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以前、本ブログのweb3と気候変動対策に関する記事でご紹介したthe Green Blockが、12月初めに新たな報告書を発表し、それにあわせて初めてのトークイベントを開催しました。本イベント、”the Green Block Talks & Launch of the Green Block Report”は、COP28開催期間中(11/30-12/12)にドバイで実施されたこともあり、国内外の気候変動対策に取り組む企業や国際機関、大学などから多くの人が参加しました。

気候変動対策へのデジタルテクノロジーの活用に注目が集まる中、本記事ではこのイベントの概要をご紹介します。

画像:トークイベントの広報資料。web3、金融、エネルギー、コンサルティング、環境分野の民間企業や国際機関からの登壇者が参加しました

The Green Blockとは?

概要

The Green Blockは、ドバイを拠点とするCrypto Oasis Ventures と、国際的なコンサルティングファームのRoland Bergerが、2023年6月20日に新たなイニチアチブとして立ち上げたもので、Web3の領域内で、環境、社会、ガバナンス(ESG)分野のプロジェクトを育成し、ESGに関するブロックチェーン・エコシステムの形成を目指しています。

下記の図に示されるように、様々な関係者(政府、企業、スタートアップ、研究機関、メディア、サービスプロバイダー、投資家、業界団体など)を有機的に結びつけ、ESG分野のweb3プロジェクトの知見を集積していくことで、持続可能な社会の形成に向けた新たなソリューションを生み出していくイニシアチブとなっています。

画像:the Green Blockのホームページより

発起人のCrypto Oasisは、スイスのツークを拠点とするCrypto Valley Associationと協力関係にあり、the Green Blockの活動を欧州地域にも拡大させていく動きを見せています。2023年9月にスイスで開催された「SWISS WEB3 FEST 2023」では、the Green Blockイニシアチブの欧州地域でのローンチングが実施され、ヨーロッパを拠点とする企業もこのイニシアチブへの賛同と協力を示しています。

12月4日に開催されたイベントでは、the Green Blockのスポンサーとして新たにSIEMENSとBMWが加わったことが発表されました。既存のスポンサーであるBEEAH社SEAGRASS社(両社ともUAE拠点)に加えて、ドイツの大企業が複数参画した形になります。

画像:12月4日にドバイのMadinat Jumeirahで開催されたイベントで、SIEMENSとBMWがスポンサーとして参画することが発表されました(著者撮影)

The Green Block Reportの発表

12月4日には、the Green Blockによる新たな報告書 Green Block Report 2023が公開されました。(報告書はオンラインで公開されていて、https://thegreenblock.com/report2023/ からダウンロード可能です。)報告書の主なポイントは以下の通りです。

  1. ビジネスにおけるESGに対する意識の高まり: すべての規模のビジネスにおいて、ESGの重要性に対する認識が高まっています。多くの企業が、気候変動、多様性、インクルージョン、教育などの課題に積極的に貢献するための方策を検討しています。
  2. ブロックチェーン技術の役割: 仮想通貨を支える技術である分散型台帳技術(DLT)は、環境問題への対応にも活用されてます。例えば、二酸化炭素等に代表される温室効果ガスの削減を加速させ、地球温暖化を抑制するためのカーボンオフセット制度についても、ブロックチェーン上でカーボンクレジットをトークン化することにより、透明性が高まり、環境プロジェクトの実際の貢献度が保証されます。さらに、ESG関連情報の構築、管理、報告のためのフレームワークを提供し、関連情報の提供ニーズに対応することが可能となっています。
  3. 大企業のコミットメント: GoogleやMicrosoftなどの世界的にも有名な大企業は、温室効果ガスの削減や再生可能エネルギーの利用に向けた目標を設定しています。同様に、ブロックチェーン業界もエネルギー効率の高い方法への移行を進めており、例えば、イーサリアムのPoSへの移行は、エネルギー消費が大幅に削減されたとされています。
  4. 集団的コミットメントの必要性: レポートでは、持続可能な変革を達成するためには、単なる革新以上のもの、つまり行動への集団的なコミットメントが必要であることが強調されています。the Green Blockは単なるプラットフォームではなく、持続可能性を追求する様々な関係者を結びつけるエコシステムとして機能するとレポートにも示されています​​。
画像:イベントでは、新たに公開された報告書の概要説明が行われました(著者撮影)

2024年の活動方針の発表

The Green Blockの2024年の重点分野として、監査証明に対応したESG成果の測定(Audit-Proof Measureable ESG Results)、ESGスタートアップ支援(the Green Block Accelerator)、web3とAIによる金融包摂(Financial Inclusion through web3 and AI)、 持続可能なビットコインマイニング(Sustainable Bitcoin Mining)の4点が挙げられました。トピック毎にワーキンググループを設置して議論を行っていき、このワーキンググループには誰でも参加できる形にするとのことです。ご関心がある方は、ぜひ公式サイトSNSをフォローしてみてください。

画像:イベントで発表されたthe Green Blockの2024年の重点分野(著者撮影)

ESG分野のプロジェクト紹介

自発的リサイクルクレジット(Voluntary Recycling Credits:VRC)

