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暗号通貨に関する情報を提供するメディア企業Bankless LCCが2021年5月に分散型自律組織BanklessDAOを立ち上げて一年が経ちます。本記事ではBankless LCCと同社が普及しようとしている銀行に依存しないbanklessという思想から始め、BanklessDAO誕生の経緯やどのように機能しているのかについて説明します。

 

Banklessとは

暗号通貨が浸透する中で、さまざまな暗号通貨メディアが登場しました。Banklessも暗号通貨に関するメディアの一つですが、ユニークな点として「旧来の銀行なしで生きていくための情報を提供する」というコンセプトがあります。

Bankless – The ultimate guide to crypto finance

Bankless LCCはアンチ銀行というよりは、暗号通貨が浸透する中、「伝統的な金融システムはいらない」「少なくとも以前と比べて不要になってきている」という立場をとっています。ただ、暗号通貨や暗号通貨を利用した金融の世界(オープンマネーシステム)はまだ始まったばかりで、オープンマネーシステムを使いこなすのは簡単ではありません。そこで、Bankless LCCはオープンマネーシステムの道案内を案内し、購読者のリテラシーを高めることを目指しています。

具体的には、Banklessのコンテンツの購読者は下の図にあるように、オープンマネーシステムの貨幣(BitcoinやEthereumなど)に始まり、個人の財布にあたるウォレット、暗号通貨の世界の銀行にあたる取引所やDeFiサービス、それらを使ってどのように社会生活を営めるのか学んでいきます。

画像: Banklessのメディアで学べる知識(Bankless LCCウェブサイトより)

Bankless LCCのコンテンツの使い方については以下のガイドに詳しい説明があります。

Going Bankless: The Ultimate Guide

暗号通貨と金融というと、2020年のDeFiサマーやそれに続く暗号通貨ブームでいかにお金が増えるかという投機的な側面に注目が集まりましたが、Bankless LCCは暗号通貨資産を増やすための情報だけでなく、「銀行なしで事業を営む方法」「はじめてのクリプトVISAカードを入手する方法」といったまさに「銀行なし」で生活しビジネスまで営む方法を紹介しています。

筆者は移民として生きる中で銀行や保険など旧来の金融システムに煩わされた経験があり、「どうbanklessに生きていけるか」という切り口で情報提供するBankless LCCに興味を持ちました。Bankless に関するのコンテンツは先進国に住む人が旧来の銀行から距離を置くのを助けるだけでなく、途上国で銀行口座を持たないunbankedと呼ばれる人たちのリテラシー向上にも貢献し、オープンマネーシステムへの扉を開く可能性もあります。

Banklessは2019年にニュースレターを発行し始め、2020年に企業としてBankless LLCが設立されました。Banklessは無料でニュースレターやポッドキャスト、動画といったコンテンツを提供しているほか、有料(月額22ドル)で情報を提供したりプライベートコミュニティを運営したりもしています。Banklessに登録した際に届くメールによると2022年6月現在20万人の購読者がいるようです(無料・有料すべて含めた購読者数だと考えられます)。

営利企業としてコンテンツを提供しているBankless LCCは、2021年5月に自律分散型組織BanklessDAOの立ち上げを発表しました。

Announcing Bankless DAO 🏴. The revolution will not be banked. | by Bankless DAO | BanklessDAO | Medium

※ DAOについて詳しくは本ブログの用語解説記事「自律分散型組織DAOとは」を参照してください。

 

BanklessDAOの誕生

2020年のDeFiサマー、それに続いた暗号通貨ブーム、NFTブームを経て、まだマスに浸透しているとは言えないものの、オープンマネーシステムの認知度が高まりつつあります。

Bankless LCCがDAOの立ち上げを発表した当時のブログ記事に以下の記述があります。

The bankless movement is now larger than any single entity, newsletter, podcast, or person to contain. It needs an internet scale organization to achieve its goals.

