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  • 更新日: 2020年10月8日

本記事ではインドでバイクやスクーターといった二輪車と自動車のP2Pシェアリングサービスを展開し、将来的にはより広範囲のシェアリングサービスをカバーしようとしているDrivezyを紹介します。

 

Drivezyとは

Drivezyは南インドのIT都市バンガロールに拠点をおく2015年創業の企業で、バンガロールのほかムンバイやプネなどインド9都市で自動車と二輪車のシェアリングサービスを提供しています。

Drivezy: Self Drive Car Rentals in India

Drivezyがサービスを提供するインドの都市部では公共交通が発達しておらず、通勤に車も使われますが、渋滞のため二輪車の需要が高いようです。Drivezyがホワイトペーパーの中で引用している統計によるとインドでは他国に比べ車の所有率が7.2%と極端に低く、2016年の車の販売台数は人口13億人に対して300万台強にとどまっています。これは収入に対して車の価格が高いためです。この点に目をつけて、利用者は必要な時に利用した分だけ支払えばよく、車両の所有者は使用していない時に賃料を稼げるP2Pカーシェアリングサービスを提供しようというのがDrivezyです。

創業当時はJustRideという名前で、車のリース会社と協業して利用可能な200ほどの車の情報をプラットフォーム上で提供していました。2016年にP2Pのカーシェアリングプラットフォームをローンチし、2017年にDrivezyに改名し、二輪車も取り扱うようになり、現在にいたります。

Drivezyはアメリカの名門アクセレレータープログラムY!Combinatorの卒業生で、GoogleのLaunchpad Accelerator programにも参加しています。企業データベースCrunchBaseによると従業員は100人以上、これまでに受けた投資総額は149百万ドル以上とすでにスタートアップの域を脱して大きな企業に成長を遂げています。2018年後半には日本のAnyPayグループ会社の投資会社からの巨額の投資計画も話題になりました。

India’s Drivezy raises $20M for its on-demand vehicle rental service – TechCrunch

サービス提供企業が所有する車を利用者がシェアするタイプのB2C型のカーシェアリングは日本でもよく見かけるようになりましたが、Drivezyとこれらのカーシェアリングとの違いは、個人が所有する車両をDrivezyのプラットフォームJustConnectに登録して利用者に貸し出せるところでしょう。こういったC2C型のカーシェアリングサービスが日本では、行われていないわけではなく、すでにいくつものサービスが展開されております。

DrivezyのJustConnectプラットフォーム(Drivezyウェブサイトより)

冒頭で紹介したTechCrunchの記事によると、登録された車両8,000台のうち5,000台がバイクやスクーターなどの二輪車で、残りの3,000台が自動車、一方で収入の20%が二輪車によって、残り80%は自動車によってもたらされるといいます。同記事では毎月37,000人がDrivezyを利用することも明らかにされています。

 

Drivezyとブロックチェーン

2017年10月に公開された少し古い資料になりますが、DrivezyとそのトークンRentalcoins、ビジネスモデルなどについてはホワイトペーパーが公開されています。

Rentalcoins: A Currency Powering The Sharing Economy

Drivezyの計画には、大きく分けて2つのフェーズがあることを押さえておくとよいでしょう。

画像: Rentalcoinsのふたつのフェーズ(Drivezy ホワイトペーパー P10 図4より)

最初のフェーズ1ではRentalcoins 1.0を発行し、続くフェーズ2ではより広範なシェアリングマーケットのためのRentalcoins 2.0を発行する計画です。現在はフェーズ1の最中で、Rentalcoins 1.0のふたつのICOは終了しています。

Rentalcoins 1.0はEthereumブロックチェーンを利用したERC20トークンです。このトークンは、Drivezyのサービスを利用するためのトークンではなく、DrivezyがICOで調達した資金で購入する車両の部分所有権を表し、車両の賃料の一部をトークンの保有量に応じて投資家に配分するセキュリティートークンと見ることができます。

Drivezyのビジネスモデル(Drivezy ホワイトペーパー P12 図5)

