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本ブログではこれまでにも分散型SNSプロトコルやアプリケーションについて、古くはSteemブロックチェーンとSteemit、新しいものではFarcasterLens Protocolを取り上げました。本記事では、2023年に入ってビットコイナー界隈で盛り上がりを見せている分散型プロトコルの「Nostr」(ノストラ)と、TwitterのようなNostrクライアント「Damus」を紹介します。

 

Nostr(ノストラ)とは

Nostrとは、ビットコインコミュニティの匿名の開発者fiatjaf氏が開発を始めたオープンソースの分散型プロトコルです。

Nostr, a simple protocol for decentralizing social media that has a chance of working

Nostrは汎用の分散型データ管理プロトコルとして語られることもありますが、NostrのGitHubのリポジトリには「a truly censorship-resistant alternative to Twitter that has a chance of working」(真に検閲耐性があってTwitterの代替として機能する可能性がある)という説明があります。

Nostrではどのようにブロックチェーンが使われているのか気になる人もいるかもしれませんが、Nostrはブロックチェーンベースのプロトコルではありません。リレー(relay)と呼ばれるサーバーがユーザーからデータを受け取り、分散型データベースのように機能しています。

Nostrは2022年末から2023年にかけて盛り上がりをみせていますが、開発が始まったのは、Bitcoin Magazineの記事によると2020年のことです。Nostrはオープンソースの分散型ソーシャルメディアMastodonの課題を解決することを目指したニッチなプロジェクトでした。

Twitterの新規約とその取り下げ、熱烈なビットコインの支持者としても知られているJack Dorsey氏のNostr支持と14BTCの出資、Elon Mask氏のもとでのTwitterの迷走などがあり、Nostrに注目が集まりました。

Nostrでは軽量化と、Mastodonは分散型でありつつも実はサーバーに縛られてしまうという課題の解決が進められました。これらについてはNostrのクライアントDamusの開発者のWilliam Casarin氏がインタビューで語っています。

Nostr – Decentralized Social Media & Bitcoin w/ William Casarin

Nostrは検閲耐性とともに、シンプルで軽量であることに重きを置いていて、ユーザーのアカウントは秘密鍵と公開鍵のペアとして定義され、ユーザーは秘密鍵で署名したメッセージをリレーと呼ばれるサーバーのいくつかに送ります。いくつかのリレーに対してメッセージを送るため、一つからバンされたとしても、他のリレーにはメッセージが渡ります。リレーは、ビットコインブロックチェーンのノードのようにすべての記録を保持せず、仕様ではあるのですが、メッセージをやりとりするには同じリレーを使っている必要があります。一方で、ユーザーを限定したリレーを作って、限定的なネットワークを作ることもできます。

ビットコインやライトニングネットワークのノードを運用できるOS、UmbrelがNostrのリレーに対応したと表明しているのも興味深いです。

リレーが保存するデータの容量は小さいものの、リレーを運用するインセンティブについて気になるところです。NostrのGitHubのFAQでは、リレーを運用するインセンティブは明確に回答されていませんが、容量の大きなコンテンツを送ろうとするリクエストを拒否したり、対価を要求したりはできるとのこと。リレーの運用費用は、状況によって異なりますが、後述するDamusの開発者のWilliam Casarin氏のNostrへの投稿によると、Damusのリレーでは2023年2月現在月に300ドルほどの出費があるといいます。

Nostrについては本記事執筆中の2023年2月22日に日本語の勉強が開催されました。アーカイブが残るようなのでリンクをはっておきます。

Nostr勉強会 – 四谷ラボ | YouTube

 

Damusとは

Damusとは、Bitcoinコアと、lightningネットワークの実装の一つであるc-lightningのコントリビューターであるWilliam Casarin氏が開発するTwitterのような見た目のNostrのクライアントです。

Damus

本記事執筆時点の2023年2月現在、iPhone向けのアプリが提供されています。Google PlayストアではDamusの偽アプリが出回り、DamusがTwitterで注意を呼びかけました。

画像: Damusウェブサイトより

Jack Dorsey氏がDamusを利用するだけでなく、改善案まで出すほど熱中していることもあり、ベータテストユーザー1万人を2日間で集めました。
(Android向けにはAmethystやIrisといったクライアントがリリースされています。)

Nostrについて説明した前節で「メッセージをやりとりするには同じリレーを使っている必要がある」と書きましたが、開発者のCasarin氏が運用しているDamusのリレーがあり、デフォルトで設定されているので、原理的にはDamusユーザーはつながっていられます。Damusのリレーに依存してしまっていては「分散性に不安があるのでは?」と考える人もいるかもしれません。この点については、複数のリレーがデフォルトで設定されています。

分散型アプリケーションの利用が初めての人は慣れないかもしれませんが、Damusをダウンロードしたあとに、公開鍵と秘密鍵のペアを作ります。この鍵がNostrのアイデンティティになります。メールアドレスも電話番号も必要ありません。あとはTwitterのように、メッセージを受信したいユーザーを選択したり、メッセージを送信したりしてソーシャルメディアとしてコミュニケーションを楽しめます。

