最近Web3(WEB3.0)というキーワードを目にすることが増えてきたと思います。
2021年には、「NFT」や「メタバース」などの言葉がバズワードとして広がり、多くの注目を集めました。2022年になり、政府がWeb3を国家の成長戦略の柱に据えることを発表し、新たなインターネットの形として広がっていくことが期待されています。
そんなWeb3ですが、「聞いたことはあるけれど、専門用語が多すぎて訳がわからない」、あるいは、「Web3が社会実装されることによって、どのような変化がもたらされるのか知りたい」という方も多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、Web3の基礎知識から特徴、サービス事例、今後の課題までわかりやすく解説します。
本記事を読むことによって、Web3の全体像を把握し、今後のビジネスに活かすきっかけにしてみてください。
目次
Web3とは?
Web3(WEB3.0)とは、ブロックチェーン技術を活用した、新しいインターネットの概念のことです。
これまでのインターネットでは、GAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)などの巨大テック企業が中央集権型のサービスを展開することによって、利益を独占してきました。
この独占からの脱却を図るために、ユーザー同士が直接お金やデータのやり取りができるような、個人情報を分散管理できるインターネットを目指して注目されています。
ちなみに、「Web3(ウェブスリー)」と「WEB3.0(ウェブサンテンゼロ)」という表記の違いですが、ブロックチェーンの文脈では「Web3(ウェブスリー)」と呼ばれています。これに対して、「WEB3.0(ウェブサンテンゼロ)」という表記は、後述するWEB1.0やWEB2.0との比較をした文脈で使われるといった違いがあります。
Web3までの歴史
インターネットは、これまでのWEB1.0とWEB2.0の時代を経て、現在急速に広がっているWeb3(WEB3.0)にまで至りました。
そのため、まずはWeb3に至るまでの歴史を紐解いていきます。
WEB1.0の時代
WEB1.0の時代は、日本にインターネットが普及し始めた1990年代から2000年代前半を指します。
当時は回線速度も遅く、テキストベースのホームページから、ユーザーは一方的にしか情報を取得できませんでした。発信する側も少なく、個人でホームページを持って情報を発信する人は、ごく限られた人しか存在しない時代です。
また、TwitterやInstagramのようなソーシャルメディアは存在せず、情報交換をする際はメール以外では掲示板くらいしかありませんでした。
当時使われていたツールとして、「Internet Explorer」や「Yahoo!」などが存在します。このように、インターネットは情報を閲覧するためのツールとして利用されていたのが特徴です。
WEB2.0の時代
WEB2.0は、現在私たちが中心として使っているインターネットで、2000年代半ばから頭角を表してきました。
4Gの登場により通信回線の速度も向上し、双方向にコミュニケーションが取れるSNSに使われる時間が大きくなりました。また、YouTubeやInstagramなどのデータ量の大きいコンテンツの発信も増え、プラットフォームを通して、情報発信や交流する手段が増えたのが特徴的です。
しかし、双方向での情報のやり取りができるようになった反面、これらを運営する企業に多くのユーザーや個人データが集中します。その結果、情報漏洩リスクの増大やアップロードしたコンテンツやアカウントデータの所有権がユーザーにないといった問題点も指摘されています。
WEB3.0の時代
WEB3.0は、ブロックチェーンによる分散型インターネットのことで、WEB2.0で生じていた課題を解決することも期待されています。
ブロックチェーンについて説明すると、WEB上におけるデータの取引記録をブロックとして管理し、それを鎖(チェーン)のようにつなげてデータを保管する技術のことを指します。
特徴としては、データの保管にあたって様々な暗号アルゴリズムが活用されていたり、同じデータが複数の場所に分散して管理されるといったものがあります。その結果、WEB2.0のように特定の企業にユーザーや個人データが集中することがなく、ユーザー間で透明な情報のやり取りを実現することができます。
Web3の特徴
