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※ 為替のレートは本記事執筆時点の9月中旬のものです。

The Graphとは

The Graphはアメリカのサンフランシスコに拠点を置く2018年創業のスタートアップで、Ethereumをはじめとするブロックチェーンのデータをインデックス化し、データにアクセスしやすくするためのプロトコルを開発しています。

The Graph

インデックス化とは、目次を作るようなイメージで、この目次があるとデータにアクセスしやすくなります。インデックスがないと、プロトコルが個別にデータを参照するためのスマートコントラクトを用意していない場合、データを取得するにはブロックチェーンに記録されたトランザクションをたどらなければならず、膨大な時間がかかります。

The Graphは一般的な分散型アプリのユーザーや、暗号通貨のユーザーが日々直接ふれるタイプのプロトコルではありませんが、the Graphのインデックスがあることで、ブロックチェーンにデータを書き込むプロジェクトがデータを提供しやすくなり、データを利用するユーザーはGraphQLという統一の問い合わせ形式でデータにアクセスできるようになります。

Web 2.0の時代に巨大企業の地位を築いたGoogleはウェブのインデックスを作成して、検索結果とともに表示する広告から収入を得ていますが、The GraphはGRTという独自のトークンで参加者に報酬を与えて分散型でインデックスの作成を行おうとしています。

有名プロジェクトを含めすでにさまざまなプロジェクトのデータをthe Graphで利用できます。

画像:the Graphでデータを利用できるプロジェクト

CoinMarketCapのthe Graphのページによると、共同創業者のBrandon Ramirez氏、 Jannis Pohlmann氏、Yaniv Tal氏はthe Graph創業前にもthe Graphとも関連の深いAPIの分野で数年間共に働いてきたとのこと。

The Graphは2019年から2022年にかけて合計6960万ドル(約100億円)の資金をベンチャーキャピタルから調達しました。ネットワークのローンチは2020年12月です。

The Graph – Crunchbase Investor Profile & Investments

The Graphのネットワークでステーク、報酬の支払いに使用されるERC-20トークンGRTは、2020年12月のローンチ後、暗号通貨市場が活況だったこともあり一時大きく値上がりしました。現在は10セントほどで取引されています。

画像: GRTの価格推移(CoinMarketCapより)

 

The Graphのしくみ

The Graphのステークホルダー

The Graphではデータ提供の単位(多くの場合は分散型アプリ)を「サブグラフ」と呼びます。

The Graphのしくみを知るにあたって、以下の4つのステークホルダーが存在することを知っておくと理解しやすくなります:

  • 開発者: サブグラフを作成したり、データを利用するプログラムを開発したりする人や組織。データを取得するときに問い合わせ費用を支払う。
  • インデクサ: ブロックチェーンのインデックスを作る人や組織。インデックスを作って問い合わせに答えることで収益を得る。
  • ステーカー: GRTをステークしてインデクサを支持し報酬を得ようとする人や組織。
  • キュレーター: 何をインデックス化するとよいか提案する人や組織。いちはやくよい提案をするとより多く報酬得られる。

データの処理・提供の流れ

The Graphのネットワークはインデックスを作成するインデクサが運用する「Graph Node」と呼ばれるノードからなるネットワークです。Graph Nodeはブロックチェーン、たとえばEthereumネットワークで生成されたブロックに対象とするデータがないかチェックし続けます。

Graph Nodeがどのようにデータを取り扱うのかは、開発者が記述します。このAPIのようなデータ提供の仕組みはthe Graphでは「サブグラフ」、どのスマートコントラクトのどのようなイベントのデータを処理するか記述したファイルは「サブグラフマニフェスト」と呼ばれます。サブグラフマニフェストはIPFS(分散型ファイルシステム)に保存されます。

データを利用する人は、GraphQLで問い合わせ内容を記述し、Graph Nodeにデータを要求します。

画像: The Graphの全体像(The Graphのドキュメントより、日本語は筆写追記)

インセンティブ構造

インデクサとしてノードを運用するには10万GRTをステークする必要があります。現在1GRTが約10セントなので1万ドルを用意する必要があり、GRTの価格はピークよりは下がったもとはいえインデクサになる敷居は低くありません。インデクサには分散型アプリやサービスや開発者からのデータの問い合わせに答えた際の報酬に加えて、インフレ率3%で生成されるGRTが分配されます。

インデクサとしてGraph Nodeを運用するのは敷居が高いもののネットワークに参加して報酬を受け取りたいという人は、インデクサを選んで保有するGRTをデリゲートすることもできます。インデクサによって、デリゲータに還元される報酬は異なります。

