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  • 更新日: 2021年4月8日

2020年アメリカ大統領選挙

2020年11月3日、アメリカの大統領と副大統領を選出するアメリカ大統領選挙が実施されました。共和党は大統領に現職のドナルド・トランプ大統領、副大統領に現職のマイク・ペンス副大統領を指名しました。一方、政権奪還を目指す民主党は、大統領にオバマ政権で副大統領を務めたジョー・バイデン前アメリカ副大統領、副大統領にカマラ・ハリス上院議員を指名しました。

今回のアメリカ大統領選挙では、2020年年初から拡散が始まった新型コロナウィルスの影響で、郵便投票を含む期日前投票が大幅に増え、2億数千万人といわれる有権者のうち、期日前投票や郵便投票をした人の数は1億人を超えました。トランプ大統領は郵便投票に対して不信感を表す発言を繰り返し、実際郵便投票では、州のミスで書類を送り直す、有権者が適切に封をせずに郵送してしまうといった事態が発生しました。

このような状況はテクノロジーで改善できる部分が少なくありません。本ブログで主要なトピックとしているブロックチェーンは、「改竄が限りなく不可能な形でデータを記録」でき、「ネットワークが分散化されていれば障害耐性が強い」ことから、選挙との相性がよいと考えられています。

ブロックチェーンの利用に限らず、作業の自動化が進めば迅速な開票、投開票にともなう費用の削減も期待できます。電子的な投票にはリスクがつきものという人もいるかもしれませんが、投票所で投票所入場整理券を提示したからといって、本人確認にはなっていないのが現状です。スマートフォンなどで簡単かつ安全、確実に投票できれば、より多くの人の意見を正確に政治に反映することができるようになるでしょう。

ここからは2020年11月のアメリカ大統領選挙でブロックチェーンがどのように使われたのか見てみましょう。

 

ブロックチェーンへのデータの記録

1848年から大統領選挙のデータを集計・配信しているアメリカの大手通信社AP通信は、アメリカ大統領選挙の集計データをEOS、Ethereumブロックチェーンに記録し、AP Elections APIとして提供しています。

画像: AP Elections API | AP Developer

AP通信は、分散型オラクルサービスChainlink上で動作するEveripediaのOraQleを使ってブロックチェーンにデータを書き込み、AP通信が署名とともに書き込んだデータを利用者に提供します。EOS、Ethereumそれぞれに書き込まれたデータは各ブロックチェーン上、APIを通して、またはEveripediaのウェブサイトで直接ブロックチェーンから読み込んだものを見ることができます。

Everipediaは2015年にWikipediaをフォークして始まったプロジェクトで、2018年にEOSがローンチした後はEOSブロックチェーン上で動作しています。Everipediaは現実世界の知識をブロックチェーンとOraQleに取り込むことを目指すとしていて、AP通信とのアメリカ大統領選挙に関するプロジェクトはその一環と見ることができそうです。

 

ユタ州の事例

AP通信とEveripediaは、信頼できるソースのデータを、署名付きで改竄がないことを確実にしてブロックチェーン上に公開しましたが、ユタ州では選挙の根幹である「投票」にブロックチェーンが使われました。ユタ州での投票については、アメリカのビジネス誌Fast Companyの記事で、ユタ郡当局者の発言や投票の体験談などを含め詳細を読むことができます。

2020 was the first presidential election for controversial voting app | Fast Company

Fast Companyの記事によると、アメリカでは州ごとに電子投票の扱いが異なり、ユタ州では海外で任務にあたる兵士や海外居住者に加え、障害のある人にも電子投票が許可されています。これらの対象者に加え、2020年のアメリカ大統領選挙では、投票日に新型コロナウィルスに感染して外出できなかった人にも電子投票が認められました。

ユタ州で投票に利用されたのはモバイル投票システムVoatzです。VoatzはHyberledgerブロックチェーンと生体認証を使って、安全で確実な投票を実現します。VoatzのFAQによると、これまでアメリカ国内で67回以上選挙に利用された実績があるといいます。

Voatz secure and convenient voting anywhere

ユタ州ではこれまでにもVoatzが利用され、Voatzのユタ州ユタ郡のウェブサイトでは、Voatzを使った投票のプロセスをていねいに説明しています。

画像: Voatzのユタ州ユタ郡のウェブサイト

Voatzを利用するにあたって、投票者はIDと自撮り写真などで本人確認を行い、モバイルデバイスの指紋認証または顔認証機能で自身とモバイルデバイスをペアリングします。投票者はモバイルデバイスで投票用紙を受け取り、投票内容を入力します。この投票用紙はシステム上ではトークンとして扱われ、プライバシーを保護するために匿名のIDで署名し投票します。投票はトークンのトランザクションとしてブロックチェーンに記録され、投票が完了すると、集計所で集計するための投票用紙と、投票者のための控えが発行されます。

前出のFast Companyの記事で、ユタ州ユタ郡の書記官は、2028年か2032年、つまり次の次、またはその次の大統領選挙までに、より広い範囲で電子投票を採用できることを期待しているとしています。ユタ州の事例を見ると、10年後に多くの人がブロックチェーンベースの投票システムで、スマートフォンを使って投票するのも想像に難くありません。

 

大統領選関連予測、トランプトークンも

上記二つの事例とは異なり、選挙に直接関係のあるものではありませんが、予測サービスや予測市場では、トランプ大統領とバイデン前アメリカ副大統領氏のどちらが勝利するか予想が行われました。本ブログで以前紹介したFacebookの未来予測サービスForecastではUS Electionという項目が設けられ、アメリカ大統領選や関連事項について予測と議論が行われています。
※ FacebookのForecastについて詳しくは本ブログの記事「Facebookが挑戦する未来予測サービスForecast」を参考にしてください。


画像: Facebookの未来予測サービスForecastでのアメリカ大統領選挙に関する予測

Forecastのほか、分散型予測市場プラットフォームAugurでもアメリカ大統領選に関する予測が行われています。仮想通貨市場の取引額から見ると小さな額ですが、取引総額は数億円規模にのぼります。
※ Augurについて詳しくは本ブログの記事「分散型予測市場プラットフォームAugur v2」を参考にしてください。

画像: Augur上では大統領選に関する予測が取引されている

おわりに

選挙とブロックチェーンの相性についてはかねてから議論されてきましたが、アメリカ大統領選挙というアメリカ国内はもちろん、世界中でも大きな注目を集める選挙でブロックチェーンが使われたことは、大きな一歩といえるでしょう。Voatzは、既存の紙ベースの選挙と将来の電子投票を橋渡しする現実的なアプローチで、今後VoatzやVoatzに続くブロックチェーンベースの投票システムの採用が広がることが期待されます。

アメリカ大統領選挙の事例をきっかけに、ブロックチェーンベースの選挙システムに注目が集まり、選挙に参加するための選択肢が増え、誰もが投票を通じて意思表示をしやすくなる日もそう遠くはないのかもしれません。

 

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

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