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Arweave(アーウィーブ)とは

Arweaveは、ロンドンに拠点を置くスタートアップが開発を進める分散型ストレージネットワークで、最低200年という超長期でデータ保存を保存します。Arweaveの創業は2017年末の暗号通貨ブーム以前の2017年7月にさかのぼります。

arweave

暗号通貨の情報を扱うCoinMarketCapによると、Arweaveは創業後の2017年8月にArchainとして発表され、2018年2月にArweaveに改名、同年6月にネットワークがローンチされました。2019年にはArweaveネットワーク上の最初のアプリケーションとしてPermawebというレイヤーがリリースされ、分散型のウェブサイトやウェブサービスを構築できるようになりました。Arweaveのウェブサイトは、見た目こそ現在私たちが利用しているウェブサイトと変わりませんが、Permaweb上に構築されたウェブサイトです。

2020年1月にはARCA DAOが立ち上げられ非中央集権化が進められ、6月にはスマートコントラクトの実行環境がプロトタイプとしてリリースされました。残念ながら2022年5月中旬現在、DAOに関するアップデートは見当たりませんでした。

The ARCA DAO is Launched. The Arweave community and the core… | by The Arweave Project | Medium

2020年後半から2021年にかけてはEthereumキラーと呼ばれるブロックチェーンが注目を集めたこともあってか、Arweaveはこれらのブロックチェーンとの連携を進めました。

Arweaveのほかにも、分散型ストレージというとIPFSFilecoinが古くから存在します。2020年末から2021年にかけてNFTが盛り上がりを見せる中、NFTのデータの保存先として、NFTの提供元のサーバーや中央集権型のクラウドサービスなどに依存しない分散型ストレージの利用が進み、これらのサービスに対して期待が寄せられていると考えられます。

企業情報を扱うCrunchBaseによると、Arweaveは2017年から2020年にかけて合計22百万ドル(本記事執筆時点2022年5月中旬のレートで約28億円)を調達し、出資者の中にはAndreessen Horowitz、Union Square Ventures、Coinbase Venturesといった有名ベンチャーキャピタルの名前が挙がっています。

Arweave – Crunchbase Investor Profile & Investments

 

Arweaveの仕組み

全体像

Arweaveにはいくつかのレイヤーがあり、最初に全体像を外観しておくと、Arweave仕組みを把握しやすくなります。

画像: Arweaveの全体像(Arweaveの技術文書より。青字は筆者追記)

Arweaveの基盤として、データストレージを提供するネットワークがあり、ネットワークのノードはBlockweaveと呼ばれる独自のブロックチェーンのような台帳でデータを管理しています。Arweaveネットワークの上にはPermawebと呼ばれるレイヤーがあり、コンテンツがなくならない分散型のインターネットのように機能しています。

コンテンツの保存

Arweaveネットワークには誰でもコンテンツを保存したり、ストレージスペースを提供したりできます。コンテンツを保存したい人は、ArweaveのトークンARでコンテンツ保存時に一度だけ料金を支払います。Arweaveはウェブサイトで「Arweave enables you to store documents and applications forever.」(Arweaveは文書やアプリケーションを永久に保存します)としていますが、実際は「最低200年間」です。とはいえ200年といえば人の寿命をゆうに超えていて、今のところほぼ永久と考えて差し障りなさそうです。

定期的にストレージ利用料を支払わなくて大丈夫なのか疑問に思う人もいるかもしれません。Arweaveはストレージの価格がこれまで時間の経過とともに低下してきたことを考慮して保守的にこの一度きりの料金を計算しているといいます。料金の詳細については、Arweave Wikiに記載があります。コンテンツを保存した人が支払ったARは、ストレージスペースの提供者(マイナー)に報酬として段階的に支払われます。

ARの価格は時期によってはかなり乱高下していて、サービスに影響を及ぼさないか若干心配ではありますが、本記事執筆時点2022年5月中旬までのところトラブルは起きていないようです。

画像: ArweaveのトークンARの価格推移(CoinMarketCapより)

