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  • 更新日: 2020年11月21日

本記事ではSteem/Steemitユーザーであり、Steem Monstersをプレーして約半年の筆者が、独自のコミュニティーを築いて人気を集めているブロックチェーンベースのデジタルカードバトルゲーム「Steem Monsters」について解説します。

 

Steem Monstersとは

Steem Monstersは、対戦ごとに与えられる制約のもと手持ちのモンスターのカードでチームを編成し、対戦させるSteemブロックチェーンベースのカードバトルゲームです。バトルのほか、カードの収集や売買もゲームの一大要素です。ブロックチェーンの観点からは、いつでもどこでも対戦できるデジタルなカードゲームでありながら、ブロックチェーンを使うことでリアルなカードゲームのようにプレーヤーに真にカードの所有権を持たせ収集・売買することを可能にしたゲームとも言えます。
※ 参考: ブロックチェーンを使ったソーシャルメディアプラットフォームSteem

2017年末の暗号通貨バブルの最中にCrypto Kittiesがリリースされ、ブロックチェーンゲームの幕開けとなったことを考えると、2018年5月にα版がリリースされたSteem Monsters(2019年7月現在β版)はブロックチェーンゲームの中では古いゲームのひとつです。リリース当初はバトル機能はなく、カード収集アプリでした。Steem Monstersは、分散型アプリの情報をまとめたState of Dappsのゲームカテゴリで過去24時間のユーザー数、過去7日間の取引高で常に上位にランクインしています。

画像: State of the DApps ゲームカテゴリ24時間ユーザー数ランキング(State of the DAppsより)

カード収集アプリというミニマルなアプリとして始まったSteem Monstersが短期間のうちに人気を集めた背景には、SteemブロックチェーンとSteem上のソーシャルメディアSteemitの存在があります。すでにSteemit上にできていたコミュニティーからSteem Monstersの利用が広まり、Steemitユーザーでないプレーヤーも同ブロックチェーンに招き入れるほどになりました。Steem Monsterの人気の理由は、ゲーム自体のおもしろさやお金を稼げることにもありますが、Steem Monstersのファウンダーの人望もあると筆者はみています。Steem Monstersの2人のファウンダーは、Steemユーザーの投票で選ばれるSteemブロックチェーンのブロック生成に関わるウィットネスでもあります。

 

スクリーンショットでみるSteem Monsters

Steem Monstersの概要を押さえたところで、Steem Monstersとはどのようなゲームかスクリーンショットとともにみてみましょう。

プレーヤーは手持ちのカードを組み合わせてモンスターのチームを編成し、ゲームがマッチングした他のプレーヤーと対戦します。普段Steemitで顔を合わせている人がひょっこり対戦相手として出てくることもあります。

画像: チーム編成画面(Steem Monstersより)

画像: 対戦画面(Steem Monstersより)

対戦に勝つと評価が上がり、ゲーム内トークンDEC(Dark Energy Crystal)をもらえます。

DECは一部のアイテムの購入に使えるほか、Steem Engineと呼ばれるSteemのサイドチェーンの分散型取引所でSTEEMに換金し、Bitcoinを経由して法定通貨にすることもできます。

画像: DECはSteem Engineの分散型取引所で取引可能(Steem Engineトークンリストより)

プレーし始める際に$10相当のスターターセットと呼ばれるカードのセットは必要ですが、カードは購入する以外にも、対戦の報酬としてもらえたり、他のユーザーとのやりとりで手に入ります。5枚入りのパックの購入にはSTEEMやSBDのほか、BTC、TRX、Litecoin、Ethereum、Binance Coin、KuCoin Shares、米ドルが使え、マーケットプレイスでの単品購入にはSTEEM、SBD、TRXが使えます。

画像: 結構なお値段のカードも(Steem Monstersマーケットプレイスより)

たくさんお金をかけないとプレーできないのかというと、そうとも限りません。2週間ごとのシーズンの終わりには成績に応じた報酬カードをもらえるほか、プレーヤー同士でカードを交換したり、不要なカードをあげたりといったやりとりもみられます。筆者もSteemitでつながっている方からカードをいただいたことが何度かあります。

画像: ユーザー同士でのカードのやりとり(Steem Monstersより)

数万円ときには数十万円もの金額を使って強いチームを編成して大量に得られる報酬カードからレアなカードを手に入れる人、投資せずにもらえるカードでうまくプレーしてスコアを上げる人、プレーヤーによってゲームの楽しみ方はさまざまです。筆者はカードを買っていた時期もありますが、最近は手持ちのカードが増え、持っているもので工夫してプレーするようになりました。

 

Steem Monstersとブロックチェーン

Steem Monstersをプレーしてみると、カードの売買を暗号通貨でする以外あまりブロックチェーンを使っているという実感はありませんが、ブラウザの向こう側ではどのカードがどれだけ存在するのか、対戦の履歴、カード売買の履歴などSteem Monstersに関するあらゆるデータがSteemブロックチェーンにjson形式で記録されています。

たとえば、筆者が対戦のためにチームを編成し決定ボタンを押すと、次のようなトランザクションがSteemブロックチェーンに発行されます。

画像: Steemブロックチェーンに発行されたSteem Monstersのトランザクション(Steemdより)

カードのパックの購入といった操作については、Steemブロックチェーン上のSteem Monstersのアカウントが対になるトランザクションを発行します。こうすることでSteem Monstersのトランザクションの履歴を辿れば、どのようなカードが現在何枚存在しているか再現できるように設計されています。詳しくはSteem Monstersのファウンダーのひとりyabapmattさんの投稿が参考になります(2018年の投稿で現在は少し変更されている部分があります)。

