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Decentralandとは

Decentralandは2015年に始まったプロジェクトで、Ethereumブロックチェーンと分散型ファイルシステムを使って分散型の3D仮想世界を構築しようというプロジェクトです。

Welcome to Decentraland

3D仮想世界というと、Linden Labが開発し、2003年に運営が始まったSecond Lifeを思い出す人もいるかもしれません。ユーザー同士がインタラクションし、さらに世界の構築にも関われるだけでなく、アイテムや土地を売り買いできるRMT(リアルタイムトレーディング)や、企業のマーケッティングツールとしての可能性からも注目を集めました。

Official Site | Second Life – Virtual Worlds, Virtual Reality, VR, Avatars, Free 3D Chat

VRChatやClusterといったアプリが出てきているとはいえ、3D仮想世界で時間を過ごす、その世界の構築に関わるというと、突飛に感じる方も多いかもしれませんが、私たちが普段使っているSNSも仮想世界と考えることもできます。SNSはもちろん、ウェブサイトを作ったり、ブログを立ち上げたりすることで、「インターネットという世界」の構築に関わっている人も少なくないでしょう。

DecentralandはEthereumのリリースと同じ2015年というブロックチェーンの黎明期にかなり原始的ではあるものの2Dのプロトタイプを発表しています。その後2016年に3Dの世界を発表、2017年のトークンセールでは27億円超を集め、今なお開発が続いています。

画像: 2015年、2016年時点の2D・3D世界(Decentralandホワイトペーパーより)

Decentralandが提供する3D仮想世界自体は新しいものではありませんが、Second Lifeとの最大の違いは、分散化の有無にあります。Decentralandは企業ではあるものの、ソフトウェアはオープンソースで開発され、Ethereumとその上で動くスマートコントラクト、ストレージにはIPFS(分散型ファイルシステム)を使っているため、事実上分散型のサービスといえます。Ethereumネットワークとスマートコントラクト、IPFSが稼働し続ける限り、サービスが継続し、Decentraland上の土地やアイテムといった資産は真にユーザーが所有権を持ちます。

Decentralandを探索するだけなら登録不要でお金もかかりません。ChromeやFirefoxといったブラウザでDecentralandのウェブサイトにアクセスすれば、すぐに探索を始められます。

画像: Decentralandの風景

Bitcoin.comには、2週間にわたって若い世代の10歳と7歳の著者の息子さんと一緒にDecentralandをプレーしたという詳しいレポートが掲載されています。

Exploring Decentraland: A Review of the Virtual World Built on Ethereum | Reviews Bitcoin News

続いてDecentralandがどのようにブロックチェーンを使っているのか、Decentralandの仕組みを見てみましょう。

 

Decentralandとブロックチェーン

Decentralandの概要についてはホワイトペーパーが公開されています。ただし、内容が古いと思われる部分もあるためアップデートしながら解説します。

Decentraland ホワイトペーパー

Decentralandは、土地の所有権の管理とDecentralandのERC20トークンMANA、土地を表すERC721トークンLANDの発行にEthereumブロックチェーンを使っています。

Decentralandの構造は、合意形成レイヤー、コンテンツレイヤー、リアルタイムレイヤーの3つのレイヤーで成り立っています。合意形成レイヤーは土地の所有権を、コンテンツレイヤーはその土地のコンテンツを管理し、リアルタイムレイヤーはDecentralandをプレーしているユーザーへのコンテンツの表示を扱います。

画像: Decentralandの構成(Decentralandホワイトペーパーより。日本語部分は筆者概訳)

土地の所有権に関するデータはEthereum上で扱い、その土地に作られたコンテンツはIPFSにファイルとして保存されます。Decentralandを探索するだけでなく、IDを持ってDecentralandをプレーしたい場合は、Metamaskを使ってEthereumのウォレットアドレスに紐づいたIDを作ります。土地はDecentralandが開催するオークションに参加してMANAをバーンして手に入れるか、マーケットプレイスでMANAを使って購入します。MANAはアイテムの売買にも使われます。Decentralandのコンテンツは、Builderと呼ばれるビジュアルエディタを使うか、SDKを使ってコードを書いて作ることができます。

サービス以外の運用面では、Decentraland DAOと呼ばれるDAO(分散型自律組織)がDAOフレームワークAragonを使って構築され、スマートコントラクトやアセット、MANAの管理をしています。ユーザーはDecentraland DAOを通じて、機能の拡充や土地のオークション、手数料など重要事項を決定する投票に参加できます。
※ DAOについて詳しくは本ブログの記事「自律分散型組織DAOとは」を参考にしてください。

 

Decentralandの課題

Decentralandの目下の課題はEthereumの手数料(ガス代)といえるかもしれません。これはDecentraland自体の課題というよりも、Ethereumが抱える課題であり、前出のBitcoin.comのレポートでも指摘されています。更に、2020年9月のDeFiブームなど、他のサービスの影響で手数料が乱高してしまうといった問題もあります。

同レポートではアイテムの値段についても数千円、数万円でなく「もっと安ければもっと楽しいのに・・・」と感想が述べられています。マーケットプレイスをのぞいてみると、土地も高額で、数万円、数十万円相当というのが相場で、誰もが気軽に購入してコンテンツを作って遊べる価格とはいえません。

画像: Decentralandのマーケットプレイスで売られている土地

Decentraland内の土地であるLANDは運営元によるオークションで、2017年12月を始めとして売りに出されました。この運営者が土地を生成しオークションで売り出す点は、分散型とは離れてしまっている要素です。マイニングで採掘されるビットコインなどと違い、無から土地を生み出す権利を運営者が持っており中央集権的とも言えます。また、土地をプリセールして早期ユーザーが土地を売りぬいて利益を得られる構造はICOに非常に近い構造です。この点は、Decentralandだけでなく、Decentralandと同じくEthereumブロックチェーン上に仮想世界を作ろうとしているCryptovoxelsでも同様であり、初期の段階で運営者や初期ユーザーが利益を上げやすいという点では、ビジネス面においてはある意味定石のような手段になっていますが、ICOの危うさも併せ持つ側面もあり、今後時間の経過とともにどのような動きをしていくかは注目されるところです。

 

おわりに

本記事では、ブロックチェーンを使って3D仮想世界の構築を目指すDecentralandについて解説しました。Second Lifeの絶頂期から10年以上が経つ現在、コンピューターの処理能力が向上し、当時はまだ一般的でなかったVRデバイスが普及し、仮想世界の利用を後押しする可能性があります。

ブロックチェーンベースではありませんが、自動翻訳を手がけるロゼッタは、本社機能をVR空間に移すことを発表しました。

VRで出社? 本社オフィスを仮想空間に移転、ベンチャーが挑戦 – ITmedia ビジネスオンライン

ロゼッタの例は少し極端ではあるものの、このように仮想世界の利用が進むのはありえない流れではありません。その中で、Decentralandをはじめとする分散型の仮想世界はどのような地位を築いていくのでしょうか。Decentralandが投機対象を超えて、誰もが楽しく遊べる魅力的な世界に成長するのか、今後の動向に注目したいところです。

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

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