(バンクレスの流れは今や一団体、ニュースレター、ポッドキャスト、あるいは個人では扱えないほどの規模になっています。目標を達成するためには、インターネット規模の組織が必要です。)

Banklessというメディアは一営利企業が運営するメディアですが、Banklessの周縁には「旧来の銀行に依存しないで生きていく」というある種過激な思想を共有する人たちが集まっています。このbanklessの思想を支持する人たちをつなぎ、情報を共有し、baklessの流れを拡大するためのコミュニティとして、Bankless LCCが音頭を取る形でBanklessDAOを立ち上げました。BanklessDAOはBankless LCCが中心となって立ち上げられましたが、Bankless LCCはBanklessDAOの一員という立場をとっています。

2020年の夏にCompoundがガバナンストークンを発行したのを皮切りに、さまざまなプロジェクトがこれに続き、コミュニティによるガバナンス、プロジェクトのDAO化の流れが進みました。Maker DAOのように中央集権的なプロジェクトがDAOに移行するケース、最初からDAOとして立ち上がるケースが多い中、BanklessDAOのように営利企業が事業と共存させる形で立ち上げたDAOは珍しい存在です。

 

BanklessDAOはどのように機能しているのか

BanklessDAOの立ち上げにあたって、トークンBANKが10億枚発行されました。Banklessは「BANKは金銭的な価値のない、Banklessコミュニティーに参加していることを表すだけのトークン」と説明しています。2021年11月に一時的に価格が急騰したためグラフが見にくいですが、多くの期間でBANKは0.1ドルを下回り、2021年6月現在約0.02ドル(2.6円ほど)で取引されています。BANKは分散型取引所で購入できるほか、BanklessDAOのバウンティに参加するなどして獲得することもできます。

画像: BANKの価格推移(CoinMarketCapより)

BanklessDAOの発足時に発行されたトークンは当初Bankless LCCには割り当てられませんでした。DAOの発足直後にBankless LCCは「BANKの総供給量の25%を条件付きでBankless LCCと創業チームに割り当てる」という提案を行いました。つまり、Bankless LCCと創業チームへのトークン割り当てがコミュニティに委ねられた形になります。(多くプロジェクトでトークンの初期分配は創業チームによって決められ、創業チームやアドバイザーなど仲間内に多くのトークンが割り当てられることが少なくありません。)

Bankless LCCによる提案は99%を超える大多数の賛成で受け入れられ、結果、BANKは購読者や寄付をして貢献した人に30%、コミュニティの基金に45%、Bankless LLCに25%が割り当てられました。


画像: BANKの初期配分(BanklessDAOのブログ記事より)

BanklessDAOの意思決定に関する投票はSnapshotで行われ、投票にはBANKが必要です。(Snapshotは有名プロジェクトを含めさまざまなDeFiやWeb3プロジェクトが利用している投票プラットフォームで、各プロジェクトのトークンで投票に参加できます。)

BanklessDAO – Snaposhot

BanklessDAOのコミュニケーションは、Discordサーバー上で行われ、さまざまなチャンネルがあります。Discordはゲーム分野から利用が広がったコミュニティコミュニケーションアプリで、オンラインサロンやWeb3サービスのコミュニティでの利用もみられるようになりました。

BanklessDAOのDiscordには誰でもアクセスできます。一部のチャンネルにアクセスするには最低35,000BANK(2022年6月のレートで91000円)を保有するLevel 1以上である必要があります。限定チャンネルには暗号通貨やDeFiに関するもののほか、心身の健康に関するものもあるようです。

BanklessDAOではGuild(ギルド)と呼ばれる13のスキルプールが存在し、DAOのメンバーはそれぞれのスキルに応じて執筆、開発、デザイン、翻訳といったギルドに所属し、スキルを活かせる機会があればプロジェクトに参加してDAOに貢献します。

What are Guilds and How Do I Join?

BanklessDAOは3ヶ月のシーズンと呼ばれる期間に対して目標や予算割当を定めて活動しています。2022年6月現在、シーズン4が進行中です。以下はシーズン4についての投票で、99%以上の賛成で可決されました。

BanklessDAO Season 4 Specification – Snapshot

 

BanklessDAOは実際何をしているのか

BanklessDAOは10億人が暗号通貨を使うbanklessな世界を目指して活動しています。Bankless LCCと同様にメディアとして情報を発信していますが、メディアそのものというよりもコミュニティとしての色合いが強いようです。

