ライトニングネットワークを利用し、ビットコインの受け取りと支払いの両方ができるAndroid向のウォレットアプリBitcoin Lightning Walletを紹介します。
※ 冒頭の画像はGoogle PlayストアのBitcoin Lightning Walletのページのスクリーンショットです。
目次
Bitcoin Lightning Walletとは
Bitcoin Lightning Walletは、Anton Kumaigorodski氏が開発するビットコインウォレットでありライトニングネットワークのノードでもあります。
ライトニングネットワークとは、ビットコインのブロックチェーンなど既存のブロックチェーン上に新たなレイヤーを構築して、トラストレスな状態を保ちつつも、オフチェーンで迅速にかつ安く送金する技術です。ライトニングネットワークには仕様に基づきいくつかの実装があります。Kumaigorodski氏の実装もそのひとつで、以前本ブログで紹介したACINQのEclairのコードを改変して作られました。コードはGitHubで公開されています。
GitHub – btcontract/lnwallet: Bitcoin Lightning Wallet for Android
Bitcoin Lightning WalletはEclair Wallet同様、通常のビットコインウォレットとして利用できるほか、Eclair Walletでは送金のみに対応していたところ、ビットコインの受け取りにも対応しています。
Bitcoin Lightning Walletの概要を押さえたところでさっそくインストールして利用してみましょう。
※ ライトニングネットワーク、Eclair Walletについて詳しくは本ブログの少額支払いを可能にするソリューション「ライトニングネットワーク」、ライトニングネットワーク対応のEclair Wallet使用レポートを参考にしてください。
Bitcoin Lightning Walletのインストール
Bitcoin Lightning WalletはAndroid向けのアプリとして公開されています。Android 5.0以上を搭載したスマホでGoogle Playストアからアプリをダウンロード、インストールします。
アプリを開くと、ウォレットのマニュアルを読んでから進むようにとメッセージが表示されます。一読したあと、「New Wallet」を選択して新しくウォレットを作成しましょう。
ウォレット画面が表示されます。「View mnemonic phrase」をクリックし、ウォレットを復元する際に使用するニーモニックフレーズと呼ばれる12個の英単語を表示し、メモしておきます。
これでBitcoin Lightning Walletのインストールが完了しました。
Bitcoin Lightning Walletでのビットコインの送受金
通常のビットコインウォレットとしての送受金については、従来のビットコインウォレットと変わりなく利用できます。
ビットコインを受け取る場合は、メイン画面右下のビットコインのロゴのアイコンをクリックして「Receive funds」を選びます。続いて通常のビットコイントランザクションかライトニングを利用したものかたずねられるので、ここでは「Bitcoin transaction」を選びます。表示されたQRコードかアドレスを伝えてビットコインを送金してもらいましょう。送金からしばらくすると、履歴にトランザクションが表示されます。
ビットコインを送金したい場合は、メイン画面右下のビットコインのロゴのアイコンをクリックして「Send funds」を選びます。QRコードをスキャンするかアドレスを入力するかたずねられるので都合のよい方法を選択します。続く送金フォームで必要事項を入力し、「NEXT」をクリックします。最後に承認速度とマイナーへの手数料を選択して「PAY」をクリックすると送金が完了します。
ただし送金先アドレスの入力は機能せず、QRコードをスキャンする必要があります(2018年7月現在)。
ライトニングネットワークの利用
送受金で利用するペイメントチャネルの設定、ビットコインの送金、受け取りの順でライトニングネットワークの利用について見てみましょう。
ペイメントチャネルの設定
メイン画面右下のビットコインのロゴのアイコンをクリックして「Open new channel」を選びます。Bitcoin Lightning Walletはペイメントチャネルの情報をデバイス上で暗号化し、バックアップを外部サーバーに保存します。このサービスは有料で、初めてペイメントチャネルを開く時に50チャネル分の50ストレージトークンを1000Satoshi(2018年7月10日現在8円ほど)で自動的に購入する旨メッセージが表示されます。「OK」をクリックして同意し、ピアの選択に進みます。ここではBitcoin Lightning Walletが推奨しているACINQのノードを選択します。
