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本記事ではユーザーが取引板に柔軟に注文を出せる分散型取引所dYdXを紹介します。dYdXはEthereumメインネットからレイヤー2に移り、今後独自ブロックチェーンの立ち上げを発表しているという点でも注目のプロジェクトです。

 

分散型取引所とは

2020年のDeFiサマー以降、「分散型取引所」(DEX, Decentralized Exchange)というとUniswapやそれに続いて現れたAMM型の分散型取引所を想像する人が多いかもしれません。AMM型の分散型取引所では、流動性提供者と呼ばれるユーザーがプールに資金を提供し、プール内の資金バランスに基づいて交換レートが自動的に計算・提示されます。AMM型の分散型取引所はシンプルなUIで使いやすい一方、細かい注文ができません。


画像: Uniswap v2の取引画面

中央集権型の取引所の多くは、シンプルなUIで取引所を相手に仮想通貨を取引できる「販売所」に加えて、ユーザー同士が取引板(オーダーブック)に注文を出し合いマッチングする板取引も提供しています。販売所と比べて狭いスプレッドで手数料を抑えて取引できるほか、値段を指定して注文を取引板にのせるなど、ユーザーは柔軟に取引できます。


画像: 中央集権型取引所FTXの取引画面

2017年から2018年年初にかけての仮想通貨ブームの時期にも、EtherDeltaなど板取引を提供する分散型取引所はすでに存在しましたが、ガス代やパフォーマンスに課題があり広く利用されるにはいたりませんでした。

2020年から2021年にかけての新たな仮想通貨ブームでは、Ethereumのレイヤー2ネットワークを含め高速かつ安価なネットワークの利用が進み、取引板を持つ分散型取引所が現実的なものとなってきました。

 

dYdXとは

dYdXは2017年にアメリカの取引所CoinbaseやUberでエンジニアの経験のあるAntonio Juliano氏が創業した分散型取引所です。

dYdX

dYdXはもともとEthereumのメインネットを利用していましたが、2021年11月にレイヤー1でのサービスが終了し、現在はEthereumのレイヤー2ネットワークStarkExのZK-Rollupを使用してサービスを提供しています。最新のv3ではdYdXでは1秒間に約10件の取引と約1000件の注文が処理され、ユーザーはガス代を気にせずに取引板を利用して仮想通貨の無期限先物を取引できます。
※ StarkExについて詳しくは本ブログの記事「StarkNet – Ethereum(イーサリアム)のレイヤー2スケーリングソリューション」を参考にしてください。

百聞は一見にしかずです。まずはdYdXの取引画面を開いてみましょう。Metamaskをつないで、レイヤー2ネットワークに証拠金を入金すると取引できるようになります。インターフェイスは中央集権型の取引所のものと変わりなく、仮想通貨の板取引をしたことがある人なら戸惑いは感じないでしょう。日本語のインターフェイスもあります。

画像: dYdXのインターフェイス

Ethereumの先物の取引をしてみると注文・執行ともにスムーズに行われました。注文にあたって署名をしたりガス代を支払ったりすることはなく(中央集権型取引所と同様に取引手数料はかかります)、5年ほど前の分散型取引所の使い勝手と比べると大きな進歩を感じます。

ただし「1秒間に約10件の取引と約1000件の注文」を処理するだけでは大相場には耐えられず、2022年5月のTerra・Luna ショックの際には注文が出せないなど処理にトラブルがあったようです。また、BitcoinとEthereum以外は流動性が多くない点にも注意が必要です。

企業情報を扱うCrunchbaseによると、dydxはこれまでに87百万ドル(本記事執筆時点2022年7月末のレートで約119億円)の投資を受けました。また、2021年8月から9月にかけてICOが行われ、dydxのガバナンストークンDYDXが発行されました。

DeFiプロトコルに関する情報を提供するDefi Llamaによると、TVLは565百万ドル(約768億円)で、TVLランキングでは26位につけています。

画像: dYdXのTVLと時価総額の推移(Defi Llamaより)

