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独自のKSIブロックチェーン技術を強みにエストニア政府をはじめ、欧米の政府、企業に高度なセキュリティーを提供するエストニア発のスタートアップGuardtimeを紹介します。

 

電子国家エストニアとGuardtime

Guardtimeは北ヨーロッパの人口約130万人の小さな国、エストニアのスタートアップです。エストニアと聞いて旧ソビエト連邦から独立した隣国ラトビア、リトアニアとともにバルト三国として名前に見覚えがあるという方も多いと思います。

エストニア – Wikipedia

画像: Google マップより

エストニアはSkype発祥の国でもあり、昨今では1990年代後半から始まった電子政府を構築する取り組みや、国内外を対象に発行している電子居住権などから「電子国家」として注目を集めています。

電子国家実現に向けたエストニアのこれまで歩み(画像: e-estonia ウェブサイトより)

エストニアでは2007年の大規模なサイバーアタックをきっかけに、スケーラブルなブロックチェーン技術の開発が始まり、国家レベルでブロックチェーンを利用するはじめての国となりました。Guardtimeの創業も同時期にさかのぼり、エストニアのシステムの基礎を支えるブロックチェーン技術、法律(e-Law)、裁判(e-Court)、警察(e-Police)システムの開発に携わってきました。

Guardtimeによると、現在Guardtimeは収入、従業員数、顧客のデプロイベースで世界最大のブロックチェーン企業で、130人を超える暗号やセキュリティーの専門家を擁し、数十年に渡ってネットワークを守ってきた経験があるといいます。エストニアをはじめオランダ、アメリカ、イギリス、シンガポールにオフィスがあり、欧米の政府および防衛・通信分野を中心とした世界的な企業を顧客としています。

Guardtimeはセキュアなサプライチェーンの構築を強みとしていますが、Guardtimeの言うサプライチェーンとは、通常、物流の文脈で使われる「サプライチェーン」よりも広義の「ソフトウェアや情報も対象としたサプライチェーン」ととらえるとわかりやすいかもしれません。Guardtimeは独自のKSIブロックチェーン(Keyless Signature Infrastructure、キーレス署名基盤)を利用してものや情報の流れを把握し、リアルタイムでのデータのトラッキングや高いセキュリティーを実現しています。

 

GuardtimeとKSIブロックチェーン

Guardtimeのコア技術であるKSIは分散型のシステムで、システムに参加するノードが秒単位で構成する階層型のハッシュツリーと、ハッシュツリーのルートハッシュを保持するカレンダーにもとづき、デジタル署名とタイムスタンプを提供します。KSIは従来のPKI(公開鍵基盤)に変わるものとして提案され、署名を作成する際に暗号鍵は使われるものの、署名の検証には暗号鍵を使わない(キーレス)ことがKSIの名前の由来です。KSIはハッシュを利用してデータをつなぐブロックチェーンととらえることもでき、Guardtimeは自身の提供するKSIシステムを「KSIブロックチェーン」と呼んでいます。

GuardtimeはKSIブロックチェーンの優位性として、スケーラビリティー、短時間での合意形成、セキュリティーを挙げています。ブロックチェーンの多くがトランザクション数とともにサイズが増していくのに対し、KSIブロックチェーンはトランザクションの数に依存せず、経過した時間に依存します。合意形成は参加するノードを限定することで1秒以内に完了しするとし、セキュリティーについては他のブロックチェーンと異なり数学的な証明に裏打ちされたものだとしています。

KSIの詳細については、Guardtimeが公開している論文および特許データベースで読むことができます。

 

Guardtimeのこれから

Guardtimeは今後の計画を明示していませんが、アメリカの軍需企業ロッキード・マーティン社をはじめ、NATO、DARPAといった組織とのサイバーセキュリティー分野での契約が発表されています。

Lockheed Martin Contracts Guardtime for Innovative Cyber Technology | Guardtime 

また、Guardtimeの方向性は緊密に連携して開発を進めているエストニア政府の今後の注力分野のリストからも読み取れるかもしれません。前述のサイバーセキュリティー分野もそのひとつとして挙がっています。

エストニアが将来的に取り組むとする分野(画像: e-estonia ウェブサイトより)

国家というと、民主主義とはいえ権威が存在する中央集権的な仕組みを考えがちですが、少なくともシステムとして、エストニアとGuardtimeがKSIブロックチェーンを活かした分散型で透明性の高い堅牢なシステムを実現してきたことは、技術面のみならず新しい時代の国家のあり方を考える上でも興味い実験的な取り組みと言えるでしょう。

先進的な技術を国家のシステムに採用し国家の電子化を進めるエストニアとそれを支えるGuardtimeの今後に注目したいところです。

 

 

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

Guardtimeエストニア

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