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Dev protocol
  • 更新日: 2021年9月8日

本ブログでは先日オープンウェブプロジェクトを支援するGitcoinについて説明しました。オープンソースソフトウェア開発をはじめとするオープンウェブプロジェクトの支援を目指すのはGitcoinだけではありません。本記事では東京のスタートアップFRAME00(フレームダブルオー)が開発を進めるDev ProtocolとStakes.socialを見ていきましょう。

 

Dev Protocolとは

Dev Protocol(デブ・プロトコル)は、DeFi要素のあるブロックチェーンベースのクリエーター支援プロトコルで、東京のスタートアップFRAME00(フレームダブルオー)株式会社が開発を進めています。

Dev Protocolはその名前の通りプロトコルで、このプロトコルを使った最初の公式の分散型アプリケーションとしてStakes.socialが公開されています。従来のクラウドファンディングなどのプロジェクト支援の仕組みでは、プロジェクトは継続的に支援を受けることが難しく、支援者側も一度支援して返礼を受けとって終わりでした。一方、Stakes.socialでは、プロジェクトの支援者がトークンをステーキングし、支援されるプロジェクトやクリエーターと、支援者の両方が継続的に報酬を得られます。

Dev Protocolを開発するFRAME00の創業は2015年、創業者は原麻由美さんです。MIRAISE ChannelのインタビューでCEOの原さんとCTOのaggre(アグリ)さんが創業から今までの経緯、Dev Protocolの概要を語っています。

#06. FRAME00| CEO 原麻由美/CTO aggre – YouTube

原さんはFRAME00の創業前に経営していたメディアマーケティングの会社で、伝統建築の会社から依頼を受け、国宝を扱う企業の年商とソーシャルゲームを開発する会社の月商が同じことに驚いたといいます。公共財である国宝を扱う仕事のように経済的に評価しにくい仕事を評価できる仕組みを作りたいと、最初の数年は一人で試行錯誤を繰り返し、2017年にaggreさんが参画したのをきっかけにアイディアが形になっていきました。

2018年にDev ProtocolのMVPの開発が始まり、2020年1月にDev Protocolが正式にリリースされ、続いて同年6月にはStakes.socialがリリースされました。2021年4月にはスイスのクリプトバレー、ツーク市に関連会社Dev Null AGが設立され、5月から6月にかけてStakes.socialのローンチ1周年を記念して、DEVトークンがエアドロップされました。

Dev Protocolのウェブサイトによると、これまでに1640のプロジェクトがStakes.socialを利用し、2.8百万ドル相当(3億円強)のDev Protocolの独自トークンDEVがステークされています。

画像: Dev Protocolに関する統計情報(Dev Protocolウェブサイトより)

Coinmarket Capによると、プロジェクトの支援や報酬の支払いに使われるDev Protocolの独自トークンDEVの時価総額は1130位で、Uniswapなどで1DEVあたり5.58ドルほどで取引されています。

※ ドル円やトークンのレートは2021年8月現在、本記事執筆時点のレートです。

 

Dev Protocolの仕組み

Dev ProtocolはEthereum上で機能するプロトコルで、Dev Protocolの独自トークンDEVはERC20トークンとして発行され、発行上限はありません。

Dev Protocolには、「クリエイター」と「支援者」の二種類のユーザーが存在します。クリエイターはオープンソースソフトウェア(Dev Protocolでは「property」(プロパティー、資産)と呼ばれます)の開発など価値を生み出す活動に携わる個人やプロジェクトで、DEVトークンの新規発行を行います。支援者はDEVをステークすることでクリエイターを金銭的に応援し、クリエイターが提供する何らかの対価と、クリエイターが新規発行したDEVの一部を利回りとして受け取り、DEVはステーク解除時に引出し可能になります。

画像: Dev Protocolの概要
Dev Protocolの概要説明資料P6より。青字の日本語は筆写追記)

クリエイターが新規発行できるDEVの量は、支援者からステークされているDEVの量に応じて増えます。発行されたDEVは、クリエイターと支援者に51:49の割合で配分されます。プロトコル全体としては、クリエイターつまり資産の数が増えるとDEVの新規発行量が増えてインフレ傾向になり、ステークさるDEVの総量が増えると新規発行量は減りインフレが抑えられ、DEVの価値が増加するように設計されているといいます。

Dev Protocolでは、共通の独自トークンDEV以外に、クリエイターは自身の資産を認証して、ERC20トークンとしてトークン化できます。このトークンは「プロパティートークン」または「クリエータートークン」と呼ばれ、クリエーターはプロパティートークンの95%をチームのメンバーや支援者に自由に配分できます。残りの5%はDev Protocolの公庫で管理されます。プロパティートークンは、プロジェクトのコミュニティDAOのガバナンストークンのようにも使用できます。

Dev Protocolを構成するスマートコントラクトの詳細などについてはDev Protocolのホワイトペーパーに詳細な説明があります。

protocol/WHITEPAPER.JA.md at main · dev-protocol/protocol – Github

 

Dev Protocolを使った分散型アプリStakes.social

Dev Protocolがどのように機能するか、Stakes.socialを例に見てみましょう。Stakes.socialのウェブサイトを開くと「Pools」(プール)や「Liquidity」(流動性)といった用語が出てきて、DeFiサービスならではのとっつきにくさを感じるかもしれませんが、画面をスクロールして支援対象としてのプロジェクトが並んでいる様子を見るとわかりやすいです。

