7月20日にEthereumは5周年を迎え、8月5日にロンドンハードフォークを完了しました。Ethereumにとって大きな転機となる出来事となりました。
今回は、ブロックチェーンスタートアップでも比較的大きなプロジェクト3つを紹介します。
OpenSea
NFTマーケットプレイスのOpenSeaが、シリーズBで1億ドル(約110億円)の資金調達を実施し、評価額が15億ドルに達したと発表されています。この資金調達によりOpenseaはユニコーン企業(評価額が10億ドル以上のスタートアップのこと)となりました。2021年3月に2300万ドルでシリーズAを完了してから、4ヶ月にシリーズBとユニコーン入りと、わずか4年で急速な成長を遂げています。
https://duneanalytics.com/rchen8/opensea
画像:Dune Analyticsより(https://dune.xyz/rchen8/opensea)
実際にOpenSeaの取引量を見てみると、NFTバブルの波を受けて2021年2月から急激に上昇しています。また、2021年8月1日には5374万ドルと過去最高の取引量を記録しています。
OpenSeaは2021年5月ごろからガス代が安いPolygonへの対応を始めていましたが、今回の資金調達を完了して、ガス代削減のためにさまざまなチェーンに対応する計画を立てています。今のところ、対応先として挙げられているものは、NBA Top ShotのFlowとTezosが挙げられています。
*ガス代とはブロックチェーンにデータを書き込む際の手数料のようなもので、2021年7月現在では、1つのNFTを発行するのに約5ドル必要になります。
NBA Top Shotが一定程度の成功を収めた要因の一つとして、ウォレットのインストールやガスの支払いなどブロックチェーンサービスを使う際の独特の煩わしさがを排除したことが挙げられるでしょう。
OpenSeaもNFTをより多くの人に届けるためにも、ブロックチェーン特有の煩わしさを取り除く施策を続けることが予想されます。
また、OpenSeaの話から逸れてしまいますが、コミュニティー駆動型のNFTマーケットプレイスのRaribleが1420万ドル(約15億円)、Mintableが1300万ドル(約14億円)円の資金調達を実施しています。
画像:THE BLOCK (https://www.theblockcrypto.com/data/nft-non-fungible-tokens/nft-overview/weekly-trade-volume-of-nfts)
また、OpenSeaで取引されたNFTに限らず、主要なNFTサービスの取引高を見てみても、バブルを機に伸び始め、2021年7月には3月のピークを超えていることがわかります。
NFTバブルは落ち着いたとの意見もよく耳にしますが、OpenSeaや各NFTサービスのデータだけを見てみると、まだNFTの波は続いていることを実感しています。
現在のNFTサービスを俯瞰してみると、NFTを売ることがメインのものが多い印象です。これからは、NFTを売るだけでなく、NFTに機能的価値をつけたサービスが出てきて、NFT市場がより発展していくことに期待しています。
FTX
暗号資産デリバティブ取引所のFTXが180億ドル(約200億円)の評価額で、9億ドル(約10億円)の資金調達を実施しました。今回のラウンドでは60を超える投資家が参加しており、Softbankも出資者のひとつとなっています。
FTXでは暗号資産の先物取引はもちろんのこと、レバレッジされたトークンの取引、TeslaやAppleなどの株式をトークン化した取引など幅広い金融商品を提供しています。
FTX CEOであるSBF(Sam Bankman-Fried)のTweetからの引用になりますが、2020年11月頃から取引量が伸び初め、2021年4月時点では300億ドルの取引高を記録しています。バブルの影響もありますが、同時期のBinanceの取引高の1/7程まで達しています。
画像:取引量の推移、左 Binance、右 FTX
また、最近では、ドルフィン・エンターテインメントと提携してエンタメブランド向けのNFTマーケットプレイスの開発を発表したり、MLB(メジャーリーグ)とコラボして、今シーズンの残り期間でどの選手が最長飛距離のホームランを打つかを予想し正解した人に10万ドル相当のビットコインを配るキャンペーンなどを行っています。
加えて、FTX内での拡張にとどまらず、Serumと呼ばれる、デリバティブ向けのDEX(分散型取引所)をSolana上で開発しており、中央集権サービスから分散型のサービスまで活動範囲を広げています。
BinanceやHuobiなどの大手暗号資産取引所がいるのにも関わらず、後発の取引所の中ではFTXは群を抜いて成長しています。さまざまな企業とコラボしたり、事業領域を拡大したりなど、社会的背景を精緻に分析し、的確に事業を展開しているからこそ、これほどの速さで成長しFTXならではの強さを感じました。
・Antigua-based crypto derivatives exchange FTX closes a record $900 million fundraise at an $18 billion valuation. The deal will likely boost the net worth of its billionaire founder and CEO, Sam Bankman-Fried, by nearly $8 billion.
・Binance
・Dolphin Entertainment, FTX Launching NFT Marketplace for Sports and Entertainment Brands (EXCLUSIVE)
・$100K in Bitcoin Up for Grabs as FTX’s MLB Team-Up Advances
MakerDAO
MakerDAOとはステーブルコインDAIの管理や、レンディングサービスを提供するプロジェクトのことで、MakerDAOの開発を牽引する財団「Maker Fundation」がプロジェクトの運営資金をMakerDAOに返還したことを発表しました。
MakerDAOはMKR(ガバナンストークン)の保有者によって意思決定されており、今回の発表ではMaker Fundationから84,000MKRをMKR保有者の管理下に移行しています。
ブロックチェーンプロジェクトと聞くと中央の管理者がなく分散的に運営されてることが美学とされてきましたが、完全にDAOで運営されているプロジェクトはそこまで多くありません。今回の発表でMakerDAOが初めてもDAO化の成功事例になる可能性があり、とても注目を集めました。
また、スタートアップの観点からMakerDAOを分析すると、MKR(ガバナンストークン)に特筆すべき点があります。ガバナンストークンとは、DAOの意思決定に用いられ、通常その保有量が多いほど組織に対する影響力多くなります。つまりガバナンストークンとは、株式会社の枠組みで考えると株と同義で捉えることもできます。実際に、2017年に1200万ドル、18年に1500万ドル、19年に2750万ドルのMKRを投資先の企業に渡しており、株式会社の株による資金調達と変わりなく、トークンを使って資金調達を実施できています。
DAO化やトークンを使った資金調達など、今までになかった分野に挑戦しており、MakerDAOはこれからのブロックチェーンスタートアップのロールモデルとなる存在になるでしょう。
・Maker sells $12M of MKR to partners, led by Andreessen Horowitz and Polychain Capital
・a16z crypto purchases 6% of MKR, backing Stablecoin Vanguard MakerDAO
・Maker Foundation Announces $27.5 Million MKR Sale to Dragonfly Capital Partners and Paradigm
・Financial Report – 2021-07
おわりに
今回はブロックチェーンスタートアップでも大きく成長している3つの企業(サービス)を紹介しました。特にMakerDAOは、ブロックチェーンスタートアップにとって大きな夢を与える事例となりそうです。
海外のブロックチェーンスタートアップは、すでにブロックチェーン以外のスタートアップと遜色なく戦えています。ですが、日本国内では、まだ既存のスタートアップと同じ土俵に上がれてないと感じています。引き続き、日本のブロックチェーン業界の発展のためにも、記事を執筆していきます。
最後になりますが、BlockchainBizを運営するガイアックスでは、シード期からスタートアップを支援する活動を行なっています。事業の相談や投資など、ご興味のある方は気軽にご連絡ください。