さらに楽しいのが、ビットコインコミュニティと深くつながりがあることから、ビットコインの最小単位である「satoshi」(複数形でsats、サッツ)を投げ合えるところです。Nostr自体はビットコインとは関係なく、投げ合うお金はビットコインでなくてもよいのですが、ビットコインコミュニティとの関わりが強いことから、Damusではライトニングネットワークを使ってsatsが投げ合われています。

百聞は一見にしかずです。続いてDamusでNostrを使ってみましょう。

 

Damusを使ってみよう

App StoreからDamusをダウンロードしてインストールしましょう。インストールが終わったら秘密鍵と公開鍵を生成します。これがNostrでのアイデンティティになります。暗号通貨のウォレット同様、署名に使う秘密鍵が本人であることを証明する手段で、秘密鍵をなくしてしまうとアカウントにアクセスできなくなってしまいます。

タイムラインが寂しいと、利用するモチベーションが下がってしまうので、検索機能でフォローする人をみつけましょう。うまく他のユーザーがみつからない場合は、見つけたユーザーのフォローリストをたどっていく、公開鍵を知っている人を探す場合は検索窓に公開鍵を入力すると当該ユーザーが表示されます。

これで投稿・閲覧、フォーローといった基本的な機能を使えるようになります。一つ注意したい点は、一度Nostrに書き込むと削除できないところです。

Twitter的な使い方に加えて、Nostrでは投げ銭(zap、ザップ)も楽しめます。投げ銭をするには、まずライトニングに対応したウォレットも用意します。日本語のインターフェイスと、プロフィールに設定するLNURLを簡単に取得できるWallet of Satoshiを使うとよいでしょう。

Wallet of Satoshi | The World’s Simplest Bitcoin Lightning Network Wallet

Wallet of Satoshiをダウンロード、インストールしたらWallet of SatoshiのLNURLをプロフィールに設定しましょう。

画像: LNURLの設定(画像左がWallet of Satoshi、右がDamus)

これで他のユーザーはプロフィールからsatsを投げ銭できるようになります。また、投稿にインボイスを貼り付けて送金してもらうこともできます。インボイスはライトニング特有の仕組みで、お金を受け取る側がインボイスを発行し、送金側がお金を支払います。

インボイスを作るには、Wallet of Satoshiを開いて、「受信」の「Lightning」タブをクリックし金額を入力すると作成できます。生成されたQRコードをクリックしてコピーし、Damusの投稿にペーストし、送信すると、インボイスが表示されます。

画像: インボイスの入った投稿の作り方

Nostr自体は2020年から開発が進められているサービスとはいえ、Damusがリリースされ、本格的に使えるようになってからは間もなく、黎明期の楽しさが漂っています。親切にNostrへのオンボーディングを助けてくれるユーザーもいます。筆者はビットコイン関連の翻訳でつながった@kateさん、動画を見て連絡をとった@dkさんにオンボーディングを助けてもらいました。

 

おわりに

本記事では、2023年に入って注目を集めるNostrとそのクライアントのDamusを紹介しました。

いずれもビットコインと関わりの深い開発者がリードするプロジェクトで、ビットコインの熱烈な支持者であるJack Dorsey氏が関心を示したことからビットコイン界隈で利用が広がっています。Damusの開発者のCasarin氏によると、Damusのウェブサイトには過去30日に141万のユニークビジターが訪れ、Damusのリレーは5000万リクエストに応えたといいます。一方で、2023年2月2月初旬を境に品質の高いアカウントによる投稿が減っているという統計も出ています。

お金のやりとりのあるSNSという点では、Damusが初めてではなく、Twitterでも古くはChromeの拡張としてリリースされJack Dorsey氏も推したTippin、その後Twitter自体がビットコインやライトニングのアドレスをプロフィールに設定できるようにするなどしましたが、広く使われていないのが実情です。筆者はその一因として、すでにたくさんのユーザーがいる中で、ビットコインやライトニングに親しみのないユーザーほとんどで、盛り上がりに欠けたことがあったのではないかと考えます。

一方で、クリプトネイティブなHive.blog(旧Steemit)や、ビットコインコミュニティに支持されるDamusではお金のやり取りをする機能がデフォルトで組み込まれていて、オンボーディングを助けてくれるユーザーがいます。

NostrもDamusも利用に費用はかかりません。オンボーディングのために少額のsatsを送金してくれるユーザーもいます。気になった人はぜひNostrを使って、人と人とのつながりの中で自由にお金をやり取りできる楽しさを体験してみてください!

 

エンジニアの経験と情報学分野での経験を活かして、現在はドイツにてフリーランスで翻訳・技術解説に取り組む。2009年下期IPA未踏プログラム参加。2016年、本メディアでの調査の仕事をきっかけにブロックチェーンや仮想通貨、その先のトークンエコノミーに興味を持つ。

bitcoinDonusLightningSNS

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