Lens Protocolとは
Lens Protocolは、分散型のレンディングサービスとプロトコルを開発するAAVEによる分散型のソーシャルグラフ(人と人との関係図)とそこに紐づくコンテンツを扱うためのプロトコルで、ソーシャルメディアのためのプロトコルといわれることもあります。
Lens Protocolのモチーフは植物で、Lens Protocolのウェブサイトにはレンズ豆(Lens Culinaris)の説明があり、プロトコル名はレンズ豆に由来するようです。
Lens Protocolはユーザーが直接使うタイプのアプリケーションではなく、開発者が利用してソーシャルネットワークなどのサービスを構築するためのプロトコルです。この点では本ブログで先日紹介したFarcasterと類似するものです。
※ ソーシャルサービスで分散型のプロトコルが志向されるようになった経緯やFarcasterについて詳しくは本ブログの記事「Farcaster – 分散化されたソーシャルネットワークプロトコル」を参考にしてください。
Lens Protocolを開発するAAVEは、2017年の創業、2020年のDeFiサマー、その後の暗号通貨ブームを経てDeFi(分散型金融)の一大プロジェクトとしての地位を確立しました。DeFiの情報を取り扱うDefiLlamaによると本記事執筆中の2022年11月時点ではAaveのTVLはMakerDAOとLidoに続いて3位です。
Aaveは2022年2月にLens Protocolを発表し、Polygonのテストネットでローンチ、同年5月にはメインネットでローンチしました。創業者はAAVEと同じくStani Kulechov氏です。
暗号通貨に関する情報を提供するメディアBanklessのYouTubeチャンネルにはKulechov氏がLens ProtocolやWeb3.0のソーシャルと金融(SocialFi)について語ったインタビュー動画があり、プロジェクトに対する熱意がうかがえます。
画像: BanklessのKulechov氏へのインタビュー動画
メインネットでのローンチから半年ほどしか経っていませんが、ソーシャルメディアやYouTubeのようなサービスなどすでに数十のアプリケーションやサービスがLens Protocolを利用しています。
続いてLens Protocolの仕組みを見てみましょう。
Lens Protocolのしくみ
Lens Protocolを使ったアプリケーションでユーザーはプロフィールを作って、フォローし合い、コンテンツを投稿、コメント、収集できます。Lens Protocolのウェブサイトにはプロフィールを作れるページへのリンクがありますが、筆者のウォレットで試してみたところ、2022年11月時点ではアクセスは限定されているようでプロフィールを作ることはできませんでした。
プロフィールが作れるウォレットアドレスを持っているユーザーは、ウォレットのアドレスに紐づける形でプロフィールNFTをミントします。このプロフィールNFTから投稿やコメントを投稿し、プロフィールNFTは生成したすべてのコンテンツの履歴を持ちます。
画像: Lens Protocolの概要(Lens Protocolのウェブサイトより)
投稿やコメントはNFTではなく、プロフィールNFTにデータが記録されます。投稿されたコンテンツはIPFSやArweaveといった分散型ストレージの他、中央集権型のサービスに保存されていても構いません。
プロフィールNFTにはフォローモジュールがあり、プロフィールをフォローするとフォローNFTが発行されます。
フォローNFTはプロフィールのつながりを表すだけでなく、組み込みのガバナンス機能でも使われます。フォローNFTは自分自身や他人にデリゲートでき、投票権のように使えます。アプリケーションの開発者はFollow NFTと連携する提案・投票といった機能を持つスマートコントラクトを記述してDAOを作成できます。
このようにLens ProtocolではウォレットでプロフィールNFTを所有し、そのソーシャルグラフにコンテンツがつながる形でデータのネットワークが形成されます。
一連の操作はLens ProtocolのAPIを介して個々のアプリケーションが行い、Polygonネットワーク上でトランザクションが発行されます。すべてのブロックでインデックスが作成され、データに高速にアクセスできるといいます。
Lens Protocolを使ったアプリケーションのユーザーは、必要に応じてガス代を支払う必要がありますが、Lens ProtocolのFAQによると、場合によってはガスフリー、またはガス代の一部に補助を受けられることもあるようです。
Lens Protocolを構成するプロフィール、コンテンツ、コメント、フォローなどについて詳しくはLens Protocolの文書に記述があります。
Lens Protocolのエコシステム
Lens Protocolのアプリケーションのリストによるとすでに数十のLens Protocolを使った事例が掲載されています。
リストの冒頭では10のアプリケーションが紹介されていて、TwitterのようなソーシャルメディアLenster、YouTubeのような動画共有サイトLensTubeなどがあります。
画像: Lens Protocolを使ったアプリケーション
(Lens Protocolの利用事例のウェブページより)
LensTubeをのぞいてみると、動画に対してチップを送るボタンがあります。実際チップを送ってみることはできませんでしたが、ウォレットとプロフィールが結びついていることでウェブアプリケーションでのお金の扱いがスムーズになりそうだと感じました。
Lens Protocolを使ったアプリケーションに対する助成金があるので、アイディアがあるという人は申請を検討してみてもよいかもしれません。
Grants Application – Lens Protocol
おわりに
本記事では、Aaveが開発する分散型オープンソーシャルグラフプロトコルLens Protocolを紹介しました。
現状はまだアプリケーションもユーザーも限られていますが、開発者はデータを自由に横断的に扱え、ユーザーは自分のデータを真に所有できるLens Protocolは、次世代のソーシャルネットワークの基盤となる可能性があります。DeFiの雄Aaveが開発する分散型オープンソーシャルグラフプロトコルはWeb3.0のスタンダードになるかもしれません。
今後、誰もがプロフィールを作れるようになり、さまざまなアプリケーションが出てくることに期待したいところです。