前回のブロックチェーンスタートアップの動向記事を書いてから、ブロックチェーンの事業相談の連絡をいただきようになりました。引き続き、ブロックチェーンに興味を持つ人を増やし、業界の発展に公開できるように事例発信していきます。
Mirror
分散型のブログサービスであるMirrorが$100Mのバリュエーションで投資を受けたと報じられています。
今までのブログサービスでは、運営にブログの公開が制限されたり、運営がサービスの提供を終了すると執筆物も失われたりなど、利用者は時間をかけて執筆したにもかかわらず、本当に意味で執筆物を所有しているとは言えない状態でした。
そこで、Mirrorでは、Arweaveと呼ばれるブロックチェーンにブログデータを保存することで、Mirrorのサービスが終了したとしても執筆者がブログの所有できるようにしています。
Mirrorではブログの所有権を得られるだけではなく、ブログをNFTにしたり、そのNFTを細分化して複数人で所有できたり、クラウドファンディングできたりと、「書く」という行為に関して様々な付加価値を提供しています。
それらのMirrorでの機能を活用し執筆予定のブログをNFTにして$6K(約66万円)で販売した例も出てきています。
How I Sold a Blog Post for $6k to 3LAU
このように、一企業により集権的に管理されていたものや、利益がプラットフォーム提供者側に過剰に偏っていたものは、ブロックチェーンを活用することで次第に分散化していくことでしょう。
Palette
2021年6月24日にHashpaletteが国内初のIEO(Initial Exchange Offering)にて資金調達をすることを発表しました。IEOとは、企業やプロジェクトが発行するトークンを暗号資産取引所を通じて購入してもらうことで資金調達を行うモデルです。ICO(Initial Coin Offering)では投資家が直接トークンの発行元から購入しており、金を集めるだけの偽のプロジェクトに投資する詐欺などが多発しておりました。ですが、IEOでは、暗号資産取引所が企業やプロジェクトの審査を行いトークンの売買を仲介することで信頼性を上げる仕組みになっています。
出資先のHashpaletteでPalette Token(PLT)の購入申込みを7月1日に受付開始
このIEOで販売されるのはNFT特化のブロックチェーン「Palette」の「PLT」になります。Paletteは許可された組織のみで運用させるプライベートブロックチェーンで、手数料無料でNFTの発行や流通が可能なこと、クロスチェーンに対応してることなどが特徴として挙げられます。
Hashpalette
Palette White Paper
プロジェクトがスケールする前に多額の資金を調達するも、その資金調達に満足してプロジェクトが頓挫する事例はこれまで多々ありました。資金調達を機にサービスがより良いものになることでIEOは成功したと言えると言えるでしょう。ブロックチェーン企業のICOに代わる新しい資金調達法としてIEOが定着するためにも、今後のPaletteの発展に期待したいです。
Stake Technologies
日本発のパブリックブロックチェーンであるPlasm NetworkとShiden Networkの開発するStake Technologiesが11億円の資金調達を実施しました。
Plasm Networkはパブリックブロックチェーンの課題であるInteroperability(相互運用性)とScaleability(取引処理性能)を、Polkadotのparachainに接続することで解決しようとするプロジェクトです。Shiden NetworkはPolkadotの姉妹チェーンであるKusamaに対応するチェーンになります。
Polkadotのparachainの仕組みに関しては解説記事をご覧ください。
Polkadot(ポルカドット)- 分散型ウェブを目指すプロジェクト
Stake Technologiesは他にも資金調達を実施したり、Polkadotの開発主体から最多となる6回の助成金獲得を行ったりするなど、世界から多くの注目を集めています。
日本発のパブリックブロックチェーンとして世界を席巻する時が来るのを楽しみにしています。
Secritize
セキュリティートークンの発行・管理サービスを提供するSecuritize Japanが第三者割当増資により$48M(約53億円)の資金を調達しました。
セキュリティートークンとは、ブロックチェーン等の技術を使用して有価証券をデジタル化したもの指します。セキュリティートークンのメリットとして主に下記3点が挙げられます。
・24時間365日いつでも証券の売買ができること
・人手を介さずに契約できるので取引コストを低減できること
・IPOよりも低いハードルで調達できるようになり、幅広い層にリーチできること
今回の資金調達に参加した投資家は、Securitizeのプラットフォーム上で発行されるデジタル証券で株式を受け取ることになるそうです。
Securitizeは主に有価証券のデジタル化としてサービスは提供していますが、セキュリティートークンは不動産などその他幅広い分野でも応用が可能と言われています。これからも、セキュリティートークンのスキームの活用した応用事例を追っていきたいです。
InsureDAO
DeFi保険のプロトコルを開発するInsureDAOが約1.2億の資金調達を実施しました。InsureDAOでは誰でも自由に保険商品の作成、購入が可能となっており、プロトコルの運用がDAOで行われます。まもなくテストネットで公開し、2021年8月にメインネットでのサービス開始を予定しています。
Whitepaperには、ネイティブトークンのINSUREを発行すると書いてあり、Curveに似たトークンモデルを採用すると書かれています。
DeFi市場が急速に発展する中、その市場の安全性や機能性を担保するサービスにも注目が集まるでしょう。
【取材】日本発DeFi保険プロトコル「InsureDAO」、約1.2億円を調達(CEO斯波晃士氏、Chairman岩瀬大輔氏)
ファンドの動向
サービスの紹介ではありませんが、ブロックチェーン関係に投資するファンドの動きが活発になってきています。
老舗クリプトVCのBlockchainCapitalは新たなファンドを立ち上げ$300M(約330億円)の資金を調達しています。今回のファンドにはPaypalやVisaも参加していますが、金融領域に絞らず、ブロックチェーンインフラやプロトコル、DeFi、NFTなど、幅広い分野に投資すると明かしています。また、大手クリプトVCのa16zは、$2Bもの巨額の資金をクリプト系ファンドとして立ち上げることを公言しています。
a16z aims to raise $2 billion for its third crypto fund: report
a16z Crypto Fund Balloons to $2 Billion
Blockchain Capital Raises $300 Million for Fund V
おわりに
今回は日本に関係のあるプロダクトを中心に取り上げました。
今回のCoincheckによる日本初のIEOは、SNSでの言動を観察していると投機的な目的での購入が目立った印象でしたが、結果的に目標金額の約9億円を申し込み開始6分で突破しました。ブロックチェーンの企業に世の中の目が行くいいきっかけになったと感じています。
しかし、VCファンド動向でも取り上げたように、海外では日本とは比較にならないほどの資金がブロックチェーン関係のプロジェクトにが流れています。日本でもブロックチェーン関係のプロジェクトに資金が流れ、業界がより発展していくように発信を続けていきます。
最後になりますが、BlockchainBizを運営するガイアックスでは、シード期からスタートアップを支援する活動を行なっています。事業の相談や投資など、ご興味のある方は気軽にご連絡ください。