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スマートコントラクトプラットフォームとして、分散型アプリケーションのためのもっともパワフルなインフラを目指すEOSIO(イオス・アイオー)について紹介します。

 

EOSIOの生い立ち

「EOSIOのプラットフォーム」を実現する「EOSIOのソフトウェア」の開発は、2017年に公開されたホワイトペーパーをもとに、ブロックチェーンを利用したソリューションを提供するケイマン諸島のblock.oneという企業が進めています。ただし、開発後の運用については独特で、EOSIOのFAQによると、開発ステージ終了後、EOSIOのソフトウェアはオープンソースソフトウェアとしてリリースされ、block.one自身はこれを利用したプラットフォームの運用は行わないとしています。
※「EOSIOのソフトウェア」「EOSIOのプラットフォーム」と表現が煩雑になりますが、正確性を重視し、EOSIOのウェブサイトおよびホワイトペーパーの表記に従います。「EOSIOのプラットフォーム」は「EOSIOのソフトウェア」を利用して運用されるプラットフォームを意味します。

EOSIO | Blockchain software architecture

block.oneの創業は2016年で、EOSIOも2017年に開発がはじまった比較的新しいプラットフォームですが、興味深いのはDaniel Larimer氏がblock.oneのCTOとしてEOSIOの開発に加わっているところではないでしょうか。Larimer氏は実験的な分散型システムや先進技術を開発してきたことで知られる人物で、分散型の取引所からはじめ、分散型金融プラットフォームBitSharesや本連載でも紹介した分散型のソーシャルメディアプラットフォームSteem、またこれらの基盤となるブロックチェーン技術DPoS(Delegated Proof of Stake)やGraphaneを開発したことで知られています。
※ Steemについては本連載の「ブロックチェーンを使ったソーシャルメディアプラットフォームSteem」を参照してください。

画像:Larimer氏が開発したブロックチェーン関連技術とサービス(EOS Consensus Presentation May 2017より)

 

EOSIOが得意とする分野

汎用な分散型アプリケーションのためのインフラを目指すEOSIOですが、中でも強調しているのはビジネスレベルでも通用するものとすることです。

ブロックチェーン技術に関する会議Consensus 2017でのプレゼンテーションの中で、Larimer氏は既存のサービスのトランザクション量についてVISAとMasterCardで秒間20,000、FacebookではLikeだけで秒間52,000、金融取引ではひとつのマーケットペアだけで秒間100,000トランザクションが発生することがあると数値を挙げ、このような大規模なサービスをひとつのプラットフォームでホストするとなると、秒間数百万トランザクションを処理できる必要があるとしています。ビットコインやイーサリアムのネットワークの処理能力はこれらのサービスからは程遠く、2017年の年末にイーサリアムブロックチェーンを利用したゲームCryptoKittiesがたったひとつでネットワークをパンクさせたのは記憶に新しいです。

Larimer氏がこれまでに開発してきたサービスは実際にユーザーに使われているもので、この経験をもとにEOSIOでは大量のトランザクションを処理できるプラットフォームを目指すといいます。

処理能力と合わせてEOSIOではトランザクション手数料をゼロにしようとしているのも特筆すべき点といえます。トランザクション手数料が必要なブロックチェーンを利用したアプリケーションでは、ブロックチェーンへの書き込みごとに手数料が発生します。私たち利用者はウェブ時代の無料のサービスに慣れている上、使い勝手の点でもブロックチェーンへの書き込みごとに手数料が発生すると不自然なアプリケーションになりかねません。

アプリケーションの運用という点では、アップデートやバグの改善が容易であることも重要です。アジャイルなウェブアプリケーションの開発とは異なり、スマートコントラクトは改ざん不可能なブロックチェーンに書き込まれるためアプリケーションのアップデートは容易ではありません。EOSIOではこの点について改善が試みられるようです。

このようにEOSIOは、Larimer氏がこれまでのシステム開発で培った経験や技術を活かして、ビジネスレベルでも通用する大量のトランザクションを処理可能な汎用のプラットフォーム、いわば分散型アプリケーションのOSとしての立ち位置を確立しようとしています。

 

通貨とその発行方法

EOSIOのトークンEOSはERC-20トークンとして10億EOSが発行されます。
※ ERC-20トークンについては本連載の「Ethereumベースのトークンの標準ERC20」を参照してください。

