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blockchain-nft-2021
  • 更新日: 2021年7月1日

2020年、仮想通貨市場が盛り上がりを見せる中、アートにはじまり、スポーツやゲームといった分野のNFT(Non-fungible token、代替不可能で唯一無二のトークン)にも注目が集まっています。NFTは仮想通貨に続く形で新しい資産として受け入れられるのでしょうか。本記事ではNFTの概要を説明し、2020年後半から2021年にかけてのNFTの動向をお伝えします。

 

NFTとは

NFTはNon-fungible tokenの頭文字をとった語で、日本語にすると「代替不可能で唯一無二のトークン」という意味です。デジタルアイテムはコピーできてしまうため、唯一性を保証しにくいという課題を抱えていましたが、ブロックチェーンの登場で、デジタルアイテムを唯一無二のトークンとして表すことができるようになりました。デジタルアイテムに希少性を与えられるようになったのです。

NFTの起源は2017年末に注目を集めたCryptoKittiesといってよいでしょう。CryptoKittiesはEthereum上に作られた子猫を交配・収集するゲームです。レアな子猫は一千万円を超える価格で取引されたこともありました。CryptoKittiesに続く形で、CryptoPunksといった収集系のゲーム、収集したカードやアイテムを使えるカードバトル系のゲームが登場しました。

その後、仮想通貨市場の低迷とともにNFTへの投機的な興味は薄れていきました。一方で、NFTのための標準ERC721が策定され、ゲーム分野でNFTを活用する動きは続きました。ERC721の詳細、これまでの活用事例については本ブログの以下の記事で詳しく解説しています。

なぜ2017年末から3年の時を経て、再びNFTに注目が集まっているのでしょうか。この3年間で大口の投資家や企業が仮想通貨に投資する環境が整い、2020年後半からはインフレ懸念から企業が資産の一部を仮想通貨で保有する流れができ、仮想通貨の価格高騰につながりました。また、新型コロナウィルスに対処するために2020年から各国で給付金が支給され、一部資金が仮想通貨市場に流れ込みました。このような状況で、仮想通貨に次ぐ新しい投資対象を探る動きが2020年後半から2021年3月現在にかけてのNFTブームにつながったと考えられます。

NFTの中でも特にデジタルアートが高値で取引され、注目を集めています。Hashmasksの絵画の中には7000万円を超えるものがあり、前出のCryptoPunksの猿のキャラクターは1億5千万円超の価格をつけ、2017年にCryptoKittiesが発端となったNFTの黎明期と比べ、多くの参入者と資金を集めていることがうかがえます。

Rare Hashmasks Digital Artwork Sells for $650K in Ether – CoinDesk

NFTマーケットプレイスのOpenSeaをのぞいてみると、これまでの美術に対するものさしでははかれない作品も少なくありません。

OpenSeaで販売されているHashmasksの作品

また、OpenSeaで作品の所有権の移転履歴を見てみると、特定のアドレスを往復しているものも見られます。このため現在ついている価格が正当なものかは定かではありません。

OpenSeaでのある作品の所有権の移転履歴

デジタルアートのNFTの取引については未だ課題が残りますが、世界的なオークションハウスのクリスティーズがNFT作品を扱うなど、今後NFTアートの世界が急速に改善されていく可能性は十分あります。

一方、スポーツ、音楽、ゲーム、アニメといった分野ではすでに一定の価値があり、より多くの人が所有したい、使いたいと考えるコンテンツと紐づいたNFTが取引され始めています。

ここからは海外と国内のNFT活用事例を見てみましょう。

 

海外のNFTの活用事例

スポーツ

海外でもっとも成功したNFTの活用事例として、北米男子プロバスケットボールリーグNBAの名シーンをデジタルカード化したNBA Top Shotがあります。CryptoKittiesを開発したDapper Labsが手がけるサービスで、2021年3月までの売り上げはすでに245億円を超えています。

NFTトレーディングカードゲームのNBA Top Shot、売り上げが245億円に | Cointelegraph | コインテレグラフ ジャパン

NBA Top Shot

スポーツという点では、マルタ共和国に拠点をおくChilizもおさえておくとよいでしょう。Chilizはヨーロッパのトップサッカークラブ、ACミランやFCバルセロナなどのサッカークラブのファントークンを扱ってきました。ファンはファントークンを所有していることで投票に参加し、トークン保有者限定の特典を受けられます。このファントークンは代替不可能なNFTというよりも、数量限定のトークンで、Chilizのトークン$CHZで取引できます。現在はサッカークラブが主にChilizを利用していますが、今後はF1やeスポーツなどにも利用を広げ、アメリカでの展開も視野に入れているようです。

