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Propyとは

Propyはシリコンバレーに拠点を置く2016年創業のPropy Inc.が運営するサービスで、ブロックチェーンを使った安全で効率的な不動産取引を実現しようとしています。

Propy | Real Estate Transaction Automated

本ブログではEverledger、Bitnationなど、女性起業家が率いるプロジェクトを紹介しましたが、Propyの創業者のNatalia Karayaneva氏、Denitza Tyufekchieva氏、Maria Angelova氏はいずれも女性です。CEOのKarayaneva氏はブロックチェーンと不動産の両分野での経験を持っています。

2020年10月、Propyが著名投資家Tim Draper氏から資金を調達したことが報道されました。Draper氏はSkypeやTesla、Twitterといった企業に資金を提供してきたことで知られています。

On-Chain Real Estate Startup Propy Raised $1.2M in Draper-Backed Round | Nasdaq

Propyによると、国境を超えた不動産取引は大きな成長を遂げている分野で、2009年から2016年の間に334%成長し、2016年の取引額は3400億ドルにのぼりました。一方で、不動産市場は一大市場であるにもかかわらず、他の市場と比べて流動性が低く、取引のプロセスは煩雑です。

Propyのホワイトペーパーに掲載されているアメリカの不動産取引のプロセスを見てみましょう。売り買いには多くの組織が関わり、特に買い手はさまざまな組織とのやりとりが必要になります。手作業による遅延、ミスや不正が起こることも少なくありません。

画像: アメリカの不動産取引のプロセス(Propyホワイトペーパーより)

さらに国ごとに異なる土地取引の仕組みや慣習が存在し、国際的な標準がないため、特に国境を超えた不動産取引は容易ではありません。

金額の大きい不動産取引では、複雑な取引プロセスを悪用した詐欺も発生しています。日本では積水ハウスが地面師グループから63億円を騙し取られた事件が注目を集めました。また、所有権が適切に更新されなかったために発生した「所有者不明土地」も問題になり、日本政府は対策を進めています。

このような状況で、Propyはグローバルに統一された不動産のオンラインストアと、ブロックチェーンベースの不動産登記簿と資産移転プラットフォームを構築し、不動産取引をスムーズで自動化されたものにしようとしています。将来的にはP2Pの不動産取引市場を形成することも目指しています。

2019年4月時点で、Propyは、カリフォルニア州、バーモント州などで自動的な不動産取引を行いました。Propyを使えばオンラインで離れた場所から不動産を売ることができ、Propyのウェブサイトによると、不動産取引にかかる時間が10時間縮められ、平均で6倍の案件が成立するといいます。

 

Propyとブロックチェーン

Propyはどのブロックチェーンを利用しているとは明言していませんが、ERC20標準に基づく独自トークン(PRO)のトークンセールを行っていて、スマートコントラクトについて言及していることから、Ethereumブロックチェーンを利用していると考えられます。

少し昔のものになりますが、2017年のホワイトペーパーを以下のURLから入手できます。

Global Property Storewith Decentralized Title Registry

Propyは、公的な土地の登記簿をブロックチェーン上のPropyの登記簿にコピーすることから始め、ゆくゆくは世界の国や地域にPropyの登記簿を公的な登記簿として採用することを促していくとしています。

Propyのブロックチェーンを利用した不動産取引の全体像を見てみましょう。前掲のアメリカの不動産取引のプロセスと比べ、取引に関わる組織が減り、取引のプロセスがシンプルになっています。

画像: Propyを介したブロックチェーンベースの土地取引
PropyホワイトペーパーのFigure 3、4から筆者作成)

Propyのシステムには3つのスマートコントラクトが存在します:

  • Titleコントラクト(不動産の所有権を扱うスマートコントラクト)
  • Deedコントラクト(不動産の譲渡を扱うスマートコントラクト)
  • Identityコントラクト(PropyのユーザーのIDを扱うスマートコントラクト)

Titleコントラクトは、ブロックチェーンに不動産のメタデータを作成・更新するスマートコントラクトです。Deedコントラクトは、不動産の譲渡を扱うスマートコントラクトで、取引代金を預かるエスクローエージェントや取引に関わる組織を管理し、不動産の譲渡に関する電子的な取引の証明書の発行も行います。Identityコントラクトは、Propyのユーザーの法的なIDを扱い、KYC機能も持っています。

初期段階のPropyでは、組織としてのエスクローエージェントが介在しするなどしていますが、順次、合意や電子署名、支払い、エスクローを扱うスマートコントラクトが導入され、取引が自動化されていきます。取引に用いる通貨についても、法定通貨に加えて任意の仮想通貨払いが可能になる予定です。

最終的には、下の図のような売り手と買い手、取引に必要な情報を調査する仲介者だけからなるP2P不動産取引プラットフォームの実現を目指しています。

画像: Propyが目指すP2P土地取引プラットフォーム(Propyホワイトペーパーより)

土地の所有権や譲渡の記録を扱う以外に、Propyは独自トークンPROの発行にEthereumブロックチェーンを利用しています。PropyのユーザーはTitleコントラクトやDeedコントラクトを実行する際にPROを支払います。Propyは、PROを支払う理由として、スパムを防ぐためだとしています。支払われたPROの三分の一はPropyへ、残りの三分の二はPropyのネットワークを成長させるためのプールにためられ、Propyユーザーへのインセンティブや政府などの組織にPropyの活用を促す目的で使われます。

 

Propyの今後

Propyが発表したロードマップは、2019年4月に発表されたものが最後で、現在どこまでブロックチェーンの導入が進んでいるのかは明らかになっていません。2019年のロードマップについて説明したブログ記事には動画が掲載されていて、CEOのKarayaneva氏が、技術面では2019年はスマートコントラクトの拡張に取り組み、エスクロー、詐欺を防ぐ仕組みの導入を検討していると説明しています。

Propy 2019 Roadmap: A Year of Growth

2020年10月にTim Draper氏から資金を調達したことからも、Propyの開発が滞ってはいないと考えられ、今後、P2P不動産取引プラットフォームの実現を目指し、ソフトウェアの開発とユーザー獲得が進められていくと考えられます。

 

おわりに

本記事では、ブロックチェーンを利用し、不動産取引を安全で効率のよいものにしようというPropyの取り組みについて解説しました。

不動産取引は地域の法律や規制、慣習に縛られがちで、ひとつの取引にかかわる組織も多く、取引には長い時間がかかります。売り手や買い手はもちろん、多くの取引を扱う不動産業者はこのプロセスが安全かつ効率的になることを望んでいるでしょう。

実際、Propyのほかにも、すでに複数の国や地域でブロックチェーンを使った登記システムを展開しているMedici Land Governance、ガーナでの土地登記に取り組むBenBenなど、土地に関しては複数のプロジェクトが存在し、マイニング事業で有名なBitfuryもこの分野に取り組んでいます。

Propyがブロックチェーンとスマートコントラクトを利用して、国際的な不動産市場の標準を確立するのか、注目したいところです。

Aram Mine

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

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