画像: Stakes.social

プロジェクトを支援する場合は、まずはMetamaskなどのウォレットをStakes.socialに接続します。プロジェクトを支援して利回りを得るのにかかるガス代は少なくなく、ステークしてみたいと考えている人はまず本項を最後まで読むことをおすすめします。
※ 本記事はDEVトークンの購入や投資を推奨するものではありません。

プロジェクトを支援するにはDEVトークンが必要です。ウォレットを接続して作られたポートフォリオページに「Buy DEV」のボタンがあり、このボタンをクリックするとUniswapのスワップページが開きます。必要なDEVの量を入力し、ETHなどと交換します。2021年8月本記事執筆時点では、ETHとDEVの交換にガス代が35ドル近くかかると予測され、少額のDEVを手に入れたい場合はガス代負けしてしまいます。

DEVを手に入れたら支援したいプロジェクトを選び「Stake」をクリックします。ステークしたいDEVの量を指定してステークします。このステップでも少なからずガス代がかかることが予想されます。

画像: DEVのステーク画面(Stakes.socialより)

プロジェクトの詳細ページを見てみると、ステークのほかに「Withdraw」(引き出し)というメニューがあり、ステークしたDEVを引き出せます。2021年8月本記事執筆時点では、引き出しにかかるガス代が約135ドルと表示されています。支援者側のAPY(年利)は28%と低いものではありませんが、DEVを手に入れるためのガス代、ステークと引き出しにかかるガス代、さらにDEVをETHなどのトークンに戻すガス代まで考えると、気軽に少額でプロジェクトを支援するのは難しそうです。また、DEVを手に入れるにはUniswapを使うことになり、この点でもサービス利用の敷居が高くなります。

画像: 引き出しにかかるガス代の見積もり(Stakes.socialより)

クリエイターとしてStakes.socialを利用するには、まずクリエイターのウェイティングリストに登録し、クリエイター登録をします。クリエイター登録が完了したら、プロジェクトの審査を申請し、審査に通ればプロジェクトが登録されるという流れのようです。現在Stakes.socialはGithubのリポジトリの登録を受けつけています。

Stakes.socialのウェブサイトではクリエイターがStakes.socialの利用を始める際に支払うガス代のスポンサーを募集しています。スポンサー募集のページには以下の記述があります。

More than 90% of OSS projects are run by non-crypto users and have trouble onboarding on Stakes.social because they don’t have a small amount of ETH for gas fee.

(筆者訳: OSSプロジェクトの90%以上は仮想通貨ユーザーでない人たちによって進められていて、ガス代のためのETHを保有していないことからStakes.socialを使い始めるのが難しい状況にあります。)

ここでもガス代の問題が垣間見え、さらに仮想通貨ヤブロックチェーンという技術が未だOSSプロジェクトに携わる技術系の人にも広くは受け入れられていない現状がうかがえます。

2021年から2022年にかけてのロードマップでは、レイヤー2への対応が示唆されていて、今後クリエイターと支援者の両方がガス代の面でStakes.socialを利用しやすくなることが期待されます。

 

Dev Protocolの今後

FRAME00は2020年にDev ProtocolとStakes.socialをリリースし、国内では2021年にオタクコイン協会に戦略パートナーとして参画することが発表され、キャンペーンが開催されました。

日本発のDeFi「Dev Protocol」がオタクコイン協会に参画、NFTやDevトークンなど総額150万円相当が当たるプレゼント・キャンペーンを開始|一般社団法人オタクコイン協会のプレスリリース

上のプレスリリースの中では日本発のメタバース劇場やConataがStakes.socialを利用していることにも触れています。

魅力的なプロジェクトをStakes.socialにオンボーディングさせ、クリエイターと支援者をプラットフォームに集めていくのと合わせて、2021年から2022年にかけては、Dev Protocol全体としてのDAO化とプロジェクトのためのDAOキットの提供、マーケット機能の提供、レイヤー2対応、クリエイターサポートのためのバックオフィスの強化などが予定されています。

画像: Dev Protocol 2021年から2022年のロードマップ
Dev Protocolの概要説明資料P19より)

また、現在、クリエイターの資産はGithubのリポジトリに限られていますが、今後YouTube、ゲームなどさまざまなプラットフォームに対象を拡張していくことも計画されているようです。

 

おわりに

本記事ではクリエイターと支援者の両方が継続的に報酬を得るためのDev Protocolと、Dev Protocolを使った分散型アプリケーションStakes.socialについて説明しました。

オープンソースソフトウェアの開発をブロックチェーンベースの仕組みで支援するというと、グローバルではGitcoinが注目を集めています。両者を比べてみると、Dev Protocolには、GitcoinのQuadratic Fundingのように小さな個々の支援を反映させて民主的に資金を割り当てるメカニズムがありません。さらにガス代の問題から、GitcoinでもDev Protocolでも個人が小さな支援をするのは難しい状況にあります。

Dev Protocolにステークされている金額は、巨額の資金が集まるDeFiサービスと比べるとまだ小さいものの、日本のプロジェクトに数億円規模の資金がステークされ、スイスに関連会社を作るまでに成長しているところには期待したいところです。

ガス代や、オープンソースソフトウェアプロジェクトに携わる人たちや支援したい人たちが必ずしもブロックチェーンや仮想通貨に精通していないという課題を両プロジェクトがどのように解決していくのか、また、Dev ProtocolはGitcoinと競い合うのか、それとも独自の路線を歩むのか、今後に注目したいです。

エンジニアの経験と情報学分野での経験を活かして、現在はドイツにてフリーランスで翻訳・技術解説に取り組む。2009年下期IPA未踏プログラム参加。2016年、本メディアでの調査の仕事をきっかけにブロックチェーンや仮想通貨、その先のトークンエコノミーに興味を持つ。

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