ブロックチェーンの分岐「ハードフォーク・ソフトフォーク」では、ブロックチェーンが分岐してしまう「フォーク」と呼ばれる現象について説明しました。ブロックチェーンの永続的な分岐をハードフォーク、一時的な分岐をソフトフォークと言いますが、今回はソフトフォークの1種である、User Activated Soft Fork(UASF)について焦点を当てます。また、ハードフォーク・ソフトフォークについてもおさらいしておくと良いでしょう。
Miner Activated Soft Fork(MASF)とは
User Activated Soft Forkの前に、その対義語に当たるMiner Activated Soft Fork(MASF)について説明させてください。これは文字通り、「マイナー主導によるソフトフォーク」を指しています。
例えばSegwitなどのソフトフォークにおいては、マイナーがSegwitという規格を採用し、賛同しているマイナーのハッシュレートが全体の95%に到達した時点で合意が形成され、その後約2週間経過後、ソフトフォークが実行される方式が取られています。
マイナーやその他のネットワークが準備できていないうちにソフトフォークが起きると、チェーンが長期的に分岐してしまう可能性があります。この可能性を排除するために、95%という高い数字が設けられています。このため、MASFはフォークの危険性が少なく、安全かつ確実なソフトフォークの方法です。
MASFはどれだけ多くのマイナーが賛同するかどうかで決まるので、権力の一極集中を避けた平等な実装方法に見えます。しかしここ近年のビットコインにおいては、利害関係や政治論争といった要素が加わってしまっています。従って、本来のブロックチェーンをより良くするという目的から離れて論争が起こってしまっており、このような事態を避けるためにユーザー主導でソフトフォークを行いたいという考えから、UASFが提起されるようになります。
User Activated Soft Forkとは
画像:Bitcoin
ここでユーザーと言っていますが、実質的にはウォレットや取引所だけを利用している一般的なユーザーについては、直接どのフォークに賛同するかを決めることが出来ません。それは、自らブロックチェーンに対し、直接賛同票を投じる事ができないからです。代わりに、使用しているサービスがどのフォークを支持するかで選択することになります。よって、利用している取引所やウォレットの運営母体が対象となるフォークに関してどのような声明を出しているのか理解し、それを踏まえた上でサービスを利用しなければなりません。
UASFのメリット・デメリット
フォークの実施日を決める方法には2つあります。1つは、あらかじめ決められている賛同率に達した後、規定ブロック数(例:2016ブロック≒2週間程度)経過後実施する方法です。もう1つは、期日(Flag Date)を予め指定する方法です。UASF の大きなメリットは、期日(Flag Date)を設定することで、 対象のソフトフォークをアクティベートできる可能性が上げることができることです。ブロックチェーンのフォークは重要な議論なので、論争によっては状況が大きく改善されずに膠着状態に陥る可能性もあります。こういった場合に、UASFによって現状を動かすことができます。
一方でUASFにはデメリットも存在し、それは永続的なフォークが起きる可能性があることです。多くのマイナーがソフトフォーク前のブロックをマイニングし続けてそれが多数派になった場合はフォークが発生してしまいます。従ってUASFはハードフォークと同等の危険があるとの声も存在します。
ユーザーが主導して行うソフトフォークであるUASF。多くの人はマイニングをしていないためにプロトコルや仕様に関してはあまり関心がなかった人もいるかもしれませんが、UASFは私達ユーザーの関わりが重要になってくるソフトフォークです。是非この機会にUASFを理解してみましょう。