2018年4月、ライトニングネットワークに対応した次世代のビットコインウォレットEclair Wallet(エクレア・ウォレット)のAndroid版が公開されました。本記事ではEclair Walletについて、ライトニングネットワークに対応した機能も含めて紹介します。
※ 冒頭の画像はGoogle PlayストアのEclair Walletのページのスクリーンショットです。
目次
Eclair Walletとは
ビットコインは2009年の運用開始から2018年で10年目となり、多くウォレットサービスやアプリが公開されています。本ブログでもbreadwalletやMyceliumなどメジャーなビットコインウォレットについて紹介してきました。その中で、Eclair Walletはライトニングネットワークに対応していることで注目を集めています。
- GitHub – ACINQ/eclair-wallet: An Android wallet for the Lightning Network
- Eclair Wallet Testnet – Google Play のアプリ
ライトニングネットワークは、ビットコインのブロックチェーンなど既存のブロックチェーン上に新たなレイヤーを構築して、トラストレスな状態を保ちつつも、オフチェーンで迅速にかつ安く送金する技術です。
※ ライトニングネットワークについて詳しくは本ブログの少額支払いを可能にするソリューション「ライトニングネットワーク」を参考にしてください。
ビットコインが処理能力や手数料の高騰といった問題を抱える中、ライトニングネットワークをはじめとするセカンドレイヤー技術に期待が集まり、これに対応したEclair Walletが注目を集めているというわけです。
Eclair Walletは、パリに拠点を置く2014年創業のスタートアップACINQによって開発が進められています。ACINQはビットコインエコシステムのためのプロダクトやサービスを開発するスタートアップで、ライトニングネットワークの仕様に基づいてネットワークを実装している組織のひとつでもあります(ACINQのほかにはBlockstream、Lightning Labsがライトニングネットワークを実装しています)。
Eclair Walletウォレットは通常のビットコインウォレットとして使うこともでき、現在は送金のみでライトニンングネットワークを利用することができます。ライトニングネットワークの完全な機能はEclairのフルノードで利用可能だといいます。
Eclair Walletの概要を押さえたところでさっそくインストールして利用してみましょう。
Eclair Walletのインストール
Eclair Walletは現在Android向けのアプリとして公開されています。Android 5.0以上を搭載したスマホでGoogle Playストアからアプリをダウンロード、インストールします。
アプリを開くと、ベータ版のため利用にあたって多額の資金を管理しないよう警告が出ますので、「I UNDERSTAND」で同意して進みます。次の画面では「CREATE NEW WALLET」を選択して新しくウォレットを作成しましょう。
ウォレットを復元するための24の単語が表示されるのでメモし、単語の確認のステップに進みます。確認が終わり、シードを暗号化するためのパスワードを設定すると、ウォレットの画面が表示されます。
Eclair Walletでのビットコインの送受金
通常のビットコインウォレットとしての送受金については、従来のビットコインウォレットと変わりなく利用できます。
ビットコインを受け取る場合は、メイン画面の中ほどのメニューから「YOUR BITCOIN ADDRESS」を選び、表示されたQRコードかアドレスを伝えてビットコインを送金してもらいましょう。送金からしばらくすると、履歴にトランザクションが表示されます。
ビットコインを送金したい場合は、メイン画面の中ほどのメニューから「TRANSACTION HISTORY」を選び、画面右下の紙飛行機のアイコンをクリックしてアドレスをコピーするかQRコードをスキャンするか選択し、必要情報を入力して送金します。ただし、アドレスをコピーする「PASTE A PAYMENT REQUEST」を選択すると、送金情報を入力するフォームが表示されるものの、送金先のアドレスとして自分のEclair Walletのアドレスが入力されていて変更できません(2018年6月現在)。現行のバージョンではQRコードをスキャンして送金するとよいでしょう。
ライトニングネットワークの利用
送金についてはライトニングネットワークを利用することもできます。
まず、ライトニングネットワークを利用するためのチャネルを開きます。メイン画面の中ほどのメニューから「LIGHTNING CHANNELS」を選ぶと、「チャネルを開くまで3承認かかります」とメッセージが出るのでしばらく待ちましょう。
画面右下のプラスのアイコンをクリックすると、「(ライトニングネットワークの)ノードのURIを入力する」「ノードのURIをスキャンする」「ランダムなノードを利用する」「ACINQのノードを利用する」4つの選択肢が表示されますが、ランダムなノードはまだ利用できないようです(2018年6月現在)。
ここではEclair Walletの開発元であるACINQのノードを利用することにします。ペイメントチャネルに入れておきたい金額と承認速度を指定して「OPEN」をクリックします。手数料528Satoshiが引かれ(0.00000001BTC = 1Satoshi、2018年6月現在4円ほど)、承認待ちの状態になります。指定した承認速度によって異なりますが、しばらくするとチャネルが開きます。
ここではピクセルあたり1Satochiで落書きができるSatoshi’s Placeで、落書きの代金をライトニングネットワークを利用して支払います。
画像: Satoshi’s Place
落書き後をして画面右下の「Submit」ボタンをクリックしましょう。支払いのためのQRコードが表示されます。701Satoshi、4円ほどのマイクロトランザクションです。
支払い画面のQRコードをEclair Walletでスキャンして、支払いを済ませます。ウォレットの支払いボタンをクリックすると、数秒内に支払いが完了し、キャンバス上でも落書きが確定しているのを確認できます。
ウォレットではライトニングネットワークでのトランザクション履歴が記録され、ネットワーク上の残高から支払額分が減っています。手数料がかかっていません!
今後は店舗やサービスでライトニングネットワークを利用した支払いが導入されていくことが期待されます。ACINQは店舗やサービス向けに、ライトニングネットワークを利用して支払いを受け付けるためのstrikeというサービスを公開しています。
画像:Strike – Accept Lightning payments
Eclair Walletの復元
最後にウォレットの復元方法についてふれておきます。
ウォレットの初期設定画面で「IMPORT EXISTING WALLET」を選択します。続いてリカバリーフレーズ(ウォレット作成時にメモした24個の単語)の入力を求められます。スペース区切りで24単語入力し、入力が終わったら「ENCRYPT AND SAVE」をクリックします。
無事、復元が終わるとウォレット画面が表示されます。
おわりに
ライトニングネットワークに対応したEclair Walletについて紹介しました。オンチェーンのトランザクションと比べ、処理が高速で、個々の支払いに手数料がかからないことには驚きを隠せません。
ライトニングネットワークは、極少額の手数料で高速に送金できるという仮想通貨本来のメリットをとりもどし、仮想通貨が今後より広く使われるようになるためにも重要な技術といえます。ACINQをはじめBlockstreamやLightning Labsも開発するライトニングネットワークを利用した支払いを受け付けるサービスが増え、対応ウォレットの利用が進むかがライトニングネットワーク普及の鍵となりますが、オンチェーンの処理が多くの問題をかかえる中、普及はほぼ必然といってよいでしょう。
この機会にEclair Walletを体験して、仮想通貨の未来を感じてみてはいかがでしょうか。