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2017年4月、マルタ共和国は政府の方針としてブロックチェーンに注力することを発表しました。これまでにもブロックチェーンの活用や仮想通貨の構想を発表する国はありましたが、大手取引所を誘致するなどマルタ共和国のブロックチェーンに対する本気度は高そうです。本記事ではマルタ共和国のこれまでの取り組みとこれからについて紹介します。

(冒頭画像はWikipediaよりマルタの首都バレッタ)

 

マルタ共和国とは

マルタ共和国(以下通称の「マルタ」を用います)は人口40万人ほどのヨーロッパの小さな島国で、地中海の島国でイタリアのシチリア島の南に位置します。EUの加盟国で通過はユーロ、公用語としてマルタ語と英語が使われています。

画像: ヨーロッパとアフリカの間に位置する島国マルタ(Google Mapsより)

マルタの気候は地中海の温暖な気候ということもあり、ヨーロッパでは休暇を過ごす場所として近年注目を集め始めています。また、政府のブロックチェーンといった技術分野に注力する政策ともあいまってか、仕事をしつつ休暇を過ごしつつ世界を転々とするデジタルノマドと呼ばれる人たちをひきつけるコワーキング・コリビング(co-living 共同生活)のためのスペースも増えているようです。余談ですが、人気の小型犬マルチーズの名前はマルタに由来し、また、マルタは人口を大きく上回る猫70万匹が暮らすことでも知られています。

穏やかな気候や南欧独特の雰囲気が魅力のマルタですが、一方ではタックスヘイブンとしてオンライン賭博やマネーロンダリングの疑惑が報道され、マルタとの関係は明確ではないもののパナマ文書の報道に関する事件も発生するなど、お金に関する暗い側面を持っているのも事実です。

マルタの概要がわかったところで、マルタがこれまでにどのようなブロックチェーンに関する取り組みをしてきたのかみてみましょう。

 

マルタのブロックチェーンに関する取り組み

2017年4月、マルタのジョゼフ・ムスカット首相は内閣がブロックチェーンの利用を促進するthe Malta Blockchain Strategy(マルタブロックチェーン戦略)の最初の草稿を承認したことを発表しました。2017年には国家によるブロックチェーンの利用や独自の仮想通貨に関する発表がメディアをにぎわせました。エストニアのようにいちはやく国家としてブロックチェーンを導入し利用が進んでいる国もあります。

マルタでのブロックチェーンを活用した取り組みとしては、国民の学習記録をブロックチェーンを利用して管理するLearning Machine Groupとのパイロットプロジェクトが発表され、ムスカット首相によると土地の所有権や健康記録の管理といった分野での応用も期待しているようです。またマルタ発・初のアプリケーションとして所有権の管理をターゲットとした分散型台帳アプリケーションLP01が発表されました。

 

実際ブロックチェーンの活用に備えた法的枠組の整備は急ピッチで進められていて、デジタル・イノベーション当局の設置、分散型台帳プラットフォームやスマートコントラクト とサービスプロバイダに関する法案(the TAS Bill)、仮想通貨やICOに関する法案(the Virtual Currencies Bill)が検討されています。

また、他の分野ではオンラインゲームを挙げられます。マルタのゲーム規制当局(MGA: the Malta Gaming Authority)はマルタのオンラインゲーム分野で分散台帳技術や仮想通貨を使用する際の手引きを公表しました。2018年第二四半期にはテスト用のサンドボックスも提供されるようです。

Guidance on the use of Distributed Ledger Technology and the acceptance of Virtual Currencies through the implementation of a Sandbox Environment

 

マルタの取り組みが特に注目を集めているのは、香港に拠点を置く仮想通貨取引所OKEx、同じく香港に拠点を置く世界最大の取引所Binanceの誘致に成功したことにあります。

バイナンス、マルタ島に拠点開設、マルタ首相も歓迎姿勢 – COINTELEGRAPH

Binanceについては日本の居住者を相手に無登録で仮想通貨交換業を行なったとして2018年3月23日付で金融庁が警告しています。このほか、香港証券先物委員会からも警告を受け、中国での規制強化の影響も受けてきました。このような状況で、これらの取引所がマルタでどのような活動を行っていくかは注目されるところです。

 

 

マルタの今後

マルタのプレスリリースによるとドイツの複数の企業がマルタへの拠点開設を発表しているといいます。そのひとつがドイツの首都ベルリンに拠点を置くブロックチェーンベースの資金調達プラットフォームNeufundです。Nufundは2016年の創業以来すでに10億円を超える資金を投資家から調達しているスタートアップで、マルタにブロックチェーンエコシステムを作り出すことに貢献したいとしています。

PRESS RELEASE BY THE PARLIAMENTARY SECRETARIAT FOR FINANCIAL SERVICES, DIGITAL ECONOMY AND INNOVATION: Neufund – Another company in the blockchain sector to open offices in Malta(2018年4月17日付、Neufundのマルタ拠点開設に関するプレスリリース)

また、小さな島国が金融分野に注力するというと、リーマンショック後のアイスランドの経済危機や2013年のキプロスでの金融危機が思い出されます。一方、少しサイズは大きく島国ではありませんが、産業や資源のないシンガポールは金融立国として成功を収めました。マルタがアイスランドやキプロスと違う点は、ブロックチェーンという新しいテクノロジーを通じて金融だけでなくあらゆる産業を広げようとしているところです。

その応用分野としてマルタが注力しているオンラインゲームについては、オンライン賭博に関する過去のマネーロンダリングの話題もあり、いい話ばかりではありません。

そして、マルタは独自のブロックチェーンや仮想通貨に関する政策を掲げていますが、EU加盟国であることから今後EUとの協調の話題も出てくるでしょう。ただ、EUレベルでの仮想通貨に関する議論はまだ始まったばかりで、G20の決定に依存する部分も多く、そのG20でも2018年夏に向けて具体的な議論が進められることから、国と地域での政策や規制の整合性が保たれるのか全容が明らかになるまではもう少し時間がかかりそうです。

ブロックチェーンの島として、ブロックチェーンや仮想通貨に関する分野でEUにおけるパイオニアを目指すマルタについては、2018年4月現在、日々新しいニュースが出てきています。今後どのような政策が展開され、どのような企業や人がマルタに集まるのでしょうか。マルタの動向とマルタから広がるブロックチェーンエコシステムに注目しておきたいところです。

Aram Mine

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

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