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  • 更新日: 2020年11月18日

2018年11月、マレーシアの教育省は学位証明の偽造に対する対抗措置として、ブロックチェーンベースで大学の学位を発行・検証できるシステムe-Scrollシステムを発表しました。本記事ではマレーシアにおける問題の背景、そしてブロックチェーンを用いた対抗策、最後にe-Scrollシステムを支えるNEM Catapultについて少し解説します。

 

マレーシアにおける学歴詐称の問題

学歴詐称はマレーシアに限った問題ではありませんが、同国における学歴詐称は特に深刻で、2019年2月現在、政治家の学歴詐称や偽造された学位証明がインターネット上で公然と販売されていることなどがとりざたされています。

シンガポールの新聞Todayの電子版によると、マレーシア国内の大学の偽造学位に限らず国外の大学のものも入手可能で、地元の大学のものは12,000マレーシアリンギット(約33万円)、有名大学のものは17,000マレーシアリンギット(約46万円)、海外の大学のものはより高価で20,000マレーシアリンギット(約54万円)から売られているといいます。
※ 2019年2月執筆時点の為替レートで換算。

Fake degrees in Malaysia offered online from S$4,000 – TODAYonline

マレーシアは国家としても学位証明の偽造を問題視していて、マレーシアの教育省はe-Scrollシステムの発表の中で、マレーシアの大学の評判と品格を守り、真面目な学生が不利を被らないためにも、学歴詐称に対して対策をとらなければならないとしています。一般の大学の学位でも詐称は問題ですが、医師や弁護士といった社会的責任の重い職種の学位や免許の詐称となれば、人の健康や命、権利を侵害する重大な問題を引き起こしかねません。

また、マレーシアの大学は卒業生が本当にその大学を卒業しているのか世界各国から大量の電話やメールによる問い合わせに追われ、この検証作業は業務の非効率さに拍車をかけているといいます。

このような背景から、マレーシアではブロックチェーンを利用した学位発行および検証のためのシステムが検討され始めました。

 

ブロックチェーンによる対抗策、e-Scrollシステム

2018年1月、マレーシア国内の大学のICT学部長評議会(MADICT)で、学位の証明にブロックチェーンを利用することが議題となりました。ブロックチェーン技術には、学位を証明することに加えて、問い合わせへの回答プロセスを効率化することも期待されました。

同年11月には教育省から、ブロックチェーンベースの大学コンソーシアムの結成と、大学の学位を発行し検証するためのシステムe-Scrollシステムが発表されました。

Ministry of Education Announces setting up of a University Consortium on Blockchain Technology and Launches the e-Scroll system – Ministry of Education Malaysia

e-Scrollシステムは、コンソーシアムのメンバーのひとつであるマレーシア国際イスラム教大学(IIMU)のDato Dr Norbik Bashah Idris教授の協力のもと、マレーシアのスタートアップLuxTagが開発にあたりました。LuxTagはNEMのブロックチェーン上で資産が本物であることやその所有権を証明するソリューションを提供しています。

Luxtag — Everlasting Legacy

e-Scrollシステムのはじめての事例として、2018年10月、IIMUを卒業するPhDの学生200人にNEMのブロックチェーンに刻まれた学位が授与されました。大学が発行する学位証明書にはQRコードがついていて、これをスキャンしてe-Scrollシステムに学位について問い合わせることができます。

画像: IIMUのe-Scrollシステムのウェブサイト – 学位のQRコードをスキャンし検証できる

 

e-Scrollシステムを支えるNEM Catapult

e-Scrollシステムは、NEM Catapultと呼ばれるブロックチェーンエンジンを利用しています。

画像: NEMウェブサイトCatapultのページより

より正確には、NEM Catapultで大学によるコンソーシアム型のブロックチェーンを作り、LuxTagのSDKを使って、e-Scrollシステムはウェブインターフェイスを持つアプリケーションとして構築されています。

LuxTagの技術が特許出願中ということもあってか、詳細は未だ明らかにされていません。ただその一端は、e-Scrollシステムのリリース時にLuxTagやNEM Southeast Asiaが投稿したブログ記事に垣間見ることができます。

LuxTagのブログ記事によると、データを改ざん不可能かつ安全に保存するため、証明書のハッシュだけでなく、すべての証明書に関する情報がブロックチェーン上に記録されるようです。また、SDKの利用により開発が3週間という短期間に完了したこと、これまでに実績のある高級品、ファッション、アートといった分野に加えて教育分野でも事例ができ、同社の技術は多様な分野に適用できる汎用なものであることが強調されています。

ただ、NEMについては、2019年に入ってNEM財団が大幅な人員削減と方針転換を計画していて破綻するのではと報道されたことを忘れてはいけません。

NEM Foundation, Nearly Broke, Plans Layoffs and Pivot – CoinDesk

2018年の仮想通貨低迷を経て、人員削減や方針転換を発表したプロジェクトはNEMだけではありません。また、NEM財団はNEMの普及を目指すコミュニティーによる非営利財団で、その破綻が即NEMのネットワークの停止や開発中止を意味するものではありません。万が一、ネットワークのノードの運用が止まってしまうような事態に発展すれば、特にデータの永続性が重要な証明書の分野では死活問題となりかねないのです。

 

おわりに

本記事では偽造学位への対抗策として、また、大学が発行した学位の検証を効率化するためにマレーシアで構築が進むe-Scrollシステムを紹介しました。ブロックチェーンを利用した学位発行プロジェクトとして、公的な記録のオープンスタンダードの開発から取り組んだアメリカの名門マサチューセッツ工科大学(MIT)のパイロットプロジェクトが有名で、現在、日本を含め各国でその取り組みは広がっています。

グローバル化とデジタル化が同時進行する現代、偽造が用意で検証が煩雑な紙の学位証明書や、学校ごとに分かれたシステムは時代に取り残されていくでしょう。この現状を変えるひとつの技術としてブロックチェーンに注目に値するのではないでしょうか。

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

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