Arweaveネットワークでは、SPoRA(Succinct Proofs of Random Access)と呼ばれるPoWのようなアルゴリズムで合意形成が行われ、マイナーはナンスを生成し、ローカルに条件を満たすブロックのチャンクを持っていることを証明し、ブロックを生成します。ローカルに多くのチャンクを保有しているとブロックの生成で有利になることから、マイナーにはブロックを複製してローカルに保存するインセンティブが働きます。

コンテンツの検索

Arweaveネットワーク上に保存されたコンテンツへのアクセスは、ゲートウェイと呼ばれるノードを介して行います。ゲートウェイはトランザクションとトランザクションに関連づけられたタグをインデックス化し、検索可能な形でデータベースに保持しています。ゲートウェイは個々にコンテンツポリシーを持っていて、どのコンテンツをインデックス化するかしないかを決定します。つまり利用するゲートウェイによって、たとえばArweave上の分散型のソーシャルメディアでは、表示されるコンテンツが異なります。

ゲートウェイはインデックスをArweaveネットワークに対して公開しているため、Arweave上で動的なウェブサイトを運用することもできます。

 

Arweaeの仕組みについては、Arweave WikiとYellow Paperと呼ばれている論文に詳しい解説があります。

 

他の分散型ストレージとの違い

Arweaveと同様に分散型ストレージを提供するサービスとして、IPFSとFilecoinがあります。分散型ウェブのためのプラットフォームという点では、Dfinityとも類似点があるといえるかもしれません。それぞれについて詳しくは本ブログの以下の記事を参考にしてください。

ここでは古くから存在する分散型ストレージのIPFSとFilecoinをArweaveと比較してみましょう。

IPFSではノードがファイルを保存するインセンティブ構造がなく、ファイルが失われてしまう可能性があります。IPFSに独自のブロックチェーンとインセンティブを加えたのがFilecoinで、IPFSを開発しているProtocol Labsが中心となってオープンソースで開発を進めています。

IPFSとFilecoinは競合や上位/下位といった関係にあるのではなく、相互補完的な関係にあり、迅速にデータを取得・配布したい場合はIPFSをホットストレージのように、大容量のデータを安全に長期保存したい場合はFilecoinをコールドストレージのように使え、両者を併用することも考えられます。

ArweaveとFilecoinを比べてみましょう。Arweaveのユーザーは最低200年のデータ保存に対してデータ保存時に一回だけ料金を支払います。一方Filecoinではストレージプロバイダーと契約して都度費用を支払います。それぞれの料金は以下のウェブサイトで公開されています。

2022年5月中旬現在、1GBのデータをArweaveで保存する場合は約0.28862 AR(約4.64ドル、約600円)、同量のデータを1年間Filecoinで保存する場合は0.0000003169480794689453 FIL(約0.0000028ドル、0.000363円)の料金がかかります。Filecoinの料金を200倍にして単純に200年分の料金を計算してみると1GBあたり0.0726円かかることになります。ストレージ価格が年々安くなっていること、競争が激しくなることを考えるとFilecoinの料金は今後より安くなる可能性があります。価格だけで比較すると、Arweaveも高額ではないもののFilecoinに軍配が上がります。

ただ、Arweaveでは200年間の保存が約束される一方で、Filecoinでは支払いが止まるとデータの保存は保証されません。また、ストレージプロバイダーがデータを人質にとって法外に高いコストを請求する可能性もなくはなく、Filecoinは分散化された複数のストレージプロバイダーと契約することを推奨しています。

続いてデータの書き込みと取得にかかる時間を比較してみましょう。Arweaveではブロックの生成に2分から10分かかります。書き込みには数分かかるもののブロックサイズやトランザクションサイズに制限はなく、ユーザーは一度に大量のファイルをアップロードできます。また、複数のトランザクションをまとめるBundlrを利用すれば一度に処理可能なトランザクションが増え、高速に書き込めるといいます。データの取得については数値が公開されていませんが、ウェブアプリケーションが応答するのに十分なスピードでデータを取得できると考えられます。