これまでのインターネットの歴史を振り返って、新しいインターネットの形を実現するWeb3ですが、特徴は以下の3つです。
- 個人間でお金やデータのやり取りができる
- セキュリティ向上・プライバシー保護
- 国境に縛られない真のグローバル化が実現
順番に解説していきます。
個人間でお金やデータのやり取りができる
ブロックチェーンのP2P(ピア・ツー・ピア)という仕組みによって、プラットフォームの構造がこれまでのような国や企業が管理する中央集権的なものから、個人間でお金やデータのやり取りができるといった分散型の構造に変化します。
これによって、サービスを利用する側は中抜きが減り、クリエイターにとって利益が還元されやすい仕組みが構築されます。
また、海外送金する際に銀行などを介さずに済むので、書類手続きや本人認証などの手間が減るなどといったメリットがあります。
セキュリティ向上・プライバシー保護
暗号資産のウォレットを登録していれば、Web3のサービスを利用する際にIDやパスワードなどの個人情報を登録する必要がありません。
個人情報を提供する必要がないので、結果として個人情報の流出や必要以上の利用といったリスクがなく、セキュリティの向上やプライバシー保護が期待されます。
そのため、企業が個人情報を元にしたターゲティング広告ができなくなったり、プラットフォーマーからのアカウント制限がなくなります。
国境に縛られない真のグローバル化が実現
現在のインターネットは、同じサービスでも国や地域によって変わってくるため、真のグローバル化とは断定できない状態です。
例えばAmazonの場合、国ごとにサービス体系が変わってきます。
しかしWeb3では、「DApps」と呼ばれる分散型のアプリケーションによって、世界中の誰もがアクセスできるサービス利用が可能です。また、DAppsは匿名で個人情報を提供することなく利用できるため、国や企業にサービス利用の制限をされることがありません。
このように、Web3では人種や国を越えて、真のグローバルなやり取りが実現できます。
Web3の関連用語
ここまでで、Web3が新しいインターネットの形を実現し、どのように世界が変わっていくかのイメージが掴めたかと思います。
ここからは、Web3を実現するためのトレンド技術や用語について、5つピックアップして紹介します。
NFT
NFT(エヌエフティー)とは、替えの効かないデジタル資産を示す「Non Fungible Token(非代替性トークン)」の略称です。
今までは、デジタルデータをコピペなどで簡単に複製でき、デジタルデータに「価値」を付けることができませんでした。
しかし、NFTによってアート作品や音楽作品などのデジタルデータに、ブロックチェーンを組み合わせることで唯一性を示すことができます。
そのため、デジタルデータの所有を証明でき、リアルでの商品売買のように「価値」を持たせられるようになりました。
メタバース
メタバースとは、「Meta(超越)」と「Universe(宇宙)」を組み合わせて作られた造語で、インターネット上に構築される仮想空間のことです。
ユーザーがアバターと呼ばれる分身を介してメタバースの世界に入り込み、アバターを動かして遊んだり仕事をしたりなど、現実世界と同じような生活をWeb上で送ることができます。
メタバース自体はブロックチェーンに関係なく構築できますが、先ほど紹介したNFTと組み合わせて、メタバース内でデジタル資産をやり取りできるので、メタバース内に新たな市場が構築されることが期待されています。
近い将来、VRゴーグルや通信技術の発展によって、メタバース上で1日の大半を過ごして生計を立てる人も出てくるかもしれません。
DAO
DAO(ダオ)とは、Decentralized Autonomous Organizationを略した言葉で、日本語で「分散型自律組織」という意味を持ちます。
株式会社における経営者を”スマートコントラクト”と呼ばれるブロックチェーン上の約束事で代替したような組織体系です。組織の代表者が存在せず、決められたルールにしたがって自動で運転されたり、参加したメンバーが決められたルールに則って活動し、報酬を得るといったこともできるという特徴があります。
組織を運営していく上でのルールや意思決定の際には、参加者全員が投票して決定されるなど、フラットな環境も構築できます。
このような組織体系から、組織の代表者による突然のルール変更などが起こり得ず、今までの会社よりも民主的かつ透明性の高い組織運営になっていくと期待されています。
