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  • 更新日: 2021年4月8日

さまざまな分野でブロックチェーンの検討や導入が進む中、ブロックチェーンベースのゲームは今後より多くの人にブロックチェーンや仮想通貨が浸透するきっかけとして期待が持てる分野です。本記事ではこれまでにゲーム分野でブロックチェーンがどのように利用されてきたか、現在どのようなゲームが支持されているのか、ブロックチェーンがゲームにもたらすメリットや課題について解説します。

 

ブロックチェーンとゲームのこれまで

2017年末の仮想通貨バブルの最中、Ethereum上に子猫を収集・交配するゲームCryptoKittiesがカナダのスタートアップAxiom Zenによってリリースされ、ブロックチェーンとゲームの組み合わせに注目が集まりました。

CryptoKitties | Collect and breed digital cats!

画像: CryptoKitties ウェブサイトより

仮想通貨取引の盛り上がりとともに、CryptoKittiesがEthereumのネットワークに大きな負荷をかけ、ブロックチェーンのパフォーマンスやトランザクション手数料の課題が浮き彫りになりました。ブロックチェーンや仮想通貨の専門メディアに限らず、一般のニュースメディアもこの現象を取り上げるほどでした。

CryptoKitties craze slows down transactions on Ethereum – BBC News

Ethereumネットワークに負荷をかけたことについてCryptoKittiesに対する批判はあったものの、同ゲームのリリースはブロックチェーンに関するその後のさまざまな動きにつながりました。ブロックチェーン一般ではスケーラビリティーやトランザクション手数料について、ゲームの観点からはスムーズなゲーム体験とは何かユーザビリティーに関する議論のきっかけを作りました。

加えてCryptoKittiesはブロックチェーンを利用することで、プレーヤーがアイテムの所有権を真に持てるコレクティブルゲーム(コレクティブル: collectible、収集可能な)と呼ばれるブロックチェーンベースのゲームのジャンルを切り開きました。Ethereumベースの代替不可能で唯一無二なトークンの標準ERC721を採択前のベータ版の段階から利用し、標準策定に寄与しています。CryptoKittiesのパロディーやバトル要素を加えたカードゲームなど、多くのゲームがCryptoKittiesに続いてリリースされました。
※ ERC721について詳しくは本ブログの記事「代替不可能で唯一無二なトークンを作る標準ERC721」を参考にしてください。

盛り上がりをみせたブロックチェーンベースのゲームですが、2018年の仮想通貨価格の低迷をうけて、リリースが延期されたりサービス中止となったりするゲームも出ました。一方で同年にはSteem/Steemit上でSteem Monstersが、Ethereum上では日本のdouble jump.tokyoによってMy Crypto Heroesがリリースされ、引き続き人気を集めているのは注目に値するでしょう。

画像: My Crypto Heroesウェブサイトより

ゲーム自体だけでなく、2018年にはライトニングを始めとするブロックチェーン一般のスケーラビリティーやユーザビリティーを改善する技術の開発が着実に進み、ゲームに特化したものではタイのスタートアップLoom NetworkがEthereumのサイドチェーンソリューションを提供し始めました。

 

ブロックチェーンベースのゲーム

分散型アプリケーションに関する情報サイトDappRadarやState of DAppsで、ゲームカテゴリーのランキングをみてみましょう。(DappRadarとState of DAppsでは対象としているブロックチェーンが異なります)。

2019年7月現在、プレーヤーの多いゲームで24時間のユーザー数が2000人から3000人、ゲームのスマートコントラクトとのトランザクション金額の多いゲームで1週間に数百万円が動いていることがわかります。プレーヤーがいてこそのゲームで、かつブロックチェーンと相性のよい所有権やそれを仮想通貨で取り引きできる要素を盛り込まないすべはなく、ユーザー数とトランザクション金額はゲームの人気を評価する上で一定の指標になります。

先に紹介したSteem MonstersとMy Crypto Heroesは安定してプレーヤーがいてある程度のトランザクション金額があるゲームで、いずれもキャラクターやカード、アイテムを収集し、レベルアップや対戦を楽しむタイプのゲームです。Steem MonstersはDPoSのSteemブロックチェーンを、My Crypto HeroesはEthereumと合わせてLoom Networkのサイドチェーンとオフチェーン処理を併用し、プレーヤーはブロックチェーンのパフォーマンスや手数料をほとんど気にせずプレーすることができます。

