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  • 更新日: 2020年11月5日

本記事ではBlockstackのOnename、ConsenSysのuPortに続いて、Sovrin Foundationが開発を進めるデジタルID「Sovrin ID」について解説します。

 

Sovrin FoundationとSovrin ID

Sovrin Foundation(ソブリン・ファウンデーション)は2016年に設立された国際的な非営利組織で、人や組織のための独立したアイデンティティーSovrin IDとその分散ネットワークSovrin Networkの開発と運用を目的としています。

Sovrin

Sovrin Foundationは個人や組織が完全に所有する独立したアイデンティティー「Self-Sovereign Identity(SSI)」の実現を目指していることから、名前のSovrinは英語のSovereign(ソブリン:独立した、自治の)に由来しているものと考えられます。ボードメンバーは決定が公平なものとなるよう様々な業界や地域から選ばれているとし、暗号プロトコルを研究する日本人研究者がチームに入っているのも興味深いです。

Sovrin FoundationはSovrin IDやSovrin Networkの開発と運用に関わりますが、その他のデジタルID同様コードはオープンソースで、ネットワークは分散型で台帳技術を利用して運用されるため、従来の中央集権的に管理されるIDと比べて透明性が高く、所有者が真にそのデータの手にするIDといえるでしょう。

 

Sovrin IDとHyperledger Indy

Sovrin Foundationは、もともとEvernym社が開発したデジタルIDのための分散台帳技術Indyのコードを譲り受けてSovrin IDの開発を行ってきましたが、2017年5月にLinux Foundationが主導する業界横断的なブロックチェーン技術の推進を目指す取り組みHyperledgerのプロジェクトとして採択され「Hyperledger Indy」となりました。

Hyperledger Welcomes Project Indy – Hyperledger

Hyperledger Indyはブロックチェーンやその他の台帳技術を利用したデジタルIDのためのツール、ライブラリ、再利用可能なコンポーネントを提供し、Hyperledgerのプロジェクトやその他の分散型台帳システムにデジタルIDシステムを提供します。Sovrin IDとの関係で見ると、Sovrin Networkのバリデーターノード上でHyperledger Indyのノードが稼働しています。

ライセンスや今後の開発などより詳細なSovrin IDとHyperledger Indyの関係については、Sovrin FoundationのウェブサイトのFAQに説明があります。

Hyperledger Indy FAQ – Sovrin

 

Sovrin IDの台帳技術

本ブログで紹介したデジタルIDサービスBlockstackのOnename、ConsenSysのuPortはそれぞれBitcoinブロックチェーン、Ethereumブロックチェーンを利用したものでした。これに対して、Sovrin IDは既存のブロックチェーンや台帳を利用するのではなく、分散デジタルIDのための独自の台帳の上に確立されていることをSovrin Foundationは強調しています。

Sovrin IDの台帳はBitcoinやEthereumブロックチェーン同様誰もがアクセスできるパブリックなものですが、トランザクションのバリデーションはsteward(スチュワード)と呼ばれるSovrin Foundationの信任を得た団体が運用するバリデーターノードによって行われます。Stewardの選定などSovrin IDの運用方針はワーキンググループによって原案が示され、委員会が策定するSovrin Trust Frameworkに基づいて策定されます。その他の台帳、ブロックチェーンとのアクセスとバリデーションの観点での比較は以下の図に見ることができます。


画像:ブロックチェーンおよび台帳のアクセスとバリデーションでの分類
(Hyperledgerブログ「Hyperledger Welcomes Project Indy」より)

台帳に記録されるデータは、基本的なものとしてID、キー、トランザクションの証明、データへのポインターがあり、実際のデータを台帳上に持つのか台帳の外に持つのかはデータにどの程度配慮が必要なのかといったデータの性質によって決められるものであるとSovrin FoundationのGitHubのFAQ「What data is stored on the Sovrin ledger?」にあります。分散ネットワークでIDを扱うための分散識別子(DID: Digital Identifier)の仕組み、データ形式などについては仕様が公開されています。

Sovrin DID Method Specification WD02

トランザクションの合意形成にはIndyの開発を始めたEvernym社のPlenumと呼ばれるビザンチン将軍問題に耐性のあるアルゴリズムが用いられます。Plenumは秒間数千トランザクションを数秒のレイテンシーで扱え、Bitcoinのブロックチェーンで採用されているProof of Workが秒間7トランザクションを10分のレイテンシーで扱うのと比べて格段に処理能力が高くなっているといいます。

 

Sovrin IDのこれから

独立したデジタルIDネットワークの構築を目指すSovrin Foundationですが、同時にデジタルIDやその経済・社会的なインパクトに興味のある開発者のコミュニティーの形成にも努めています。また、システムの点では、現在数カ国に存在するバリデーターノードを今後数千ノードに増やすとしています。IndyがHyperledgerのプロジェクトとして採択されたことをはずみに開発者コミュニティーの拡大、Sovrin IDの普及が期待されます。

 

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

HyperledgerデジタルIDブロックチェーン

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