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まず、スマートコントラクトとは
みなさんは「スマートコントラクト」という言葉をご存じでしょうか。スマートコントラクトとは、その名の通り「かしこい契約」です。ブロックチェーンに契約内容を記述することで、第三者の立ち会いなしに契約を成立させ、守らせようという手法です。
スマートコントラクトカンファレンス2016に登壇してきました!
7月26日には日本最大級の「スマートコントラクトカンファレンス2016」が開催されました。ブロックチェーン業界では大変な著名人であるジョセフ・ルービン、アンドリュー・キースといった重鎮が集まり、現在のブロックチェーン最先端の情報を発信する中、ガイアックスの菊池梓も登壇し、自社の取り組みについて発表してきました。
今回のレポートではガイアックスの登壇内容を、次回には登壇された他社の動向についてお伝えします。
ガイアックス登壇内容「シェアリングID」
シェアリングIDとは
ガイアックスからはブロックチェーン技術の応用の中でもIDや本人認証についてお伝えします。
説明する章立てとして「ブロックチェーンの応用の方向性」「シェアリングサービスとその課題」「課題を解決するためのデジタルID」「現在の状況と今後の展望」という順にご説明します。
ブロックチェーンとは何か
まず、ブロックチェーンとは何か。我々はブロックチェーンを価値の移動に特化したプロトコルであり、データベースであると捉えています。
そしてその機能的な特徴として以下が挙げられます。
- 追記型で変更不能なデータベース
- 時系列を記録する機能
- スマートコントラクト
- ある条件が起こった際にデポジットしていた価値を自動分配するプログラム
金融分野への応用可能性
金融分野についてはブロックチェーンの本来的な使い方です。価値の移動に特化したデータベースとして、既存のシステムから置き換えられるのではないか。それにより大きなコスト削減ができるのではないかという取り組みです。
非金融分野への応用の可能性
いっぽう、非金融分野での応用の可能性は、主にデジタルドキュメントの管理や記録について、資産管理・著作権管理・昇竜管理などで応用できるのではと言われています。
これらは「時系列の記録」「存在の証明」「追記不可能」といったブロックチェーンの特徴とマッチしています。
ブロックチェーンの応用領域
これまでの話を総合し、ブロックチェーン技術の応用領域として
- 保険
- ヘルスケア
- 財務サービス
- コンプライアンス(法令遵守)
- スマートコントラクト
- デジタルID
- 改ざんできない記録
- IoT
これだけの広がりがあります。
その中でも、我々は「デジタルID」の分野で唯一性・本人性の確認をおこなう機能について注目しています。
なぜデジタルIDなのか シェアリングエコノミーとの親和性
ガイアックスはシェアリングエコノミーサービスの事業者です。シェアリングエコノミーとブロックチェーンとの親和性が理由となって、我々はブロックチェーン技術についても推進をおこなっています。
シェアリングエコノミーについては日本政府も注目しています。少子高齢化により地方公共団体の行政サービスレベルが低下するのを代替すべく、シェアリングエコノミーの「共助」が解決できるのではないかと考えられています。
ブロックチェーンを志すきっかけ
我々はシェアリングエコノミー協会の運営をおこない各種シェアリングエコノミー事業者に話を伺っていく中で、個人間の信頼を高める必要性に気づきました。
我々はライドシェアサービス「notteco」の運営もおこなっています。同じ方向の目的地に移動する人同士で相乗りし、高速道路代や燃料代を各自で分担するというサービスです。この「notteco」を例に説明しますと、たとえばAzusaさんが相乗りに申し込むとします。同乗する相手のKenさんをどれだけ信用できるのでしょうか。また、KenさんもAzusaさんが安全な人間だとどこまで信頼することができるでしょうか。いちいちお互いに身分証を見せ合うのも非効率です。
実際に、総務省が調べた、国内でシェアリングサービスを利用したくない理由の第二位に「個人情報の事前登録などの手続が煩わしいから」という理由が挙げられています。
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/html/nc242120.html
そこで我々はデジタルIDの実用化に向けて動き出しました。
ブロックチェーンを利用したデジタルID
我々はまず、スマホアプリとしてデジタルIDを提供します。
流れとしては、
- ユーザさんは、まず、スマホアプリを通じて、身分証をシステムに登録します
- その身分証をもとに、Gaiaxを始めとする、複数のチェック企業が、身元確認を行います
- チェックが完了したら、デジタルIDを発行します
- デジタルIDシステムはシェアリングエコノミー各社につなぎこまれているので、 そのデジタルIDを提示することで、身分証を何度も提出することなく、シェアリングサービスを使うことができます。
また、シェアリングエコノミーのカテゴリごとに本人確認に求められる程度が違うため、数種類の身分証をサポートします。
デジタルIDには「誰が」「誰を」「いつ」認証したのかを記録します。いわゆる証明書です。「誰が」が信頼できる機関であれば、その証明書がデジタルIDの信頼性を担保します。
信頼性を担保することで、身分証の情報は直接ブロックチェーン上に載せて確認する必要がなくなります。身分証は認証機関のデータベースに格納しておくことで、よりセキュアな管理ができるようになります。
デジタルIDのシステムを利用することの利点についておさらいをします。さきほどのAzusaとKenのように、個人間で身分証を提示しあう必要がなくなるのが一点です。
またさらに、企業にとっても大きな利点があります。デジタルIDを使うことで、サービス提供会社が、利用者の個人情報を取得・管理する必要がなくなります。
サービス提供会社にとって、個人情報の管理コストは馬鹿になりません。デジタルIDはサービスへの参入障壁を下げる効果が期待できます。
デジタルIDを実用化することで本人確認にかかるコストの削減効果は、従来一人あたり3,000~5,000円かかると言われているところ、約300円まで引き下げられると試算しています。
また、サービスごとに本人確認を行う必要もなくなるため、本人確認ののべ回数も4,375万回から1,458万回に減らすことができると試算しています。
そして、我々はなるべく1社が情報を独占するような状態は避けたいと考えています。たくさんの事業者さんに個人情報の認証機関として参加していただきたいと思っています。複数の事業者が対等な関係性を維持し、仮にそのうちの1社に何があっても永続的に利用される仕組みである必要があると考えています。
そしてこの思想を支えるのがブロックチェーンの透明性・公平性なのです。
現在の状況と今後の展望
現在(7/26)は、ちょうど機能実装の真っ最中です。秋頃をめどに第一弾の機能をリリース予定です。
実証実験にはシェアリングサービス提供の8社に参加いただき、デジタルIDについての意見やフィードバックを受けています。今後、参加企業を増やしていき、この取り組みを実際のプロダクトレベルまで持って行きたいと考えています。
実証実験後はデジタルIDの信用性を高める動きを行っていきたいと考えています。ひとつは、経済産業省の施策である「ID連携トラストフレームワーク」に準じたに実装とし、シェアリング業界以外でも利用できるシーンを増やしていきたいと考えています。
さいごに
ブロックチェーン技術の盛り上がりはなんだろうか、それはオープンかつセキュアというコンセプトにあると考えています。
また我々、ガイアックスがやるべきは技術の発展だけでなく、実際に多くの人に使ってもらえるアプリケーションを作ることだと考えています。
分散型、公平性、透明性という、ブロックチェーンの魅力を、一般の人が肌で感じられるようなアプリを作っていきたいという風に考えています。