Drivezyのウェブサイトでは、車両の利用料金はインドの法定通貨インド・ルピーで表示されていますが、ホワイトペーパーには「透明性を確保するためすべてのトランザクションはスマートコントラクトに従って実行される」とあり、これはICOに参加した投資家向けの支払いを意味するものと考えられます。このスマートコントラクトは更新不可能で、車両が配備されてから収益をあげられると想定される36ヶ月間で終了します。ホワイトペーパーによると内部収益率は30%で、契約期間終了後Rentalcoins 1.0の保有者は、Rentalcoins 2.0と交換するか、そのままトークンを保有し続け車両を売りに出した収益の配分を受けるか選択できるようです。

Rentalcoins 1.0は取引所などで取引することはできず、Drivezyの許可のもと保有者はフェーズ1のICOの他の参加者に権利を移転することができます。

フェーズ2およびRentalcoins 2.0についてはまだ多くは明らかになっていません。カーシェアリングに限らず、コワーキングスペース、居住スペースなどもシェアの対象とし、Rentalcoins 2.0はERC 20ではなく独自に定義されるようです。

 

Drivezyの課題

Drivezyがトークンを利用したサービスを提供していく上での最大の難関は、インドの仮想通貨に対する厳しい姿勢でしょう。2018年4月にはインド準備銀行が金融機関に対して仮想通貨取引所との関係を断つよう指令を出し、これに対して禁止撤回を求める署名が集まりました。2018年末には規制緩和を示唆する要人の発言についても報じられましたが、インドでは仮想通貨の法的位置付けは未だ定まっておらず、強権的な措置が取られる可能性は排除できません。

このような状況で、Drivezyがフェーズ2を実現するのは困難でしょう。現在のフェーズ1ではトークンは限られた投資家に証券的に売りに出され、インド国外の投資家も少なからずいるであろうことから影響はそこまで大きくないかもしれません。規制の動向と合わせて法定通貨で配当を支払うなど柔軟な対応も可能です。一方、フェーズ2ではカーシェアリングに限らないシェアリングサービスを対象とし、一般ユーザーがRentalcoins 2.0を購入して支払いに利用することも想定しているため、仮想通貨取引所を実質利用できない現在の状態はDrivezyにとって大きな障壁となります。

また、Rentalcoins 1.0のようなセキュリティートークンは現在注目を集めているトークンの新しい活用方法ですが、Rentalcoins 1.0は譲渡に際してDrivezyが介在し、完全に自動化されているわけではなく、オープンなマーケットで売りに出したり誰にでも自由に譲渡したりすることはできず、扱いの難しさが見えてきます。

 

Drivezyの今後

現在DrivezyはRentalcoins 1.0の発行を終え、カーシェアリングサービスの拡大とセキュリティートークンと見ることもできるRentalcoins 1.0を実験的に運用する段階にあります。

巨額の投資に関する報道や、名門アクセレレータープログラムに参加した過去からもDrivezyは前途洋々のサービスのように見えますが、今後フェーズ1が終了して、フェーズ2でRentalcoins 2.0を発行にあたり、インド特有の仮想通貨に対する厳しい規制は無視できません。また、Drivezyがサービスを提供するP2Pのカーシェアの分野には、ブロックチェーンやトークンこそ利用していないものの、同じくバンガロールに拠点を置くZoomcarという競合も存在します。

ただ、このような難しい局面に直面しつつもDrivezyはシェアリングエコノミーのための分散型のブロックチェーンプロトコルRayyの開発を続けています。日本との関連ではRayyのウェブサイトにパートナーとして日本のAnyPayやLayerXの名前が上がっているのも興味深いです。

インドでは車を所有するフェーズを飛び越えて、カーシェアを使うフェーズに進むのでしょうか。カーシェアリング、ひいてはその先のより広範なシェアリングサービスでDrivezyがどのような革新をもたらすのかインドの仮想通貨規制の動向と合わせて今後に注目したいところです。

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

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