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2023年7月、パリでヨーロッパ最大ともいわれるEthereumの年次カンファレンスEthCCが開催されました。さまざまな発表があった中、注目を集めたのがGnosis(ノーシス)による暗号通貨決済ネットワークのGnosis PayとVisaデビットカードのGnosis Cardです。本記事では、Gnosis PayとGnosis Cardがどのようなサービスなのか説明します。

 

Gnosisとは

Gnosisは2015年に老舗のブロックチェーン開発スタジオConsenSysのプロジェクトとして誕生し、2017年に企業として独立、その後2020年に組織のDAO化を発表しました。これまでに受けた出資は112.5百万ドル(本記事執筆時点のレートで160億円ほど)にのぼる大きなプロジェクトです。

Gnosis – Crunchbase Company Profile & Funding

Gnosisというと、当初Ethereumブロックチェーン上の予測市場を開発していたのを覚えているという人もいるかもしれませんが、現在GnosisはGnosisチェーン(旧xDAI)や資金決済・管理ソリューションの開発に注力しています。Gnosis Safeとして開発が始まった、マルチシグに対応したデジタル資産管理プラットフォームは、2022年にGnosis DAOからスピンオフし、名称をSafeに変え、SafeDAOが立ち上がりました。

Gnosis、Gnosisチェーン、Safeについて詳しくは本ブログの以下の記事を参考にしてください。

Gnosis PayとGnosis Cardは、Gnosisが開発を進める資金決済ソリューションで、2023年7月にパリで開催されたEthereumの年次カンファレンスEthCCで発表され、2023年秋のGnosis Cardの発送を前に注目を集めています。発表の様子はEthCCのライブストリームのアーカイブで見ることができます。

Martin Köppelmann From self custody wallets to self custody payment annoucing Gnosis – EthCC Live Stream

続いてGnosis Pay、Gnosis Cardについて見ていきましょう。

 

Gnosis Pay

現実世界と暗号通貨の世界は、中央集権取引所などを介してつながってはいるものの、未だ二つの世界の資産をスムーズには扱えません。暗号通貨の世界でもらったお金を、中央集権取引所に送金して、換金して、現実世界の銀行口座に送って・・・という手間なく使えたら便利です。

また、中央集権的な取引所については、2022年に世界的な大手暗号通貨取引所だったFTXが破綻したこともあり、利用に対して懐疑的な声もあります。取引所を介した決済サービスなどもありますが、取引所に暗号通貨を置いておくことになります。

このような状況を改善するべく、現実世界と暗号通貨の世界をシームレスにつなごうというのがGnosis Payで、Gnosis Chainの上に作られたL2決済プラットフォームとツールキットを提供しています。Gnosis Payはセルフカストディ型のソリューションで、ユーザー自身がアカウントや資産を管理できます。

Gnosis Pay

画像: Gnosis Payのアーキテクチャ(EthCCのプレゼンテーションより)

 

ユーザーはMetamaskなど、使い慣れたウォレットから署名し、Gnosisからスピンオフしたセルフカストディのデジタル資産管理プラットフォームSafeで資金を扱います。

EthCCでは、SEPA(単一ユーロ決済圏)でのSafeから銀行口座への送金のデモが行われました。SafeにはIBANを割り振ることもでき、逆方向の銀行口座からSafeへの送金も可能です。

ヨーロッパでのサービスに利用されるステーブルコインは、欧州経済領域でライセンスを持つMoneriumが発行するステーブルコインEUReが利用され、KYCはFractal IDによって行われます。米ドルが使われている地域では、MakerDAOと協力し、米ドルにペグされたステーブルコインDaiが使われる計画のようです。

Gnosis Payは開発者向けのツールセットも提供していて、プロジェクトがオンライン決済システムを構築する手間を省き、独自のGnosis Cardを作れるといいます。Gnosis Payについて取り上げたTech Crunchの記事では、「MetaMaskはGnosis PayのAPIとツールを利用するだけで、MetaMaskカードを発行することができる」と例を挙げています。

 