続いてペイメントチャネルに入れておきたい金額を最低300,000Satoshi(2018年7月10日現在2,227円ほど)で指定します。最後に承認速度とマイナーへの手数料を選択して「PAY」をクリックすると完了画面が表示されます。ペイメントチャネルが開くまでしばらく待ちましょう。
ペイメントチャネルが開いてしばらくすると、ライトニングネットワークを利用してバックアップのための1000Satoshiが送金されているのを確認できます。
ビットコインの送金
Eclair Walletの使用レポートと同じく、ピクセルあたり1Satoshiで落書きができるSatoshi’s Placeで、落書きの代金をライトニングネットワークを利用して支払ってみます。
画像: Satoshi’s Place
ライトニングネットワーク特有の手続きはなく、Satoshi’s Placeで表示された支払いのためのQRコードをBitcoin Lightning Walletでスキャンし、前項で紹介したオンチェーンの場合と同様に送金します。
落書きの代金212Satoshiに対して手数料は1.021 Satoshi(0.48%)で、このようなマイクロペイメントでも手数料が勝ってしまわないことがわかります。ウォレットの支払いボタンをクリックすると、数秒内に支払いが完了し、キャンバス上でも落書きが確定していることを確認できます。
ビットコインの受け取り
メイン画面右下のビットコインのロゴのアイコンをクリックして「Receive funds」を選びます。続いて通常のトランザクションかライトニングを利用したものかたずねられるので、ここでは「Lightning payment」を選びます。次に表示されるフォームで受け取る金額、必要であれば説明を記入して「OK」をクリックすると送金のためのアドレスとQRコードが作成されます。QRコードの下に「このリクエストは2日間有効です。QRコードは再利用しないでください。」とありますので注意しましょう。
Bitcoin Lightning Walletが作成したアドレスまたはQRコードを伝えて送金してもらいましょう。ビットコインを受け取るBitcoin Lightning Wallet、送金元双方で数秒の内に着金と送金を確認できます。都度アドレスを生成する煩雑さはありますが、ペイメントチャネルさえ開かれていれば、アドレスを生成してビットコインを受け取るまでものの1分もかからないのは驚異的です。
Bitcoin Lightning Walletの復元
最後にウォレットの復元方法についてふれておきます。
ウォレットの初期設定画面で「RESTORE WALLET」を選択します。ニーモニックフレーズを入力するかマイグレーションファイルを利用するかたずねられるので、「Enter mnemonic phrase」を選択します。続いてウォレットを作成した日づけ、ウォレット作成後にメモしたニーモニックフレーズを入力します。ウォレットの作成日がわからない場合はすでに入力されている日づけのままにします。
ウォレットが同期するとオンチェーンの資金が復元されます。
続いてペイメントチャネルに入れていたオフチェーンの資金を復元しましょう。ウォレット画面右上の設定アイコンをクリックし、メニューの中から「Use channel recovery tool」を選択し、「OK」をクリックします。リカバリーツールはチャネルのバックアップを使ってロックされた資金をオンチェーンに戻し、このツールは現在開いているチャネルに影響は及ぼさないとメッセージが表示されます。「NEXT」をクリックします。
ペイメントチャネルを閉じる際の手数料が差し引かれ、オフチェーンで管理していた資金がオンチェーンのウォレットに戻ってきました。
おわりに
本記事ではライトニングネットワークに対応したBitcoin Lightning Walletを紹介しました。Bitcoin Lightning Walletは、ライトニングネットワークを利用したビットコインの受け取りにも対応し、ペイメントチャネルのバックアップを取れる点でも派生元のEclair Walletと比べてきめ細かな機能を提供するウォレットといえそうです。
ライトニングネットワークを使いこなすにはペイメントチャネルという独特の概念に慣れる必要はありますが、ユーザーとしてはライトニングネットワークを利用することで数秒での送受金、マイクロペイメントにも対応できる格安の手数料などあまりある恩恵を受けられます。また、より大きな視点では現在ビットコインがかかえる問題を改善し、より広く使われるきっかけに十分なりえます。
ライトニングネットワークに対応したウォレットが出てきている現在の状況は、2016年の夏にさまざまなウォレットを紹介した時と似ています。その1年後、2017年下半期には仮想通貨ブームとともにブロックチェーンにも大きな期待が寄せられました。
本記事をきっかけに一足先にライトニングネットワーク対応のウォレットを体験してみてはいかがでしょうか。