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  • 更新日: 2020年6月30日

ブロックチェーンの世界では、「スマートコントラクト」というキーワードも話題になっています。

ブロックチェーンは、ビットコインを始めとする仮想通貨などを支える台帳技術ですが、「過去のデータの実行履歴をすべて記録・公開する技術」としてのインパクトは、契約や登記など社会経済を支えるインフラにまで及ぶ可能性を秘めています。

スマートコントラクトの概要

スマートコントラクトは、その名前の通り、コントラクト(契約)をスマートに行えるプロトコルのことです。つまりスマートコントラクトとは契約の自動化であり、契約の条件確認や履行までを自動的に実行させることができます。

取引プロセスを自動化できるため、決済期間の短縮や不正防止、仲介者を介さないことによるコスト削減にも寄与すると期待されており、各国で取り組みが行われています。また、ブロックチェーン上でスマートコントラクトを利用すると、ユーザー同士が直接取引を行う非中央集権型のサービスを実現でき、社会に大きな変化をもたらす可能性があると言われています。

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ブロックチェーン上でのプログラムとしてスマートコントラクトを実行すると契約が改ざんされないことが保証される上に、人を介すことなく確実に執行できます。ただしプログラムという性質上、曖昧な内容や解釈を要する免責条項などは定義が難しいため、従来の契約をそっくりそのまま代替できるわけではありません。

また、仮にスマートコントラクトにバグや脆弱性があった場合、不正な処理が行われブロックチェーンに誤った情報が書き込まれるリスクも存在します。従って、スマートコントラクトを使用する際は、プラットフォームやサービスの特性に応じて自由度と安全性のバランスを考慮する必要があると言えます。

 

自動販売機

スマートコントラクトの考え自体はビットコインよりも古く、1990年代にNick Szaboという法学者・暗号学者によって最初に提唱されました。Szaboはスマートコントラクトを最もはじめに導入した例として、自動販売機を挙げています。「利用者が必要な金額を投入する」、「特定の飲料のボタンを押す」の二つの契約条件が満たされた場合にのみ、自動的に「特定の飲料を利用者に提供する」という契約が実行されることになります。このように、ここでいうコントラクト(契約)とは書面上で作成された契約のみをさすのではなく、取引行動全般をさします。

 

Etheruemのスマートコントラクト

Ethereumは、ブロックチェーン技術をベースに、特別な中央管理者のいないP2Pシステム上で様々なアプリケーションサービスを実現するための基盤を提供するものです。ビットコインはブロックチェーンの技術を用いて悪意のある参加者が参加する可能性のあるP2Pネットワーク上でお金の取引を正しく動作させる環境でした。一方でEthereumは、取引だけでなくアプリケーション(処理)をこのようなP2Pのネットワーク上で正しくに動作させることを可能にする環境を提供しています。これを実現するための機能として、大きな役割を果たすのがEthereum特有の自由度の高い記述ができるスマートコントラクトです。現在では、様々な業界でその検証がされるようになりました。

その一つのサービスとして、ujo MUSICが挙げられます。このサービスは、著作権やアーティストへの対価の支払いをより理想の形に近づけるために創られた音楽配信サービスです。

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https://blog.ujomusic.com/building-ujo-1-from-the-technical-underground-to-the-future-a39e825612ef より

これまで、アーティストが楽曲をリリースして、楽曲が買われて、アーティストに収入として入ってくるまでに、たくさんの中間業者が存在していました。そこにはたくさんの契約が存在し、1曲リリースしてから、収入を得るまでに1年かかることもあったそうです。この契約部分を簡略化し、自動履行できるようにしたのがujo MUSICです。

取引はレコード会社などの中間業者を通さず、決済はすべて仮想通貨Ether(Ethereumにおける独自の内部通貨)によって行われます。ユーザーがWeb上の楽曲を選択してEtherを支払うとそのライセンスが自動発行され、アーティスト達はスマートコントラクトに定義された配分で即座に直接Ether当形で対価を受け取る仕組みになっています。

 

ChainCode(Hyperledger)

Hyperledgerプロジェクトとは、エンタープライズ向けの分散合意による分散型台帳のオープンソース・モジュールで、プロジェクトの起ち上げには設立メンバーにより相当量の研究・開発パワーが費やされました。

現在のHyperledgerプロジェクトの目的は、仮想通貨の使用などではなく、ブロックチェーンの技術を最大限に利用することです。つまり、ブロックチェーンを利用して様々な問題を解決する事が目的なのではなく、純粋にブロックチェーンの分散型台帳が、現実のソリューションを下支えする事が出来る、強固な基盤技術になる事が目的となっています。

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Hyperledgerプロジェクトはブロックチェーンの世界における課題に対して、柔軟に複数のソリューションを提供しています。従来の承認に時間がかかったり、多くのコストを必要とするProof of Workの代替となるようなソリューションとなる、コンセンサス・プロトコルを提示しています。また、仮想通貨へのコミットを必要としないで、複数の業界の分散台帳を構築することもでき、異なるプライベートな台帳同士のコミュニケーションやアクセス管理もできます。

そして、スマートコントラクトにも力を入れています。Hyperledgerのリファレンスとなるアーキテクチャのうちの一つの重要な要素として、スマートコントラクト・サービス(Chain-Codeとも呼ばれる)があり、検証ノードという閉じられた環境で安全にスマートコントラクトを実行できるようになっています。

 

スマートコントラクトが実現できること

これまで見てきたように、スマートコントラクトとは、執行条件と契約内容を事前に定義しておき、条件に合致したイベントが発生すると自動執行する仕組みです。この仕組みは、様々な分野へ応用できると考えられます。

例えばこれまで金融業界は、制度を中心に中央機関や金融機関が取引参加者の信頼性を保証し、巨大なシステムの上で成立してきました。金融は、契約や制度に基づいて確実に処理することが強く求められる世界であり、特に取引成立後、定められた手順で処理を行うポストトレードは、スマートコントラクトとの相性がよいと考えられます。今後、スマートコントラクトの技術の実用化が進むと、金融機関を介さないデジタル通貨による取引や、仲介者不在の自律型サービスが増加し、金融機関や通貨の役割、金融サービスの範囲も変わっていく可能性があります。

また非金融の分野では、P2Pの電力取引や不動産登記、シェアリングエコノミー、IoTなどの契約を伴う取引活動全般へスマートコントラクトの活用が見込まれています。

 

スマートコントラクトはあらゆる契約行動を自動プログラム化する仕組みであり、この技術がうまく適用されれば、中央機関や特定の管理者を介さずに企業や個人間で取引ができる世界は、そう遠い話ではないかもしれません。

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

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