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Mt. Gox、Rippleを作り出したプログラマーが共同創業したStellar(ステラ)。迅速かつ信頼のおける形で、さらに少額でもほぼコストなしで送金できるという国境を越えた送金ネットワークについて解説します。

Stellarとは

Stellarは自身を「銀行、支払いシステムそして人をつなぐプラットフォーム」であると説明しています。オープンな分散型のネットワークでありつつ、銀行といった組織もまきこんだ国際送金ネットワークと考えるとイメージをつかみやすいでしょう。

Stellar – Develop the world’s new financial system

従来の国際送金は手数料が高額で、送金から受け取りまでに数日かかります。プロセスが複雑なため正常に送金が可能しないリスクもあります。これに対してStellarのネットワークでは、ユーザーは国境を越えて異なる通貨で、安い手数料で迅速に送金することができるといいます。

Stellarの創業は2014年7月で、非営利のStellar Development FoundationがStellarのプロトコルを管理しています。Stellarの創業者は、Mt.Goxを創業しRippleの元CTOとしても知られるプログラマーのJed McCaleb氏と元弁護士のJoyce Kim氏です。StellarとRippleとはともに国際送金ネットワークで、創業者の経歴について知ると共通点があるのもうなずけます。
※ Rippleについて詳しくは本ブログのグローバル決済プラットフォームのRipple(リップル)を参考にしてください。

Stellarは2014年の創業からプロトコルの改善や特に途上国の多い地域でのパートナーの拡充を経て、2017年には南太平洋地域での送金ネットワークの構築でIBMとのパートナーシップを発表しました。

IBM and KlickEx Choose Stellar to Power the Future of Cross-Border Payments – Stellar

2018年に入ってからは、IBMがStrongholdとのパートナーシップのもとStellarのブロックチェーンを利用してドルに連動するステーブルコインStronghold USDを発行する構想を発表しました。これに伴いStellarも注目を集めることとなりました。
※ ステーブルコインについて詳しくは本ブログの安定した価格を実現する「ステーブルコイン」を参考にしてください。

Stable coins: Enabling payments on blockchain through alternative digital currencies – Blockchain Unleashed: IBM Blockchain Blog

 

Stellarが得意とする分野

Stellarがサービスを提供しようとしている人たちに着目すると、Stellarの注力分野が見えてきます。Stellarはウェブサイトに以下の使命を掲げています。

With a team of top technology and finance professionals, the nonprofit Stellar.org expands access to low-cost financial services to fight poverty and maximize individual potential.

(訳:非営利のStellar.orgは技術と金融の最高のプロフェッショナルからなるチームで、貧困と戦い、個人のポテンシャルを最大化するために低コストの金融サービスへのアクセスを拡大する。)

実際、Stellarはフィリピン、インド、西アフリカなど途上国を含むエリアにも精力的にネットワークを拡大してきた経緯があり、チームやボードメンバーには開発支援に携わった経歴を持つ人たちもみられます。

サービスとしては、低コストの金融サービスを実現することで、従来の高コストな金融サービスが行き届かなかった銀行口座を持たない人たちに口座やローンを提供し、少額の貯蓄をも可能にします。低コストなStellarのサービスは途上国を対象とした応用にとどまらず、マイクロペイメントでの利用なども視野に入っているようです。

こうして見てみると、Stellarの立ち位置が明らかになってきます。国際送金サービスを改善するという点ではRippleと共通点があるもののターゲットが異なり、後述しますが独自の合意形成アルゴリズムによりネットワーク上での合意形成は完全にオープンなものになっています。また、仮想通貨全般も送金に使うことはできますが、Stellarは送金手数料を極少額に抑え、銀行などの組織もまきこんだネットワークで法定通貨も含めスムーズに扱うことを目指していることからより送金に特化したネットワークと言えるでしょう。

続いてStellarのネットワークの仕組みとネットワーク内で用いられる仮想通貨XLMについて解説します。

 

Stellarの仕組み

Stellarの仕組みを理解するにあたって、ネットワークの3つの参加者を知るとよいでしょう。Stellarが公開しているStellarの仕組みを解説したスライドをもとにそれぞれについて説明します。

まず、一つ目の参加者として、送金者と受取人であるユーザーがいます。ドルで送金してユーロで受け取るなど送金と受け取りは異なる通貨でも構いません。


ユーザーによる送金と受取(画像: Stellarの仕組みを解説したスライドより)

続いて二つ目の参加者として、ネットワーク上の送金情報を検証し、送金情報を記載した台帳を保持するサーバーが存在します。誰もがこのサーバーを運用することができます。

ネットワークを構成するサーバー(画像: Stellarの仕組みを解説したスライドより)

さらに、三つ目の参加者として、ユーザーとネットワークの間にはアンカーまたはゲートウェイと呼ばれる主体が存在します。アンカーはユーザーから預かった法定通貨からネットワーク内で流通するクレジットを発行し、法定通貨での引き出しを取り扱います。アンカーはユーザーからの資金を預かるため信頼のおける主体である必要があり、銀行などが想定されているようです。


