えオープンかつ公正なものにしようという動きがあります。本記事では分散型マーケットプレイスの分野で今後有力なプラットフォームになり得るOrigin Protocolについて説明します。

 

Origin ProtocolとOriginマーケットプレイス

Origin Protocolは分散型P2Pマーケットプレイスを構築するためのプラットフォームで、サンフランシスコに拠点を置く2017年の創業のOrigin Protocol, Inc.がオープンソースで開発を進めています。Origin Protocolは2017年から2018年にかけて、出資やICOで合計38.1百万ドル(2020年3月執筆現在40億円強)を調達しました。

Origin Protocol

Origin Protocolはホワイトペーパーの中で、既存の中央集権型のマーケットプレイス、特にシェアリングエコノミーのマーケットプレイスの問題点について事例を挙げながら指摘しています。手数料の値上げを含む運営側による一方的なルール変更や搾取については聞いたことがあるという人も少なくないでしょう。そのほか、政治・宗教的思想に基づく特定ユーザーの締め出しも起きているようです。

これに対して、Origin Protocolは、オープンかつ公平、自由にサービスや商品を売り買いできる分散型P2Pマーケットプライスを構築できるようにしようとしています。「構築できるように」というのがポイントで、Origin Protocol自体はマーケットプレイスではなく、マーケットプレイスを構築するためのツールやプロトコルを提供するプラットフォームです。

画像: Originプラットフォーム(Origin Protocolのホワイトペーパーより。赤字は筆者追記。)

Origin Protocolのプラットフォーム上では実際にすでに複数の分散型マーケットプレイスが稼働しているといいます。このような分散型マーケットプレイスのひとつに、Origin Protocolが運営している「Originマーケットプレイス」があります。Originマーケットプレイスにはコンピュータのブラウザ(https://shoporigin.com/)やスマートフォン向のアプリ(iPhoneアプリ / Androidアプリ)でアクセスできます。

画像: Originマーケットプレイス(Origin Protocolのウェブサイトより)

Originマーケットプレイスをのぞいてみると、Origin ProtocolのプロジェクトTシャツといった商品だけでなく、短期滞在用の住宅やアート作品などさまざまなものやサービスが掲載されています。

画像: Originマーケットプレイスで取引されているものやサービス(Originマーケットプレイスより)

Originマーケットプレイスをブラウザで利用するには、ブラウザの拡張として使えるEthereumウォレット「Meta Mask」を使ってOrigin ProtocolのIDを作ります。IDを作ると、他のユーザーが提供しているものやサービスを購入できるほか、売りたいものや、貸したいもの、提供できるサービスをマーケットプレイスに掲載できます。2020年3月現在、取引に使用できる通貨はEthereum、DAI、Origin Token、Tetherの4種類です。

Origin Protocolは現在β版で、2020年第一四半期にメインネットのローンチが予定されています。

 

Origin Protocolとブロックチェーン

ブラウザを通してOriginマーケットプレイスを眺めているだけでは、ブロックチェーンベースのサービスとは感じられないかもしれません、Origin ProtocolはEthereumブロックチェーンとIPFS(InterPlanetary File System、P2Pの分散型ファイルシステム)を利用しています。

Origin ProtocolのプラットフォームはEthereum上のスマートコントラクトとして稼働していて、ホワイトペーパーに記載のあるEtherscanのページでは実際のスマートコントラクトのコードやトランザクションを見ることができます。

Origin ProtocolのユーザーIDは、Ethereumのウォレットアドレスに関連づける形で作られ、ユーザーのプロフィール、マーケットプレイスに掲載されるものやサービス、取引、評価に関する情報は、Originノードと呼ばれるノードが保存、更新、検証処理を行います。Originノードは現在Origin Protocolが運用していますが、開発者などサードパーティーによる運用が推奨されていて、今後分散化が進む予定です。

Origin Protocolは、Ethereumブロックチェーンを利用してERC20標準に基づく独自トークンOriginトークン(OGN)を発行しています。ICOは2018年に行われましたが、取引所での扱いは2020年1月に入ってから始まりました。Originトークンは、取引所で購入できるほか、Origin Rewardsと呼ばれる報酬プログラムの月替わりのキャンペーンに参加したり、友人を紹介したりしたユーザーに付与されます。Originトークンはマーケットプレイスでの買い物や、マーケットプレイスで売り手が広告を掲載するといった決済用途で使えるほか、将来的にはガバナンストークンとしての役割も果たすようになります。