一方Filecoinについては、Filecoinのネットワークパフォーマンスについて説明した文書によると、1MiBのファイルがブロックチェーン上に公開されるまでに5分から10分かかり、データが完全にエンコードされて保存されるまでにはさらに時間がかかります。Filecoinのノードは多くの場合データをエンコードして保存しているためデータの取得時にはデコードする必要があり、データの大きさによってはデータを取得するまでに数時間かかるようです。これがIPFSとFilecoinの併用が選択肢となる所以です。

永久に分散型でシンプルにデータを保存したいという場合にはArweaveに料金を支払ってデータを保存する価値がありそうです。NFTのデータや検閲に耐性を持たせたい情報を保存する際にArweaveは価値を発揮すると考えられます。

マイナーの視点からもArweaveとFilecoinを比べてみましょう。FilecoinではマイナーはFILをステークする必要がありますが、ArweaveではARをステークする必要はありません。代わりにPoW様のコンセンサスアルゴリズムSPoRAに従ってブロックを生成するためにマイニングマシンのスペックが要求されます。ArweaveやFilecoinのマイニングの収益を計算できるツールや、マイニングプールによる試算が公開されていますが、現在のところ大きな収益は期待できず、投資回収までの道のりは長くなりそうです。

 

Arweaveが使われているサービス

Arweaveはすでにブロックチェーン・暗号通貨分野の有名サービスで使われています。その代表例として、2021年にEthereumキラーとして注目を集めたブロックチェーンSolanaがあります。SolanaはArweaveにブロックチェーンデータを保存しています。

Introducing SOLAR: An Arweave-Solana Bridge for Housing High-Performance Blockchain Data on Arweave | by The Arweave Project | Medium

当時の価値で百万ドルを超える価格で落札された作品を含むDegenerate Ape AcademyといったNFTコレクションもArweaveを利用しています。

Why NFTs on Arweave and Solana Took Off This Summer | Arweave.news

DeFiをはじめ分散型アプリケーションはプロトコルレベルでは分散化されていますが、フロントエンドのインターフェイスが中央集権的なサーバーで管理されていると、単一障害点になり、検閲に対する耐性も発揮できません。Arweaveはニュースレターの中で、SushiSwap、UniSwap V2、Yearn.Financeのインターフェイスがポートされたと報告しています。

Arweave News: September. Announcing the Arweave Open Web… | by The Arweave Project | Medium

分散型メディアプラットフォームMirrorでは、ユーザーはEthereumアドレスでログインし、通貨はETHを用いますが、記事はArweaveに保存されるためユーザーは記事の保存で高額なガス代を支払う必要はありません。Arweaveに記事を保存する費用は極少額のためMirrorが負担しています。
※ Mirrorについて詳しくは本ブログの記事「Mirror − アイディアを共有し資金調達できるメディアプラットフォーム」を参考にしてください。

このほか、Arweaveは当局の検閲によりインターネットから削除される可能性のある情報の保存先としても利用されています。ロシアのウクライナ侵攻、中国のゼロコロナ政策に関する情報もアーカイブされています。

画像: Arweave CEO Sam Williams氏のツイート

 

おわりに

本記事では分散型ストレージネットワークArweaveについて解説しました。分散型ストレージは古くて新しい分野ですが、NFTの流行やWeb3の文脈で注目を集めています。NFTやWeb3のサービスを利用しないという人でも、インターネットでリンク切れのページがなくなるだけでどれだけ快適になることでしょう。また、分散型ストレージは10年以上前からWikileaksが実現しようとしてきた検閲の手の届かない情報公開にも寄与する可能性があります。

今後Arweaveをはじめとする分散型ストレージネットワークがどのように発展し、利用が広がっていくのか注目しておきたいところです。


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Akiko T.

Akiko T.

エンジニアの経験と情報学分野での経験を活かして、現在はドイツにてフリーランスで翻訳・技術解説に取り組む。2009年下期IPA未踏プログラム参加。2016年、本メディアでの調査の仕事をきっかけにブロックチェーンや仮想通貨、その先のトークンエコノミーに興味を持つ。

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