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  • 更新日: 2021年4月8日

選挙を変えるブロックチェーン

これまでに選挙の効率化や利便性の向上といった点から、電子投票について議論がされてきました。電子投票は、テクノロジーに明るい若い人、投票所に足を運ぶのが困難な人など、より多くの人の意見を国や組織の決定に反映させるという点でも実現が期待されます。

投票では、定められた期間内に有権者が投票可能で、かつ投票結果に改竄はあってはなりません。ここで注目を集めるのが、「分散型で障害に強い」「改竄が限りなく不可能に近い」というブロックチェーンの特徴です。

電子投票、ブロックチェーンを使った投票については、ハッキングに対する懸念や指摘もあり、投票システムがハッキングされる可能性はゼロではありません。ただし、現状の投票所に足を運んで票を投じる選挙システムにも、本人確認など粗さが残り、さらに、世界を見渡すと不正選挙から抗議運動が起こり暴動に発展した事例もあります。選挙に関するデータが改竄不可能な形で記録され、選挙が正しく行われたことが数学的に証明されたらどうでしょう。

ここからは国内外でのブロックチェーンと選挙に関する事例を見ていきましょう。

海外の動向

エストニア

電子国家エストニアでは、Bitcoinやブロックチェーンが生まれる前の2005年からi-Votingというシステムで世界に先駆けて国レベルでの電子投票が行われてきました。有権者はインターネットにつながったコンピュータがあれば世界のどこからでも投票でき、投票内容は期日までであれば変更することもできます。i-Votingのウェブサイトによると、エストニア人の44%がi-Votingを利用し、選挙ごとに11,000日の稼働日を節約できるといいます。

i-Voting — e-Estonia

有権者がi-Votingをどのように使うのかについては、ITメディアの記事で詳しく読めます。同記事によると電子投票にかかる時間は3分ほどで、投票した内容がきちんとデータベースに登録されているか確認することもできるといいます。

エストニアに住む日本人が見た電子投票の実態と課題──ネット経由で本当に透明性を保てるのか – ITmedia PC USER

i-Votingからは、CybernetivaとSmartmaticが開発するブロックチェーンを利用した電子投票システムTIVIが生まれ、TIVIのウェブサイトによると、同社のソリューションはチリの地方自治体やアメリカのユタ州で利用された実績があります。

TIVI powered by Smartmatic and Cybernetica – Tivi.io

アメリカ

ITの最先端を20年以上にわたって牽引しているアメリカでは、2020年の大統領選挙でブロックチェーンが活用される場面があり、本ブログでも一つの記事として取り上げました。

ブロックチェーンとアメリカ大統領選挙 – Blockchain Biz【Gaiax】

ブロックチェーンを使った信頼性の高い選挙記録の配信に加え、ユタ州では一部の有権者がモバイル投票システムVoatzを利用して票を投じました。Voatzでの投票を認められたのは、海外で任務にあたる兵士や海外居住者、障害のある人、新型コロナウィルスの感染者などです。


画像: Voatzのユタ州ユタ郡のウェブサイト

電子投票システムというと、「使いやすいのか?」という声が聞こえてきそうですが、そのイメージが払拭される日は遠くないかもしれません。2019年、当時106歳のMaccene GrimmettさんがVoatzを試した様子が動画で公開されています。Grimmettさんは「Pretty cool isn’t it!」と電子投票を高く評価しました。女性に参政権がない時代を経験したことからも、誰もがどこにいても投票できることに人一倍の思い入れがあるに違いありません。


画像: GrimmettさんがVoatzを利用する様子(FOX 13 News Utah
の動画Utah’s Oldest Voter Among First in State to Test Out New Mobile Votingより)

ロシア

ロシアでは、2019年にモスクワの地方選挙で初めてブロックチェーンベースの投票が行われました。ロシアではEhthereum、BitfuryのExonum、Wavesブロックチェーンを使って投票システムが構築されてきましたが、これまでの試みでは中央集権性やセキュリティ面での課題が明らかになりました。

ロシア、ブロックチェーン選挙の実用化を急ピッチ | CoinDesk Japan

 

ブロックチェーンを国の中核的な選挙に利用する動きはまだ始まったばかりですが、2020年の新型コロナウィルスの影響で「リモート」に大きな関心が集まる中、今後世界で投票が電子化する流れは避けられないでしょう。