Origin Protocolのプラットフォーム上にマーケットプレイスを構築したい場合は、Origin ProtocolのオープンソースのJavascriptライブラリを使用します。ブロックチェーンや分散型システムに詳しくなくても、従来のウェブ開発の知識さえあれば迅速にマーケットプレイスを開発できるように配慮され、今後モバイル向けも含めライブラリが拡充されるといいます。

 

Origin Protocolの強みと課題

Origin Protocol以外にも、分散型マーケットプレイスの構想が示され、サービスがローンチしていることは本ブログの記事で紹介しました。

ブロックチェーンとマーケットプレイス – Blockchain Biz【Gaiax】

Origin Protocolの強みはどこにあるのでしょう。現在利用可能な分散型マーケットプレイスの中では、Origin Protocolを使ったOriginマーケットプレイスがもっともシンプルかつクリーンで、既存の中央集権型のサービスのユーザーに抵抗なく受け入れられそうです。また、Origin Protocolは中央集権型のシェアリングエコノミーに疑問を呈する形でプロジェクトが始まっていることから、ものやサービスの売買だけでなく、遊休資産の期限付きの貸し借り、つまりシェアも視野に入っています。また、創業者を含めYouTubeやPayPal、Googleなど名だたるIT企業出身の経験豊富なメンバーを抱え、巨額の出資を集めてきたこともOrigin Protocolの強みといえるでしょう。

ただし、記事の執筆にあたって、コンピューターのブラウザから、プロフィールを作って、Originマーケットプレイスの機能を見てまわりましたが、Meta Maskを使った操作は、仮想通貨やブロックチェーンに慣れていない人にはハードルが高いと感じられました。「Ethereumのアドレスとはなにか?」「ウォレットとは何か?」「Meta Maskとはなにか?」といった前提知識が少なからず必要になるからです。さらに、ブロックチェーンへの書き込みを伴う操作では、都度Meta Maskでの署名が要求され、スムーズな体験とはいえませんでした。署名の概念に慣れていない人は、署名が要求されることを危険にさえ感じるかもしれません。

このようにインターフェイスやユーザーエクスペリエンスについては今後改善が求められますが、いち早く一般のユーザーを取り込んでいるブロックチェーンベースのゲーム分野では、スムーズなユーザーエクスペリエンスなどすでに解決の糸口が見えている課題もあります。Origin Protocolはここまでコンスタントに開発を続けていて、これらの課題がゲーム分野と同レベルに解決されるのは時間の問題かもしれません。

2020年にはメインネットのローンチや、Originトークンのガバナンストークン化も計画されています。プラットフォームの整備と合わせて、インターフェイスやユーザーエクスペリエンスの改善にも期待したいところです。

 

おわりに

本記事では分散型マーケットプレイスのプラットフォームとして有望なOrigin Protocolと同プラットフォーム上に構築されたOriginマーケットプレイスについて説明しました。

2020年に入って新型コロナウィルス感染症が世界で猛威をふるい、経済状況が悪化する中で、少なからず私たちの消費傾向やものの貸し借りに対する心理は変化していて、遊休資産を貸し借りするタイプのシェアリングエコノミーのサービスにとっては特に難しい時期になるでしょう。一方で、買い手と売り手が直接つながり、オープンで搾取のない真のシェアリングエコノミーの実現に寄与する分散型のマーケットプレイスには依然魅力があり、現状に即した新しい「シェア」の対象や形態が生まれることに期待したいところです。

Origin Protocolのプラットフォーム上に構築されるマーケットプレイスには、ブロックチェーンゲームが一般のゲーマーを仮想通貨やブロックチェーンの世界に引き込んだように、これまで仮想通貨に親しんでこなかった人たちが仮想通貨を手に入れ、この世界に入り、トークンエコノミーを築いていくきっかけになるかもしれません。

2020年、Origin Protocolは本格的なプラットフォームとしてスタートを切るための重要なリリースを多数予定しています。この難局でOrigin Protocolがどのように計画を遂行していくのか、今後どのようなシェアリングエコノミーのサービスがプラットフォーム上に現れるのか目が離せません。

Aram Mine

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

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