画像:  DeFiプロトコルのTVLランキング(Defi Llamaより)

他の取引所との比較もしてみましょう。CoinMarketCapによると、dYdXはDEXの出来高ランキングでUniswapに続いて2位につけていて、直近24時間の出来高は933百万ドル(約127億円)です。

画像: 分散型取引所の出来高ランキング(CoinMarketCapより)

現行のdYdX v3では仮想通貨の現物の取り扱いはありませんが、最大20倍までレバレッジをかけて無期限先物を取引できます。デリバティブを扱う中央集権型の取引所の出来高ランキングでどのくらいの位置づけなのか見てみると、10位のBitMexと11位のBitfinexの間にあたります。

画像: デリバティブを扱う取引所の出来高ランキング(CoinMarketCapより)

 

dYdXのメリットとデメリット

TVLや出来高といった数字でdYdXを見てみると、dYdXは健闘していますが、信用取引のできる中央集権型の取引所がある中、dYdXを使う理由はどこにあるのでしょうか。

dYdXを使ってみるとわかるのですが、利用開始するにあたってKYCのプロセスはなく、入金後すぐにサービスを使い始められます。また、dYdXはノンカストディアル方式を採用していて、ユーザーの資金は自身のウォレットまたはスマートコントラクト内に存在し、運営が資金を凍結してしまうといったことはありません。

国や地域による規制が多岐にわたり、厳しくなる中、中央集権的な取引所は国や地域によってサービス停止したり、規制に準拠した形で国や地域で異なるサービスを提供したりしています。2021年の中国の規制強化がdYdXの成長を後押ししたという見方もあります。

日本の仮想通貨ファンにとっても他人事ではありません。2021年にデリバティブ取引所FTX Internationalが日本居住者の新規登録を停止し、2022年3月末には日本居住者へのサービスを停止し、既存ユーザーは機能が限定されたFTX Japan(旧Liquid)に移行することになりました。このような中dYdXを選択肢として検討した人たちもいたようで、dYdXの日本人ユーザーのDiscordグループ「dYdX日本勢」が盛り上がりをみせました。このグループは長らく「FTX日本勢」を主催しているdeg(@DEG_2020)さんが主催するグループです。日本語という点では、dYdXの日本語のブログもあります。

dYdX日本勢ではトレードコンペが開催されるなど楽しそうです。

このほか、トレードに応じてガバナンストークンのDYDXを入手できるのもDeFiプロトコルならではといえます。トレードでDYDXを手に入れることはトレードマイニングとも呼ばれています。

dYdXの利用にあたっては気を付けたい点もあります。dYdXはノンカストディ型の分散型取引所であることから、ユーザーには鍵管理の責任があり、スマートコントラクトに欠陥がある可能性もゼロではありません。流動性とパフォーマンスの向上については今後に期待したいところです。

入金にあたって、Ethereumのメインネット(レイヤー1)からレイヤー2に資金を移すため手数料(ガス代)がかかります。ただし、2022年7月末現在、幸いガス代が安いので以前よりもdYdXを利用する敷居は下がっています。また、一定額以上の入金でdYdXがユーザーのガス代を負担する仕組みもあります。入金と同様に出金時にも手数料がかかります。

Gasless deposits now live

dYdXのガバナンストークンdYdXについて興味深いアンケート結果が発表されました。

dYdXホルダーに対するアンケート結果

dYdXホルダーにはどのくらいプロのトレーダーがいるか(27.4%)、1週間のうちにどのくらいトレードをするのか(5000ドル未満が73.9%)、どのくらいの頻度でdYdXでトレードするか(まったくトレードしない人が41.7%とで最多)といった現状が明らかになりました。プロジェクトの意思決定に参加していない理由としては「トークン保有数が少ないため影響力はない」(42%)、「インセンティブがないから」(23%)などが挙がっています。

