先日、ガイアックスが運営するコミュニティスペース「Nagatacho GRID」にて、ブロックチェーン「Hyperledger Iroha」を開発したソラミツ株式会社のトークセッションが開かれました。また、「Hyperledger Iroha」を使ったブロックチェーンを利用するアプリ開発もハンズオン形式で行われました。その模様をレポートいたします。
ソラミツ社の概要
ソラミツ社(soramitsu)は主に金融向け・非金融向けのブロックチェーンサービス事業を展開しているスタートアップ企業です。ソラミツ社は世界中の人たちが安全に価値を交換し、相互に情報を共有するために分散型台帳技術(DLT)を用いて情報の分散と価値管理を行うツールを提供し、現代社会の壁を乗り越える仕組みづくりを行っています。
ソラミツ社は、ブロックチェーン技術の発展に寄与するために、Linux Foundationの「Hyperledgerプロジェクト」にプロジェクトネーム「Hyperledger Iroha」としてコードを提供しています。Hyperledger Irohaは、2016年9月26日にHyperledgerプロジェクトに提案し、2016年10月13日にIncubationとして正式に受諾されました。IBM主導のHyperledger Fabric、IntelのHyperledger Sawtooth Lakeに続いて世界で3番目の受諾になり、日本のブロックチェーンとしては初めての受諾となっています。
また今回のイベントではソラミツ社の共同設立者の一人である武宮誠氏に登壇いただきました。武宮氏は、新たな合意形成プロトコルPoI(Proof of Importance)を取り入れた暗号通貨NEM(New Economy Movement)のリードエンジニアでもありました。
ブロックチェーンNEM – 独自の合意形成方法で新しい経済システムを作り出せるか?
ソラミツ株式会社
ブロックチェーン「Hyperledger Iroha」の特徴
Hyperledger Irohaの主な特徴は以下のような点が挙げられます。
- シンプルな設計で、開発者に理解しやすく、開発しやすい構造
- ソラミツが独自に開発した合意形成アルゴリズム「スメラギ」(Chain-based BFT algorithm)を採用
- 通貨やポイントなどのデジタルアセットを簡単に(チェーンコードを実装せずに)発行・送受信できるライブラリを用意
- モバイルアプリケーションを簡単に開発できるiOSとAndroidのライブラリを用意
Hyperledger Irohaに実装されているブロックチェーン上の合意形成アルゴリズムは、ソラミツ社が独自に開発した「スメラギ」と呼ばれるアルゴリズムです。ビットコインなどの仮想通貨はブロック承認まで約10分ほどかかってしまい、金融機関や対面型の決済に向いていないことが欠点として挙げられます。一方スメラギは2秒以内のファイナリティ(決済完了性)を目指している点に特徴があります。高速のファイナリティを実現することにより、金融機関の決済や対面型決済などのシステムの実現も可能になります。また、スループット(単位時間あたりの処理能力)についても、秒間数千件以上の取引への対応を目指しています。
Hyperledger Irohaを利用したアプリ開発・実験も行われています。会津大学などと連携して、福島県内の地域通貨「萌貨」や会津大学の学内通貨「白虎」で実際に使用されました。
福島Moe祭2016 with マジカル福島にて仮想通貨「萌貨」の実証実験を行いました
ブロックチェーン技術を用いた学内通貨「白虎」の実証実験を、会津大学内にて2017年3月22日から実施します
これらの通貨は、Hyperledger Irohaの特徴である、簡単に使えるデジタルアセット発行ライブラリやiOSライブラリを使用して開発された専用のアプリをインストールしたスマートフォンを利用して取引を行うことが出来ます。学内通貨の白虎に関しては2017年5月には導入開始が予定されています。
Hyperledger Irohaは上記の通りOSSなので、より詳細な内容に関してはGithub上でソースコードを閲覧することが出来ます。
Hyperledger Iroha_whitepaper|Github
またHyperledger Irohaのさらなる改良のために、現在は複数の開発パートナーとともに、Hyperledger Irohaを利用するユースケースの検討やオープンソースとしてのHyperledger Irohaの開発を行っています。
Hyperledger Hyperledger Iroha(Hyperledger Iroha)の開発パートナーに5社が参画
Hyperledger Irohaを用いたハンズオン体験
イベント後半では、Hyperledger IrohaのiOSライブラリを実際に使用したハンズオン体験も行いました。GIthub上にあるデモアプリのソースコードをダウンロードし、Xcodeを利用することで簡単なデジタルアセットの送受信アプリを実装しました。
Sample iOS point application for Hyperledger Hyperledger Iroha
デモアプリでは、100IRH(仮想的な通貨単位)がデフォルトで与えられており、QRコードを用いて相手のアドレスを入手したり、自分のアドレスを相手に渡すことで、デジタルアセットを簡単に送受信させることができました。今回は簡単なハンズオン体験でしたが、以前にHyperledger Irohaを用いたハッカソンも開催されており、今後もHyperledger Irohaコミュニティ発展に目が離せません。
このように「Hyperledger Iroha」は開発しやすい設計を心がけられており、これから仮想通貨や決済サービス、本人確認(KYC)やシェアリングエコノミーといった様々な場面・サービスでHyperledger Irohaが使われていくことが期待されます。