国内の動向

国内電子投票のこれまで

日本では、国会議員などを選ぶ一般的な選挙については、公職選挙法に規定があり、原則的には法改正なく電子投票を実現することはできません。地方公共団体の議会や議員については2002年に「地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に係る電磁的記録式投票機を用いて行う投票方法等の特例に関する法律」が施行され、さまざまな地方自治体で電子投票が試行錯誤されてきましたが、電子投票は休止や廃止に追い込まれていきました。その原因はコストや機材調達にあるようです。

電子投票 – 日本の公職選挙における電子投票に関する経緯 – Wikipedia

一方で、国のレベルでは、2020年2月、国外に暮らす有権者を対象とした在外投票をインターネットで行う実証実験が行われました。本人確認にはマイナンバーカードが使われました。

インターネット投票の実証実験 「在外投票」で導入検討 | 注目記事 | NHK政治マガジン

つくば市での実証実験

学術都市として知られる茨城県のつくば市は、2018年と2019年に革新的な技術やアイディアで社会課題を解決するSociety 5.0の実証実験案を全国から募集し、その最終投票でVOTE FORなどとともにブロックチェーンを利用し、支援事業の電子投票を行いました。本人確認にはマイナンバーカードが使われました。

ブロックチェーン×マイナンバーカード×顔認証技術によるインターネット投票を実施しました!|つくば市公式ウェブサイト

また、2020年には、ブロックチェーン開発企業LayerXがつくばスマートシティ協議会への加入を発表しました。電子投票を中心に技術提供が進められる計画です。

LayerX、つくばスマートシティ協議会に加入 -透明性と秘匿性を両立した電子投票の実現に向け地方自治体への技術提供を積極化-

株主総会での議決権行使

多くの有権者が参加する選挙でのブロックチェーンの利用にはまだ時間がかかるかもしれませんが、仮想通貨取引所を運営するbitFlyerは2020年6月に株主総会をオンラインで開催し、議決権の行使にはbitFlyer Blockchainが開発するブロックチェーンベース投票システムbVoteが利用されました。

「bVote」によるバーチャル株主総会が開催されました – bitFlyer Blockchain

株主総会でのブロックチェーンの利用という点では、2017年にインフォテリア(現アステリア)株式会社がmijinブロックチェーンを使った実証実験を行っています。

上場企業の株主総会議決権行使におけるブロックチェーンの実証実験が成功! | Reuters

ブロックチェーンと選挙の今後

本ブログでは、2018年7月にクリプトバレーと呼ばれるスイスのツーク市の取り組みを解説しました。ツーク市では当時すでに法的拘束力のない投票にブロックチェーンベースのシステムが使われ、先進的な取り組みとして注目を集めました。一方で、投票システムを利用した人は極一部の技術に詳しい人たちに限られ、どのようにより多くの人にブロックチェーンベースの投票を浸透させるか課題が浮き彫りになりました。

仮想通貨先進国スイスのクリプトバレー、ツーク市 – Blockchain Biz【Gaiax】

ツークでの投票から2年数ヶ月、アメリカの大統領選挙では、ユタ州の一部の有権者を対象としてブロックチェーンベースの投票が行われました。世界が注目する選挙で、さらに投票に関わる部分でブロックチェーンが利用されたのは画期的な出来事といえます。

ブロックチェーンを利用するかによらず、一人一票を保証するために本人確認は避けて通れない課題です。日本の事例として紹介した在外投票の実証実験やつくば市の事業審査では、マイナンバーカードが前提とされましたが、マイナンバーカードの交付率は高くはありません。総務省が公表した2020年3月時点の統計では、マイナンバーカードの交付率は東京都で20.3%、全国平均で15.5%です。選挙権年齢に達していない人への交付も含まれていることを考えると、実際の数字はこの数字よりも低くなります。マイナンバーカードを使う以外の方法が出てくる可能性もなくはありませんが、今後、日本でブロックチェーンを使った選挙が本格的に実現されるには、公職選挙法の改正とマイナンバーカードの普及が鍵になるでしょう。

地方自治体の電子投票で課題となったコストや機材調達については、今後実証実験が進み、ベストプラクティスが出てくることで、選挙の実施者側でも投票者側でも特殊な機材が不要なコストを抑えたシステムが構築可能になります。この兆候はすでにあり、ユタ州などで利用が進んでいるVoatzなどがその典型です。

2020年年初から新型コロナウィルスが世界中で猛威を振るう中、私たちの考え方や行動は大きく変わりつつあります。投票についても今後リモートにシフトしていくことでしょう。そのような中で、小さな投票から、対象者を限定して実験を繰り返し、透明性が高いのはもちろん、効率的で利便性の高いブロックチェーンベースの選挙が実現されることが期待されます。

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

Blockchain×OOVoatz選挙

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