The Graphにはキュレーターという役割もあります。キュレーターはインデックス化する価値のあるサブグラフをみつけ、GRTを投資してシェアを獲得し、シグナルを送ります。キュレーターはよりはやくよりよいネットワークをみつけることで、少ない投資で多くの報酬を得られます。キュレーターはGraph Explorerで費用対効果を考慮しながらサブグラフを見つけることができます。インデクサはキュレーターがいることでインデクサは効率よく有限の時間と資源を使ってインデックスを作成できます。

インデクサ、デリゲータ、キュレーターいずれの場合も報酬はGRTで支払われるため、GRTの価格下落リスクを考慮しなければならず、注意が必要です。

The Graphのデータにアクセスしてみる

実際にthe Graphを使ってみたいと思った人は、the Graphがホストしているサブグラフの情報が公開されているので、実際に問い合わせてみるとよいでしょう。ブラウザで簡単に試せて本記事執筆時点では料金はかかりません。

以下の例ではCompoundのサブグラフに対して、最初の7つのマーケットについて指定のデータを返すように問い合わせをしています。クエリの上のトグルメニューをクリックするとその他のクエリも表示されます。データ構造については、問合せ結果の右側にある「Schema」で参照できます。

画像: Compound V2のサブグラフの情報とPlayground

Playgroundの右上の「Queries(HTTP)」にサブグラフのAPIのエンドポイントが記載されているのでここに対してHTTPリクエストを送って、プログラムからデータを取得することもできます。

The Graphの公式ドキュメントには日本語版もありますので、より詳しくthe Graphのしくみを知りたいという方は目を通してみるとよいでしょう。サブグラフの作り方やGraph Nodeの立ち上げ方などについても解説があります。

イントロダクション – The Graph Docs

 

The Graphのエコシステム

The Graphでは多くの価値のある情報がインデックス化され、さかんに問い合わせが行われるようになれば、インデクサの報酬が増え、経済の好循環につながります。この点で有名プロジェクトを含むサブグラフが作られていっているのはよい傾向といえそうです。Graph Explorerによると、2022年9月中旬の本記事執筆時点で480のサブグラフが存在します。

The Graphはプロジェクトや個人に対して助成金を出していて、サブグラフの作成も対象に含まれます。

The Graph Grants

また、The GraphはEthereumから始まり、NEAR、Avalanche、Polygon、Optimism、Arbitrumなど他のブロックチェーンのデータのインデックス化も行われています。他のチェーンのインデックス作成に対する助成金のプログラムもあります。

Migration Incentive Program

 

The Graphの今後

エコシステムの項でも触れましたが、より価値とニーズのあるサブグラフをインデックス化し、ユーザーのニーズに応えていくことはthe Graphの成長の鍵です。The Graphは今後も新しいプロジェクトのオンボーディング、人気のブロックチェーンへの対応を進めていくことでしょう。

2022年3月に研究・開発のロードマップが公開されています。インデックスの改善、ゼロ知識証明による検証可能な問い合わせの実現などさまざまな多岐にわたる今後の研究・開発計画が述べられています。

The Graph R&D Roadmap

 

おわりに

本記事ではブロックチェーン上の情報をインデックス化して、データを提供・問い合わせをしやすくするプロトコルthe Graphを紹介しました。

筆者は無期限先物取引ができるDeFiプラットフォームGMXの統計情報に興味を持ったものの、APIの仕様書が見つからず、どのようにデータを取得できるかGMXのDiscordで質問したところ、the Graphを使っていると回答を得ました。実際にthe Graphからデータを取得してみたところ、GraphQLを理解する必要はあるものの、結果的には短いコードでデータを取得でき、データの提供者とユーザー双方の負担を軽減し得るthe Graphの可能性を感じました。

暗号通貨価格の下落にともなって、ブロックチェーンや暗号通貨分野は2021年と比べると盛り上がりに欠け、すぐにthe Graphが活発に利用されるということはなさそうですが、ブロックチェーン上のデータが整理されアクセスしやすくなれば、DeFiやWeb3.0の進展に貢献するでしょう。

今後the Graphの利用がプロジェクト側でもユーザー側でも広がっていくのか、より多くのブロックチェーンに対応していけるのか、本来無料ではないデータが広告モデルで無料になっている現状を変えるのか、the Graphの成長に注目したいです。

 

エンジニアの経験と情報学分野での経験を活かして、現在はドイツにてフリーランスで翻訳・技術解説に取り組む。2009年下期IPA未踏プログラム参加。2016年、本メディアでの調査の仕事をきっかけにブロックチェーンや仮想通貨、その先のトークンエコノミーに興味を持つ。

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