アンカーとネットワーク(画像: Stellarの仕組みを解説したスライドより)

ドルで送金してユーロで受け取る場合、送金者はアンカーにUSDクレジットの発行を依頼し、受取人にユーロのEURクレジットとして送金します。USDクレジットからEURクレジットへの換金は、Stellarの分散型取引所で最良のレートで自動的に処理されるといいます。受取人は受け取ったEURクレジットを、EURクレジットをサポートするアンカーに依頼して法定通貨で引き出します。

 

仮想通貨XLM

StellarのネットワークにはLumen(読み方はルーメン、略称XLM)と呼ばれるネイティブの仮想通貨が存在します。Stellarの説明によるとXLMにはネットワークをスパムから守る役割あるといいます。トランザクションには0.00001ルーメンの手数料がかかり、ネットワークのすべての口座は0.5ルーメンの残高を持つ必要があります。2018年8月現在、1ルーメンはおよそ0.2ドルほどで、送金手数料と必要残高ともに少額ですが、大量にトランザクションを送信し台帳を肥大化させるようなDoS攻撃を防ぐことが期待されています。そのほか、Stellarはルーメンに関するFAQの中で、ルーメンがマイナーな通貨ペアの交換を橋渡しする可能性も示唆しています。

ルーメンは2014年のネットワークのローンチ時に1000億ステラとして発行され、翌年単位がルーメンに改名されました。当初発行の1000億ルーメンの20%はビットコインとRippleの仮想通貨XRPの保有者に配分され、5%はStellar.orgの運営費として保持されています。さらに50%は個人に、25%はパートナーに随時配分されるようです。ルーメンはプロトコルレベルのルールに基づき毎年インフレ率が1%になるよう発行されています。

 

合意形成の方法

Stellarの全容が明らかになったところで、合意形成の方法を見てみましょう。

ネットワークを構成するサーバーは2-5秒ごとに台帳の完全なコピーを同期しています。この台帳にはトランザクションが記載されています。同じく国際送金を扱うRippleのネットワークでは、ネットワークを構成するノードが二種類存在し、トランザクションを検証するノードは誰もが運用できるとしながら、Rippleが推奨するノードのリストが存在します。一方Stellarではネットワークを構成するノードは一種類で、推奨ノードのリストはなく、真にオープンなネットワークになっています。

このようなオープンなネットワークはStellarのチーフサイエンティストで、スタンフォード大学のDavid Mazières教授が考案したFederated Byzantine Agreementという合意形成アルゴリズムにより可能になりました。

合意形成アルゴリズムの名前にfederatedとあるようにサーバーが連合を形成するところが肝になります。Stellarのネットワークに参加するサーバーは、自身が信用するサーバーからなるquorum sliceといういわば連合を形成します。トランザクションの検証に際しては自身が信用するサーバー群の圧倒的多数の決定を待って自身も決定を行い、これをもとにネットワークレベルでの決定が導き出されます。

Stellarの合意形成(画像: Stellarの仕組みを解説したスライドより)

StellarはFederated Byzantine Agreementにより、誰もが合意形成に参加できるオープンなネットワークを実現しつつ、PoWのように時間と膨大なエネルギーを費やして複雑な計算を行う必要のない合意形成を可能にしています。

Stellarの合意形成アルゴリズムについては、Mazières教授の論文で詳細に解説を読むことができます。また、Talks at GoogleのアーカイブにはMazières教授による解説動画もあります。

 

今後の展開

Stellarは、オープンで分散型のネットワークであることをプロトコルで担保しつつ、ネットワークの参加者として銀行もまきこみ、IBMのほか世界最大の会計事務所Deloitteといった大企業とパートナーシップを結ぶなど、独自の路線を歩んできました。このアプローチは、エスタブリッシュメントを排して分散型のシステムを目指す一般的な仮想通貨とも、中央集権的になることも厭わない仮想通貨や送金ネットワークのどちらとも一線を画す独特なものです。その背景には、Mt. Gox、Rippleに続いてStellarを作り出し、古くから仮想通貨やブロックチェーンに関する分野でプログラマーとして活躍するMcCaleb氏の知見や思想が生きているのかもしれません。

IBMとStrongholdがStellarのネットワークを利用したステーブルコインStronghold USDの構想を発表し、Stellarも注目を集めています。仮想通貨の問題のひとつである大きな価格変動を抑え、より使いやすい仮想通貨がStellarのネットワーク上で生まれ、仮想通貨、ブロックチェーン分野での大きな前進となるのでしょうか。Stellarので独自性や創業メンバーを含むチーム、これまでの歩みに目を向けるとその可能性はあるのかもしれません。

Stellarのネットワークやアプローチが今後どのように世界で拡大していくのか、Stellarと周辺の動向から目が離せません。

Aram Mine

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

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