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Amazon、IBM、Microsoftといったコンピューター、インターネット業界の大手がクラウド上でブロックチェーンを利用できるサービスを提供し、ブロックチェーンを使うハードルを下げる動きも活発になってきました。本記事ではこういったBaaSと呼ばれるものについて紹介します。

 

BaaSとは

必要なソフトウェアを必要なだけインターネット経由で提供するSaaS(Software as a Service、サースと読んで「サービスとしてのソフトウェア」を意味します)、そのプラットフォーム版でソフトウェアを動かすOSやハードウェアを提供するPaaS(Platform as a Service、パース)について耳にしたことがあるという人も少なくないと思います。

SaaSやPaaSに続いて、ブロックチェーンをクラウド上でサービスとして提供するBaaS(Blockchain as a Service、バース)という言葉も登場しました。BaaSには、ブロックチェーンがすぐに使えるよう、あらかじめ必要な設定がされた状態で提供されています。BaaSを利用するメリットはSaaSやPaaS同様、個々の企業やサービスがゼロからシステムを構築して稼働させる必要がなく、ブロックチェーンを利用したアプリケーションの開発に専念できることにあります。これはブロックチェーンを利用するハードルを下げるため、ブロックチェーンの普及に大きく影響すると考えられています。

続いて大手各社Amazon、IBM、Microsoftが実際に提供しているサービスを例にBaaSとはどのようなものなのか、何ができるのか具体的にみてみましょう。

 

各社のサービス

AmazonはAWS Blockchain Templateとして、IBMとMicrosoftはそれぞれのクラウドサービスIBM Cloud(旧Bluemix)、Microsoft Azure上でブロックチェーンに関するサービスを提供しています。

AWS Blockchain Template


画像:AWS Blockchain Template ウェブサイトより

AmazonのAWS Blockchain Templateは2018年4月に発表された比較的新しいサービスです。

AWS Blockchain Templates

Amazon Web ServicesのブログにAWS Blockchain Templateのリリース発表とプライベートなEthereumネットワークを開始する方法を紹介した記事があります。

新しい AWS ブロックチェーンテンプレートを使用してブロックチェーンを始める | Amazon Web Services ブログ

AWS Blockchain Templateでは記事中で紹介されているプライベートなEthereumネットワークのほか、パブリックなEthereumネットワークとプライベートなHyperledger Fabricのネットワークを稼働させることができ、初期設定は数クリック、数分で完了するとあります。運用にあたってはネットワークの統計情報を一覧できるブラウザインターフェイスも提供されています。

利用料金はブロックチェーンネットワークの実行に必要な AWS のリソースの料金のみで追加料金はかかりません。

まだ新しいサービスのためAWS Blockchain Templateを利用した事例は出いませんが、イングランド銀行やアメリカの取引所CoinbaseなどAWS上でブロックチェーンを稼働した事例が紹介され、さらにAWSは人気のクラウドプラットフォームであることから、今後多くの利用事例が出てくると考えられます。

IBM Blockchain


画像:IBM Blockchain Platform ウェブサイトより

IBMはLinux FoundationのHyperledger FabricをベースにしたIBM BlockchainをIBM Cloud上でIBM Blockchain Platformとして提供しています。IBM Blockchainは業界横断で利用されることを想定したビジネス向けのプライベートブロックチェーンです。

IBM Blockchain Platform – Japan

IBM Blockchain Platformではプロトタイピングや教育目的での利用を想定したスタータープラン、実際の業務での利用を想定したエンタープライズプランの2種類のプランが用意されています。スタータープランは機能や利用条件に制限がつきますが無料です。エンタープライズプランについてはネットワークを構成するメンバーごとに1000ドル、さらにトランザクションの検証と承認などを行うピアごとに1000ドルの利用料がかかります(2018年5月時点)。IBMはプラットフォームと合わせてコンサルティングやソリューションの共同開発といったサービスもオプションとして提供しています。

IBM Blockchain Platformのもっともよく知られた事例としてダイヤモンドの管理台帳Everledgerがあります。そのほかシンガポールのFreshTurfの物流ソリューション、大和総研ビジネス・イノベーションの実証実験が事例としてIBM Blockchain Platformのウェブサイトで紹介されています。
※ Everledgerについては本ブログの「ダイヤモンドの管理台帳Everledger」も参考にしてください。

本格的に利用するとなると相応のコストがかかり、大企業向けという印象ですが、EverledgerやFreshTurfはいずれも若い会社で、IBMは必ずしも大企業のみをターゲットとしているわけではなさそうです。

Microsoft Azure


画像:Microsoft Azure ウェブサイトより

Microsoftは同社のクラウドプラットフォームAzureで、EthereumやHyperledger Fabricをはじめ多数のブロックチェーンや関連サービスを提供しています。Microsoftは早い時期からBaaSにのりだし、Ethereumのβ版が提供された2015年には、Ethereumブロックチェーンに特化した分散型アプリケーションの開発スタジオConsenSysとのパートナーシップのもとEthereumブロックチェーンの提供を始めました。

ブロックチェーン テクノロジとアプリケーション | Microsoft Azure

Azure MarketplaceではMicrosoftによってプライベート/パブリックEthereumブロックチェーン、Hyperledger Fabricが提供されているほか、Microsoftがローンチメンバーの一社でもあるEnterprise Ethereum Allianceが提供するJPモルガンのQuorum、同じくEnterprise Ethereum AllianceのローンチメンバーのBlockAppsによるブロックチェーンなどサードパーティーのものも含め多数のアプリケーションが提供されています。

Microsoft Azure Marketplace

利用料金は無料のもの、時間あたりのもの、ライセンスを持ち込むもの、変動料金のものなどアプリケーションによって異なります。

MicrosoftはAzure上でのブロックチェーンの利用事例として、3Mの不正開封がわかるスマートラベルとデータ共有の概念実証プロジェクト、オーストラリアの旅行会社WebjetのEthereumブロックチェーンを利用したホテル予約システム、シンガポール銀行協会とシンガポール金融管理局が主導する分散型台帳活用の試みProject Ubinを紹介しています。

また、Microsoftは2017年8月にブロックチェーンアプリケーションの統合的な開発環境を提供するオープンフレームワークを実装するミドルウェア「Coco Framework」を発表しています。Coco Frameworkの登場により、企業レベルで安全に複数のブロックチェーンを導入し高速にトランザクションを処理することがより現実的になりました。
※ Coco Frameworkについては本ブログの「Coco Framework – Microsoftが提供するエンタープライズ向けブロックチェーンプラットフォーム」で詳しく解説しています。

 

おわりに

ブロックチェーンに注目が集まる中、本記事で紹介した3社以外にも、Googleが独自のブロックチェーン関連技術を開発中であると報道され、ソフトウェア大手Oracleは2017年Hyperledgerプロジェクトに参加しBaaS「Oracle Blockchain Cloud Service」についてComing Soonとして同社ウェブサイトでリリースを予告しています。

クラウドベースのサービスが提供されるようになり、ブロックチェーンを利用したアプリケーションやシステムの開発が身近になりつつあります。ブロックチェーンの利用を考えている企業の方、開発者の方はビジネスの種類、ブロックチェーンの用途、予算、開発の熟練度に応じて各社サービスを検討してみてください。

 

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

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