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  • 更新日: 2020年10月24日

2017年4月、HyperledgerプロジェクトはMonaxとIntelが提案したプロジェクト「Burrow」(バロー)を採択したことを発表しました。Hyperledger BurrowはEthereumから派生したパーミッション型のスマートコントラクトマシンを開発することを目指しています。本記事ではHyperledger Burrowの生い立ち、得意分野、しくみ、今後の展望について解説します。

 

Hyperledger Burrowの生い立ち

Hyperledger BurrowのもととなったEris-dbは、ブロックチェーンを利用したビジネスアプリケーションのためのオープンプラットフォームErisを提供するMonaxによって開発されたパーミッション型のブロックチェーンノードで、2014年にオープンソース化されました。2017年4月、MonaxとIntelのエンジニアによる共同提案がHyperledgerプロジェクトで採択され、Hyperledger傘下ではじめてのEthereum由来のプロジェクト「Hyperledger Burrow」が誕生しました。

Hey – You got your Ethereum in my Hyperledger! – Hyperledger

Hyperledger Improvement Proposal Burrow v2 (2017年03月28日付、HyperledgerプロジェクトへのBurrowの提案書)

 

得意とする分野

Hyperledgerプロジェクトへの提案の中で、Burrowの主な用途として、バリューチェーンレベルでブロックチェーンを最適化し、スマートコントラクトから恩恵を享受したいビジネスでの利用について言及しています。

実際、Hyperledger Burrowの特徴は、イーサリアムバーチャルマシン(EVM)の仕様を満たすよう実装され、パーミッション型でスマートコントラクトを実行できることにあり、ブロックチェーンを利用したアプリケーションの開発で多くの法的・商業的な要求を満たさなければならない企業のニーズを満たすものと言えます。合意形成には、プルーフ・オブ・ステークのTendermint合意形成エンジンが利用され、高いスループットを達成するとし、パフォーマンスの面でも企業での利用を想定したものとなっています。

また、BurrowのもととなったMonaxのEris-dbがブロックチェーンを利用したビジネスアプリケーションプラットフォームの一部であること、HyperledgerプロジェクトにBurrowを提案したMonaxとIntelはともにEnterprise EthereumアライアンスのローンチメンバーであることからもHyperledger Burrowはビジネスを強く意識したプロジェクトとなるでしょう。
※ Enterprise Ethereumについてはビジネス用途に特化した企業のためのイーサリアム 「Enterprise Ethereum」 誕生をご参照ください。

 

Hyperledger Burrowのしくみ

Hyperledger Burrowは合意形成エンジン、アプリケーション・ブロックチェーン・インターフェイス(ABCI)、スマートコントラクトアプリケーションエンジン、ゲートウェイという四つの主な構成要素から成り立っています。

画像: Hyperledger Burrowのアーキテクチャー(HyperledgerプロジェクトへのBurrowの提案書より、青枠・青字は追記)

それぞれの構成要素を詳しく見てみましょう。ブロックチェーンというと独自の合意形成アルゴリズムを持っていることが多いですが、Hyperledger BurrowはTendermint合意形成エンジンを利用するアプローチをとり、ビザンチン将軍問題に耐性のあるデポジットベースのProof of Stake(プルーフ・オブ・ステーク)アルゴリズムでトランザクションを順序付けし、一層上のアプリケーションエンジンで利用できるように処理します。余談ですが、Tendermintは以前このブログでも紹介したブロックチェーンをつなぐCosmosでも利用されています。
※ Cosmosについてはブロックチェーン同士をつなぐサービス「Cosmos」をご参照ください。

ABCIは合意形成エンジンとアプリケーションエンジンをつなぐもので、抽象化、モジュール化によって合意形成エンジンとスマートコントラクトアプリケーションの依存度を下げます。HyperledgerプロジェクトへのBurrowの提案書では、現状のブロックチェーン関連の技術で機能同士が密に結合していることを指摘し、ほかのHyperledgerプロジェクトと協調してこのようにモジュール化を進めていく方針を示しています。

スマートコントラクトアプリケーションエンジンのもっとも基本的な部分では、ABCIを通して合意形成エンジンからトランザクションを受け取り、検証し、アプリケーションの状態に適用していきます。サブコンポーネントとしてパーミッション型のイーサリアムバーチャルマシンなどがあり、イーサリアムのスマートコントラクトを実行できます。

ゲートウェイはシステムの統合やブロックチェーンの外のアプリケーションとのインターフェイスとなるREST、JSON-RPCエンドポイントを提供します。

 

今後の展望

2017年4月にHyperledgerプロジェクトのひとつとして採択されたBurrowですが、Hyperledgerプロジェクトへの提案書の中で現在作業中または今後取り組む必要のあるタスクとして、ユーザビリティーに関するものでは文書の整備、長期間の利用やパフォーマンステスト、品質保証、さらにコードの改善を挙げています。

より大局的な方向性としては、Hyperledgerの他のプロジェクトとの横断的なコラボレーションを模索しているとしています。Hyperledger Fabricのリリースに関する記事では、Hyperledger Burrowと分散型台帳のためのプラットフォームHyperledger Sawtoothは、Hyperledger Swatooth上でイーサリアムバーチャルマシンが動作するよう共同作業を進めているとしています。

Fabric 1.0: Hyperledger Releases First Production-Ready Blockchain Software – CoinDesk

ブロックチェーン技術の普及期に入り企業がビジネスで利用することを想定したブロックチェーンソフトウェアやプラットフォームの開発が盛んになってきています。中でもHyperledger、Enterprise Ethereumといったプロジェクトの動きには今後も注目していきたいところです。

 

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

BurrowHyperledgerブロックチェーン

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