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  • 更新日: 2020年10月13日

Uberの共同創業者で会長のGarrett Camp氏が作り出そうとしているオープンソースのグローバルな電子通貨およびそのプロトコル「Eco」について紹介します。

 

Ecoとは

ビジネス誌Fortuneのオンライン版に2018年3月1日付で掲載された記事「Uber Creator Invents New Cryptocurrency」(Uberのクリエーターが考案する新しい仮想通貨)によると、Uberの共同創業者で会長であるGarrett Camp 氏は2017年5月に初めてビットコインとイーサリアムを購入したものの、仮想通貨について調べれば調べるほど、多額を投じたいと思うものはなく、それならば自分で新しいプロジェクトをリリースした方がよいと実感したといいます。こうして構想が練られ始めた仮想通貨はEcoと名付けられました。
※ Ecoのウェブサイトおよびデザインプロポーザルでは「仮想通貨」という表現は使われずEcoを「通貨」「電子通貨」、また通貨を規定する「通貨プロトコル」と表現しています。本記事では以降Ecoの表現にならうことにします。

Eco · Digital currency for everyone

Camp氏は既存の仮想通貨の何を問題視したのでしょうか。Ecoのデザインプロポーザルでは、仮想通貨の複雑さ、ユーザビリティー、スケーラビリティーが問題として挙げられています。ビットコインについては「エレガントで革新的なデザイン」を認めつつも、取引の手段として利用されているというよりは、投機の対象となってしまいっていることを指摘し、ビットコインの抱える問題点として、大規模マイニングプールの存在が存在しネットワーク内のリソースの偏っていること、ネットワークで大量のエネルギーが消費されていること、複雑で安全でないプラットフォームと認知されていることを挙げています。

これに対して数十億人規模にスケールする未来の電子通貨は、シンプルなモバイルインターフェースで金や米ドルのように安定した資産を提供できる必要があり、Ecoは簡単で安全で迅速な支払いを実現可能にするオープンで検証された分散型のプラットフォームを目指すとしています。具体的には、ビットコインのように誰もがノードとなれるトラストレスなネットワークではなく、大学が運営するノードからなる検証された分散型のネットワークを構築し、エネルギー効率がよく調和の取れたトークン生成の仕組みをデザインし、システム全体でのエネルギー消費量を抑えるものになるといいます。これまであまり注目されなかったインターフェイスについてもシンプルなウェブおよびモバイルインターフェイスを提供することを強調している点が興味深いです。開発は非営利団体Eco Foundationが中心となって世界中の研究者や開発者と協力して行われるようです。

Ecoのウェブサイトではすでにサインアップしてアカウントを取得しておくことができます。

画像: Ecoのアカウント登録フォーム(Ecoウェブサイトより)

 

Ecoのネットワーク

Ecoのコンセプトや仕組みの概要について書かれたデザインプロポーザルが公開されています。

ECO: A Global Currency Protocol Design Proposal March 1, 2018

Ecoは均等に分散化されたネットワークを築くことを重視していて、初期ノードはEco Foundationが大学をターゲットに50あまりの国から数百のノードが選定します。続いて初期ノードのグループを起点に透明な推薦と承認の仕組みに基づき、地理的に分散された大学をはじめとする信頼のおける組織のノードからなるネットワークを拡大していきます。

合意形成は検証済みのノードによって行われ、ブロック承認の報酬の大部分は単一のノードではなく、すべての検証済みのノードと要件を満たしたユーザーに分配され、マイニングに参加する金銭的なインセンティブを排除します。協調するノードによるネットワークではハッシュレートが安定し、エネルギー効率のよいシステムとなることが期待されるといいます。それぞれのノードについてはEcoのウェブサイトで情報が公開され、要件を満たさずネットワークに貢献しないノードはノードのプールから除外されます。

ネットワークの処理能力として、Ecoはビットコインとの対比で、ビットコインより大きなブロックサイズ、短いブロックタイムを採用するとしています。初期の目標としてトランザクション承認時間1分、秒間約1000トランザクションを挙げ、将来的にはシャーディングと呼ばれる技術を採用して秒間10万トランザクション以上を処理できるようにするとのこと。これはクレジットカードVISAの最大秒間処理量56000トランザクションを超えるもので、野心的な目標といえるでしょう。

 

Ecoの発行方法

前項に続いてEcoのデザインプロポーザルをもとにEcoの発行方法をみてみましょう。

Ecoは価格が乱高下するような投機の対象ではなく、取引の手段として使い勝手のよい通貨であるために、供給量を固定するのではなく、最初の数年で1兆トークンを発行し、時価総額に応じて徐々に供給量を増やしていくといいます。トークン量の多さはトークンが細かく分割されすぎて0.00001BTCのように小数点以下が多くなりわかりにくくなってしまうことを避けるためで、分割の単位はドルとセントで親しまれている100分の1までになるようです。

トークンの50%は最初の10億人のユニークな人間のユーザーに、20%を検証済みのノードを運営する大学、研究者、開発者に、そして残りの30%は10%づつEco Foundationの運営やコミュニティーへの助成、アクティブなコントリビューターやアドバイザー、戦略的なパートナーに分配される予定です。

新規発行されるトークンのアルゴリズムによる分配方法は今後研究の余地があるとしつつ、50%をユーザーに分配する方針は維持するとしています。

 

今後の展開

仮想通貨の価格が乱高下し、手数料も高騰することがある中、最も使い勝手のよい電子通貨プラットフォームを目指すとして誕生したEcoは現在構想段階にあり、今後徐々に技術的な詳細や実装が明らかになるでしょう。

これまでコアなファンによって開発と利用が進められてきた仮想通貨の分野で、Ecoが重視するエンドユーザーに配慮したシンプルなインターフェイスは、仮想通貨が今後より広く普及していくにあたって必要不可欠です。デザインプロポーザルの中では一例として文章や音声コマンドについて記述があり、従来の仮想通貨のウォレットを超えるインターフェイスが出てくるのか見ものです。

今回紹介したUberの共同創業者で会長のGarrett Camp氏によるEcoにとどまらず、FacebookのCEOのMark Zuckerberg氏が2018年年初の投稿で仮想通貨について言及するなど、ウェブ時代の雄が今後ブロックチェーンや仮想通貨の分野で名乗りをあげることが考えられます。Ecoのリリースを待ちつつ、この流れにも注目しておきたいところです。

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

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