なお、Blockchain Bizでは、「これからDAOを立ち上げたい」、または「既存組織をDAO化したい」と考えている方向けに、コンサルティングを提供しています。日本で初めてのDAO方シェアハウスの運営をはじめとする多くの実績がございます。興味をお持ちいただいた方は、「DAOコンサルについて」をご確認ください。
DEX
DEX(デックス)とは、Decentralized Exchangeを略した言葉で、日本語で「分散型取引所」という意味を持ちます。
DEXは、ブロックチェーン上において、自動で取引を承認するプログラムのことです。これによって、既存の金融機関のような中央管理者なしに、無人で金融資産の取引を行うことができます。
そのため、銀行や仮想通貨取引所などといった中央集権的な仲介業者を介さず、ユーザー同士で直接やり取りができるようになります。そして、そのやり取りは従来よりもコストや手間が抑えられ、「無人の銀行」のように機能します。
なお、ユーザー同士のやり取りは全てブロックチェーン上に刻まれるため、取引の内容が誰でも確認できるという透明性の高さも持ち合わせています。
DApps
DApps(ダップス)とは、Decentralized Applicationsを略した言葉で、日本語で「分散型アプリケーション」という意味を持ちます。
DAppsは、ブロックチェーン上でソフトウェアを自動で実行できる「スマートコントラクト」を利用したもので、次世代型のアプリケーションとして注目されています。
既存の中央集権的なアプリケーションでは、多くのユーザーデータが特定のIT企業に渡り、それを活用したビジネスを展開しています。また、情報漏洩やデータの所有権がユーザーにないなどの問題があります。
一方で、DAppsではスマートコントラクトを活用して、ユーザーデータが特定の企業に集まることはありません。非中央集権的なアプリケーションで透明性が高く、現在ではSNSやゲーム、オークションプラットフォームなどが開発されています。先述のDEXもDAppsの一つです。
Web3のサービス事例
ここからは、Web3への更なる理解を深めるために、具体的なサービス事例を扱っていきます。
Uniswap
Uniswapとは、2018年11月にリリースされたDEXの一つです。スマートコントラクトによって自動的に実行されるアプリケーション(DApps)のため、中央で運営する人がいない無人取引所となっています。
国内の仮想通貨取引所では、特定の企業が中央集権的に運営して、暗号通貨を取引しているのが一般的です。このような中央がいる取引所をCEX(Centralized Exchange)として区別します。
反対に、UniswapのようなDEXでは、中央的に運営する人なしにユーザー同士で直接取引を行います。中央管理者が存在せず、ブロックチェーン上で動くサービスのため、CEXよりも取引手数料が安く、セキュリティが高いという特徴を持ちます。また、本人確認などの手続きもいらないので、手間なく始められるサービスとなっています。
OpenSea
OpenSeaとは、2017年12月にリリースされた世界最大手のNFTマーケットプレイスで、デジタルアートや音楽、写真などのNFT作品を取引できるプラットフォームのことです。
OpenSeaでは、誰でもデジタルアートなどをNFT化して出品でき、自分で設定した価格やオークション形式での販売が可能となっています。また、一度取引されたNFT作品が二次販売された際に、NFT作成者に報酬の一部が支払われる設定ができるなど、クリエイターに優しいマーケットプレイスとなっています。
NFTの取引は暗号資産のウォレットを連携するだけで完了し、IDやパスワードなどの会員登録は不要です。従来の決済システムのような情報の入力もなく、ユーザーは情報漏洩の心配なく取引できるのも特徴的です。
MakerDAO
MakerDAOとは、2014年に設立された分散型自律組織(DAO)で、米ドルと価値を連動するステーブルコインのDAIを持つ、分散型金融 (DeFi) プロジェクトのことです。ステーブルコインをわかりやすく説明すると、価値が安定するような仕組みを持つ暗号通貨で、MakerDAOでは1DAI≒1ドルを維持するように設計されています。
従来では、国家が通貨を発行して管理するのが一般的でした。しかし、国や企業でもないDAOが管理するステーブルコインが生まれたというのが、MakerDAOの特徴です。
