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本記事ではアメリカのネバダ州リノ市に拠点を置き、ブロックチェーンを利用してIoTのためのハードウェア、ソフトウェアソリューション、コンサルティングサービスを提供するスタートアップFilamentと現在Filamentが注力しているBlocklet Mobility Platformを紹介します。

 

Filamentとは

Filamentはアメリカのネバダ州に拠点を置く2012年創業のスタートアップで、他社に先駆けて企業がブロックチェーンベースのIoTワイヤレスセンサーネットワークを利用するためのハードウェア、ソフトウェアソリューション、コンサルティングサービスの提供を始めました。
※ IoT: Internet of Things、モノのインターネット。さまざまな機械や人、動物までもがネットワークでつながり、人間を介さずにデータを交換しあうシステムのこと。

Enterprise Blockchain Solutions, IIoT | Filament

Filamentは産業用IoTブロックチェーンのための一連の技術Blocklet ™の開発を進めてきました。Blockletはソフトウェアだけでなく、ファームウェア、ハードウェアではチップやUSBで接続する形のデバイスなど、企業が既存の機器をブロックチェーンにつなげ、M2M(Machine to Machine)のコミュニケーションを可能にするさまざまな技術を含みます。

画像:Blockletを利用するためのデバイス(Blocklet Mobility Platform紹介資料より)

Filamentが革新的なのは、いち早くIoTとブロックチェーンの分野に参入したことに加え、既存の機器に後付けして安全にトランザクションを発行しデータや価値の交換をできるハードウェアも提供しているところと言えるでしょう。企業情報のデータベースCrunchbaseによるとFilamentは創業以来クラウドファンディングを含め22.5百万ドル(2019年9月のレートで24億円強)の資金を集め、インテルのベンチャーキャピタルをはじめとする世界的な大手企業からの支援も受けています。

IoTのためのブロックチェーンソリューションを開発してきたFilamentですが、創業時から7年を迎えた2019年現在、自動車や貨物、輸送といったモビリティー分野に注力しています。

続いてFilamentが現在開発と普及を進めているブロックチェーンを活用したモビリティープラットフォームBlocklet Mobility Platformについて説明します。

 

Blocklet Mobility Platform

IoTというと、日常生活で身近なインターネットにつながる家電やスマートスピーカーなどを想像しがちですが、コネクテッドカー、コネクテッドビークルと呼ばれるインターネットに常時接続した自動車をはじめとする車両もIoTの代表的な構成要素のひとつです。

Filamentが提供するモビリティープラットフォームはBlocklet Mobility Platformと呼ばれています。車両をこのプラットフォームにつなげるには、車両のCANバスと呼ばれるデータ交換経路にBlockletのデバイスを装着します。BlockletのデバイスがCANやセンサーのメッセージをとらえ、Blockletのデバイス内の秘密鍵を使って署名済みのトランザクションにまとめ、プラットフォームに車両が直接トランザクションデータを送信します。Blockletのデバイスは用途やブロックチェーンに応じて使い分けるために複数の鍵を保持できるといいます。

プラットフォーム上のデータは、適切なアクセス権限を持った人やデバイスがAPIを介して利用できます。サービスプロバイダはカスタマイズ可能なスマートコントラクトを利用して、支払いなどのビジネスロジックを組み込むことができます。

画像:Blocklet Mobility Platform利用の流れ(Blocklet Mobility Platform紹介資料より)

Blocklet Mobility Platformが利用しているブロックチェーンについては、Blocklet Mobility Platform紹介資料で「ハイブリッドブロックチェーン(a hybrid blockchain)」と説明されているのみで、どのブロックチェーンを利用しているのかは明らかにされていません。Filamentがまだ自動車のIoTに注力し始める前の2017年2月のCoinDeskの記事Bitcoin IoT Startup Filament Nets $9.5 Million in New FundingではBitcoinブロックチェーンを活用しようとしているとあり、2018年1月の発表では、Hyperledgerに加入し、Hyperldeger Sawtoothをサポートしているとしており、2018年11月のFilamentのブログ記事Automotive Blockchain Platform for Connected Vehicles Drives New OpportunitiesではBigchainDB、Ethereum、 Hyperledger Fabric、Hyperledger Sawtoothの名前が挙がっています。

 

独立したIoT・モビリティープラットフォームの意義

自動車業界でも各社が独自のネットワークを構築する動きがありますが、Filamentはこれに対して自動車業界の企業はセキュリティー、インテグレーション、データ監査の経験に乏しく、現在の自動車のIoTのシステムは複雑でセキュリティーやプライバシーのリスクがあるとしています。

これに対して、Blocklet Mobility Platformでは、車両に搭載されたBlockletのデバイスにデジタルIDを与え、車両の診断や走行データをその場でチェックし署名済みトランザクションにし送信させるシンプルでセキュアなプロセスでデータを扱います。

画像:現行の自動車のIoTの問題点
Blocklet Mobility Platform紹介資料より、緑色の線および文字は筆者追記)

自動車業界の企業が単独またはアライアンスを組んでそれぞれのプラットフォームを開発するよりも、IoTとブロックチェーンの分野での経験が豊富なFilamentのプラットフォームを利用する方が効率がよいとも言えます。少なくともサービスプロバイダは自動車の企業ごとの縦割りのプラットフォームよりも、広範にさまざまな車両を対象にサービスを提供できるBlocklet Mobility Platformのようなプラットフォームを好むはずで、安全であればなおさらです。

 

Filamentの今後

Filamentは汎用なIoTとブロックチェーンのソリューションやBlocklet Mobility Platformの開発と普及を進めるほか、拠点を置くネバダ州リノ市とネバダ州立大学とブロックチェーンベースの自動走行車のための標準と道路インフラを構築し、自動運転車とインフラの正確かつ安全なコミュニケーションを可能にしようとしています。

Blockchain IoT and Intelligent Mobility for Smart Cities | Filament

 

おわりに

B2B志向でまだ一般向けには公開されていない部分の多いFilamentのプラットフォームですが、今後このプラットフォームを利用して一般向けにサービスを提供するサービスプロバイダが出てきてBlocklet Mobility Platformが身近なサービスの裏側で動くようになる可能性は十分あります。

Blocklet Mobility Platformのようなプラットフォームとともに今後カーシェアサービスが進化して、自分の車を使っていない時に貸し出して、他の人が使った後、ウォレットにお金が入った自動車が自動運転で戻ってくる・・・そんな未来もそう遠くはないのかもしれません。このような未来を思い描いた時、メーカーの垣根を超えて多くの車両に搭載できるハードウェアも含めた統合的なソリューションを、IoT×ブロックチェーンの分野で培った知識と経験を強みに提供するFilamentのBlocklet Mobility Platformには大きな可能性があります。

コネクテッドビークルというIoTの一分野でのプラットフォームの開発と運用をきっかけに、Filamentがより一般的なIoTとブロックチェーンの分野をも今後どのように牽引していくのか、その動向に注目していきたいところです。

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

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