完全な分散化を達成しようとしているdYdXにとって、ユーザーがより積極的にdYdXを利用し、ガバナンスに参加できるよう後押しすることも今後の課題といえそうです。

 

注目される独自ブロックチェーンの立ち上げ

dYdXは次期バージョンのv4でEthereumブロックチェーンを離れ、Cosmos SDKを使って独自のブロックチェーンを立ち上げる計画を2022年6月に発表し、注目を集めました。

dYdX チェーンの発表 – dYdX medium

Ethereum 2.0に向けたマージの計画も明らかになり、Ethereumが盛り上がりを見せ、Ethereumネットワークのレイヤー2技術の開発が進んでいるにもかかわらず、なぜdYdXはEthereumを離れる決断をしたのでしょうか。

発表時のブログ記事によると、分散化を最も重視し、加えて他ネットワークやシステムに依存せず、取引所というサービスに合わせてカスタマイズしやすいという点も考慮し、Cosmosへの移行が決まりました。

dYdXのブログではStark Exの難点を指摘してはいませんが、Coindesk Japanの記事には、dYdXの事例をもとにEthereumレイヤー2ネットワークとCosmosネットワークを比べた詳しい解説があります。

DEX大手のdYdXがイーサリアムに別れを告げた理由 | coindesk JAPAN

dYdXは2022年末までにv4のリリースを予定しています。

独自ブロックチェーンの立ち上げについては、dYdX以外でも検討されてきました。Ethereum上でレンディングサービスを提供するCompoundはCompound Chainのホワイトペーパーを発表していますが、2020年12月の発表からかなりの月日が経過しています。また、Bored Ape Yacht Clubでは、Othersideの土地オークションでEthereumブロックチェーンに混乱をもたらし、Ethereumを去ることが検討されましたが、投票の結果、Ethereumにとどまることが決まりました。また、サイドチェーンになりますが、Axie InfinityのRoninチェーンは少ないバリデータで運用され、一部のバリデータがハッキングにあい、巨額の流出事件を起こしました。

独自ブロックチェーンへの移行は容易な道ではなさそうです。dYdX自身、控えめに「未知数」としていますが、大きなTVLをほこるDeFiプロトコルがEthereumを離れて独自チェーンを立ち上げ、その後の運用に成功するのか注目に値します。2023年に入る頃には一定の結果が出ていることを期待したいです。

 

おわりに

本文中では紹介しませんでしたが、dYdXはHedgieというなんとも愛嬌のあるハリネズミのNFTシリーズを発行していてます。Heggieをプロフィール画像にしている人をソーシャルメディアで見かけたことがある人もいるかもしれません。Heggieの所有者はdYdXの取引手数料の割引を受けられます。Hedgieは仮想通貨界隈のトレンドをとらえたDeFiプロトコルならではのユニークな取り組みといえるでしょう。

画像: OpenSeaにリストされているHedgieたち(OpenSeaより)

本記事執筆にあたって、これまで端から眺めていたdYdXに実際さわってみました。パフォーマンス面には不安が残り、スマートコントラクトに脆弱性が絶対ないとは言えませんが、日本語でも情報が発信されていて、雰囲気のよい日本語コミュニティがあることもあり、新しい分散型サービスをさわるという意味で、少額でdYdXでのトレードを続けてみたいと思いました。

仮想通貨は冬の時代ともいわていますが、新しいサービスやコミュニティーは着実に成長しているようです。今後分散型取引所の分野がどう展開していくのか、2022年末にリリース予定のdYdX v4がどのようなサービスになるのか楽しみです。


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エンジニアの経験と情報学分野での経験を活かして、現在はドイツにてフリーランスで翻訳・技術解説に取り組む。2009年下期IPA未踏プログラム参加。2016年、本メディアでの調査の仕事をきっかけにブロックチェーンや仮想通貨、その先のトークンエコノミーに興味を持つ。

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