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  • 更新日: 2023年7月7日

※ 記事中の為替レートは本記事執筆中の2021年11月現在のものです。

アスター(Astar)/紫電(Shiden)ネットワークとは

アスターネットワーク(Astar Network、旧Plasmネットワーク)と紫電ネットワーク(Shiden Network)は、2019年創業のスタートアップStake Technologies(ステイクステクノロジーズ)が開発する日本発のパブリックブロックチェーンです。Stake Technologiesを創業した渡辺創太氏は、https://jba-web.jp/(一般社団法人 日本ブロックチェーン協会)の理事も務めています。

Stake Technologies

アスターネットワークと紫電ネットワークの位置づけは、アスターネットワークがPolkadotに対応しているのに対して、紫電ネットワークはPolkadotのテストネットワーク的な位置づけのKusamaに対応しています。テストネットワーク的といっても、 Kusamaは取引可能な独自トークンKSMを持ち本番稼働しているネットワークです。
※ Polkadotについて詳しくは本ブログの記事「Polkadot(ポルカドット)- 分散型ウェブを目指すプロジェクト」を参考にしてください。また、仮想通貨動画メディアConnecTVのYouTubeチャンネルではStake Technologiesの創業者の渡辺氏がPolkadotとPlasmについて説明した動画も公開されています。

アスター/紫電ネットワークで何ができるかというと、レイヤー2ソリューションも利用しながら、分散型アプリケーションを開発し運用できます。Polkadotにつながっている他のブロックチェーンや、ブリッジでつながったブロックチェーンとの相互運用も可能です。また、他のプロジェクトにない特徴として、アスター/紫電ネットワークでは、ネットワークだけでなく、デプロイされた分散型アプリケーションにもそれぞれの独自トークンASTRとSDNをステークでき、ステーカーと分散型アプリケーションを開発するプロジェクトが報酬を得られます。

2021年1月にはPolkadotのテストネットへの接続に成功し、7月には紫電ネットワークがKusamaへの接続に成功しました。翌8月にはトークンの移転が可能になり、紫電ネットワークが正式にローンチされました。

Shiden Network Official Launch. Today, we are very excited to announce… | by Sota Watanabe | Astar Network (Previously Plasm) | Medium

Kusamaに接続するには、技術的な要件を満たすだけでなく、パラチェーンオークションに参加しKusamaに接続するためのスロットをリースする権利を獲得する必要があり、日本発の紫電ネットワークがKusamaに接続したことは快挙といえるでしょう。

Stake Technologiesはこれまでにベンチャーキャピタルなどから1240万ドル(約14億円)を調達し、Polkadotの開発にも関わるWeb3財団から7回の助成を受けています。アスターネットワークのウェブサイトによると、これまでにロックドロップとよばれるETHなどをロックしてトークンを受け取る仕組みで15万ETH(800億円弱)がネットワーク上にロックされ、40を超えるプロジェクトがエコシステムに存在しているといいます。

画像: アスターネットワークウェブサイトより

 

アスター(Astar)/紫電(Shiden)ネットワークの仕組み

アスター/紫電ネットワークはPolkadot/Kusamaの中核であるリレーチェーンに接続するパラチェーンです。既存のブロックチェーンとはブリッジまたはリレーチェーンを介してつながります。アスターネットワークのブログ記事の中で公開されたロードマップによると、ブリッジの開発は2021年第四四半期にEthereum、Binance Smart Chain、Cosmos、2022年第一四半期Solana、Dfinity、Avalancheと進む計画です。

画像: アスターネットワークの全容
アスターネットワークのウェブサイトより。赤字・赤線は筆者追記)

このように複数のブロックチェーンをサポートし、分散型アプリケーションを開発・運用できるためアスター/紫電ネットワークは「マルチチェーンdAppハブ」と説明されることもあります。

アスター/紫電ネットワークは、Polkadotを生み出したGavin Wood氏が創業したParity Technologiesが開発を進めるブロックチェーン開発フレームワークSubstrateを利用しています。Substrateの可能性については、幻冬舎の仮想通貨メディアあたらしい経済にStake Technologiesの渡辺氏が寄せた記事に詳しい説明があります。変更に対する柔軟性、Ethereumとの互換性に大きな利点があるといえます。