Chiliz

ゲーム

ゲーム分野でNFTは、メタバースの土地やキャラクター、アイテム、カードバトルゲームのカードといったゲーム内での所有権を表すために使われています。DecentralandやCryptovoxels、Sandboxといったメタバースの土地やアイテムは、NFTマーケットプレイスOpenSeaで取引されています。
※ ブロックチェーンを使ったメタバースやNFTについては本ブログの記事「ブロックチェーンとメタバース」を参考にしてください。

画像:OpenSeaで取引される仮想世界の土地やアイテム

音楽

長い間ブロックチェーンを利用して音楽の公平かつ透明な取り扱いを模索してきた音楽業界でもNFTを利用する動きが出てきています。アーティストが作品としてオークションにかけたり、販売したりといった形でNFTが利用されています。アメリカの芸能メディアBillboardのウェブサイトに2020年12月から2021年3月までの音楽業界でのNFT活用事例がまとまっています。NFTがアーティストに売り上げをもたらしつつあることがわかります。

Tracking Music’s NFT Gold Rush: A Timeline of Recent, Record-Breaking Sales | Billboard

現実世界で実体を持つモノのNFT化

2020年夏のDeFiの流行を牽引した分散型取引所のUniswapによる実験的なプロジェクトとして、靴下をNFT化したUnisocksというプロジェクトがあります。Unisocksをほしい人、Unisocksに投資したい人は、トークン$SOCKSを買い求めます。$SOCKSの権利を行使すると、物理的に靴下が世界のどこにでも届きます。DeFiの流行、NFTブームで価格は上昇し、2021年3月現在、この靴下には1000万円をゆうに超える値段がついています。315足限定の靴下のうち11足がまだ入手可能で、185足分の$SOCKSトークンの権利が行使されました。

Unisocks

UnisocksはDeFi界隈のネタプロジェクトというだけでなく、実際、世界的なスポーツブランドのNikeは2019年にEthereumブロックチェーン上で靴をトークン化するシステムの特許を申請しています。

Nike Patents a System for Tokenizing Shoes on Ethereum’s Blockchain

 

世界の事例を見ていくと、人気のスポーツ、ゲーム、音楽、アパレルと多くの人が興味を持つ分野に徐々にNFTが浸透しつつあることがうかがえます。

 

国内のNFTの活用事例

日本のゲームは1980年代から90年代に一世を風靡し、その後も日本のコンテンツとしてアニメは世界的に人気を集めています。NFTは日本のクリエイターが強みを発揮できる分野として期待を持てそうです。

Aniqueはアニメ、マンガ、ゲーム、イラストといったデジタルアートワークを販売し、ブロックチェーンにデジタル所有権を記録しています。所有権の管理にはERC721トークンをカスタマイズしたトークンが使われています。作品の購入者は証明書に加え、限定の特典を注文できます。売り上げの一部はクリエイターに還元されます。

2020年10月には、アイドルグループSKE48の撮りおろし画像から作られたNFTトレーディングカードのパックが販売され、初回の限定100パックは即完売となりました。

人気アイドルグループ「SKE48」のデジタルトレカが即完売 イーサリアムERC721を活用 – CoinPost

また、スマートフォン用イーサリアム決済機能Go Baseなどを提供する株式会社スマートアプリは、国内初のNFTマーケットプレイスnanakusaのローンチを発表されるなど、国内マーケットでも今後活発な動きがことって来ることが予想されます。

 

NFTの今後

2021年3月現在、NFTは大きな注目を集めていますが、今後どのように広がりを見せるのでしょうか。

冒頭でも触れた通り、過度に投機的に取引されているNFTも少なくありません。一方で、スポーツ、音楽といったより多くの人に身近な分野にNFTが浸透していっているのも事実です。

また、以前はNFTを作るというとERC721の仕様に基づいて少なからずプログラムを書いて、ブロックチェーンに関する知識も必要とされましたが、NFTの広がりとともに、深い知識がなくてもNFTを作れる環境が整ってきました。たとえば、NFTマーケットプレイスOpenSeaで、クリエイターは画像をアップロードして簡単な説明を書いて、作品を出品できます。EthereumベースのNFTではトランザクションを発行する際に生じるガス代(手数料)が懸念されますが、EthereumコミュニティでEIP1559が議論されているほか、OpenSeaでも高騰するEthereumネットワークのガス代に対処する措置が講じられました。

Create NFTs for Free on OpenSea – OpenSea blog

インターネットの登場で多くの人が作品を発表する場を得たように、今後、NFTとして作品を発表し収入を得る新しいタイプのアーティストが出てくるのかもしれません。

もうひとつ注目しておきたい流れとして、2020年後半から企業が仮想通貨を資産とみなし買いつけることが増えてきたように、今後、NFTについても企業が資産として買いつけるといったことが起こると、NFT市場は今にもまして活性化するでしょう。

盛り上がりを見せるNFTが個人や企業が保有する資産としての地位を築いていくのか注目したいところです。

 

 

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

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