ブロックチェーンベースのゲームでは、スマートコントラクトプラットフォームの先駆けであるEthereumを利用するのが主流でしたが、2018年に入るとSteemや、1年という長期にわたるICOを終え巨額の資金を集めたEOSが新しいプラットフォームとして台頭してきました。EOSの開発はSteemを開発したDaniel Larimer氏が率いています。EOSではSteem同様にDPoSで合意形成が行われ、圧倒的な処理スピードとトランザクション手数料がかからないことを売りにしています。
※ EOSについて詳しくは本ブログの記事「分散型アプリケーションのためのインフラEOSIO」を参考にしてください。

EOSを使ったブロックチェーンベースのゲームとしては多くのプレーヤーが同時に参加する戦略ゲームProspectors、RPGをうたったEOS KnightsやEOS Dynasty(EOS三国)が人気を集めているようです。

ここまで紹介したゲームは対戦やRPG要素が入るものの基本的には収集をベースとするゲームでしたが、Decentralandのようにプレーヤーが仮想世界の空間を所有し、コンテンツやアプリケーションの創作の余地のあるプラットフォーム的なゲームが出てきていることにも注目しておきたいところです。DecentralandのウェブサイトではローンチパートナーとしてBinanceやMy Crypto Heroesなどの名前が挙がっています。初期4000ユーザーにはMy Crypto HeroesデザインのNFTの衣装が贈られるとのこと。そのほかCrypto Kittiesをはじめとするブロックチェーンベースの有名収集ゲームとのコラボレーションも発表されています。また、昨今ではDecentraland上での出来事に関するニュースも仮想通貨関連のメディアで報じられるようになりました。

画像: Decentralandウェブサイトより

10年以上前にはSecond Lifeという3次元仮想世界での生活や創作を楽しむゲームが一斉を風靡し、その後急速に関心を失いました。ブロックチェーン版Second LifeともいえるDecentralandは10年の時を経て、向上したマシンパワーと仮想通貨との親和性で今後この分野を再度切り開くのかもしれません。

 

ゲームでブロックチェーンベースを採用するメリットと課題

ブロックチェーンベースのゲームの強みとして、デジタルアイテムでもプレーヤーが真にそれを所有し資産にできること、透明性が高いことが強調されます。資産の所有権がプレーヤーにあり、それをブロックチェーンで管理することで移転や貸与、仮想通貨を利用した売買も比較的容易に実現できます。Decentralandがゲーム外のNFTコレクティブルをホストしようとしているように、他のゲームに資産を持ち込むといったこともできます。さらに、たとえゲームのサービスが提供されなくなっても資産はブロックチェーン上に永遠に残ることもブロックチェーンベースのゲームのメリットとして度々言及されます。

ただし、これらのメリットについては、理想と現実の乖離があることも知っておかなければなりません。パフォーマンスなどの理由から、完全にすべてのデータをブロックチェーン上に持っていないゲームもあり、これでは完全にプレーヤーが資産を保有しているとは言えません。CryptoKittiesは画像データをブロックチェーン上に保存していないことで知られています。CryptoKittiesのサービスが終了すると、メタデータはブロックチェーン上に残りますが、子猫の見た目の画像データなくなってしまう可能性があり、メタデータのみがそれまでの子猫と同様の価値を持つのかには疑問が残ります。同じ理由からゲームの永続性についてもゲームによっては完全なものではありません。

ゲームに限らずブロックチェーンベースの分散型アプリについてはパフォーマンスと手数料の問題が指摘されますが、この点についてはEthereumのPlasmaに期待が寄せられているほか、SteemやEOSのように合意形成の時間が短く手数料のかからないプラットフォームを利用する、Loom Networkのようなサイドチェーンソリューションを併用するといった方法で対処が進められています。最新のブロックチェーンベースのゲームは、CryptoKittiesでアクションごとに処理時間がかかりGas代などを支払う必要があったのとは比べものにならないほどスムーズにプレーできるようになっています。収集やカードバトルといったミリ秒単位のリアルタイム性を要求しない場合、多少のストレスはあっても大きな問題にはならないでしょう。