BanklessDAOの活動の全体像はなかなかつかみにくく、BanklessDAOのDiscordで「どこかに活動の全体像がまとまっているところはありますか?」と質問をしたところ、毎週金曜日のミーティングに参加することと以下のNotionのページを参照することを勧められました。

Top-Level BanklessDAO Notion Pages – Notion

Notionを見てみると、全体としてメディアなどを通じてbanklessの思想を広めつつ、地域ごとのグループでより地域にあった形の啓蒙活動をしている印象を受けます。

画像: BanklessDAOのギルドとプロジェクトの全体像(BanklessDAO Org Mapより)

メディアやコミュニティとしての活動のほかに、BanklessDAOは流動性を提供するなどして資産を運用したり、BalancerDAOとのコラボレーションではスポンサーシップを受けたりもしています。BANKの初期配分があるとはいえ、持続可能な形で活動を続けるために、独自のお金の流れを生み、DAOの活動資金を生み出しています。Web 2.0の世界では、何らかのアイディアを広めるコミュニティ活動というと、資金面では広告や寄付に頼りがちでしたが、BanklessDAOをはじめとするDAOがDeFiで資金運用する様子からは新たな組織のあり方が垣間見えるようです。

 

BanklessDAOに潜入してみた

筆者はBanklessという思想や、それに共感する人の集まる場所を作ろうとする動きにとても共感したものの、いきなり分散型取引所で少なくないガス代を払って35,000BANKを購入し、BanklessDAOの世界に飛び込むことにはためらいを感じました。

ただ、35,000 BANKを保有していなくても、BanklessDAOのDiscordサーバーには閲覧できるチャンネルがたくさんあり、できるところまで進んでみようとBanklessDAOの世界に飛び込んでみました。

サーバーへの参加承認プロセスを済ませて、どのようなスキルがあるかを知らせると、一定以上の権限を持つユーザーにGuest Passを発行してもらえます。Guest Passを手に入れたらギルドやプロジェクトに登録できます。

DAOメンバーに勧められた翻訳ギルドと国際メディアプロジェクトに登録してみました。所属ギルドのアナウンスなどが届くようになり、まだ具体的な活動に加わってはいませんが、機会があったらぜひ参加してみたいです。

筆者がやりとりをしたDiscord上のBanklessDAOのメンバーたちはとても親切で、「多くの人がプロジェクトに貢献して数ヶ月で35,000 BANKを貯めてLevel 1のメンバーとしてDAOに参加するよ」と教えてくれました。排他的なクラブとしてのDAOも存在する中、資金がない人、お試しでDAOに加わってみたいという人にも門戸が開かれていることに感動しました。

BanklessDAOのDiscordサーバーには新しい人が続々と参加しているようで活気を感じます。また、BanklessDAOのカレンダーにはさまざまなミーティングのスケジュールが記載されていることからも、コミュニティが活発に活動している様子がうかがえます。

 

おわりに

本記事では旧来型の銀行が不要の未来を模索する「bankless」という思想のもとに作られたBanklessDAOについて紹介しました。

BanklessDAOの立ち上げには営利メディアを運営するBankless LCCが深く関わっています。BanklessDAOは情報発信主体というよりも、Bankless LCCのメディアの購読者を含むbanklessという思想に賛同する人たちのコミュニティで、この中から新しくBankless LCCのメディアの購読者になる人もいるでしょう。また、逆にBankless LCCの購読者がBanklessDAOに興味を持ちメンバーとなるかもしれません。このように双方は相対するのではなく、ウィンウィンの関係にあると言えそうです。

ある種ニッチなトピックを扱い、熱心なファンをかかえているビジネスでは、Bankless LCCのようにコミュニティを明確にDAOとして立ち上げ、当該分野を盛り上げ、自身の利益にもするという戦略がとれるかもしれません。

Banklessという思想の広がり、Bankless LCCとBanklessDAOが今後どのようにシナジーを発揮していくか注目したいところです。


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エンジニアの経験と情報学分野での経験を活かして、現在はドイツにてフリーランスで翻訳・技術解説に取り組む。2009年下期IPA未踏プログラム参加。2016年、本メディアでの調査の仕事をきっかけにブロックチェーンや仮想通貨、その先のトークンエコノミーに興味を持つ。

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