EOSIOは2017年6月26日から341日、約1年をかけたICOを行っています(2018年4月現在)。ICOの最初の5日間に総発行量の20%にあたる2億EOSが売りに出され、以降総発行量の70%にあたる7億EOSが200万EOSずつ23時間ごとに売りに出されます。残りの10%にあたる1億EOSはblock.oneのためにICO期間中の取引・送付が不可能な形で確保されています。

画像:EOSIOのICO(EOSIOのウェブサイトより)

ICOの期間が1年というのは異例で、ここまで期間が長いのは参加者にEOSIOのプロジェクトをよく知ってもらうため、必要であれば開発状況を見て判断してもらうためだといいます。価格決定の仕組みも興味深く、固定されたICO価格はありません。ICO参加者は23時間ごとの期間内にイーサリアムを送付し、送付額に応じて200万EOSの一部が分配されます。これらの工夫によりEOSIOは多くの人に広く平等にトークンを購入する機会を提供しようとしています。

そしてもっとも独特なのはICOで売りに出されているトークンEOSは2018年6月1日のICO終了後23時間で移転できなくなり、さらにEOSは権利、用途、目的を持たないとEOSIOが公言しているところです。唯一、ICOの終了後にEOSIOのソフトウェアを利用して何らかのプラットフォームが構築された時に、そのプラットフォームのブロックチェーン上で独自のトークンを流通させるには合計15%以上のEOS保有者から承認を得なければならないという条件がEOSIOのソフトウェアに組み込まれているため、プラットフォームを承認する投票権のようには機能するようです。今後構築されるEOSIOのソフトウェアを利用したプラットフォームでEOSの保有量に応じてトークンを配布するといったこともありえますが、これは期待にすぎません。

トークンEOSについては実験的な要素が多く、現段階ではICOが終わりどのような展開を見せるのか誰にも予想がつかないというのが実情といえます。

 

合意形成の方法

EOSIOでは、Proof of Stakeの一種DPoS(Delegated Proof of Stake)とよばれるアルゴリズムで合意形成が行われます。DPoSはLarimer氏がBitSharesで開発・導入したもので、Steemでも採用されています。
※ Proof of Stakeについては本連載の「Proof of Workの欠点を克服させた合意形成アルゴリズム、プルーフ・オブ・ステーク」を参照してください。

EOSIOのソフトウェアを使って構築されたプラットフォームのトークン保有者(ステークホルダー)は投票により、プラットフォームのブロックチェーンのブロック作成者を選んでブロックの生成処理を委任(デリゲート)します。ブロックの生成間隔は0.5秒で、トークンの保有者によって選ばれた21のブロック生成者がブロックの生成にあたります。ブロック生成にあたる順番はブロック生成者間で調整され、15以上のブロック生成者の同意によって順序が決まります。ブロックが生成され、いったん15のブロック生成者がブロックに署名するとブロックは取り消し不可能な状態になります。

DPoSアルゴリズムを利用したブロックチェーンではブロック生成者は競合するよりも協調してブロックの生成にあたるため、通常の状態でフォークが起こることはないといいます。また、ブロック生成者全員にブロックへの署名を要求するため、ふたつのブロックに同じタイムスタンプまたはブロックの高さで署名できず、ビザンチン将軍問題に対する耐性があるとされています。

DPoSに関する技術的な詳細はEOSIOのホワイトペーパーと合わせて、Larimer氏がSteemのCTOのだった時にSteemitに投稿した記事も参考になります。

 

今後の展望

EOSIOの2018年第四四半期までの開発マイルストーンがGitHub上で公開されています。最近2018年4月に入って開発者向けの完全な機能を備えたEOSIOソフトウェアEOSIO Dawn 3.0のプレリリースがあり、6月のICO終了に向けてプロジェクトは着々と進行しているようです。

Milestones – EOSIO/eos · GitHub

ICO終了後はEOSIOのソフトウェアを使ったプラットフォームが出てくるのか、出てくるとすればどのようなプラットフォームになるのか注目されますが、block.oneが主導するEOSIO利用促進の動きも明らかになりつつあります。block.oneはドイツのフィンテックインキュベーターFinLab AGと、EOSIOのソフトウェアを利用したプロジェクトのための100億円を超えるジョイントベンチャーを設立しました。また、ICOが終了する6月からは香港から始まる世界4都市でのハッカソンも企画されています。

EOSIOのソフトウェアがどのように利用されるのかと合わせて、現状では用途のないトークンEOSがこれらのプラットフォームでどのような扱いを受けるのかも気になります。

EOSIOは実験的な要素の多いプロジェクトですが、まずは2018年6月のICO終了を区切りにどのような展開を見せるのか注目しておきたいところです。

Aram Mine

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

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