パフォーマンスやトランザクション手数料についてはさまざまな対処手段が出てきている一方で、ユーザビリティーについてはゲームをプレーし始めるにあたってプレーヤーは仮想通貨やブロックチェーン、ウォレットの概念を少なからず理解する必要があり、人気のブロックチェーンベースのゲームでもユーザー数は数千人規模にとどまっている原因と考えられます。ウォレットをアプリに組み込んでスムーズな体験を実現しようとしているゲームもありますが、ウォレットの生成や管理をゲームやアプリに任せてしまう危うさは否めません。

さらにブロックチェーンゲームについてまわる特有の法的な課題もあります。賭博に当たるかは当たらないか、また、日本ではトークンが2号仮想通貨とみなされるのかといった点がこれにあたります。ブロックチェーンゲーム情報サイトDappWithではMy Crypto Heroesを開発しているdouble jump.tokyoが金融庁に登頂の上、問い合わせに対して回答を得た経緯や結果が記事として公開されています。

【独占取材】My Crypto Heroes(マイクリプトヒーローズ)が考えるブロックチェーンゲームの法的問題 | DappsWith

ランダム性やギャンブル性の高い要素はご法度としても、ブロックチェーンベースのゲームやトークンについてはまだ法律で定まっていない部分が多く、今後法整備が進み明確な指針が示され、開発やリリースがスムーズになることが期待されます。

 

ブロックチェーンとゲームの今後

ブロックチェーンベースのゲームは、パフォーマンス面を中心にブロックチェーン関連技術に進化を促してきました。プレーヤーに対しては真にアセットを所有できる新しい体験をもたらしましたが、最もインパクトのある変化は「ゲームをプレーしてお金を稼ぐことがより身近になった」ということなのかもしれません。お金だけがモチベーションになるとはいいませんが、ゲームは仮想通貨やブロックチェーンのユーザー層を広げるアプリケーションのひとつとなるだけでなく、金銭を得るための労働の概念を変えるかもしれません。

ゲームのジャンルについては、ブロックチェーンのパフォーマンスの課題や資産の所有権を扱えるという特徴からこれまではCryptoKittiesのような収集・売買ゲームがブロックチェーンベースのゲームに限られてきました。ここにDecentralandのような仮想世界での生活や創作を楽しむ新しいジャンルのブロックチェーンベースのゲームが加わりつつあります。デジタルの世界で所有権を主張できたり、ブロックチェーンを通じて1つの世界をプレイヤー間で共有できる仮想世界のゲームは、ブロックチェーンとの相性のいいジャンルのひとつです。また、将来的にはブロックチェーンのパフォーマンスの向上によって、現在では不可能と思われているリアルタイム性の高い格闘やシューティングのようなゲームも出てくるのかもしれません。

また、Facebookが2019年6月に発表した独自の仮想通貨Libraは送金手段としての利用が想定されているようですが、ゲーム業界にも大きな影響を及ぼす可能性があります。Facebookは世界中に20億人を超えるユーザー数を抱えるサービスであることから、Libraは一般のユーザーが仮想通貨に親しむきっかけとなりうる一方で、多くのプレーヤーにとってEthereumであろうがLibraであろうがゲームの中で金を稼げればよく、分散度の高いブロックチェーンベースのゲームからユーザーが離れることにもなりかねません。Libraについては各国の金融当局をまきこんでの議論が続いているためすぐに既存プラットフォームの脅威となることはなさそうですが、ガイアックスも先行開発をしており、今後の動向に注目しておくべきでしょう。

Facebookが開発しているグローバル通貨 「Libra」を使用したアプリケーションの開発を開始  | ガイアックス

ブロックチェーンベースのゲームは2017年末のCryptoKittiesのリリースから短期間のうちにブロックチェーンの一大アプリケーションに成長しました。今後ブロックチェーンベースのゲームがどのようにユーザーを獲得していくのか、ブロックチェーンの未来を切り開いていくのか目が離せません。

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

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