Gnosis Card

Gnosis Cardは、GnosisがGnosis Payを利用して発行するVisaのデビットカードです。EthCCでは、Gnosis Cardを使った決済のデモが行われ、実際にGnosis Chain Explorer上でトランザクションが確認されました。普段使い慣れたキャッシュレス決済と遜色なく、数秒で決済が承認されます。

仕組みとしては、ユーザーは使い慣れたウォレットからSafeを操作して資金を管理し、Gnosis CardはSafeに対してアクセスし決済処理を行います。

画像: ウォレット、Safe、カードの関係
EthCCのプレゼンテーションのスライドをもとに筆者作成)

カードの購入にかかる費用は30ユーロ(4700円ほど)で、さらにSafeのセットアップに数千円かかりますが、暗号通貨ファンとしてはトライしてみたいところです。さらにカードにはENSネームを刻印できるなど、クリプトユーザーにとって理想のカードを目指すとのこと。

筆者は初期リリースの対象地域のドイツ在住で、カードを申し込んでみたく、何度か登録を試みたのですが、結局ウェイティングリストに登録することになりました。発送は2023年秋が予定されているとのことで、今年中にはヨーロッパでは、Gnosis Cardを利用できるようになりそうです。

Gnosis Cardは、EEA(欧州経済領域)にイギリスとスイス、ジブラルタルを加えたヨーロッパほぼ全域で利用可能になり、続いて北米、ブラジル、メキシコ、インド、インドネシア、シンガポール、香港での展開が予定されています。

 

Gnosis PayとGnosis Cardの可能性と懸念点

Gnosisカードを使う利点はどこにあるのでしょうか。

今のところまだ少数ですが、DeFiで資産を運用したり、ブロックチェーンゲームで遊んだり、暗号通貨払いの仕事をしたりするなどして、暗号通貨を受け取っている人もいます。

筆者自身もブロックチェーンベースのソーシャルメディアHive Blogでブログを書くなどして、暗号通貨をもらっています。ビットコインなど価値の貯蔵手段としてそのまま持っておきたい暗号通貨もありますが、お小遣いのようにちょっとたまったものは現実世界でスムーズに使えたら便利です。Gnosis PayとGnosis Cardはこれを実現する可能性があります。

一方で、Safeというインターフェイスがあり、当初は暗号通貨を使い慣れた人たちがターゲットユーザーとはいえ、ブロックチェーン間やレイヤー1とレイヤー2を往復する煩雑さは否めません。特にマスアダプションを目指すのであれば、ブロックチェーンを意識しないようなインターフェイスが必要になるでしょう。また、国や地域の規制や制度にもよりますが、現状では少額ずつ暗号通貨を使うとなると、確定申告時の処理が煩雑になることは覚悟しなければなりません。

 

おわりに

本記事では、EthCCで話題になったGnosis PayとGnosis Cardについて説明しました。

Gnosis Payの開発が進めば、プロジェクトが暗号通貨による資金決済をサービスやプラットフォームに取り入れやすくなるだけでなく、独自のカードを発行するといった使い方もできるようになるようです。暗号通貨を使えることを売りにしたカードは、これまでにも存在しましたが、Gnosis Cardの新しいところは、セルフカストディ型Safeを利用することで、ユーザー自身が資産を管理できるところにあります。

今後、Gnosis PayとGnosis Cardの利用は広まるのか、その中で競合が現れるのか、そして現実世界と暗号通貨の世界の距離が縮まるか、期待しながらプロジェクトの進展を見守りたいところです。

2023年秋にはヨーロッパを対象にしたカードの発送が始まります。Gnosis Cardを手に入れたら、その使用感について再び報告できたらと思います。どうぞお楽しみに!

エンジニアの経験と情報学分野での経験を活かして、現在はドイツにてフリーランスで翻訳・技術解説に取り組む。2009年下期IPA未踏プログラム参加。2016年、本メディアでの調査の仕事をきっかけにブロックチェーンや仮想通貨、その先のトークンエコノミーに興味を持つ。

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