Steem Monsters Tech Talk – Steem Blockchain Integration

ブロックチェーンを使ったゲームというとパフォーマンスやトランザクション手数料が気になるところですが、Steem MonstersはSteemブロックチェーンを使うことで今のところこれらについて大きな問題は抱えていません。SteemブロックチェーンではDPoS(Delegated Proof of Stake)という合意形成アルゴリズムに基づき、Steemユーザーから投票で選ばれた上位20ウィットネスに100位以内のウィットネスのひとつを加えた21のウィットネスが、1ラウンド21ブロックの生成にあたります。このためブロックタイムは3秒ほどで、Steem Monstersのようなカードゲームであればプレーする上でのストレスは少ないです。また、ウィットネスはプラットフォームから報酬を受け取るため、ゲームやそのプレーヤーはトランザクション手数料を支払う必要がありません。

短いブロックタイムと手数料がかからないことから、プレーヤーはブロックチェーンを意識せずにゲームをプレーすることができ、一方で、カードの売買はリアルなカードゲームのようにできます。Steem MonstersはSteemブロックチェーンを使うことでリアルとデジタル両方のカードゲームのよいところどりをしているといってもよいでしょう。

そのほか、Steem Monstersでは安全かつ透明なプロセスで、わずか数クリックのうちにSteemエコシステムで使えて法定通貨にも換金できる暗号資産を手に入れることができます。従来のゲーム内のアイテムを売買するRMT(Real Money Trading)が抱える詐欺などの問題を解消し、ブロックチェーンがゲームとお金をスムーズにつなぐ可能性が垣間みえます。

 

ブロックチェーンベースだけでないSteem Monstersの独自性

ブロックチェーンをたどって検証しようとすれば、あらゆるデータが誰にでもみえるという点でブロックチェーンを使ったゲームの透明性や公平性は高いと言えます。従来の中央集権的に運営元がデータベースを管理するタイプのゲームでは、いくら「このカードはこれだけ存在してレアだ」といっても、運営元がそれを証明する、またはプレーヤーが検証することは困難です。一方、ブロックチェーンベースのゲームでは、運営元がデータを改ざんしたり、プレーヤーの資産ともいえるカードを取り上げたりすることはできません。

ただし、ブロックチェーンがすべてを解決するかというとそうとも言えません。Steemブロックチェーンを使って一時人気を博したダイスゲームMagic Diceは偽の配当を出す、配当を引き出せなくするなどしてサービスを予告なく終了し、詐欺事件として知られることとなりました。

特に金銭の関わるゲームでは、ブロックチェーンベースとはいえ、運営者の顔がみえることも重要なのかもしれません。Steem Monstersのファウンダーはウィットネスとして、またもの言うSteemユーザーとしてSteem/Steemitの運用に関わっています。プレーヤーとの対話にも積極的でSteemitを中心に強固なファンベースを築いています。このようなSteem Monstersの運営チームの姿勢はSteem Monstersを他のブロックチェーンゲームと一線を画すものにしていると言ってよいでしょう。

 

Steem Monstersの今後

2018年のリリースから順調に成長を続けているSteem Monstersですが、2019年春にはTronのコミュニティーとの連携が発表され、Tronブロックチェーンを使ったクラウドファンディングプラットフォームSEEDGerminatorで出資を募りました。また、カードの購入に使える取扱通貨も当初のSteem関連の暗号通貨や米ドルから増えています。

ゲームとしては、新しいカードやアイテム、ルールが登場したことで一時期感じられたマンネリ感が解消されつつあります。一定期間経つと飽きがきてしまう状況を打開して、どうユーザーをつなぎとめていくのか工夫が必要ですが、カードバトルゲームの中には暗号通貨界隈にもファンのいるMagic: The Gatheringのように長く愛され続けているゲームもあるので、これらから学ぶこともできることでしょう。

2019年内の計画としては、8月末までにNFT(Non-Fungible Token、代替不可能で唯一無二なトークン)導入が導入され、年末までにモバイルアプリがリリースされる予定です。

 

おわりに

筆者はファミコン、ゲームボーイにはじまりさまざまなゲーム機やゲームとともに成長してきた世代ですが、大人になるにつれ現実世界の人生の方が広がりをみせると、いつしかゲームをプレーしなくなっていました。ゲームをしなくなって20年ほどが経ち、Steem/Steemitと出会ってプレーするようになったのがSteem Monstersで、日々頭の体操のように対戦をし、攻略法や報酬として得られたカードについてSteemitで読み書きするのを楽しんでいます。

2018年11月に開催されたSteem/Steemitの年次ミートアップSteem Fest 3ではSteem Monstersのファウンダーのひとりaggroedさんが登壇しました。Facebookから何度となく締め出されたあと、Steem/Steemitでは自分のアカウントがそうならないこと、さらにコミュニティーでの助け合い、平和、自由に感動したとし、そのSteemエコシステムや暗号通貨の世界に家族や友人、子どもなどさらに多くの人を呼び込むためには、メインストリームの何かが必要で、Steem Monsterを布石としたいと力強く語っていたのが印象的でした。AggroedさんのトークはYouTubeで公開されています。

Spreading Peace, Abundance, and Liberty on Steem

コミュニティーの支持を得て小さなカード収集アプリから人気のブロックチェーンゲームとなったSteem Monstersが、今後より多くのプレーヤーを獲得してブロックチェーンゲームや暗号通貨の世界の門戸を開くことになるのか、日々プレーしつつ見守っていきたいです。

エンジニアの経験と情報学分野での経験を活かして、現在はドイツにてフリーランスで翻訳・技術解説に取り組む。2009年下期IPA未踏プログラム参加。2016年、本メディアでの調査の仕事をきっかけにブロックチェーンや仮想通貨、その先のトークンエコノミーに興味を持つ。

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