報告書の発表とthe Green Blockの活動方針についての報告があった後、多様な登壇者によるトークイベントが開催されました。中でも非常に興味深いプロジェクトとして、自発的リサイクルクレジット(VRC)イニシアチブを紹介します。VRCは、the Green BlockのコアメンバーであるRoland BergerとBEEAHグループが、DFINITY Foundationおよび国際固形廃棄物協会(ISWA)と協力して立ち上げたプラットフォームで、固形廃棄物のリサイクル実績をクレジットとして取引するための世界初のグローバルシステムとなっています。

プロジェクト概要

  • 世界的なゴミ問題への取り組み: 廃棄物の量は世界的にも増加しており、多くの廃棄物は埋立、投棄、焼却などにより土壌、水資源、大気に深刻な負の影響を与えています​​。
  • 目標とアプローチ: VRCイニシアティブは、公的部門と民間部門双方からの多様な関係者間の協力関係を強化して廃棄物問題を克服しようとするものです。このイニシアティブは、固形廃棄物の排出量をオフセットするために利用できる標準化されたルールとプロセスを確立するものです。これには、ブロックチェーンベースのマーケットプレイスで固形廃棄物の「リサイクルクレジット」を取引するメカニズムが含まれ、廃棄物オフセット企業とリサイクル会社間の監査可能で安全な取引を保証するものです。このイニシアティブにより、固形材料の収集とリサイクルが奨励され、あらゆる種類の廃棄物管理が向上することが期待されています​​。
画像:イベントで行われたVRCイニシアチブのプレゼンテーション資料より(VRCのバリュープロポジション)

イベントでは、会場で実際にVRCプラットフォームを動かすデモが行われ、リサイクル業者がクレジットを得る過程と、廃棄物を算出する事業者がクレジットを購入する過程が説明されました。

画像:イベントで行われたVRCプラットフォームのデモの様子

VRCは本イベント開催日(12月4日)にCOP28の会場で正式にPoCがローンチされました。2024年から25年にかけてVRC導入国を拡大し、26年以降はサービス内容と対象範囲の更なる拡充を目指すとしています。

関連報道:COP28のUAEパビリオンでVRCイニシアチブのPoCがローンチされた旨の現地報道(Gulf Business)https://gulfbusiness.com/cop28-voluntary-recycling-credits-initiative/#:~:text=%E2%80%9CThe%20VRC%20Initiative%20is%20a,waste%20produced%20in%20their%20operations.%E2%80%9D

SEAGRASS carbon map

その他、本トークイベントで紹介された興味深いプロジェクトとして、Seagrass社のCarbon mapプロジェクトが挙げられます。

Seagrass社は、ドイツの大手エネルギー会社のE.ONグループの子会社で、UAEのアブダビ(Abu Dhabi Global Market:ADGM)に拠点を置いています。同社は、脱炭素の促進やカーボンクレジット市場の拡大を促進するための技術的なソリューションを提供していて、ブロックチェーンの活用にも力を入れています。

The Green Blockのトークイベントでは、COP28にて新たに発表されたSeagrass社のCarbon mapについて説明が行われました。このCarbon mapは、環境保全に寄与するプロジェクトに関する詳細な情報(デジタルIDとの連携が可能で、プロジェクト情報、環境面の情報、経済的な情報、歴史的な情報などを網羅したもの)を掲載するデジタルマップで、カーボンクレジットの売り手(プロジェクト側)と買い手がいつでも最新の情報にアクセスすることを可能にするアプリケーションとなっています。

画像:Seagrass carbon mapについての説明資料より

Seagrass社は、スイスに拠点を置くHashgraph Associatioと共同でカーボンクレジットのWeb3アイデンティティウォレットの開発を進めており(下記関連記事参照)、Carbon Mapはこのウォレットと連携して、カーボンクレジット取引の加速を今後後押ししていくことが期待されています。Seagrass Walletは、2024年中の実用化が予定されているとのことです。

関連記事:

Seagrass社設立のアナウンスメント(ADGM)

https://www.adgm.com/media/announcements/seagrass-company-launches-in-the-united-arab-emirates

Seagrass社とHashgraph AssociationによるWeb3アイデンティティウォレットの立ち上げ

https://www.zawya.com/en/press-release/companies-news/uae-based-seagrass-and-the-hashgraph-association-announce-launch-of-co-funded-carbon-credit-web3-identity-wallet-r9bpsrtf

おわりに

気候変動対策を含め、持続可能な社会を実現するためには、個々の企業や団体の取り組みのみならず、集団的なコミットメントと行動が必要となっています。ESG分野のweb3関係者を有機的に結びつけるthe Green Blockの取り組みはまだ始まったばかりですが、今後中東地域や欧州を含めて広く拡大してくことが期待されます。2024年1月にはダボス会議の開催と合わせて欧州でイベントも予定されており、今後の動きを引き続き追っていきたいと思います。

株式会社ガイアックスweb3事業本部リサーチャー
過去10年以上国際開発協力に従事し、国内外の社会課題の解決に関心を持っている。web3時代の新たな国際協力や関係人口創出の形としてDAOにポテンシャルを感じ、ガイアックスに参画。ドバイ在住。

ドバイ

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