次世代のブロックチェーン開発のあり方とは? Substrateの可能性(Stake Technologies 渡辺創太) | あたらしい経済

Substrateが持つEthereumとの互換性に加え、アスター/紫電ネットワークはWASM(WebAssembly)もサポートします。また、アスター/紫電ネットワーク上の分散型アプリでは、レイヤー2スケーリングソリューションとしてPlasmaが利用できるほか、Web3財団の助成を受けZK-Rollup導入に向けた開発が進められています。

アスター/紫電ネットワークでの合意形成は、コミュニティが選んだブロックを生成するPoA(Proof of Authority)という方式で行われ、最終的にはトークンをステークしたノミネータよってバリデータが選ばれるNPoS(Nominated Proof-of-Stake)という方式に移行されます。

Consensus – Astar (Formerly Plasm)

アスター/紫電ネットワークにはそれぞれ独自トークンASTRとSDNがあります。両者とも初期発行量は70億トークンで、30%が一般に割り当てられ、残りはネットワークの運用や開発、マーケティング、チームや投資家に割り当てられます。年間のインフレは10%に設定されています。

ASTRとSDNは、それぞれのネットワークでの手数料の支払いや、NPoS、ガバナンスで利用されるほか、アスター/紫電ネットワーク特有の仕組みとして、ネットワークにデプロイされたアプリケーションに対してステークすることもできます。アプリケーションの開発者とステークホルダーはブロック報酬の一部を報酬として受け取ります。

dApp Staking – Astar (Formerly Plasm)

 

アスター(Astar)/紫電(Shiden)ネットワークが注目される理由

アスター/紫電ネットワークのように、スケーラビリティやEthereumとの互換性、他のブロックチェーンとの相互運用性を特徴として挙げるプロジェクトはすでに存在します。

そのような中で、アスター/紫電ネットワークの最大の特徴は、アスター/紫電ネットワークそれぞれのトークン保有者はネットワークに対してだけでなく、アプリケーションに対してもトークンをステークできるところにあるといえます。ステークされたトークンの量に応じて、ステーカーとアプリケーションを開発するプロジェクトはブロック報酬の一部を受け取ります。ステーカーはお気に入りのプロジェクトや有望なプロジェクトを応援しながらトークンを手に入れることができ、他のネットワークではエコシステムの拡大に寄与しても手数料を支払う側だったプロジェクトも報酬を得られるようになります。

このほか、アスター/紫電ネットワークはPolkadot/Kusamaの早期ユースケースで、Web3財団から7回もの助成を受け、着実に開発が進められていることからも注目したいプロジェクトといえます。

 

エコシステム

Stake Technologiesはウェブサイトでエコシステムには40を超えるプロジェクトが存在しているとしています。アスター/紫電ネットワークの残高やステーク状態を管理できるアプリケーションAstar Network Portalには、14のアプリケーションが登録されています。

Stakes Technologiesやアスターネットワークに関するもののほか、ブロックチェーンゲームのMy Crypto HeroesやCryptoSpells、日本円ステーブルコインJPYC、DeFiやNFTに関するアプリケーションもみられます。

画像: Astar Network PortalのdApp StoreAstar Network Portalより)

2021年9月には、Stake Technologiesはエコシステムの構築を目指して、トークンの初期供給量の6%(発表時の価格で約33億円)を投じることを発表しました。具体的には、資金はプロジェクトの支援、開発者向けのイベントやキャンペーンの開催、取引所とのキャンペーンなどに用いられる計画です。また、同日、日本マイクロソフトと協力し、マーケティングとインフラ面でアスター/紫電ネットワークの上プロジェクトや開発者を支援することも発表されています。

 

おわりに

本記事ではStake Technologiesが開発を進める日本発のパブリックブロックチェーン、アスター/紫電ネットワークについて取り上げました。2021年10月にはPolkadotでパラチェーンのローンチが可能になったと発表があり、2021年11月にはPolkadotの初回パラチェーンオークションが開催されようとしています。Polkadotがプロジェクトの進展を見せる中、その早期プロジェクトとして、アスター/紫電ネットワークで今後さらに機能が実装され、エコシステムが拡大することが期待されます。

 

エンジニアの経験と情報学分野での経験を活かして、現在はドイツにてフリーランスで翻訳・技術解説に取り組む。2009年下期IPA未踏プログラム参加。2016年、本メディアでの調査の仕事をきっかけにブロックチェーンや仮想通貨、その先のトークンエコノミーに興味を持つ。

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