MakerDAOのステーブルコインであるDAIは、他の仮想通貨と同じように銀行口座がなくても世界中に送金できたり、決済に使用することができるといったメリットを持ちます。DAIを運用して金利を得ることもでき、利益や損失を確定させることもできます。
また、MakerDAO自体の運営は、ガバナンストークンのMaker(MKR)を発行しており、Maker(MKR)ホルダーに今後どのような方針で運営されていくかの議決権が与えられる仕組みとなっています。ガバナンストークンであるMaker(MKR)は、先ほど紹介したステーブルコインであるDAIの価格担保として用いられ、お互いが通貨としてのリスク管理に役立っています。
Web3の課題や注意点
多くの注目を集め、今後発展していくことが期待されるWeb3ですが、その分課題や注意点といった障壁がまだまだ存在します。
そこで本章では、その課題や注意点について3つ紹介します。
自己責任の度合いが高くなる
WEB2.0の中央集権的なサービスは、IDやパスワードを忘れるなどの何かトラブルがあった際に、運営者へのお問い合わせで解決できる場合が多いです。
しかし、Web3においては中央集権的な運営者を介さないので、データ流出などの何かトラブルがあった際に誰も助けてくれません。
また、このような特性は詐欺師を引き寄せやすいです。実際に、米Chainalysis社によれば、2021年における仮想通貨での犯罪や詐欺の被害額は日本円で約1兆6000億円と公開しています。(参照)
そのため、このような被害に遭わないためにも、個人データを安全に管理できるリテラシーが必要です。また、万が一トラブルに遭った際の対処方法も知っておく必要があるでしょう。Web3の世界は「知らなかった」では済まされないので、データ管理には注意してください。
サービス利用のハードルが高い
WEB2.0では、中央管理者がサービスの利用を手助けしてくれたり何かトラブルがあった際に解決してくれるなど、さまざまなサポートを受けることができました。
これに対して、Web3では暗号通貨やウォレット、DAppsなどの利用が全て自己責任になります。また、現時点では英語利用が前提である程度のIT知識も必要なので、サービス利用のハードルが高いのが課題となっています。
実際に、デジタルデバイドならぬ「クリプトデバイド」という言葉が広がっているほど、Web3の世界で活動する人たちと、そうでない人との隔たりができています。
そのため、より簡単にWeb3のサービスを利用できる仕組みづくりが求められており、将来的には誰でも参入できるような動きが必要になってきます。逆に、この課題は今後Web3領域で起業する者にとってはチャンスとなります。
日本の法整備が追いついていない
Web3関連で生まれるサービスや技術において、法制度や税制面などの国内制度が追いついていないのが現状として問題視されています。
実際に、企業が期末に仮想通貨を保有しているだけで、法人税の課税対象になるなどの問題があります。そのため、Web3関連のスタートアップ企業が資金調達を行う上で仮想通貨を扱うのが難しい場面も存在し、海外流出が後を絶ちません。
記事執筆の時点では、政府がWeb3を国家の成長戦略の柱に据えることを発表しており、将来的に法整備が整っていく見込みはありますが、まだまだ時間はかかりそうです。
Web3の今後の動向に注目しよう
本記事では、Web3の基礎知識や特徴、課題について事例を踏まえつつ解説しました。
次世代型インターネットとして広がるWeb3は、法整備などの様々な課題や問題点を抱えていますが、既存のインターネットの概念を変えて新たな時代を作り、世界全体の経済に大きく影響を及ぼす可能性を秘めています。
また、そのスピードは一般の方が想像するよりも早く、気づいたらスマホが普及していたように、あっという間にWeb3サービスやVR機器が普及していてもおかしくありません。
このような変化に遅れないためにも、Web3の今後の動向に注目して、ご自身が展開するビジネスに活かしていきましょう。
なお、Blockchain Biz Communityでは、Web3の最新情報からスタートアップビジネスのアイデアまで、コミュニティを通して効率的にキャッチアップできる環境が整っています。日本ブロックチェーン協会の理事を務めていて、長年Web3に関する事業開発に関わってきたメンバーも運営にいるので、Web3・DAO関連でビジネスを立ち上げたいと考えている方はこのような環境を十分に活用してみてください。
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