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Celoとは
Celoは2018年に設立された同名の非営利組織が開発を進めるレイヤー1ブロックチェーンです。スマートフォンさえあれば、世界中のどこにいる人でもアクセスできる金融サービスを提供することを目指しています。同時にカーボンネガティブ(環境に排出するCO2よりも、森林など環境が吸収するCO2の方が多い状況)であることも強調し、環境に配慮する姿勢もうかがえます。
企業情報を扱うCrunchbaseによると、拠点はアメリカのサンフランシスコで、従業員は11-50人。これまでに受けた投資額は66.5百万ドル(約97億円)にのぼります。
Celo – Crunchbase Investor Profile & Investments
Celoのメインネットは、2020年4月22日、アースデイにローンチしました。時期としては、DeFi(分散型金融)に注目が集まった2020年のDeFiサマーの数ヶ月前のことです。
DeFiに関する統計情報を扱うDeFiLlamaによると、2020年8月から12月にかけて、TVLでCeloはTronやBSCと、Ethereumに続く2位の座を競い合っていました。
画像: 現在はTVLランキングトップ10外(左)だが、
2020年のDeFiサマーではEthereumに続いて2位(右)(DeFiLlamaより)
その後、2020年末から始まった暗号通貨ブームでは、さまざまなブロックチェーンが勃興したこともあり、CeloはTVLランキングで順位を落とし、現在は22位につけています。TVLランキングの順位はふるいませんが、CurveやUniswap、Sushiといった有名DeFiプロトコルがCelo上でサービスを提供しています。
画像: Celo上のDeFiプロトコルのTVLランキング(DeFiLlamaより)
Celoには、ステーブルコインの価格を安定させ、ガバナンストークンでもあるCELOのほか、ネイティブトークンとして、法定通貨にペグされたステーブルコインcUSD(Celo Dollars)、cEUR(Celo Euros)、cREAL(Celo Real)が存在します。ドルやユーロのステーブルコインはさまざまなものが発行されていますが、ブラジルの通貨レアルのステーブルコインは珍しいのではないでしょうか。
Platform-Native Stablecoins | Celo Documentation
Celoのウェブサイトによると、ブロックタイムの平均は5秒、ガス代の平均は0.0005ドルで、150カ国以上の1000を超えるプロジェクトがCeloを利用しているといいます。
Celoの技術的概要
電話番号に基づくアカウント
Celoでは、ユーザーの電話番号が公開鍵にリンクされ、スマートフォンを持っている人であればCeloに対応したアプリケーションで普段使い慣れた電話番号で安価にcUSD、cEUR、cREALを送金できます。送金相手がCeloのユーザーでなくても、電話番号を指定して送金すると、テキストメッセージが届き、アプリケーションをダウンロードするよう案内されます。また、zk-SNARKに基づく手法で、スマートフォン向けのライトクライアントでもすべての過去のトランザクションを検証することなく、トランザクションの検証を行えるため、瞬時に送金は完了します。
PoSでの合意形成
Celoのネットワークは、ユーザーがスマートフォンで使うライトクライアント、ライトクライアントからの要求を受け付けるフルノード、ブロックの生成に関与するバリデータで構成されています。
画像: Celoのネットワークとノード(Celoのドキュメントより)
Celoでは、PoSが採用されていて、一定のブロックごとにブロック生成に携わるバリデータが選ばれ、ブロックの生成にあたります。バリデータグループのリストには、a16zやBinanceの名前も見られます。2023年8月にはGoogle Cloudがバリデータになったことが発表されました。
CELOの保有者はCELOをロックして、バリデータグループに対して投票し、報酬を受け取ります。
ステーブルコイン安定のメカニズム
cUSDを例に見てみましょう。cUSDをほしい人は、1ドル相当のCELOをリザーブに送金して、1cUSDを手に入れます。cUSDをバーンすると、1ドル相当のCELOが手に入ります。
1cUSDの価格が1USDを上回ると、1cUSDを1ドルで手に入れ、市場価格で売る裁定取引が行われます。1cUSDの価格が1USDを下回ると、1cUSDを市場価格で手に入れ、バーンして1ドル相当のCELOを手に入れる裁定取引が行われます。
この仕組みを見て、2022年の暗号通貨市場崩壊の引き金となったTerraを思い出した人もいるかもしれません。筆者の個人的な見解ですが、TerraのネイティブトークンLUNAで裏付けされたUST(Terraが発行していた米ドルにペグされたステーブルコイン)と、CELOで裏付けされたcUSDは、酷似しているように見えてなりません。
※ Terraのしくみについて詳しくは本ブログの記事「Terra(テラ) – ステーブルコインのためのブロックチェーン」を参考にしてください。https://gaiax-blockchain.com/terra
送金手段としてcUSDをはじめとするステーブルコインを利用することはあっても、TerraのAnchorプロトコルのように高利回りをうたうサービスが出てきたときに、大量の資金を投入して利子収入を期待するといった使い方は避けるべきです。
Celoのステーブルコインの価格安定メカニズムについて詳しくはCeloのドキュメントを参照してください。
Celo Stability Algorithm (Mento) | Celo Documentation
Celoのエコシステム
Celoはスマートフォンさえあれば誰でもどこからでもアクセスできる金融インフラを目指すプロジェクトであることから、Celo上でTVLやユーザー数の多いプロトコルにはDeFiプロトコルが目立ちます。
画像: Celo上の分散型アプリの過去30日間のUAW(ユニークアクセスウォレット数)でのランキング(DappRadarより)
Celoのエコシステムを紹介したページでは、DeFiのほかに、NFTや金融包摂に取り組むプロジェクトも紹介されています。
画像: DeFiのほかにはNFTや金融包摂に取り組むプロジェクトも(Ecosystem | Celoより)
Celoの今後
Celoは、2023年1月にロードマップを発表しました。
The Next Chapter: Introducing Celo 2.0 | The Celo Blog
Ethereumとの整合性を保ちながら、CeloをEVM互換の最速のL1チェーンにすることを目標として挙げています。また、CeloのL1とL2にも触れ、異なるL2ネットワーク間での相互運用性の向上も目指します。
本記事を書くために調査をしていると、Celoのフォーラムでは、CeloをEthereumのL2化してはどうかという提案もありました。
EthereumのL2に注目が集まる中、Celoは今後どのような位置づけで、発展していくのか見守りたいところです。
おわりに
本記事では、モバイルベースで金融包摂を目指すCeloについて解説しました。
スマートフォンさえあれば利用できるCeloは、特にアンバンクトと呼ばれる銀行口座を持たず、金融サービスにアクセスできない人たちには魅力的かもしれません。また、アメリカベースのプロジェクトで、ビッグネームがバリデータをしていたり、環境への配慮を打ち出していたりしている点から、何だかクリーンで今後成長が期待できるプロジェクトと考える人もいるかもしれません。
ただし、ステーブルコインの価格安定メカニズムには不安があります。暗号通貨市場が静かな今、改めて2022年5月にTerraに何が起こったのか、歴史から学ぶ価値はあると言えるでしょう。
Celoのアルゴリズミックステーブルコインには不安もありますが、多くの人が持っているスマートフォンで、誰にでも使いやすい、金融ネットワークを作ろうとしている点には期待を持てるかもしれません。今後、どのようにCeloの開発が進んでいくのか、エコシステムが発展していくのか見守りたいところです。